「コーポレートガバナンス・コード改訂案」に関する想定問答例
コーポレート・M&A
※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.242」の「特集」の内容を元に編集したものです。
2026年4月10日、金融庁および東京証券取引所(以下「金融庁等」)は、コーポレートガバナンス・コードの改訂案(以下「CGコード改訂案」)を公表しました。
CGコード改訂案の公表に際し、金融庁等は、改訂の趣旨等を記載した文書(成長投資の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの改訂について、以下「改訂趣旨」)を公表しており、このなかで、「成長投資の促進」、「取締役会の機能強化」および「有価証券報告書の定時株主総会前の開示」の3点をCGコード改訂案における留意事項等に掲げています。本稿では、CGコード改訂案に関し、この3点を中心に、本年の株主総会等で想定される主な質問とその回答例をご紹介します。なお、以下の想定質問に対する回答例は、あくまでも一例です。
成長投資の促進
Q1-1. 成長の実現に向けて、成長投資(ヒト・モノ・カネ)や事業ポートフォリオの見直し等の経営資源の配分に関する方針を具体的に説明してほしい。
A:当社では、中期経営計画において成長戦略および重点投資項目を定めており、これらに基づき、経営資源の有効活用を図るため、中期経営計画の◯年間におけるキャピタルアロケーションを策定しております。このなかで設備投資、人的資本、M&A等に加え株主還元等に対しそれぞれどのように資金を振り向け、具体的にどのような投資を行っていくのかについて方針を定めております。
上記方針や事業ポートフォリオについては、成長戦略に照らして適切なものであるか、定期的に取締役会で検証を行っており、今後も成長性が見込める事業に対し、重点的に経営資源の配分を行ってまいります。
Q1-2. 当社では、金融資産や実物資産を成長投資等に有効活用できているか、どのように検証を行っているのか。また、当社の現預金の保有状況は適正な水準なのか。
A:当社では、取締役会にて、中期経営計画について定期的に中間レビューを行うこととしており、その際に金融資産や実物資産といった経営資源についても、配分の状況について検証を行い、PDCAサイクルを回しております。投資等に必要な現預金の水準についてもあわせて検証しており、当社の現預金の保有状況は適正な水準であると判断しております。
💡ポイント
CGコード改訂案原則4−2の解釈指針では、自社の経営戦略や経営計画を踏まえ、金融資産や実物資産を成長投資等に有効活用できているかを含め、取締役会は不断に検証すべきと記載されています。また、成長の実現に向けて成長投資に関して、改訂趣旨では、キャピタルアロケーションの開示により資本配分についての説明を行うことが考えられることに加え、ヒト・モノ・カネ等の経営資源の配分について、原則の趣旨・精神および自らの置かれた状況を踏まえた説明がなされることが重要であると明記されています。
これらを踏まえ、自社で策定しているキャピタルアロケーションや事業ポートフォリオの見直し状況等に基づき、経営資源の配分が適切に行われている旨およびこれらの検証状況を回答いただくことが考えられます。
取締役会の機能強化
Q2-1. CGコード改訂案では、独立社外取締役の質の確保の重要性が強調されているが、当社ではどのような取組みがなされているか。
A: 当社では、当社の中長期的な企業価値向上に寄与する知見・能力等を有する人材を取締役候補者として選定する方針を取締役会で定めております。加えて、独立社外取締役については、独立した客観的な立場から経営に対する実効的な監督を行っていただくため、◯◯、◯◯等の能力発揮を期待し、これらに必要なスキルについて、スキル・マトリックスにおいて特定しています。また、取締役候補者の検討に当たっては、多様性を意識しつつ、期待する役割・責務を適切に果たせる人材で構成される取締役会となるよう、スキル・マトリックス等を活用し、独立社外取締役候補者を選定するなど、質の確保に努めております。
さらに、取締役就任後の取組みとして、取締役会においては、建設的な議論をいただけるよう、当社の事業内容、事業環境への理解をより深めていただくことを目的とした社内研修を定期的に実施しております。
Q2-2. 当社では、取締役会における独立社外取締役の割合が高く、独立社外取締役が果たすべき役割・責務が増している。取締役会の実効性向上に向けては、取締役会を支援する事務局の役割の重要性も高まっているものと思われるが、事務局機能の強化についてどのような取組みを行っているのか。
A: 当社では◯◯部の担当者◯名が取締役会事務局機能を担っております。当社は、取締役会事務局としての専任部署は設置しておりませんが、取締役会での審議に当たり十分な資料、情報が適切に提供されるよう、事務局が、経営企画部門および経理部門等と連携し、独立社外取締役に対し、必要に応じて審議内容の事前説明を行い、その際の質疑応答について予め他の役員とも情報共有するなどの取組みを行っております。事務局機能のさらなる強化につきましては、取締役会の実効性向上を図るうえで、引き続き検討してまいります。
Q2-3. 当社では、取締役会における独立社外取締役の割合が高く、マネジメント機能よりもモニタリング機能を重視しているものと理解している。そうであるならば、取締役会議長は社長ではなく独立社外取締役が務めるべきではないか。
A: 取締役会におきましては、業務執行に関わる報告事項または決議事項が多数あることから、当社では、社内の状況に精通した社長が、取締役会議長として取締役会の議事運営を行っております。また、取締役会の実効性評価におきましても、社長が取締役会議長を務めることにより、執行側と独立社外取締役との結節点として有効に機能していることを確認しており、取締役会の実効性向上に寄与しているものと認識しております。
他方、独立社外取締役が取締役会議長を務めることが、監督の実効性をより高めるとの考え方も承知しております。取締役会の実効性評価の結果等に基づき、当社にとって適切な取締役会のあり方を引き続き検討してまいります。
💡ポイント
CGコード改訂案原則4−14の解釈指針では、取締役会の審議の活性化を図り、また、社外を含めた取締役・監査役への情報提供を含めた支援を適確に行うためには、取締役会を支える部署であるいわゆる取締役会事務局(コーポレートセクレタリー等)の機能強化等の取組みを推進することも重要であるとされています。加えて、取締役会事務局は、取締役会やその傘下の各委員会の会議体が実効性ある議論の場となるよう、当該会議体の果たすべき役割・責務に照らし適切な審議事項を定めるなど、それらの運営を能動的に行うことが望ましいとされており、必要に応じて、社外取締役・社外監査役の指示を受けて会社の情報を適確に提供できるよう社内との連絡・調整にあたる役割を担うことも期待されることが明記されています。
また、改訂趣旨では、取締役会のあるべき姿は、各社の置かれた状況によって変動するものであるが、一定の場合には、独立社外取締役が議長を務めることで、取締役会の役割がより実効的に果たされるとの指摘があることが言及されています。
独立社外取締役が議長を務める場合や、取締役会における社外取締役が占める割合が高い場合には、取締役会事務局が果たす機能が特に大きくなることが想定され、このような上場会社においては、取締役会事務局のあり方や自社で求められる機能等について予め整理しておくことが考えられます。
有価証券報告書の定時株主総会前の開示
Q3. CGコード改訂案では、有価証券報告書を株主総会開催日の3週間以上前に提出されることが最も望ましいことや、株主総会開催日の基準日後倒しについても言及されているが、当社はどのように考えているのか。
A:本年におきましては、当社では、株主総会の◯日前に有価証券報告書を開示しております。有価証券報告書の早期開示が望ましいとされているCGコード改訂案の趣旨は理解しておりますが、有価証券報告書の開示に当たっては、監査手続きが完了する必要があるため、総会の3週間前に開示することは難しい状況にございます。他方、有価証券報告書においては、サステナビリティ情報をはじめコーポレートガバナンスに関する情報など非財務情報のほか、政策保有株式の保有状況等の有益な情報が掲載されており、これらについて、本定時株主総会の招集ご通知に、同様の情報を掲載するなどして、株主の皆様の議決権行使に当たっての情報提供の早期化・充実化を図っております。
なお、株主総会開催日に係る基準日の後倒しについては、投資家との対話促進への効果や、業務執行取締役の選任時期と事業年度開始日との乖離拡大の影響など、考慮すべき点が多く、現時点では具体的な検討は行っておりません。投資家のご意見も参考にしつつ、費用対効果等も勘案し、その要否について継続的に精査してまいります。
💡ポイント
CGコード改訂案原則1−2の解釈指針では、上場会社は、株主総会において株主が適切な判断を行うことができるよう、株主の視点に立って適切な環境整備を行うべきであると指摘されています。有価証券報告書には役員報酬や政策保有株式等のガバナンス情報等、投資家がその意思を決定するに当たって有用かつ信頼性の高い情報が豊富に含まれていることから、本来、株主総会開催日の3週間以上前に提出されることが最も望ましいと考えられること、そのため、株主総会開催日や議決権行使に係る基準日を従前の慣行に基づく時期から後ろ倒しすることも含めて検討することについても言及されています。
上場会社においては、SR活動等を通じた株主との対話を踏まえ、株主総会における議決権行使に際し有用と考えられる情報を、いつ、どのような方法で提供することが望ましいか整理し、対応方針を検討することが肝要です。また、株主総会開催日の基準日後倒しについても、自社にとっての効果や影響等を考慮し、その要否を適宜検討することが考えられます。
三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務グループ
03-6747-0307(代表)