金融庁「有価証券報告書を定時株主総会前に提出する場合の留意点」を更新

コーポレート・M&A

目次

  1. はじめに
  2. 総会前開示を行う場合に有報への記載が必要と考えられる事項
  3. 総会前開示に関するQ&A
  4. おわりに

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.240」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 金融庁は、2月20日に「有価証券報告書を定時株主総会前に提出する場合の留意点」を更新し、公表しました。本特集では、上場会社が有価証券報告書(以下「有報」という)の総会前開示に取り組まれるにあたり、留意すべき事項等について解説します。

はじめに

 従来、有報を定時株主総会前に提出する場合は、その記載事項のうち、総会または取締役会で決議する予定の事項について、その旨およびその概要を記載することとされていました。
 今般、上場会社の開示負担を軽減し、総会前開示を促進させる観点から、企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」という)が改正されました(2月20日に公布・施行)。これにより、自己株式の取得および剰余金の配当に関する事項を除き、株主総会等で決議する予定の事項の記載が原則不要となりました。
 総会前提出を行う場合、有報の記載の変更の検討が必要となるものとして、下表に記載の項目に限られることとなります。したがって、「役員の状況」において、総会または取締役会で決定する予定の内容を併記することは必須ではなくなります。

総会前提出を行う場合、有報への記載が必要となる事項
  • 自己株式の取得等の状況
  • 主要な経営指標等の推移
  • 配当政策
  • 配当に関する注記事項(株主資本等変動計算書関係)

 上記内容にかかる改正後の適用時期については、「2026年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等」(2026年3月決算)からとされています。
 ただし、施行日以降に提出する有価証券報告書についても適用することができる旨の早期適用が認められており、2025年12月決算会社の有報においても、改正後の負担軽減されたものを前提として作成することは可能とされています 1

総会前開示を行う場合に有報への記載が必要と考えられる事項

 開示府令の改正を踏まえ、有報の総会前開示を行う場合は、以下の事項に留意すべきとされています。

自己株式の取得等の状況
  • 自己株式の取得の事由および当該取得に係る株式の種類自己株式の取得に係る決議の状況(決議された日付、取得期間、株式の総数、価額の総額、その他の事項を決議した場合はその内容)が記載事項とされています。

    ⇒有報提出後に開催される株主総会において、自己株式の取得に関する事項が決議事項となっている場合、決議する予定の自己株式の取得に係るこれらの情報を記載することが考えられます(取締役会決議による取得の状況についても同様)。

主要な経営指標等の推移
  • 最近5事業年度に係る1株当たり配当額が記載事項とされています。当事業年度に係る配当額が確定していない場合には、決議する予定の配当額を記載のうえ、その旨を注記することとされています。
配当政策
  • 配当に係る情報(決議年月日、配当金の総額、1株当たり配当額)が注記事項とされています。当事業年度に係る配当が確定していない場合には、決議する予定の配当に係る情報を注記することとされています。
配当に関する注記事項(株主資本等変動計算書関係)
  • 配当に係る情報(決議年月日、株式の種類等、配当原資等)が記載事項とされています。当事業年度に係る配当が確定していない場合には、決議する予定の配当に係る情報を記載することとされています。

総会前開示に関するQ&A

 上場会社が総会前開示を検討するにあたり、想定されるQ&Aとして以下の内容が公表されています。

<有報に添付する計算書類および事業報告>
Q1.  総会前開示を行う場合、有報に添付する計算書類、事業報告は株主総会の報告が未済でよいか。

A: 有報の添付書類とされる計算書類および事業報告は、株主総会に報告しようとする、または、承認を受けようとするもので問題ない(開示府令第17条第1項第1号ロ)。

<決議が修正・否決された場合>

Q2. 総会前に開示した有報に「予定」と記載した自己株式の取得や剰余金の配当に関する事項は、株主総会決議後に変更が生じた場合、臨時報告書を提出する必要があるが、その他会社が任意で有報に記載した事項について、内容に変更が生じた場合、臨時報告書の提出は必要か。

A: 総会前に開示した有報に「予定」として記載した事項が、株主総会で否決・修正された場合、その旨およびその内容について記載した臨時報告書(開示府令第19条第2項第9号の3)の提出が必要(いずれの場合においても、有報の訂正は求められない)。

<役員の異動に関する開示>

Q3-1. 総会前開示を行う場合、総会またはその直後に開催される取締役会において、役員の異動の決議がされた場合、どのような開示手続が必要か。

A: 総会前開示を行う場合、総会またはその直後に開催される取締役会を経て、役員の異動が生じた場合の手続きとしては、以下が求められる。

  • 臨時報告書の提出(開示府令第19条第2項第9号(代表取締役の異動))
  • 臨時報告書の提出(同項第9号の2(株主総会における決議))
  • 半期報告書の「役員の状況」の開示

Q3-2. 総会前に開示する有報に、決議する予定の役員の異動を任意で記載した場合、臨時報告書の提出や半期報告書の開示といった手続は不要か。

A: 決議する予定の役員の異動について総会前に開示する有報に任意で記載した場合、その者が定どおり選任されたならば、代表取締役の異動に係る臨時報告書の提出および半期報告書の「役員の状況」の開示は不要とされる。
なお、決議する予定の役員の異動について任意で記載する場合でも、有報提出日時点の役員の状況は記載する必要がある。

<取締役会における有報の決議要否>

Q4. 有報の開示が取締役会の決議事項となっている会社では、総会で選任された新経営陣で構成される総会直後の取締役会において決議の手続きを行っているため、総会前開示を行う支障となっているが、どのような対応が考えられるか。

A: 有報の開示は取締役会の法定決議事項(会社法362条4項各号)ではないが、社内規定等により、取締役会における承認事項や報告事項となっていることが考えられる。この場合、有報が過事業年度の会社の経営に関する報告であることからすれば、過事業年度(総会前)の体制における取締役会において取り扱うことも考えられる
また、取締役会の書面決議とすることや、取締役に権限を委任すること等も考えられる。

<役員の業績連動給与の損金算入>

Q5. 法人税法上、役員に対する業績連動給与を損金算入するためには、報酬委員会等で決定した業績連動給与の算定方法の内容を遅滞なく有報等で開示する必要がある。株主総会直後に開催する報酬委員会で決定する予定の内容を総会前に開示する有報に任意で記載すれば、損金算入することはできるのか。

A: 株主総会の直後に開催する報酬委員会で決定する予定の内容を総会前開示した有報に任意で記載したとしても、その内容が適正な手続の終了の日以後遅滞なく開示されていることにはならない。したがって、損金算入することはできないと考えられる。

(出所)金融庁「有価証券報告書を定時総会前に提出する場合の留意点」(2026年2月20日更新)6~9頁
(「総会前開示に関するQ&A」)を基に三菱UFJ信託銀行作成

おわりに

 今般の開示府令改正は、開示に係る負担の軽減を図り、行政による有報の総会前開示の促進を意図したものです。一方で、サステナビリティ関連情報や人的資本に関する記載事項が新たに求められる等、上場会社における有報作成に係る負担は増加する傾向にあります。
 本年の株主総会において、総会開催時期の後倒しに関する定款変更を実施する企業は限定的であると予想されることから、当面は社内外の関係者による創意工夫を通じて、より早期の開示を目指す対応が求められるものと思われます。

【ご参考】
有報の総会前開示を検討されるにあたり、以下の参考文献も併せてご参照ください。

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務グループ
03-6747-0307(代表)

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