東証「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」(第9回)を開催

コーポレート・M&A

目次

  1. はじめに
  2. 少数株主保護に関する上場制度の見直し
    1. 少数株主の賛否割合・反対票を踏まえた対応等の開示の義務化
    2. 独立性基準の見直し
    3. 見直しのスケジュール
  3. MBO等の非公開化の場面での少数株主保護
  4. グループ経営等に関する開示の推進

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.239」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 東証は、1月26日に第9回の「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」(以下「研究会」)を開催しました。本特集では、研究会における議論の状況および今後の東証の取組みについて解説します。

はじめに

 従属上場会社(実質的な支配力を持つ株主を有する上場会社)に対して、国内外の機関投資家からは、グループ経営等に関する開示の充実に加えて、特に以下の点に関して上場制度上の更なる対応を求める声が寄せられています。

  • 上場子会社の経営陣に対する少数株主を意識した経営の促進
  • 経営陣を監督し、少数株主保護において中心的な役割を果たす独立社外取締役の実効性・独立性の確保
  • 親会社による完全子会社等の非公開化の場面での更なる公正性確保

 かかる状況を踏まえ、研究会では具体的な施策を検討し、研究会第9回では①少数株主保護に関する上場制度の見直し、②MBO等の非公開化の場面での少数株主保護、③グループ経営等に関する開示の推進について整理がされました。

少数株主保護に関する上場制度の見直し

少数株主の賛否割合・反対票を踏まえた対応等の開示の義務化

 研究会では、親会社等が存在する従属上場会社においては、独立社外取締役の独立性確保のために特別な工夫が必要であり、少数株主の賛否を通じて、取締役に対する何らかの懸念が客観的に示された場合に、その情報に基づく対話を推奨していくことが非常に有効であるといった議論がされました。
 そこで、上場子会社等に、上場会社として、少数株主の反対票(懸念)を踏まえた少数株主との対話・その他必要な対応を求めていく観点から、以下の開示を上場規則(適時開示)において義務付ける案が示されました。

対象議案
  • 取締役選任議案(会社提案議案に限る)
対象企業
  • 議決権保有比率が40%以上の大株主を有する上場会社

・保有比率の計算にあたっては、関係会社※の保有分も合算

※財務諸表等規則8条8項に定める関係会社(親会社、子会社、関連会社、その他の関係会社)をいう

開示内容 <株主総会後速やかに開示>
  • 少数株主の各取締役選任議案に対する賛否の割合
  • 計算に際しての少数株主の範囲

    ・上記の大株主およびその関係会社は少数株主から要除外。その他任意に除外した株主についても記載

【少数株主の50%超の反対票が投じられた議案があったと認める場合】
  • 取締役会による反対理由や原因の把握のための、株主との対話等の方針

<株主総会後6か月以内に開示>
【少数株主の50%超の反対票が投じられた議案があったと認める場合】
  • 株主からのフィードバック、追加的な対応の必要性および取組方針等

(出所)研究会第9回(2026年1月26日開催)東証説明資料①「少数株主保護に関する上場制度の見直し」

独立性基準の見直し

 主要株主は議決権行使等を通じて上場会社に一定の影響力を有しています。主要株主と一般株主は、中長期的な企業価値向上(株主共同の利益の増大)による利益の享受という観点では原則として利害が一致するものの、一部の局面では潜在的な利益相反のおそれがあるため、独立社外取締役があらゆる局面で一般株主保護の役割を果たすためには、こうした株主からの独立性確保も重要といえます。
 また、上場会社が主要株主である先についても、上場会社が議決権行使等を通じた影響力を及ぼし得る先であり、同様に、独立性の確保が必要と考えられます。
 そこで、東証の独立役員制度について、以下のとおり、上場会社の主要株主または上場会社が主要株主である先からの独立性を求める等の見直しを行う案が示されました。

独立性基準
(独立性が認め
られない類型)
の拡充
  • 現在・最近に、上場会社の主要株主の業務執行者でないこと
  • 現在・最近に、上場会社の主要株主の業務執行者である先の業務執行者でないこと

・「現時点」で主要株主(10%以上の議決権を保有する株主)に該当する場合に限る

※主要株主に該当しない場合でも、上場会社の役員候補者の指名等に関する契約を有する株主の業務執行者は、独立役員の要員を満たさない懸念がある旨を実務要領等で提示

「要開示」の
類型の拡充
  • 現在・過去10年以内に、上場会社が政策保有している/されている先の業務執行者である又はあった場合には、該当状況の開示を求める
  • 「現時点」で政策保有関係が存在する場合に限る
その他
  • 主要でない取引先の業務執行者に該当している場合等についても、取引関係の開示内容の具体化(売上高の●%未満など独立性を判断しうる記載)を進める

(出所)研究会第9回(2026年1月26日開催)東証説明資料①「少数株主保護に関する上場制度の見直し」

【見直しのイメージ(案)】

(出所)研究会第9回(2026年1月26日開催)東証説明資料①「少数株主保護に関する上場制度の見直し」

(出所)研究会第9回(2026年1月26日開催)東証説明資料①「少数株主保護に関する上場制度の見直し」

見直しのスケジュール

時期 予定
2026年1月26日
  • 上場制度の対応案について議論。意見を踏まえ、東証にて詳細検討
2026年春
  • 制度要綱の公表、パブリックコメントの開始
2026年12月~
  • 2026年12月以後に終了する事業年度に係る定時株主総会から適用を予定

MBO等の非公開化の場面での少数株主保護

 東証では、2025年7月、MBOや支配株主による完全子会社化に関する企業行動規範の見直しを実施しました。見直しを踏まえ、特別委員会の意見書や株式価値算定に関する開示内容は一定程度充実しましたが、一方で投資家からは、公正性確保に向けて、特別委員会の実効性確保や、マジョリティ・オブ・マイノリティ条件や積極的なマーケット・チェック等の公正性担保措置の推進を求める声が上がっています。
 研究会では、引き続き、見直しを実効的なものとしていく観点から、例えば、特別委員会の構成員となる独立社外取締役向けに、公正性担保措置の実施に関する投資家の声や、その他特に懸念が示されやすい論点の周知などを進めていく(投資家を講師としたセミナー動画の配信等)ことが考えられる旨が示されました。

【ご参考】企業行動規範の見直し(2025年7月)の概要
(規範の対象行為の見直し)
  • 上場会社がMBOや支配株主・その他の関係会社等による完全子会社化を決定する場合等について、意見入手および必要かつ十分な適時開示を義務付け
(規範の内容の見直し)
  1. 「少数株主にとって不利益でないことに関する意見」の在り方(入手先・内容)を見直し
  2. 株式価値算定の重要な前提条件に係る開示の拡充

(出所)研究会第9回(2026年1月26日開催)東証説明資料②「MBO等の非公開化の場面での少数株主保護」

グループ経営等に関する開示の推進

 2023年12月の「少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実」のお願いから3年目に入り、今後の方針として、企業の開示状況や実態を踏まえ、夏以降、情報開示の充実に向けたより実効的なアプローチを検討していくことが想定されています。
 まずは、親子関係にある企業について、開示がより進展するよう注力することとし、グループ経営や少数株主保護に関して特に重要と考えられるポイントを改めて整理し、ガバナンス報告書において開示すべき項目として具体的に明示することが示されました。
 あわせて、支配的な関係にある企業(持分法適用会社等)についても、より実効的な方策を検討することとし、親子関係にある企業と比較すると、問題意識や開示が進んでいない中で、段階的なアプローチが有効であると考えられるため、例えば、会社との関係性を投資家が判断できるような開示から推進していく案が示されました。

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務グループ
03-6747-0307(代表)

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