「経済安全保障と独占禁止法に関する事例集」の目的と背景
競争法・独占禁止法
目次
2025年11月20日、公正取引委員会、経済産業省、国土交通省は、「経済安全保障と独占禁止法に関する事例集」を公表しました。本事例集は、世界的に安全保障環境が複雑化する中で、重要物資の供給途絶や技術移転の強要など、我が国の自律性等が失われるリスクに備えるため、経済安全保障の観点から想定される、情報交換、共同行為、企業結合の3つのカテゴリーの事例について独占禁止法上の考え方をとりまとめたものです。
同業他社・サプライチェーン全体での企業間連携の必要性がいっそう高まる中、本事例集が産業界における法務機能強化の一助となるよう、本稿では、事例集策定をめぐる国内の議論の背景や代表事例、世界の流れ、そして今後の方向性などに言及しながら解説します。
「経済安全保障と独占禁止法に関する事例集」の目的
公正取引委員会、経済産業省、国土交通省は、2025年11月20日、「経済安全保障と独占禁止法に関する事例集」(以下「本事例集」といいます)を公表しました。経済安全保障の観点から実施する15の事例を、情報交換、共同行為、企業結合の3つのカテゴリーに分け、独占禁止法上の考え方をとりまとめたものです。事例を提供したのが経済産業省と国土交通省、それに対して独占禁止法上の考え方を示したのが公正取引委員会です。
安全保障環境が複雑化する中で、重要物資の供給途絶や技術移転の強要といった我が国の自律性 1・不可欠性 2 を喪失するリスクに対応するため、他国企業からの買収提案や技術提供に関する情報交換、重要原材料の共同調達、競争力強化のための事業再編といった同業他社・サプライチェーン全体での企業間連携がいっそう重要となっています。
一方で、産業界からは、独占禁止法のカルテル違反や企業結合規制への抵触のおそれがあるとの漠然とした懸念が指摘されていました。このため、産業界から寄せられた、経済安全保障の観点から想定される15の事例(下図参照)について、独占禁止法上の考え方を明らかにすることで、企業サイドの萎縮を緩和し、企業間連携を後押しすることが本事例集の目的です。
- 業務提携・買収提案に関する情報交換(事例①)
例:電子機器や高機能素材等 - 流出を防ぐべき技術範囲に関する情報交換(事例②)
例:電子機器や高機能素材等 - アンチダンピング申請に関する情報交換(事例③)
例:金属 - 市場が縮小する事業の集約化に関する情報交換(事例④)
例:自動車内燃機関部品 - 市場が縮小する事業の集約化に関する情報交換(事例⑤)
例:素材産業等
(2)共同行為
- 重要原材料の調達に関する情報交換及び共同調達(事例⑥)
例:他国からの輸入に依存している原材料(重要鉱物等) - 供給が限られる製品等の川下市場への配分(事例⑦ )
例:他国からの輸入に依存している原材料(重要鉱物等) - 競争力を維持・確保するための共同行為(事例⑧)
例:造船・舶用工業
(3)企業結合
- 寡占市場における企業結合(事例⑨)※事例①⑥⑦の発展事例
例:あらゆる新エネ関連製品や自動車、製造装置等に必要不可欠な部品 - 市場が縮小する事業に関する統廃合(事例⑩)※事例⑤の発展事例
例:素材産業等 - 過剰供給市場におけるポートフォリオ調整(事例⑪)
例:素材産業等 - 事業の安定性・持続性を考慮した業界再編(事例⑫)
例:あらゆる新エネ関連製品や自動車、製造装置等に必要不可欠な部品 - 競争力を維持・確保するための統合・合併(事例⑬)
例:造船・舶用工業 - 国内で寡占的な複数事業者の統合・合併(事例⑭)
例:造船・舶用工業
(4)その他
- 他社との共同研究開発の制限(事例⑮)
想定される対象分野
経済産業省が2025年5月30日に公表した「経済安全保障に関する産業・技術基盤強化アクションプラン(再改訂)」(以下「経済安全保障アクションプラン」といいます)において、業界団体ベース、また、サプライチェーン全体や同業他社間での戦略的対話を推進している中、本事例集では、具体的に、以下のような対象分野における企業間連携を想定しています。
なお、独占禁止法の考え方が適用される物資はこれらに限定されるものではなく、あくまで具体的なイメージがわきやすいよう、例示的に記載している点にご留意ください。
(1)我が国が技術優位性を持つ領域(電子機器、高機能素材等)について、技術流出の防止や国際競争力の向上のために必要な企業間連携
(2)海外依存度の高い原材料(重要鉱物等)について、安定的な供給確保に必要な企業間連携
(3)国内事業者の撤退や人手不足等により、海外への発注割合が上昇している産業(造船・舶用)について、国内のサプライチェーンの維持に必要な企業間連携
対象分野(例):我が国が技術優位性を持つ領域
たとえば、経済安全保障アクションプランでは、経済安全保障上の重要領域であるコンピューティング、クリーンテック、バイオテック、宇宙・防衛、基盤技術等について、「破壊的技術革新が進む領域」、「我が国が優位性を持つ領域」、「対外依存の領域」の考えの下、経済安全保障上重要な物資・技術等を特定しています。電子機器や高機能素材をはじめ、下図の中央の青色の列中に示されているものが、「我が国が優位性を持つ領域」です。

対象分野(例):海外依存度の高い原材料
たとえば、重要鉱物や永久磁石をはじめとした安定的な供給の確保が求められる物資については、経済安全保障推進法における特定重要物資に指定されています(指定物資は現時点で16、下図参照)3。
- 抗菌性物質製剤
- 肥料
- 永久磁石
- 工作機械及び産業用ロボット
- 航空機の部品(航空機用原動機及び航空機の機体を構成するものに限る。)
- 半導体及び集積回路
- 蓄電池
- インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機(入出力装置を含む。)を他人の情報処理の用に供するシステムに用いるプログラム
- 可燃性天然ガス
- 金属鉱産物(マンガン、ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、コバルト、ニオブ、タンタル、アンチモン、リチウム、ボロン、チタン、バナジウム、ストロンチウム、希土類金属、白金族、ベリリウム、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ジルコニウム、インジウム、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、レニウム、タリウム、ビスマス、グラファイト、フッ素、マグネシウム、シリコン、リン及びウランに限る。)
- 船舶の部品(船舶用機関、航海用具及び推進器並びに船舶の船体を構成するものに限る。)
- コンデンサー、ろ波器及び磁気センサー(磁気を検知するためのセンサーをいう。)
- ⼈⼯呼吸器
- 無人航空機
- 人工衛星
- ロケットの部品(推進装置及びロケットの機体を構成するものに限る。)
造船・舶用
経済安全保障上の重要産業であると位置付けられる造船・舶用分野については、4. で詳解します。
経済安全保障政策の概観
経済安全保障とは、主権と独立を維持し、国内・外交に関する政策を自主的に決定できる国であり続けるため、我が国の平和と安全や経済的な繁栄等の国益を経済上の措置を講じ確保することをいいます 4。国境を越えた自由な経済活動が進展したグローバル化の時代から、先端技術をめぐる大国間の競争の激化、関税や輸出規制といった国境措置の強化等、経済分野における各国の政策動向を否応なく意識せざるを得ない時代へと移りつつある中、これまで政府は、経済的手段を通じたさまざまな脅威への対応に必要な措置を講じてきました。
具体的には、2022年に成立した経済安全保障推進法を中心に、半導体や重要鉱物等の重要物資の安定供給確保や重要先端技術の研究開発支援等を進めるなど、我が国の自律性の向上、技術等に関する我が国の優位性・不可欠性の確保等に向けた幅広い取組を実施してきています。また、経済産業省においては、2023年から、国際連携・官民連携の下で産業支援策と産業防衛策を有機的に連携させるための施策の方向性を示した経済安全保障アクションプランを累次改訂・公表し、対応を進めてきました。
一方、2025年を通してAI・半導体など先端分野をめぐる大国間競争の激化と、その対立軸の中での重要鉱物等の輸出管理といった経済の「武器化」にかかるリスクが顕在化し、我が国を含む第三国への影響も深刻なものとなっています。このような中において、我が国の存立のために不可欠な前提である強い経済、そしてその経済力を支える産業・技術基盤を維持・強化すべく、政府による政策的な対応はもとより、官民および民民の連携をさらに進めていくことが非常に重要です。このため、現在、経済安全保障のさらなる推進に向けて、経済安全保障に関する総合的なシンクタンク機能の構築や官民連携のプラットフォームの機能の構築といった官民連携に資するものについても議論がなされています。
造船・舶用産業をめぐる状況
四方を海に囲まれた日本にとって貿易量の99%以上を占める海上輸送は必要不可欠であるところ、我が国の造船業は船舶の供給を通じて、エネルギー安全保障や経済安全保障を支える重要な産業であり、政府の戦略17分野の一つです。また、西日本を中心とする地域の経済を支える存在であるほか、我が国の艦艇・巡視船はすべて国内で建造・修繕されており、我が国の安全保障にも貢献しています。
他方で、中国・韓国との厳しい競争、人手不足等により、近年の国内造船所の建造量は、日本船主の発注量を下回っており、日本船主による他国の造船所への発注が増加しています。この状況を放置すれば、船舶建造の海外依存および供給途絶のリスクが拡大し、造船業ひいては海事産業群全体の存立が脅かされ、我が国の経済・社会に甚大な影響が生じるおそれがあります。
このような背景の下、造船業の国際競争力確保の観点から、企業間の協業連携促進の重要度が高まっており、2025年末に公表された「造船業再生ロードマップ」においても、業界内の協業連携の推進が重要な取組の1つと位置付けられているところです。2026年1月5日には、国内最大手である今治造船株式会社が、国内建造規模第2位のジャパンマリンユナイテッド株式会社を子会社化したところであり 5、今後もいっそうの協業連携が進むことが期待されています。
企業間連携の実現に向けて
企業間連携の必要性と具体例
(1)経済安全保障上の脅威・リスクへの対応
以上を踏まえ、本項では企業間連携の必要性を深掘りします。経済安全保障を取り巻く環境が複雑化する中で、日本企業は以下のような脅威やリスクに直面しています。
- 供給停止等の経済的威圧や取引への国家介入
- 技術移転の強要
- 国家紛争・自然災害・疫病等による重要物資の供給途絶
- 他国企業の高度技術獲得、さらに大規模な国家補助金等を背景とした過剰供給による競争過熱に起因する事業性の悪化
これらの脅威やリスクは、各社の企業経営のみならず、我が国の自律性や不可欠性を毀損させる可能性があるため、企業間の情報交換、共同行為、企業結合といった企業間連携による対応が必要となります。この点、経済産業省は経済安全保障アクションプランにおいて、業界団体ベース、また、サプライチェーン全体や同業他社間での戦略的対話を推進しています。

(2)本事例集の代表例
ここで企業間連携について、事例集に照らしながら具体例を挙げます。
【情報交換】
企業間の情報交換が有効なケースとしては、半導体等の高機能部素材や高機能電子機器関連の技術など、日本企業が世界的に優位性を持っている場合に、他国企業がその技術の獲得を企図した働きかけを行う場合が挙げられます(事例①②)。
他国企業は、日本企業単独1社に打診するのではなく、複数社に対して巧みに打診し、すなわち、A社に「同業他社のB社はすでに技術提携に前向きである」と伝えながら、B社にも「A社はすでに前向きだから、早く意思決定すべし」と伝え、A社とB社を互いに疑心暗鬼に陥らせるという手法を用いることがあります。1社でも技術提供に応じてしまうと、日本の優位性は一気に失われ、国内生産基盤が毀損されてしまうことになります。こうした状況においては、A社とB社、または所管官庁等も交えて、本当にそれぞれの会社が技術提携の打診を受けているかについて情報交換を行うことが有効となります。
【共同行為】
共同行為が有効なケースとしては、国際情勢の著しい変化等の外的ショックによる供給途絶が顕在化した緊急時の場合またはその蓋然性が高いと政府が認めた場合における重要鉱物等の原材料の共同調達とその配分が挙げられます(事例⑥⑦)。
特定の国からの輸入に依存している重要原材料について、国際情勢の著しい変化等の外的ショックにより当該国からの調達が途絶した場合、代替調達先を確保する必要があり、交渉力の観点から国内企業間での共同調達の必要性が高まります。また、重要原材料の調達途絶が顕在化したときに代替調達先を探すのでは時機を失する可能性があり、調達途絶リスクに備えた共同調達の必要性も考えられます。
加えて、代替調達が奏功してもこれまでの供給量には満たないということがあり、その場合に川下市場で生産量の偏りや供給途絶が発生しないためには、限られた重要原材料をサプライチェーン全体で効率的に配分することが必要な場合があります。
【企業結合】
企業結合が有効なケースについては、さまざまな場合が考えられます。たとえば、他国における製造設備への過剰投資・大量生産を受けて国内の稼働の落ち込み、生産停止・縮小、事業性悪化のリスクに直面している場合が想定されます。事業継続が困難となった場合に、事業継続の観点から再編を行うニーズや、海外需要の獲得のために再編して将来の大規模な投資につなげるといったニーズが考えられます。本事例集においても、素材産業(事例⑩⑪)、造船・舶用産業(事例⑬⑭)、新エネ関連製品や自動車・製造装置等に必要不可欠な部品産業(事例⑨⑫)などさまざまな業種が想定されています。
(3)産業政策の観点からの議論
企業間連携の必要性については、経済学者マリアナ・マッツカート氏が提唱する「ミッション・エコノミー」6 など、昨今の世界的な産業政策の存在感の高まりも背景にあるといえます。日本では、2021年から「経済産業政策の新機軸」を掲げていますが、脱炭素社会の実現や経済安全保障への対応など中長期の社会課題の解決が目的となり、いわゆるミッション志向となっていることが特徴とされます。そこでは、不確実性に対応すべく、官があらゆる政策ツールを総動員して、民間投資を促進し、官民での市場創出、まさに「官民共創」が求められます。
それに伴って投資スケールは大規模・長期的・計画的となるため、官民連携はもちろん、企業間連携もいっそう重要となりますが、その一方で、独禁法への抵触のおそれが惹起されやすくなっているといえます。現に、本事例集に先立ち、GXの推進に当たっては、「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」(いわゆるグリーンガイドライン)が公表されています(2024年4月24日改定)。
世界的な潮流における先行的な動きとして、EUでは、2024年9月に欧州委員会が公表した、欧州の競争力強化に向けた提言書(「欧州の競争力の未来」いわゆるドラギレポート)において、産業政策・競争政策・貿易政策の相互連携が掲げられました。競争政策の観点からは、“Revamping competition” として、イノベーションと将来の競争を重視すること、重要原材料の調達に関する競合他社との連携に向けたガイダンスの提供、競争当局においてセキュリティとレジリエンスいわゆる経済安全保障の観点を考慮事項としていっそう重視することなどに言及があります。すでにEU競争当局において企業結合ガイドラインの改定に着手しているところであり、引き続き検討動向を注視していきます。

企業の法務部門の過度な委縮
このように企業間連携の必要性が高まる一方、産業界からは、カルテル違反のおそれがあるとの漠然とした懸念を理由に企業間の対話を躊躇してしまう、あるいは、企業結合規制に抵触するおそれがあるとの漠然とした懸念などを理由に企業結合のオプションが検討の俎上に上りづらいとの声が複数聞かれました。その背景として、過去のカルテル違反の教訓が変容するなど、企業の法務部門が独占禁止法への抵触を過度に警戒して萎縮している傾向が指摘されました。
こうした中、経済産業省の「経済安全保障経営ガイドライン(第1版)」(2026年1月23日公表)では、外国による国境措置の強化による調達途絶リスクや自社の競争優位性を脅かす技術流出リスクなど、国内法令の遵守のみでは対応できない経済安全保障リスクが高まっている状況にあって、企業には、自社を取り巻くリスクを適切に把握し対応する「リスクマネジメント」の体制の整備はもとより、経済安全保障をめぐる環境変化を事業機会と捉えて、自社の競争力強化に果敢につなげていく戦略の構築が重要であり、攻めの姿勢が求められると明記されました。今後、企業の法務部はこのような攻めの姿勢を支える法務機能を発揮していくことがいっそう期待されます。
この点、経済産業省競争環境整備室では、攻めと守りの法務機能のあり方について、2019年に「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書~令和時代に必要な法務機能・法務人材とは~」を公表しており、いま一度、こうした考え方を普及したいと考えます。同報告書では、法務機能を「ガーディアン」(守り)と「パートナー」(攻め)に大別し、パートナー機能を、さらに「クリエーション」と「ナビゲーション」の2つの機能に分類したうえで、事業の創造、すなわち新たな価値の創造に貢献する法務のあり方を提唱しています(下図)。

(令和元年11月19日)をもとに作成
具体的に、「ガーディアン機能」とは、「法的リスク管理の観点から、経営や他部門の意思決定に関与して、事業や業務執行の内容に変更を加え、場合によっては、意思決定を中止・延期させるなどによって、会社の権利や財産、評判などを守る機能」です。
「パートナー機能」とは、「経営や他部門に法的支援を提供することによって、会社の事業や業務執行を適正、円滑、戦略的かつ効率的に実施できるようにする機能」です。
「パートナー機能」はさらに、実現可能な範囲を広げる「クリエーション機能」と実現可能な範囲内での最大化を目指す「ナビゲーション機能」に分化されます。
これらの機能はいずれも一体不可分であり、リーガルリスクをただ回避するだけではなく、ルールの捉え方や視点を変えることで、新たなビジネスの創出、市場の獲得が可能となるという発想の下、経済安全保障への対応を含めて、経営と法務が一体となった戦略的経営を実現することがあらためて重要となっています。
さいごに
さいごに、本事例集の検討経緯を振り返りながら本稿を概括します。
2025年4月15日に開催された「第6回経済安全保障に関する産業・技術基盤強化のための有識者会議」において、「経済安全保障の観点から実施する行為(事業者間の情報交換、連携、再編等)につき独占禁止法上の基本的な考え方を整理し、産業界に周知を行う必要がある」との問題提起がなされたことが、検討の起点となりました。
その後、経済産業省は、国土交通省とも連携して産業界から寄せられたさまざまな事例を取りまとめ、公正取引委員会への相談を行いました。経済産業省競争環境整備室が事務局を務めた「経済安全保障と競争政策に関する研究会」(議事非公開)7 で事例について議論を行い、2025年11月20日に開催された「第8回経済安全保障に関する産業・技術基盤強化のための有識者会議」での活発な議論を経て、本事例集は公表されるに至りました。
産業界へのすみやかな周知の観点から、同年12月12日に、経済産業省と公正取引委員会は合同で「第4回変革の時代における競争政策セミナー」を開催し、情報発信を行っています。引き続き、説明会対応など積極的に行っていきたく、業界団体や企業、法務関係者などの方からお気軽にお声がけいただければ幸いです 8。
本事例集の検討プロセスでは、公正取引委員会はもちろん、関係省庁、また、民間事業者、研究者や弁護士等の有識者など、多岐にわたる皆さまに多大なるご尽力を賜り、5-1で言及されたとおり、まさに「官民共創」の時代であることを実感した次第です。また、自由民主党政務調査会の経済安全保障推進本部による令和7年12月16日付「新たな安全保障環境において求められる経済的措置に関する提言」内の「Ⅲ. 経済安全保障政策の更なる展開 ⑷経済安全保障と競争政策」に下記言及があります。引き続き、変革の時代において、海外動向も注視しながら、前例にとらわれることなく必要な政策の企画立案を推進していきます 9。
- 経済安保の観点から必要な情報交換、共同調達、事業再編等を進めるため、事例集の周知・啓発などに努めること、それでもなお解決できない問題がある場合には、独禁法の運用、制度の在り方を検討すべきこと
- 国内における産業政策当局、民間事業者などを集めた連絡会議を組成し、官民での情報連携を促進すること、同志国間でのサプライチェーンの強化・維持を行いやすい環境整備を行う観点から、各国の競争当局及び産業政策当局への働きかけ、連携を深めること
出典:自由民主党政務調査会の経済安全保障推進本部「新たな安全保障環境において求められる経済的措置に関する提言」(令和7年12月16日)
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我が国の国民生活や社会経済活動の維持に不可欠な基盤を強靱化することにより、他国への過度な依存を回避し、国民生活と正常な経済運営を実現すること。 ↩︎
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国際社会全体の産業構造の中で、我が国の存在が国際社会にとって不可欠であるような分野を戦略的に拡大し、我が国の長期的・持続的な繁栄や国家安全保障を確保すること。 ↩︎
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「サプライチェーン強靱化の取組(重要物資の安定的な供給の確保に関する制度)」(内閣府ウェブサイト)参照。 ↩︎
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前掲「経済安全保障アクションプラン」参照。 ↩︎
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公正取引委員会「(令和7年11月18日)今治造船株式会社によるジャパンマリンユナイテッド株式会社の株式取得に関する審査結果について」 ↩︎
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Mazzucato, M. (2021). Mission economy: A moonshot guide to changing capitalism. Penguin UK. ↩︎
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議事非公開であるが、同研究会委員は下記のとおり(敬称略)。
大橋弘(東京大学大学院 経済学研究科 教授)、川島富士雄(神戸大学大学院法学研究科 教授)、川濵昇(追手門学院大学法学部 教授)、伊永 大輔(東北大学大学院法学研究科 教授)、鈴木一人(東京大学公共政策大学院 教授・国際文化会館 地経学研究所長)、角南篤(公益財団法人笹川平和財団 理事長)(座長)、高宮雄介(森・濱田松本法律事務所外国法共同事業 パートナー弁護士)、長澤哲也(大江橋法律事務所 パートナー弁護士)、中山龍太郎(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 執行パートナー弁護士)。 ↩︎ -
ご依頼は経済産業省産業政策局競争環境整備室(bzl-kyoso@meti.go.jp)まで ↩︎
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執筆に関与した他のチームメンバーは次のとおり。
【経済産業省経済産業政策局競争環境整備室】総括補佐 二宮翔平、室長補佐 川人敏志、室長補佐・弁護士 辻映穂、係長 内田志歩、係員 矢野悠太、【同貿易経済安全保障局経済安全保障政策課】総括補佐 内野雅彦、課長補佐 三井準(2025年11月末日まで)、課長補佐・弁護士 國井耕太郎、係長 吉田直樹、係員 茂里佳加(2025年12月末日まで)、【同製造産業局サプライチェーン強靭化政策室】総括補佐 伊藤袈斐、室長補佐 吉永勝己、係長 吉本太智、調査員 岩﨑史明、【国土交通省海事局船舶産業課】総括補佐 古賀定治、船舶産業技術活用推進官 髙橋信行、船舶流通推進官 國貞裕映、係員 柳本尚紀。 ↩︎
経済産業省 経済産業政策局 競争環境整備室長
経済産業省 貿易経済安全保障局 経済安全保障政策課長
経済産業省 大臣官房参事
経済産業省 製造産業局 サプライチェーン強靭化政策室長
国土交通省 海事局 船舶産業課長