TPPが中小企業を後押し! 海外展開補助金の活用のススメ

国際取引・海外進出
本澤 順子弁護士 木下・脇田虎ノ門法律事務所

目次

  1. 中小企業の海外展開の動向
    1. 拡大してゆく海外展開
    2. 中小企業における海外展開の傾向
  2. 日本再興戦略と政府目標
    1. 日本再興戦略における政府の目標
    2. 各種機関によるハンズオン支援体制
  3. TPP対応補助金(平成27年度補正予算事業)
    1. TPPで広がる海外展開の可能性
    2. TPPを活用した海外展開の支援施策

 昨年の師走に流れた2015年度補正予算の報道は、皆様の記憶にも新しいことと思います。例えば2015年12月16日の毎日新聞のオンラインニュース(以下、要旨抜粋)では、「経済産業省は、2015年度補正予算案に環太平洋パートナーシップ協定(TPP)対策費として約2,000億円を計上。TPP参加国の関税撤廃や規制緩和を活用した中小企業の海外展開支援が主な柱となる。自治体や独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)などが連携し、海外事情に詳しい専門家を中小企業約4,000社に派遣する。」という記事が載っています。

 あまりに金額と規模の大きな話でもあり、自分とは遠い世界のことと思われた方も少なくないかもしれません。しかし、中小企業の皆さんであれば、これら予算事業による中小企業補助金を上手に活用し、これを海外進出の足掛かりとすることもできるのです。

中小企業の海外展開の動向

拡大してゆく海外展開

 我が国の人口減少に伴い国内産業は飽和傾向にあり、一方で新興国の経済は目覚ましい成長を遂げつつあります。このような世界経済の動向を見て、我が国の中小企業の中には、海外展開を進める企業が増加しつつあります。なお、本稿では、「海外展開」という言葉については、政府見解と同様、貿易型、直接投資型の両方を含んだ広義の意味で使うことにします。
 経産省の統計によれば、近時、中小企業の中でも、比較的手軽な貿易型のみならず、本腰を入れて取り組む必要のある直接投資型の海外展開に果敢に挑戦し、海外に子会社を設立する企業も急増している傾向にあります

海外の日系現地法人数をそれに占める親企業が中小企業の割合の推移

引用元:中小企業庁「中小企業の海外事業再編事例集(事業の安定継続のために)」(平成27年6月発行)75頁

中小企業における海外展開の傾向

 このグラフをご覧になればわかるとおり、海外の日系現地法人のうち、親会社が中小企業である割合は22.2%、約5分の1であり、皆様の想像よりは、中小企業の比率が高いかもしれません。さらに、従来、海外展開を積極的に行ってきた製造業に加え、外食・小売・サービス業も、リスクをとり、海外展開に取り組み始めているというのが近時の傾向です。

 これまでは大企業とのつながりの中で、サプライヤーである中小企業が一緒に海外へ出ていくというのが主流でした。近時は、今まで海外に関心を持っていなかった中小企業も含め、ビジネスを広げる上での選択肢の一つとして、自発的な海外展開を志向する企業が増加しており、今後もますます増えると考えられます。

 我が国の人口は 2011年から減少に転じ、今後もさらに減少することが予測されるなか、中・長期的観点で国内市場の拡大を期待することは難しくなっています。 加えて、コストダウンのために海外に生産拠点を設けよう、消費の旺盛な海外マーケットを取り込みたい、という意欲を持つ中小企業が増えています。たとえば、地方で行列のできるラーメン屋が、次の展開先として東京・大阪などを選ばず、タイに店を構えるといった事例が、今後は増えるのではないでしょうか。

日本再興戦略と政府目標

日本再興戦略における政府の目標

 2013年6月に策定された政府の日本再興戦略では、中小企業について「5年間で新たに1万社の海外展開を実現する」という目標を掲げており、政府では、積極的に海外展開支援を推進しています。

 各種統計調査によれば、中小企業のうち、製造業で直接輸出を行っている企業は約6,300社、海外に子会社を持つ企業は約5,600社あり、政府では、現在の海外展開企業数は約1万社(直接輸出と直接投資の両方を行っている企業を一定数除いた後の概数)と推定しています。そうすると、日本再興戦略では「新たに1万社」ですから、2017年度末までのおおむね5年間で、現在の海外展開企業数を倍増させることを政府目標に掲げていることになります。

各種機関によるハンズオン支援体制

 前記のとおり、中小企業の中に海外展開に前向きな企業が増えているとはいえ、依然として物理的にも精神的にもハードルが高く、海外展開のための「はじめの一歩」を踏み出すのに躊躇してしまう傾向があることは否めません。また、海外展開に際しては、海外現地の事情を知るとともに、リスクなどを理解し、慎重に事業を進めていく必要があります。

 このため、中小企業庁が音頭をとって、各地の自治体、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)やJETRO等の機関が集結して、中小企業に寄り添ってきめ細かく相談に応じるための支援体制である、「ハンズオン支援体制」を確立しています。そして、中小企業庁を中心に、手厚い海外展開補助金が設けられています。

 中小企業庁関連の海外展開に関する施策情報、補助金情報については、「ミラサポ-未来の企業★応援サイト」をご参照ください。

TPP対応補助金(平成27年度補正予算事業)

TPPで広がる海外展開の可能性

 従来から話題となっているTPPについてはご存知の方も多いと思いますが、これは、日本、アメリカ、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの12か国間で、関税の撤廃を進めて貿易の活性化を図る多国間協定を意味します。12か国の国内総生産(GDP)は、世界全体の4割近くを占めると言われています。そして、TPPの発効に伴ってモノの移動にかかる関税が撤廃、削減されることで、各国とも輸出入が拡大するとの期待があります。

TPPを活用した海外展開の支援施策

 そこで、中小企業庁では、これを後押しすべく、「TPPを活用した中小企業の海外展開支援」を2015年補正予算事業の一つの柱としています。

 海外展開はハードルの高い取り組みではありますが、海外展開支援施策を調査し、うまく補助事業を活用することで、自社での経済的な負担を軽くし、また専門家からの支援を受けるチャンスを手に入れることができるのです。

 ここで、前提として、補助金の対象となる中小企業を見ておきたいと思います。これは、中小企業基本法2条1項によって定義づけられています。

中小企業の定義

業種分類 中小企業基本法上の定義
①製造業、建設業、運輸業その他の業種(②〜④を除く) 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
②卸売業 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
③小売業 資本金の額又は出資の総額が5000万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
④サービス業 資本金の額又は出資の総額が5000万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

(※なお、中小企業よりもやや大きめの、いわゆる中堅企業でも利用できる補助事業もあります。ご自身の会社が補助金を活用できるかについては、個別の補助事業についての応募要項をご確認ください。)

海外展開戦略等支援事業

 TPPの効果を最大限活用するため、中堅・中小企業の海外展開を後押しすべく、関係各機関がオールジャパンの体制を構築し、総合的な支援を行っていくための事業です。
 具体的には、JETROを中心に、国、自治体、支援機関等がメンバーとなって、中小企業等の新市場開拓の総合的支援体制「新輸出大国コンソーシアム」を構築し、専門家が約4,000社の中小企業等に技術開発、戦略策定、市場獲得までを総合的に支援することを目指す事業です。その具体的な支援内容については、現在も策定中です。

参照:新輸出大国コンソーシアム(JETRO)

海外ビジネス戦略推進支援事業

 中小機構にて実施されている事業で、中小企業が行う海外市場獲得に向けた実現可能性調査(FS、フィージビリティスタディ)や取引体制の整備を支援する事業です。TPP交渉参加国の市場獲得を目指す中小企業の海外展開に向けた戦略策定や販路開拓につなげるため、実現可能性調査、Webサイトの外国語化等を支援します。
 実現可能性調査については、具体的には、以下のような手厚い支援が行われます。

  1. 現地調査に備え、事前の事業計画策定支援
  2. 現地調査時に利用する資料の翻訳
  3. 国内で事前に市場調査を実施
  4. 現地調査を実施する際に専門家が同行、現地でのアドバイス
  5. 現地調査で入手した情報に基づき、事業基本計画の修正、見直し等のアドバイス

 このような支援を受けるためには、中小企業は、締め切りまでに申請をし、中小機構から採択してもらうことが必要となります。

 専門家が、現地調査の前、現地調査中、そのあとのフォローアップまでずっと寄り添って支援してくれる手厚い事業であるだけに人気が高く、一般に、採択率は3分の1から5分の1程度といわれています。

 採択されるためには、申請者自身が自社の現状をきちんと把握し(把握する努力をしようとし)、海外展開への明確な目的を持ち、それをきちんと申請書に記載することが必要です。

 これまでも、TPP対策としてではありませんが、年に数回公募が行われてきており、直近では3月31日まで2次採択が行われていました。申請を希望される方は中小機構のホームページや関連団体から公表される情報を適宜ウォッチされる事をお勧めします。

参考:海外ビジネス戦略推進支援事業(F/S支援を含む)

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