東京証券取引所「四半期開示の見直し後の四半期決算短信の開示動向」を公表

コーポレート・M&A

目次

  1. 四半期開示の見直しの経緯
    1. 見直しの背景
    2. 見直しを受けた実務指針の概要
  2. 四半期開示の見直し後の四半期決算短信の開示動向
    1. 開示動向の概要
    2. 第1・第3四半期決算短信の開示タイミングとレビューの有無
    3. 市場区分別・時価総額別のレビューの状況
    4. 投資者ニーズに応じた開示の動向

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.222」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 9月5日、東京証券取引所(以下「東証」)は、2024年4月1日施行の四半期開示の見直し後の制度に基づき開示された2025年3月期の第1四半期および2024年9月期の第3四半期決算短信について、見直し後の開示動向を公表しました。

四半期開示の見直しの経緯

見直しの背景

 2024年4月1日以後に開始する四半期から、四半期報告書が廃止され、四半期決算短信への一本化がなされています。この見直しの背景としては、金融庁「金融審議会『ディスクロージャーワーキング・グループ報告』(令和3年度)」(2022年6月)における、次の指摘・提言が挙げられます。

  • 四半期決算短信と四半期報告の内容面での重複や開示タイミングの近接が指摘されており、エンフォースメント等を工夫することにより、両者の「一本化」を通じたコスト削減や開示の効率化が可能。
  • 「一本化」については、四半期報告書に集約させる方法と四半期決算短信に集約させる方法とが考えられるが、開示タイミングや、開示姿勢の後押しが重要であるとの観点等から、四半期決算短信へ「一本化」することが適当。

(出所:金融庁「金融審議会『ディスクロージャーワーキング・グループ報告』(令和3年度)」(2022年6月)より三菱UFJ信託銀行作成)

見直しを受けた実務指針の概要

 前掲1-1の指摘・提言を受け、東証は、「四半期開示の見直しに関する実務検討会」における検討を経て、2023年11月に「四半期開示の見直しに関する実務の方針」を公表、上場制度の整備を行うこととしました。その概要の一部は次のとおりです。

四半期開示の見直しに関する実務の方針等の概要(一部)
1Q・3Q 決算短信の開示内容
  • 四半期報告書で開示されていた事項のうち、投資者の要望が特に強い事項として、「セグメント情報等の注記」、「キャッシュ・フローに関する注記」を、四半期決算短信に追加し、開示を義務付け。
  • 開示が義務付けられる事項以外についても、適時開示ガイドブックにおいて投資判断に有用と考えられる情報を例示し、自発的な開示を促す。
1Q・3Q 決算短信の
開示タイミング
  • 決算の内容が定まり次第開示が求められる。なお、四半期末から45日を経過
    する場合にはその状況について適時開示が求められる。
  • 「決算の内容が定まった」時点は、レビューを義務で受ける場合は原則レビューが完了した時点。レビューを任意で受ける場合は各上場会社において判断する(レビューが完了した時点と判断することでも差し支えない。)。
1Q・3Q 決算短信のレビューの一部義務付け
  • 監査人によるレビューは原則任意。ただし、会計不正等により財務諸表の信頼性確保が必要と考えられる場合、レビューを義務付け。

(出所:東証「四半期開示の見直しに関する実務の方針」(2023年11月22日)より三菱UFJ信託銀行作成)

 これらを踏まえ、東証は、2024年3月28日に有価証券上場規程等の改正を行い、「決算短信・四半期決算短信作成要領等」を2024年4月に改訂・公表しました。

四半期開示の見直し後の四半期決算短信の開示動向

開示動向の概要

 東証は、2024年6月30日に終了する第1四半期又は第3四半期に係る決算発表を、四半期末後45日以内(同年8月14日まで)に行った上場内国会社2,438社を対象に、開示動向を集計しました。
 開示動向の概要は次のとおりです。

開示タイミング
  • 第1・第3四半期決算短信の開示所要日数は全体で37.0日(前年同四半期比+0.4日)
  • 前年同四半期比で5日以上開示が遅くなった上場会社は全体の7.5%
    任意レビュー実施会社においては9.4%
レビューの状況
  • 任意レビューを実施した上場会社は全体の23.7%
  • そのうち、二段階開示(※)を行った上場会社は10.7%
  • 市場区分別では、プライム市場における任意レビューの実施比率が最も高く(27.3%)、次いでスタンダード市場、グロース市場の順
投資者ニーズに
応じた開示
  • キャッシュ・フロー計算書(以下「CF計算書」という。)を開示した上場会社は1割台半ば
  • IFRS任意適用会社では、CF計算書の開示を取りやめた会社が11.7%
  • 経営成績等の概況において、四半期報告書での記載事項を任意に記載した上場会社もみられた

※レビュー未了の第1・第3四半期決算短信を先行開示し、レビュー完了後に再度第1・第3四半期決算短信を開示する方法
(出所:東証「四半期開示の見直し後の四半期決算短信の開示動向」より)

第1・第3四半期決算短信の開示タイミングとレビューの有無

 開示所要日数とレビューの状況については、次のとおりです。

開示所要日数とレビューの状況

(出所:東証「四半期開示の見直し後の四半期決算短信の開示動向」より)

 任意レビューを実施した会社は577社(23.7%)となりました。なお、任意レビューを実施する場合は、開示の速報性等を重視して、レビュー未了の第1・第3四半期決算短信を先行開示し、レビュー完了後に再度第1・第3四半期決算短信を開示する二段階開示が認められているところ、実際に任意レビューを実施した会社のうち、二段階開示を採用した会社は62社(10.7%)でした。

市場区分別・時価総額別のレビューの状況

 市場区分別・時価総額別のレビューの状況は、次のとおりです。

市場区分別のレビューの状況

(出所:東証「四半期開示の見直し後の四半期決算短信の開示動向」より)

 プライム市場における任意レビューの実施比率が最も高く(27.3%)、また同市場においては、時価総額5,000億円以上1兆円未満の会社では30.2%、1兆円以上の会社では40.2%と、時価総額の大きい会社ほど任意レビューを実施していることがうかがえます。

投資者ニーズに応じた開示の動向

 投資者ニーズに応じた開示の具体例としては、「四半期開示の見直しに関する実務の方針」において、CF計算書や、財務諸表に係る注記(BS/PL関係の注記、金融商品/有価証券/デリバティブ関係の注記、重要な後発事象の注記等)、その他経営成績等の投資判断に有用と考えられる事項(経営管理上重要な指標や設備投資・研究開発費等)が示されていました。
 東証の集計によれば、全体の1割台半ばの会社がCF計算書を開示していた他、経営成績等の概況において、これまでは四半期報告書において記載していた研究開発費や設備投資額の開示を行う事例もみられたようです。

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務グループ
03-6214-7391(代表)

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