景表法の確約手続の概要とその動向〜最新の公表事例を踏まえて〜

競争法・独占禁止法 更新
嶋村 直登弁護士 森・濱田松本法律事務所外国法共同事業

目次

  1. 確約手続とは
  2. 確約手続の対象
    1. 要件該当性の判断基準・考慮要素
    2. 手続の対象外となる場合
  3. 確約手続の流れ
  4. 確約手続の相談および開始
    1. 確約手続通知の受領
    2. 確約認定申請
  5. 確約計画の作成・申請
    1. 確約計画の認定申請手続
    2. 確約措置の要件と典型例
  6. 確約計画の認定または却下
    1. 確約計画の審査
    2. 確約認定の効果
  7. 確約計画の認定に関する公表
  8. 確約手続についての実務対応ポイント
    1. 確約手続に応じるべきか
    2. 確約手続の内容をどうするか

 景表法の改正法が2024年10月1日から施行されました。この改正により、優良誤認・有利誤認表示に対する刑事罰の導入などがなされましたが、中でも注目されているのが、「確約手続」の導入です。

 本稿執筆時点(2026年5月20日)で、確約手続が公表された事例は、9件あります。

 本稿では、確約手続を、確約手続に関する運用基準パブリックコメント、消費者庁の担当者の説明および質疑応答の内容、公表された事例、そして、景表法違反被疑事案について企業を代理して消費者庁と交渉した著者の実務経験も踏まえて、解説していきます 1

 本稿で用いる法令等の略称は以下のとおりです。

略称 正式名称・参照元
景表法または 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)
改正法 不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(令和5年法律第27号)
確約手続府令 不当景品類及び不当表示防止法の規定に基づく確約手続に関する内閣府令
(令和6年内閣府令第55号)
運用基準 消費者庁「確約手続に関する運用基準」(令和6年4月18日)
パブコメ 消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)等に関する意見募集の結果について」(令和6年4月18日)

確約手続とは

 確約手続は、景表法違反の疑いのある行為をした事業者に、自主的に是正措置計画(当該行為がすでになくなっている場合には、影響是正措置計画)を申請してもらう代わりに、その計画が認定されたときは、行政処分を免除する制度のことです(法第2章第6節(26条以下))。

 確約手続は、消費者庁のより効率的な法執行を意図して導入されたものです。そして、因果関係は必ずしも明らかでないものの、確約手続の導入の前後で、措置命令の件数が減っています。

2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
措置命令の件数 33件 41件 41件 44件 26件
確約計画の認定件数 1件

消費者庁「令和6年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組」(令和4年5月29日)、同「令和4年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組」(令和5年9月22日)を基に作成


 是正措置計画と影響是正措置計画を「確約計画」と総称します。影響是正措置計画の手続(法30条以下)は、是正措置計画と同様であるため、以下では原則として是正措置計画を念頭に置いて説明します。

確約手続の対象

 景表法は、表示規制および景品類規制に「違反する行為があると疑うに足りる事実がある場合において、その疑いの理由となった行為」について、内閣総理大臣が「一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択を確保する上で必要があると認めるとき」に、確約手続通知を行うことができると規定しています(法26条)。

要件該当性の判断基準・考慮要素

 この「一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択を確保する上で必要があると認めるとき」について、運用基準では、次のように説明されています(運用基準5)。

個別具体的な事案ごとに、確約手続により問題を解決することが一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択を確保する上で必要があるか否かを判断する。

 具体的には、その判断は、違反被疑行為を事業者が早期に是正することで、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を迅速に確保し、消費者庁と事業者が協調的に問題解決を行う領域を拡大するという確約手続の趣旨を踏まえ、次の①の要素を考慮しつつ、②の観点から判断されます。

  1. 考慮要素
    • 違反被疑行為がなされるに至った経緯(事業者が講ずべき景品類の提供および表示の管理上の措置の遵守の状況(法22条1項に規定する義務の遵守の状況を含む)
    • 違反被疑行為の規模および態様
    • 一般消費者に与える影響の程度ならびに確約計画において見込まれる内容
    • その他当該事案における一切の事情
  2. 観点
    • 個別具体的な事案に応じて、違反被疑行為等を迅速に是正する必要性
    • 違反被疑行為者の提案に基づいた方がより実態に即した効果的な措置となる可能性

手続の対象外となる場合

 景表法は、措置命令または課徴金納付命令に係る弁明の機会の付与の通知(行政手続法30条、景表法15条1項)を行った事案については、確約手続の対象から除くことを定めています(法26条但書)。
 加えて、運用基準では、次の(1)(2)の場合については、「違反行為を認定して法的措置をとることにより厳正に対処する必要がある」ため、確約手続の対象から除外することを規定しています。

(1)10年以内に法的措置を受けたことがある場合

 過去10年以内 2 に、景表法に基づく措置命令を受けた事業者(法的措置が確定している場合に限ります)は、確約手続の対象から除外されます(運用基準5(3))。
 これは、たとえば、過去の違反が優良誤認表示に関するものであって、今回の調査対象が有利誤認表示に関するものであった場合のように、異なる類型の違反行為であったとしても、確約手続の対象から除外されます。

(2)悪質かつ重大な違反被疑行為と考えられる場合

 運用基準では、「違反被疑行為者が、違反被疑行為とされた表示について根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っているなど、悪質かつ重大な違反被疑行為と考えられる場合」についても、確約手続の対象から除外されると規定されています(運用基準5(3))。
 この「悪質かつ重大な違反被疑行為と考えられる場合」は、パブコメによると、違反被疑行為者に、違反被疑行為についての故意がある場合のほか、故意と同視し得る重大な過失が認められる場合が含まれる、と解説されています(パブコメNo.17、18)。

 確約手続が認定された事例の中には、事業者は、当該表示が実際の商品・役務または取引条件と異なること、もしくは、事業者の表示であることが判別困難な表示であることを認識していた、または、容易に認識し得たのではないかと思われる事案も含まれています。したがって、故意または重大な過失については、比較的柔軟に運用されているようです。

確約手続の流れ

 景表法の確約手続の流れは、以下のとおりです。

景品表示法の確約手続の流れ

景表法の確約手続の流れ

確約手続の相談および開始

確約手続通知の受領

 確約手続は、消費者庁から、事業者に対して、確約手続の対象となることを知らせる通知(確約手続通知)が行われることで開始されます(法26条)。
 確約手続通知には、以下の内容が記載されます(法26条各号)。

  • 当該疑いの理由となった行為の概要
  • 違反する疑いのある法令の条項
  • 確約手続の認定申請をすることができる旨

 景表法には明示されていませんが、実際の運用としては、事業者のもとに何の前触れもなく突然確約手続通知が送られてくるわけではありません。この点は、パブコメでも、まず違反被疑行為についての調査の開始が違反被疑行為者に対して通知され、確約手続通知は、その調査が開始された後に行われると説明されており(パブコメNo.11)、実際の運用もそのようになっているようです。

確約認定申請

 さらに、消費者庁の担当者によると、違反被疑行為に関する調査の過程で、確約手続通知に先立って、消費者庁と事業者側で事前に確約手続についての協議が行われ、ある程度の見通しが立った後に、事業者に対して確約手続通知が行われる 3 という運用が想定されているとのことであり、実際の運用もそのようになっているようです。

確約計画の作成・申請

確約計画の認定申請手続

 確約手続通知がなされた場合には、事業者は、確約計画の認定の申請確約認定申請)をするか否かを選択することになります。この点、確約認定申請を行うべきかどうかに関する実務上のポイントについては、後記8で説明します。
 なお、運用基準によると、「確約認定申請をしなかったとしても、その後の調査において、確約認定申請をしなかったことを理由として被通知事業者が不利益に取り扱われることはない」と規定されています(運用基準6(1))。

(1)確約認定申請の期日

 確約認定申請は、確約手続通知の日から60日以内に行うことが必要です(法27条1項、31条1項)。
 ただし、確約手続通知の日から60日以内であれば、認定申請書および認定申請添付資料を変更することが可能です(確約手続府令5条、15条)。また、確約認定申請をした日から確約認定申請に係る処分がされるまでの間、認定申請添付資料のうち、消費者庁が確約計画の認定をするため参考となるべき資料の追加提出をすることができます(確約手続府令7条、15条)。

 なお、60日以内であれば、認定申請書の変更が可能であるといっても、たとえば、当初、必要最小限度の是正措置または影響是正措置(以下「確約措置」と総称します)を記載した認定申請を行い、その後に、消費者庁の反応を見ながら、認定が得られるようになるまで、少しずつ小出しに措置の内容を追加または拡充していく形で認定申請書を変更することは想定されておらず、確約手続通知前に消費者庁と協議した内容を踏まえて認定申請を行うことが求められるようです。

(2)認定申請書の書式および添付書類

 是正措置計画の認定申請の書式は、次のとおりです。

認定申請書の書式および添付書類

出所:確約手続府令の様式第1号


 この申請書に併せて、次の資料の添付が求められます(確約手続府令4条2項各号)。

  • 是正措置が疑いの理由となった行為およびその影響を是正するために十分なものであることを示す資料
  • 是正措置が確実に実施されると見込まれるものであることを示す資料
  • その他参考となるべき資料

 なお、運用基準によると、「確約認定申請を却下した場合若しくは確約計画の認定を取り消した場合又は申請者が確約認定申請を取り下げた場合」には、「申請者から提出された資料を返却することはせず、かつ、法的措置をとる上で必要となる事実の認定を行うための証拠として使用することもあり得る」とされています(運用基準10(3))。
 したがって、一般論として、たとえば、違反の重大性を示す資料、違反を認識していたことを示す資料、他にも問題となり得る表示がなされていたことを示す資料の提出には、慎重な検討が必要です。

確約措置の要件と典型例

(1)確約措置の2つの要件

 景表法は、是正措置計画が次の要件①と要件②の両方を満たすことを求めています(法27条3項各号)。

要件① 措置内容の十分性:是正措置が疑いの理由となった行為およびその影響を是正するために十分なものであること

要件② 措置実施の確実性:是正措置が確実に実施されると見込まれるものであること

 この規定はとてもあいまいであり、運用基準でも、確約措置の内容は、被通知事業者が個々の事案に応じて個別具体的に検討すると説明されています(運用基準6(3)ア)。
 一方で、運用基準では、次のとおり相応の具体的な考え方も示しています。

  • 「措置内容の十分性」の考え方
     上記の要件①「措置内容の十分性」については、運用基準では、「過去に法的措置で違反行為が認定された事案等のうち、行為の概要、適用条項等について、確約手続通知の書面に記載した内容と一定程度合致すると考えられる事案の措置の内容を参考にする」と規定されています(運用基準6(3)ア(ア))。

  • 「措置実施の確実性」の考え方
     上記の要件②「措置実施の確実性」については、運用基準では、「確約措置が実施期限内に確実に実施される」と判断できることが必要とされています(運用基準6(3)イ)。
     なお、措置実施の確実性を満たすために、確約措置の実施期限を設定する必要があります(法27条2項2号、31条2項2号)。

(2)確約措置の典型例

 運用基準では、「典型的な確約措置」を、①必要な措置、②重要な事情として考慮する有益な措置、③有益な措置の3つのカテゴリーに分けて紹介しています(運用基準6(3)イ)。特に、このうち、①必要な措置として紹介されている措置は、確約認定申請時点ですでに実施している場合を除いて、事実上、すべての事案において求められるものと考えられます。
 この確約措置の典型例を表にまとめると、以下のとおりとなります。

運用基準で紹介されている典型的な確約措置のまとめ

措置内容の十分性 措置実施の確実性
① 必要な措置
  • 違反被疑行為の取りやめ(ア)
  • 一般消費者への周知徹底(イ)
  • 再発防止措置(ウ)
  • 履行状況の報告(エ)
② 有益な措置
(重要な事情として考慮)
  • 一般消費者への被害回復(オ)
③ 有益な措置
  • 契約変更(カ)
  • 取引条件の変更(キ)

※(ア)〜(キ)の番号は運用基準6(3)イに準じる
※措置実施の確実性に関する典型例は、運用基準では、必要な措置しか紹介されていない


 なお、運用基準では、「確約措置がこれらに限られるものではない。また、事案によっては、単独の確約措置で認定要件に適合する場合もあるが、複数の確約措置を組み合わせなければ認定要件に適合しない場合もある。どのような確約措置を組み合わせれば認定要件に適合することとなるのかは、事案によって異なる」という説明もなされています(運用基準6(3)イ)。
 この点は、実際の確約手続の事例を参照する限り、事業者側が自由な発想で提案できるというよりは、ある程度、認定してもらうための「型」は決まっているようです。

(3)確約手続が利用された事例

 これまで、実際に確約手続が利用された公表事例をまとめると、以下のとおりです(2026年5月20日時点)。

公表日 表示の内容 違反が疑われた事実概要 確約措置の概要
2025年2月26日 パーソナルジムにおいて提供する運動指導について行われていた表示
  • 有利誤認表示
    事業者は、期限までに入会した場合に限り、入会金が値引きされると表示していたが、実際には、その期限後であっても入会金が値引きされるものであった。
  1. 同様の行為を行わない旨の取締役会決議
  2. 一般消費者への周知徹底
  3. 再発防止措置の実施
  4. 代金の一部の返金
  5. 履行状況の消費者庁への報告
2025年8月28日 フェイシャル専門サロンにおいて提供する施術サービスについて行われていた表示
  • ステルス・マーケティング
    事業者は、第三者に対し、自社に星5の口コミを投稿することを条件に、次回の施術料金を割り引くと伝え、当該第三者が星5の口コミを投稿した。また、従業員が、自社に星5の口コミを投稿した。
  • 有利誤認表示
    事業者は、最近相当期間にわたって提供された実績のない価格を、値引前の価格として併記した。
  1. 同様の行為を行わない旨の取締役会決議
  2. 一般消費者への周知徹底
  3. 再発防止措置の実施
  4. 代金の一部の返金
  5. 履行状況の消費者庁への報告
2025年9月19日
(2社)
冷凍宅配食を販売するに当あたり行われていた表示
  • ステルス・マーケティング
    事業者は、第三者に対し、商品の無償提供を条件に、当該商品に関して「Instagram」への投稿を依頼し、依頼に応じて当該第三者が投稿した表示を、自社販売サイトの「使ってみた方の感想 Instagramでの投稿レビュー」として抜粋するなどして表示した。
  1. 被疑行為を既に行っていないことを確認する旨および同様の行為を行わない旨の取締役会決議
  2. 一般消費者への周知徹底
  3. 再発防止措置の実施
  4. 履行状況の消費者庁への報告
2025年9月19日 冷凍宅配食を販売するにあたり行われていた表示
  • 優良誤認表示
    事業者は、「プロの料理人がオススメする宅食ランキングNo.1」、「宅食サービス総合支持率ランキングNo.1」、「ダイエット中の女性が選ぶ食事サービスNo.1」と表示をしていたが、実際には、当該表示は、それぞれ客観的な調査に基づいたものではなかった。
  • ステルス・マーケティング
    事業者は、第三者に対し、対価の提供を条件に、商品に関して「Instagram」への投稿を依頼し、依頼に応じて当該第三者が投稿した表示を、自社販売サイトの「レンチン5分のご褒美ご飯SNSでも話題に!」として抜粋するなどして表示した。
  1. 被疑行為を既に行っていないことを確認する旨および同様の行為を行わない旨の取締役会決議
  2. 一般消費者への周知徹底
  3. 再発防止措置の実施
  4. 代金の一部の返金
  5. 履行状況の消費者庁への報告
2025年9月26日 光回線を用いたインターネット接続サービスを提供するにあたり行われていた表示
  • 有利誤認表示
    事業者は、期間内に申し込んだ場合に限り、キャンペーンの各種特典の適用を受けることができるかのように表示していたが、実際には、期間後に申し込んだ場合であっても、同種または類似のキャンペーンの各種特典の適用を受けることができるものであった。
  1. 被疑行為を既すでに行っていないことを確認する旨およ及び同様の行為を行わない旨の取締役会決議
  2. 一般消費者への周知徹底
  3. 再発防止措置の実施
  4. 代金の一部の返金
  5. 履行状況の消費者庁への報告
2025年12月16日 フィットネスクラブの利用等のサービスを提供するにあたり行われていた表示
  • 有利誤認表示
    事業者は、「ヨガ・マシンピラティス・よもぎ蒸しなど 全部受け放題」、「月々1,980円~で ここまでできる!」等と表示していたが、実際には、1,980円では、サービスのすべてを受けられるものではなかった。
  1. 被疑行為をすでに行っていないことを確認する旨および同様の行為を行わない旨の取締役会決議
  2. 一般消費者への周知徹底
  3. 再発防止措置の実施
  4. 代金の一部の返金
  5. 履行状況の消費者庁への報告
2025年12月23日 有料会員制ファンクラブの会員向けサービスについて行われていた表示
  • 有利誤認表示
    事業者は、一定の条件を満たせば、選手の直筆サイン入りのボールが必ず提供されるかのように表示していたが、実際には、当該条件を満たしてもサイン入りのボールの提供を受けることができる消費者は一部に限られていた。
  1. 被疑行為を既すでに行っていないことを確認する旨及および同様の行為を行わない旨の取締役会決議
  2. 一般消費者への周知徹底
  3. 再発防止措置の実施
  4. 代金の一部の返金
  5. 履行状況の消費者庁への報告
2026年3月3日 エステティックサロンにおいて施術サービスについて行われていた表示
  • 有利誤認表示
    事業者は、期限内に限り値引が適用されるかのように表示していたが、実際には、期限後であっても、期限内と同額以上の金額の値引が適用された。
  1. 被疑行為をすでに行っていないことを確認する旨および同様の行為を行わない旨の取締役会決議
  2. 一般消費者への周知徹底
  3. 再発防止措置の実施
  4. 代金の一部の返金
  5. 履行状況の消費者庁への報告

(4)典型的な確約措置の説明

 以下では、運用基準に従い、典型的な確約措置を、措置内容の十分性に関するもの(上記5-2(2)の表のア、イ、オ、カ、キ)、措置実施の確実性に関するもの(ウ、エ)の順で、それぞれ紹介します。

  • 違反被疑行為の取りやめ(必要な措置)
    運用基準では、次のとおり説明されています(運用基準6(3)イ(ア))。
違反被疑行為を継続している場合には、当該違反被疑行為を取りやめることは、措置内容の十分性を満たすために必要な措置の一つである。

 違反被疑行為を取りやめることが必要であることは、その確約手続の制度趣旨からして当然求められるものであると考えられ、公表された事例でもすべての事案で盛り込まれています。

  • 一般消費者への周知徹底(必要な措置)
    運用基準では、次のとおり説明されています(運用基準6(3)イ(イ))。
違反被疑行為の内容について一般消費者へ周知徹底することは、措置内容の十分性を満たすために必要な措置の一つである。

 この措置は、過去の措置命令でも命じられてきたものであり、公表された事例でもすべての事案で盛り込まれています。
 なお、過去の措置命令では、通常、インターネットのウェブサイトおよび新聞による社告が要求されていました。この周知徹底の方法について、引き続き新聞社告が要求されるかは明らかではありません。消費者庁の担当者の事前の説明によれば、確約計画では柔軟に解釈する余地があるとのことでしたが、実際に確約手続が利用された事例では、新聞による社告までも行われていたかどうかまでは公表されていません。

  • 一般消費者への被害回復(有益な措置(重要な事情として考慮))
    運用基準では、次のとおり説明されています(運用基準6(3)イ(オ))。
購入額の全部又は一部について返金(中略)することは、一般消費者の被害回復に資すること、及び自主返金制度が設けられた法の趣旨を踏まえると、措置内容の十分性を満たすために有益であり、重要な事情として考慮することとする。

 消費者庁の担当者によると、この被害回復は非常に重視されており、基本的には盛り込む必要があるとのことでしたが、他方で、事案によっては返金が難しいケースも想定されるので、必要な措置にはしなかったということです。
 課徴金納付命令は、売上金額の3%であるところ(法8条1項)、返金措置により、売上金額の3%を超える返金を行う場合には、景表法違反が確定的に認定されているわけでもないにもかかわらず、結果として、違反が確定的に認定された場合になされる課徴金納付命令よりも事業者側の経済的負担が大きくなってしまうという問題があります。

 優良誤認表示および有利誤認表示で確約手続が利用された事例では、いずれも返金措置が盛り込まれています。しかし、返金は代金の「全部」ではなく、「一部」のみについてなされているところ、どの割合についての返金なのかは公表されていません。なお、ステルス・マーケティングについては、課徴金納付命令の対象外であることの関係と思われますが、返金措置について規定した事例はありません。

 運用基準によると、この被害回復を確約措置に盛り込む場合には、「当該措置の内容、被害回復の対象となる一般消費者が当該措置の内容を把握するための周知の方法並びに当該措置の実施に必要な資金の額及びその調達方法」を明らかにすることが求められます(運用基準6(3)ア(イ))。
 返金の手法については、運用基準によると、「返金の手段、方法等は、事業者の自主的な判断に委ねられるが、自主返金制度において定める内容が参考となる」と解説されています。パブコメでは「一般消費者への被害回復について、周知の手段、方法等は事業者の自主的な判断に委ねられますが、一般消費者への被害回復についての周知期間、方法等が十分ではない場合には、措置内容の十分性を満たさないと判断することになります」と解説されているところです(パブコメNo.29)。

 確約計画では、全消費者に被害回復を行うことを予定し、その確約計画が認定されたとしても、現実には、全消費者に被害回復ができるとも限りません。この点、消費者庁の担当者によると、あくまでも確約計画は、将来の計画にすぎないため、しっかりした計画を前提として、事業者が最大限の努力を尽くしてもなお返金できない消費者がいた場合には、そのことをもって確約計画の認定を取り消すものではないということです。

  • 契約変更(有益な措置)
    運用基準では、次のとおり説明されています(運用基準6(3)イ(カ))。

例えば、違反被疑行為がなされるに至った要因が、被通知事業者の既存の取引先(例えば、アフィリエイターの管理を委託するASP 4 や、表示の裏付けに係る調査業務を委託した調査会社等)にも存すると認められる事案において、取引先を変更し、又は既存の取引先との契約内容(委託業務の内容等)を見直すことは、措置内容の十分性を満たすために有益である。

 公表された事例の中で、契約変更に言及しているものはありません。

  • 取引条件の変更(有益な措置)
    運用基準では、次のとおり説明されています(運用基準6(3)イ(キ))。
例えば、違反被疑行為が景品表示法第5条第2号(※著者注:有利誤認)に違反する疑いのある行為である事案において、被通知事業者が表示内容に合わせて取引条件を変更する場合(例えば、被通知事業者が、サービスを一定期間内に解約した場合には例外なく代金を返金すると表示していたにもかかわらず、契約で返金を受けるための諸条件を定めていた事案において、当該契約内容を変更し返金を受ける機会を確保するような場合等)、当該取引条件の変更は、措置内容の十分性を満たすために有益である。

 公表された事例の中で、取引条件の変更に言及しているものはありません。

  • 違反被疑行為および同種の行為が再び行われることを防止するための措置(必要な措置)
    運用基準によると、次のとおり説明されています(運用基準6(3)イ(ウ))。
コンプライアンス体制の整備等を行うとともに、当該措置について被通知事業者の役員及び従業員に周知徹底をすることが、措置実施の確実性を満たすために必要な措置の一つである。

 公表された事例では、いずれも再発防止策が盛り込まれていますが、その詳細については公表されていません。コンプライアンス体制の整備についての具体的な内容としては、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(平成26年内閣府告示第276号)」の内容が参考となる、としています。

  • 履行状況の報告(必要な措置)
    運用基準によると、次のとおり説明されています(運用基準6(3)イ(エ))。
確約措置の履行状況について、被通知事業者又は被通知事業者が履行状況の監視等を委託した独立した第三者(消費者庁が認める者に限る。)が消費者庁に対して報告することは、措置実施の確実性を満たすために必要な措置の一つである。
なお、報告の時期及び回数は、確約措置の内容に応じて設定する必要がある。

 公表された事例では、いずれも履行状況の報告が盛り込まれていますが、その詳細については公表されていません。パブコメによると、「独立した第三者」につき「消費者庁が認める者」とは、たとえば、違反被疑行為者との間に取引関係のない弁護士等を想定しているとのことです(パブコメNo.27)。

確約計画の認定または却下

確約計画の審査

 消費者庁は、確約認定の申請に基づき、措置内容の十分性(要件①)および措置実施の確実性(要件②)を審査し、両要件を満たすときは、確約計画の認定を行います。
 運用基準によれば、消費者庁は、確約認定申請の審査について次のように規定しています(運用基準7(1))。

消費者庁と事業者との間の意思疎通を密にすることは、迅速な確約手続に係る法運用を可能とし、消費者庁と事業者の双方にとって有益であると考えられる。このため、確約手続通知が行われた後において、消費者庁は、必要と認める場合又は申請者から認定における論点等について説明を求められた場合には、その時点における論点等について説明する。また、消費者庁が申請者に対して申請内容の説明を求めることもある。

 したがって、確約認定申請を行った後も、消費者庁との間で積極的に交渉を行い、確約措置が要件を満たすことを説得的に説明し、また、必要に応じて追加の資料提出(前記5-1参照)を行う必要があるものと考えられます。

 なお、運用基準では、次のように説明されていますが(運用基準7(2))、実際には、確約計画の認定が公表されると、一般の人には、法令違反をしたかのような印象を持たれてしまう可能性があります(詳しくは後記7をご参照ください)。

消費者庁が確約計画の認定をするための要件は、措置内容の十分性及び措置実施の確実性を満たすことであり、確約計画の認定は、申請者が景品表示法の規定に違反する行為を行ったとの認定・判断を行うものではない。

確約認定の効果

 確約計画が認定されると、その認定が取り消された場合を除き、違反被疑⾏為について、もはや措置命令・課徴⾦納付命令が⾏われなくなるというメリットを得ることができます(法28条、32条)。
 なお、却下された場合には、確約手続通知を行う前の調査が再開されることとなります(運用基準7(1))。

確約計画の認定に関する公表

 確約計画が認定されると、事業者名のほか、違反被疑行為や確約計画の概要等が公表されることとなります。運用基準によると、次のように規定されています(運用基準9)。

確約計画の認定をした後、消費者庁は、(中略)認定確約計画の概要、当該認定に係る違反被疑行為の概要、確約認定を受けた事業者名その他必要な事項を公表する。また、公表に当たっては、景品表示法の規定に違反することを認定したものではないことを付記する。

 上記5-2(4)のとおり、確約措置の一環として、事業者は自ら一般消費者へ被疑行為の内容の周知徹底を行うことが求められますが、加えて、消費者庁からも公表がなされます。
 運用基準では「公表に当たっては、景品表示法の規定に違反することを認定したものではないことを付記する」と規定されていますが、実際の例としては、下記の赤枠で囲ったような記載になります。
 公表の内容には、違反被疑行為の概要も含まれることから、一般の方に、法令違反があったかのような印象を与えてしまう可能性があることは、否定できないようにも思われます。また、報道機関によっては、確約計画の申請が認定されたこと(認定処分)をもって、「景品表示法違反の疑いがあったとして、〇〇社が行政処分を受けました」などと報道されてしまった事例もあります。

消費者庁の報道発表資料「caname株式会社から申請があった確約計画の認定について」(令和7年2月26日)より一部抜粋

消費者庁の報道発表資料「caname株式会社から申請があった確約計画の認定について」(令和7年2月26日)より一部抜粋

確約手続についての実務対応ポイント

 以上を踏まえ、実務上、最も悩ましい問題が、「確約手続に応じるべきか」という点と、応じる場合に「確約手続の内容をどうするか」という点です。この点について、現在の情報をもとに、著者の個人的な意見をご説明します。

確約手続に応じるべきか

(1)確約手続に応じることのメリット・デメリット

 まず、確約手続に応じることの最大のメリットは、措置命令および課徴金納付命令が免除されることです。課徴金納付命令による経済的な負担はもちろん、措置命令と課徴金納付命令は、別々のタイミングで行われることから、これらの2回の行政処分が行わるたびに、メディアに取り上げられる可能性があり、また、消費者庁が法令違反を確定的に認定したということで、その意味でも事業者にはレピュテーションリスクが発生します。
 他方で、確約手続は、消費者庁が、法令違反であると確定的には認定せずに、その疑いがあると考えるにすぎない段階で、事業者が自主的に申請を行うものです。したがって、法令違反が疑われているとしても、最終的には法令違反ではないと判断される事案、または、法令違反であったとしても非公表の行政指導にとどまる事案についても、自ら積極的に確約手続に基づき、公表や返金措置などの負担を受け入れる道を選ぶことになっています。
 したがって、理論的には、事業者としては、措置命令がなされることが確実な事案であれば、確約手続を申請するべき、ということになりますが、そうでない事案については、確約手続を申請しないほうがよいということになるでしょう

(2)確約手続の利用有無に関する判断

 しかし、上記の判断は必ずしも容易ではありません。また、消費者庁としても、明確な基準のもとに一貫性のある権限行使を行っているわけではないようにうかがわれます。

 他方で、確約手続は本来、行政処分の適用を免除するというメリットを与える代わりに、自主的な措置を講じることを求めるものとなっています。したがって、行政処分の可能性がほとんどない事案について、消費者庁が「行政処分の適用が免除を受けられますので、ぜひ確約手続の利用を検討してください」などと、実体の伴わないメリットをうたって、確約手続の利用を推奨してくるとは考えにくいところがあります。
 特に、調査の過程で、消費者庁が確約手続の利用を強く推奨してきた場合には、景表法違反が認定されているわけではないものの、消費者庁として本来なら措置命令レベルの案件であると考えている可能性が相当程度あり、確約認定を拒否した場合でも、措置命令がなされる可能性が相当程度あるものと思われます。

 また、調査の対象となっている表示の内容、そして消費者庁の調査の状況からして、消費者庁が指導にとどめようとしているのか、措置命令にまで踏み込もうとしているのかは、ある程度予想できるケースもあるように思われます。

確約手続の内容をどうするか

 では、確約計画を申請することを決めた場合に、確約手続の内容をどうするかという点です。
 運用基準で紹介されている典型例のうち、「必要な措置」とされているものについては、少なくとも対応が必要になると考えられます。運用基準を分析する限りでは、十分性については、過去の措置命令の事案を参考にするとされていることから、過去の事例を洗い出して、丁寧に分析することが求められるといえます。また、すでに認定がなされた事例も複数現れてきていることから、そうした事例も参考になるでしょう。

実際には、確約措置の内容は、景表法に詳しい専門家などとも相談しながら、過去の事例を参考にしつつ消費者庁と交渉し、その措置の十分性および確実性を説得的に説明していくことになるものと思われます。


  1. 本稿の意見に係る部分は著者の個人的見解であり、著者の所属する組織の見解を表すものではありません。また、消費者庁の担当者による説明にも、担当者の個人的見解であって、消費者庁の公的な見解を示すものではないという留意点が含まれているものがあります。 ↩︎

  2. 違反被疑行為に係る事案についての調査を開始した旨の通知を受けた日、景表法25条1項の規定による報告徴収等が行われた日または同法7条2項もしくは8条3項の規定による資料提出の求めが行われた日のうち、最も早い日から遡って10年以内。 ↩︎

  3. このことは、運用基準の次の表現からうかがい知ることができます。
    「確約手続をより迅速に進める観点から、消費者庁が確約手続通知を行う前であっても、違反被疑行為に関して調査を受けている事業者は、いつでも、調査を受けている行為について、確約手続の対象となるかどうかを確認したり、確約手続に付すことを希望する旨を申し出たりするなど、確約手続に関して消費者庁に相談することができる」(運用基準3) ↩︎

  4. アフィリエイトサービスプロバイダー。法人または個人のアフィリエイターを幅広く募り、アフィリエイトネットワークを構築し、広告主とのマッチングをさせる機能を持つアフィリエイトプログラムを提供する事業者をいいます。 ↩︎

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