東京証券取引所「2024年3月期決算会社の定時株主総会の動向について」を公表

コーポレート・M&A

目次

  1. 調査結果概要
  2. 時価総額別、株主数別等の分析
    1. 電子提供制度に伴う株主宛発送書類の状況
    2. バーチャル総会の開催予定

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.218」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 4月25日、東証は、上場会社の定時株主総会の開催日程等の動向をあらかじめ把握し、株主・投資者の議決権行使の環境整備を図ることを目的として実施した調査結果として、「2024年3月期決算会社の定時株主総会の動向について」を公表しました。


 調査内容は、①本年の開催日等について、②株主総会資料の電子提供の開始予定日の状況、③株主宛発送書類提供の状況、④英文招集通知の提供状況、⑤議決権の電子行使の状況、⑥バーチャル総会の開催予定であり、東証内国上場会社のうち2024年3月期決算会社2,268社(プライム、スタンダードおよびグロース市場上場会社)を対象とし、うち1,789社から回答を得ているものです。
 本年6月総会は電子提供制度施行後2年目であり、各社の電子提供制度対応の傾向は注目されるところです。またCGコードの要請を踏まえて東証が有価証券上場規程等の一部改正を公表した英語での情報開示(補充原則3-1②)の対応状況等もうかがうことができます。
 本稿では上記①~⑥の調査結果概要をお知らせするとともに、電子提供制度に伴う株主宛発送書類の状況の前年比較およびバーチャル総会の開催状況につき、三菱UFJ信託銀行にて上場区分別や規模別に分析した結果についてもご紹介いたします。

調査結果概要

  1. 本年の開催日等について
    • 本年の定時株主総会は、6月27日(木)に29.7%と最も集中する見込み
    • 最集中日の集中率は、昨年(26.1%)よりもやや上昇したが、引き続き1983年の集計開始以来の低い水準が継続する見込み
  2. 株主総会資料の電子提供措置開始予定日の状況
    • 株主総会資料の電子提供措置開始予定日は、全社(※本調査への回答会社を指します。以下同じ)のうち、3週間前までが79.0%、4週間前までが21.0%となる見込み
    • 特にプライム市場において提供の早期化がみられ、4週間前までの電子提供開始を予定する会社が、34.1%と3分の1を超える見込み
  3. 株主宛発送書類提供の状況
    • 全社のうち、「アクセス通知のみ」が7.3%、「アクセス通知とサマリー資料」が35.2%、「フルセット・デリバリー」が57.5%となる見込み
    • 全市場区分において、「フルセット・デリバリー」の割合低下がみられる中、プライム市場でその傾向が顕著であり、44.8%と半数を割り込む見込み
  4. 英文招集通知の提供状況
    • 招集通知本文および株主総会参考書類の英訳を提供予定のプライム市場上場会社は、96.1%と、昨年と比べて5.3pt増加見込み
    • 事業報告および計算書類を含む招集通知のすべての英訳を提供予定のプライム市場上場会社は、28.1%と、昨年(27.3%)と同水準となる見込み
  5. 議決権の電子行使の状況
    • 機関投資家向けの議決権電子行使プラットフォームを利用するプライム市場上場会社は96.9%(昨年比2.2pt増)、スタンダード市場上場会社では20.4%(昨年比12.5pt増)と昨年と比べて増加見込み
    • 個人投資家向けにインターネットによる議決行使を可能とする上場会社は88.9%と、昨年と比べて6.0pt増加見込み
  6. バーチャル総会の開催予定
    • バーチャル総会の開催を予定している会社は、18.3%と、昨年(18.0%)と同水準となる見込み
    • バーチャル総会を開催予定の会社の大多数がハイブリッド参加型での開催を予定

時価総額別、株主数別等の分析

 三菱UFJ信託銀行にて調査結果を時価総額別等で分析した内容を以下ご紹介いたします。なお、文中の図表は三菱UFJ信託銀行にて作成したものです。

電子提供制度に伴う株主宛発送書類の状況

 【表1】は、株主宛発送物の形態を時価総額別に表したものです。
 時価総額が大きくなるにつれ、「フルセット」と回答した会社の割合が減少していることがみてとれます。また、全ての時価総額別の会社群で、「フルセット」と回答した会社の割合が前年比で減少し、「サマリー」「アクセス通知のみ」と回答した割合が増加しています。前年は電子提供制度施行後初めての6月総会であったため、保守的に「フルセット」としていた会社も多かったところ、他社の動向や制度の趣旨を鑑み、本年は「フルセット」から「サマリー」「アクセス通知のみ」への移行を検討した会社が一定数あったものと推察されます。

【表1】時価総額別発送形態

 【表2】は、株主宛発送物の形態を株主数別に表したものです。
 全ての株主数別の会社群で、「フルセット」と回答した会社の割合が前年比で減少し、「サマリー」「アクセス通知のみ」と回答した会社が増加しています。特に株主数が「1千人以下」、「5万人超‐10万人」、「10万人超」の会社では、「フルセット」から「サマリー」「アクセス通知のみ」へ移行する割合が顕著となっていますが、「1千人超‐5千人」の会社では前年との変化はあまりなく、株主数に応じて発送形態の傾向に違いがみられます。

【表2】時価総額別発送形態

バーチャル総会の開催予定

 バーチャル総会の開催予定については、バーチャルオンリー型(以下「オンリー型」)、ハイブリッド出席型(以下「出席型」)、ハイブリッド参加型(以下「参加型」)について市場区分別、時価総額別、株主数別に分析しました。
 まず【表3】市場区分別では、各市場での実施状況は前年と大きな変化はなく、スタンダード市場における開催予定が他の市場と比較して顕著に低い結果となっています。

【表3】市場区分別バーチャル総会実施状況

 次に【表4】時価総額別では、時価総額が高いほど開催予定の割合も高くなる傾向が明らかになりました。特に、時価総額5,000億円超の会社では、過半数の会社が参加型を中心に開催予定と回答しています。

【表4】時価総額別バーチャル総会実施状況

 また【表5】株主数別ではおおむね株主数の増加に応じてバーチャル総会を開催すると回答した会社が増加しているのが見てとれます。株主数5万人超の会社で過半数の会社が開催予定と回答しており、株主数が多い会社での実施率が比較的高いことがわかります。

【表5】株主数別バーチャル総会実施状況

 【表6】は今年バーチャル総会の開催を予定していると回答した会社について、前年の実施状況別に割合を算出したものになります。バーチャル総会を開催予定の会社のうち、約9割の会社は前年もバーチャル総会を実施していることが見てとれます。
 本年6月のバーチャル総会は昨年と同水準の会社で開催される見込みですが、以上の通り、今後の採用社数の増加は、スタンダード市場上場会社の動向(【表3】)や株主数が「1万人超~5万人」の会社の新規導入の有無(【表5】)が鍵になると考えられます。

【表6】バーチャル総会の開催予定社数

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務グループ
03-6214-7391(代表)

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