機関投資家との対話と開示 − GPIFアンケート結果を踏まえて −

コーポレート・M&A

目次

  1. アンケート結果の概要
    1. 開示資料の活用
    2. 社外役員との対話の実施状況
    3. 非財務情報の任意開示
  2. CG報告書における株主との対話の実施状況等の開示

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.207」の「特集」の内容を元に編集したものです。

 

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、5月17日、「第8回機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表しました(以下「本アンケート」)。

 本アンケートは、運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価等を目的として、TOPIX構成企業2,162社(2022年12月23日現在)を対象とし、735社(市場区分別:プライム市場上場会社95.9%、スタンダード市場上場会社4.1%)から回答を受けたもので、機関投資家の現状・変化、回答会社のIR・ESG活動、GPIFの取り組みに関する設問の回答状況がまとめられています。

 本特集では本アンケートのうち機関投資家との対話や開示に関する回答の概要を踏まえて、本年4月に記載要領が改訂されたコーポレート・ガバナンス報告書(以下「CG報告書」)における株主との対話の実施状況等の開示事例についてご紹介します。

アンケート結果の概要

開示資料の活用

 CG報告書については3割近く、統合報告書については6割以上の企業において、これらの開示資料が機関投資家によって活用されていると感じています。

⚫︎ 機関投資家によってCG報告書が活用されていると感じますか(活用は進んでいますか)?

⚫︎ 機関投資家に統合報告書が活用されていると感じますか(活用は進んでいますか)?(作成企業のみ)

(出所)本アンケート14頁をもとに三菱UFJ信託銀行作成

社外役員との対話の実施状況

 3分の1の企業が機関投資家から社外役員との対話を要請されたことがあり、そのうち3分の2の企業が実際に対話を行っています。

(出所)本アンケート15頁をもとに三菱UFJ信託銀行作成

非財務情報の任意開示

 ESGを含む非財務情報の任意開示(統合報告書等)は85.8%の企業が実施しており、参考としているスタンダードやガイドラインとして最も多く挙げられたものは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言報告書でした。

⚫︎ 貴社ではESGを含む非財務情報の任意開示(CSR報告書、サステナビリティ報告書、統合報告書など)を行っていますか?

貴社ではESGを含む非財務情報の任意開示(CSR報告書、サステナビリティ報告書、統合報告書など)を行っていますか?

⚫︎ 実施されている場合、以下のスタンダードやガイドラインのうち、参考にしているものはありますか?

実施されている場合、以下のスタンダードやガイドラインのうち、参考にしているものはありますか?

(出所)本アンケート23頁をもとに三菱UFJ信託銀行作成

CG報告書における株主との対話の実施状況等の開示

 東証の市場区分見直しに関するフォローアップ会議では、投資者との対話の重要性が改めて指摘され、プライム市場の上場会社において、株主との対話の実施状況等について開示することとされました。「株主との対話の推進と開示について」(2023年3月31日公表)では、開示することが考えられる事項として、株主との対話の主な対応者、対話を行った株主の概要、対話の主なテーマや株主の関心事項、対話において把握された株主の意見・懸念の経営陣や取締役会に対するフィードバックの実施状況、対話やその後のフィードバックを踏まえて、取り入れた事項があればその内容などが挙げられています。以上を踏まえて本年4月にはコーポレート・ガバナンスに関する報告書記載要領が改訂され、「(2)コードの各原則に基づく開示」における「記載上の注意」が更新されています。

 上記1-1のとおりCG報告書が投資家との対話に活用されている実態も踏まえ、CG報告書において充実した開示を行うことが考えられます。以下では、総会終了後のCG報告書の提出に向けて、本改訂を踏まえたCG報告書における株主との対話の実施状況に関する記載について参考となる事例を紹介します(6月21日時点で開示されている各社のCG報告書から引用。下線は三菱UFJ信託銀行によるもの)。

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問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務・コーポレートガバナンスコンサルティング室
03-3212-1211(代表)

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