東証、2023年3月期決算会社の定時株主総会動向を公表

コーポレート・M&A

目次

  1. 調査結果概要
  2. 時価総額別、株主数別等の分析
    1. 電子提供制度に伴う株主宛発送書類の状況
    2. バーチャル総会の開催予定

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.206」の「特集」の内容を元に編集したものです。

 

 4月24日、東京証券取引所は、上場会社の定時株主総会の開催日程等の動向をあらかじめ把握し、株主・投資者の議決権行使の環境整備を図ることを目的として実施した調査結果として、「2023年3月期決算会社の定時株主総会の動向について」を公表しました。


 調査内容は、①本年の開催日程等について、②株主総会資料の電子提供措置開始予定日の状況、③株主宛発送書類提供の状況、④英文招集通知の提供状況、⑤議決権の電子行使の状況、⑥バーチャル総会の開催予定とあり、東証内国上場会社のうち2023年3月期決算会社2,283社(プライム、スタンダードおよびグロース市場上場会社)を対象とし、うち1,918社から回答を得ているものです。
 株主総会資料の電子提供制度施行後初めての6月総会を迎える中、株主宛の発送物の各社の対応状況、またCGコードで求められている英語での情報開示(補充原則3-1②)や議決権の電子行使(補充原則1-2④)への取組み、そしてバーチャル総会の開催状況などをうかがうことができます。
 そこで、本稿では上記①〜⑥の調査結果概要をお知らせするとともに、電子提供制度に伴う株主宛発送書類の状況およびバーチャル総会の開催状況につき、当社にて上場区分別や規模別に分析した結果についてもご紹介いたします。なお、本稿の調査結果は4/24公表時点ですが、個社の回答内容は東証サイト内で毎週火曜日に更新予定とされています。

調査結果概要

① 本年の開催日程等について

  • 本年3月期決算会社の定時株主総会は、6月29日(木)に最も集中する見込み
  • 最集中日の集中率は、26.4%と、昨年(26.0%)と同様、1983年の集計開始以来最も低い水準が継続する見込み
  • 株主総会が株主との重要な対話の場であるとの認識が浸透してきたことに加え、暦の影響で23日(金:17.5%)、27日(火:14.7%)、28日(水:17.2%)に分散したことが影響

② 株主総会資料の電子提供措置開始予定日の状況

  • 株主総会資料の電子提供措置開始予定日は、全上場会社(※本調査への回答会社を指します。以下同じ)のうち、3週間前までが81.4%、4週間前までが18.6%となる見込み
  • 4週間前までに電子提供開始予定の会社は、プライム市場上場会社が86%を占める。株主総会資料の早期提供は投資者のニーズも高く、より一層の早期化が期待される

③ 株主宛発送書類提供の状況

  • 全上場会社のうち、株主総会参考書類等を含むすべての書類(フルセットデリバリー)を予定する会社が69.0%アクセス通知とサマリー資料を予定する会社が25.8%アクセス通知のみを予定する会社が5.3%となる見込み
  • 他の市場区分と比べ、アクセス通知とサマリー資料を予定する会社は、プライム市場上場会社に多く、アクセス通知のみを予定する会社はグロース市場上場会社に多い

④ 英文招集通知の提供状況

  • 招集通知本文および株主総会参考書類の英訳を提供予定のプライム市場上場会社は、93.0%と、昨年と比べて4.9pt増加見込み
  • 事業報告および計算書類を含む招集通知のすべての英訳を提供予定のプライム市場上場会社は、26.9%と、昨年と比べて3.3pt増加見込み

⑤ 議決権の電子行使の状況

  • 機関投資家向けの議決権電子行使プラットフォームを利用するプライム市場上場会社は95.1%と、昨年と比べて3.0pt増加見込み
  • 個人投資家向けにインターネットによる議決行使を可能とする上場会社は83.0%と、昨年と比べて6.5tp増加見込み

⑥ バーチャル総会の開催予定

  • バーチャル総会の開催を予定している会社は、18.8%と、昨年(18.7%)と同水準となる見込み
  • バーチャル総会を開催予定の会社の大多数がハイブリッド参加型での開催を予定

時価総額別、株主数別等の分析

 当社にて調査結果を時価総額別等で分析した内容を以下ご紹介いたします。なお、文中の図表は当社にて作成したものです。

電子提供制度に伴う株主宛発送書類の状況

 【表1】は、株主宛発送物の形態を時価総額別に表したものです。
 時価総額1兆円超の会社ではフルセットと回答した会社が多数(75.0%)を占めていますが、1兆円以下の会社群では時価総額が下がるにつれフルセットと回答した会社が増加し、サマリーと回答した会社が減少しています。アクセス通知のみと回答した会社は5,000億円超の会社では見られませんでした。

【表1】時価総額別発送形態

【表1】時価総額別発送形態

 【表2】は、株主宛発送物の形態を株主数別に表したものです。株主数が1千人以下の会社では88.6%の会社がフルセットと回答しているのに比べ、10万人超の会社では28.6%に減少しており、株主数に応じて発送形態に特徴が表れています。アクセス通知のみと回答した会社については株主数による偏りは見られませんでした。

【表2】株主数別発送形態

【表2】株主数別発送形態

 なお、電子提供措置開始予定日から招集通知の発送日までの日数は全上場会社平均で4.9日。電子提供措置予定日から発送日までの日数別の状況は【表3】のとおり「4〜6日」が32.8%と最も多く、次いで「7〜10日」が29.6%となっています。株主による議案の検討期間の確保という電子提供制度の導入目的を勘案すると、電子提供措置を早期に開始することとあわせて、招集通知(アクセス通知)の早期発送にも取り組む必要があると考えます。

【表3】電子提供措置予定日から発送日までの日数

【表3】電子提供措置予定日から発送日までの日数

バーチャル総会の開催予定

 バーチャル総会の開催予定については、バーチャルオンリー型(以下「オンリー型」)、ハイブリッド出席型(以下「出席型」)、ハイブリッド参加型(以下「参加型」)について市場区分別、時価総額別、株主数別に分析しました。

 まず【表4】市場区分別では、昨年に引き続きスタンダード市場における開催予定が他の市場と比較して顕著に低い結果となっており、バーチャル総会の採用増加は、スタンダード市場上場会社の動向が鍵になると考えられます。

【表4】市場区分別バーチャル総会実施状況

【表4】市場区分別バーチャル総会実施状況

 次に【表5】時価総額別では、時価総額が高いほど開催予定の割合も高くなる傾向が明らかになりました。特に、時価総額5,000億円超の会社では、7割超の会社が参加型を中心に開催予定と回答しています。

【表5】時価総額別バーチャル総会実施状況

【表5】時価総額別バーチャル総会実施状況

 また、【表6】株主数別では株主数の増加に応じてバーチャル総会を開催すると回答した会社が増加しているのが見てとれます。株主数5万人超の会社で過半数の会社が開催予定と回答しております。

【表6】株主数別バーチャル総会実施状況

【表6】株主数別バーチャル総会実施状況

 【表7】はオンリー型、出席型の開催予定社数を市場区分別、規模別に分類したものです。市場区分別ではプライム市場会社が多くを占めていますが、時価総額別では100億円以下の会社で開催社数が多くなっていることが特徴といえます。

【表7】オンリー型、出席型の開催予定社数

【表7】オンリー型、出席型の開催予定社数

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務・コーポレートガバナンスコンサルティング室
03-3212-1211(代表)

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