景品表示法の表示規制のポイント 不当表示該当性判断基準、「打消し表示」、不実証広告基準等
競争法・独占禁止法
目次
不当表示規制とは
不当表示規制の概要
景品表示法は、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するという目的の下、「事業者」を対象として、(A)「自己の供給する商品又は役務の取引」について(法5条柱書)、(B)優良誤認表示、有利誤認表示、指定告示に基づく不当表示のいずれかに当たる表示を(C)「してはならない」(禁止)と定めています(法5条1~3号)。この(A)〜(C)を満たす場合に、(B)の表示を行うとき、景品表示法の表示規制に違反すると判断されます。
不当表示の概観
※ 1 景品表示法5条1号および2号は、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる」表示であることも要件としています。もっとも、上記「概観」で示すいずれかに当たる場合は、通常その要件は認められると考えられており、わかりやすさの観点から省略しています(緑本65頁)。
※ 2 景品表示法5条1号は、実際の商品・役務の内容よりも「著しく優良であると示す表示」と定めていますが、実質的には、「著しく優良であると一般消費者に誤認される表示」を禁止するものと整理されています(緑本61頁)。
※ 3 誤認される「おそれ」があり、不当に顧客を誘引する「おそれ」があるとして指定されており、告示により指定された表示に該当するか否かを判断する際、個別の表示について誤認されるものであったかは問われません。
※ 4 ①「無果汁の清涼飲料水等についての表示」(昭和48年公正取引委員会告示第4号)、②「商品の原産国に関する不当な表示」(昭和48年公正取引委員会告示第34号)(原産国告示)、③「消費者信用の融資費用に関する不当な表示」(昭和55年公正取引委員会告示第13号)、④「不動産のおとり広告に関する表示」(昭和55年公正取引委員会告示第14号)、⑤「おとり広告に関する表示」(平成5年公正取引委員会告示第17号)(おとり広告告示)、⑥「有料老人ホームに関する不当な表示」(平成16年公正取引委員会告示第3号)、⑦「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号、2023年10月1日施行)
(1)供給要件(要件A)
まず、上記A「自己の供給する商品又は役務の取引」について表示を行っていることが要件とされています(供給要件。供給主体性とも呼ばれます)。自己の「供給」する商品・役務であるかに関し、景品表示法は、「供給」の定義を行っていませんが、少なくとも、小売業者のほか、メーカーや卸売業者等、製品流通過程にある者は、「供給」していると判断されます(緑本45頁)。同じ商品について、メーカーや小売業者など複数の事業者に供給要件が認められます。
それ以外にも、景品表示法の目的の下、当該商品・役務の提供・流通の実態をみて実質的に判断されており、たとえば、フランチャイザー(本部)がチェーン販売商品を企画するような場合、本部直営店で当該商品を販売せず、またフランチャイジー経営店舗が当該商品やその原材料を本部から仕入れていなくても、フランチャイザー(本部)が供給していると判断される可能性があります 1。オンライン・ショッピングモール運営事業者に、同モール出店者が販売する商品・役務について供給要件が(どのような場合に)認められるかについては議論があります 2。
(2)表示行為要件(要件C)
次に、上記Cの不当表示を「し」たといえることが要件とされています(表示行為要件。表示行為主体性とも呼ばれます)。自ら表示を作成する場合は当然にこの要件を満たしますが、表示作成に複数人がかかわる場合や、第三者に表示作成を委託するような場合には表示行為要件を満たすかが問題となり得ます。結論として、表示内容の決定に関与する場合には表示行為要件を満たすと判断されます。
表示行為要件については以下の記事もご覧ください。
(3)不当表示の3類型該当性(要件B)と故意・過失の有無
景品表示法では、上記A・Cを満たす場合に、(B)優良誤認表示、有利誤認表示、指定告示に基づく不当表示のいずれかに当たる表示を行うことが禁止されており、故意・過失は問われません。景品表示法に違反する不当表示事案の中には、故意による虚偽表示や、過度な誇張が故意に行われたものもありますが、近時は、景品表示法の理解が十分でないこと(「このくらい大丈夫だろう」)や、表示の根拠となる情報の確認が不十分であること(「この程度で十分だろう」)、などが原因となった場合が多くみられます。また、表示作成時点では事実と整合していても、事後的に実際とずれが生じるような場面もあります。景品表示法および実務への理解度が及んでいなかった可能性があり、表示に対する法務部門による関与の必要性がうかがえます。
(4)補足:景品表示法の「表示」との関係
景品表示法上の「表示」は、事業者が、(a)「顧客を誘引するための手段として」、(b)自己の「供給」する(c)商品又は役務の取引に関する事項について行う(d)広告その他の表示であり、定義告示 3 に列挙されたものと定義されています(法2条4項)。
このうち要件(a)「顧客を誘引するための手段」として行うものか否かは、事業者の主観的意図によらず、客観的に、一般消費者に対する顧客誘引の効果を有するか否かで判断されます 4。通常、一般消費者向けに商品の優良性や取引条件の有利性を示す表示は、この要件を満たします。
また、上記要件(b)・(c)は、不当表示該当性に関して確認した要件Aと重複します。さらに、上記(d)について、定義告示では、包装、チラシ・パンフレット、新聞広告・テレビCM、ウェブサイト等のあらゆる広告が含まれるとされています。そのため、表示規制の適用を受けるか否かを検討する際には、前述の(A)~(C)の要件(法5条柱書、同条1号~3号)を満たすか否かを検討すれば足り、独立して「表示」該当性を検討する必要のある場面は基本的にはないといえます 5。
不当表示をした場合の法的措置
(1)現在の法的措置(措置命令、課徴金納付命令等)
優良誤認表示等の不当表示を行った場合、消費者庁や都道府県に当該不当表示を認定され、必要があると判断されるときに、措置命令を受けます(法7条1項、法施行令23条1項)。命令するか否かについて消費者庁等に裁量があり、裁量的行政処分と位置付けられます。
また、措置命令を受けた場合、所定の例外事由に該当しない限り、消費者庁から課徴金納付命令を受けます(法8条1項)。指定告示に基づく不当表示を行った場合には、課徴金の対象とはなりません。景品表示法の課徴金制度の詳細については、下記の関連記事をご参照ください(2023年の景品表示法改正については今後対応予定です)。
また、優良誤認表示や有利誤認表示に相当する表示をした場合、適格消費者団体による差止請求の対象となる可能性もあります(法30条1項)。
不当表示規制に違反した場合のリスクとして、景品表示法上に定められたものは下表のとおりです。
手続 | 主体 | 対象行為 |
---|---|---|
措置命令(法7条1項) | 消費者庁・都道府県 | 以下①~③いずれかの表示行為 ① 優良誤認表示 ② 有利誤認表示 ③ 告示により指定された不当表示 |
課徴金納付命令(法8条1項) | 消費者庁 | 以下①②いずれかの表示行為(課徴金対象行為) ① 優良誤認表示 ② 有利誤認表示 |
差止請求(法30条1項) | 適格消費者団体 | 以下①②いずれかの表示行為 ① 優良誤認表示に相当する表示 ② 有利誤認表示に相当する表示 |
(2)確約手続の導入
上記のように、不当表示事案に対する行政庁による法的措置としては、措置命令または課徴金納付命令という行政処分によって対処されてきました。ただ、端緒件数が増える傾向にある一方で、課徴金制度が導入されたことにより事件処理に要する期間が長期化していることもあり、措置件数を増加できず、事業者の自主的な取組の促進も通じて不当表示事案の早期の是正に取り組んでいく必要性が生じています。たとえば、自主的に十分な内容の取組を確実に実施できると見込まれる事業者については、これらの命令を行うよりも、事業者の自主的な取組を促したほうがより早期に是正が図られる可能性があります。また、自主的な取組を確実に促進するには、法的な裏付けがあるほうが望ましいところです。
そこで、2022年に消費者庁が開催した「景品表示法検討会」において、独占禁止法を参照した確約手続 6 の導入が提唱され(景品表示法検討会「報告書」13頁)、2023年5月10日に成立した景品表示法改正法により、確約手続を定めた第2章第6節「是正措置計画の認定等」が新設されます(改正後26条~33条)。確約手続の対象、返金措置の位置づけ、認定された確約手続の公表、確約計画が履行されなかった場合の対応を含む具体的な運用方針に関しては、独占禁止法の定めに倣い、ガイドラインにて明らかにされる見込みです(景品表示法検討会「報告書」14・15頁)。特に、認定された確約手続の公表に関しては、参議院委員会での採決の際の附帯決議を踏まえ、ガイドラインで、対象事業者名・事案の概要を公表することが明確化されることになりそうです。
なお、これまでの執行実務において、調査対象事案のうち大部分は、行政処分ではなく、行政指導が行われています。確約手続の導入に伴い、仮に従前であれば行政指導が相当とされるであろう事案の全部について確約手続の対象となれば、「措置件数を増加できず、事業者の自主的な取組の促進も通じて不当表示事案の早期の是正に取り組んでいく必要性」と抵触する必要があります。基本的には、従前の措置命令相当事案の一部を確約手続の対象とする運用がとられる可能性がありますが、今後の運用に注目したいと考えます。
不当表示該当性に関する考え方
不当表示に該当するのはどのような場合か
以下では、主に優良誤認表示および有利誤認表示を念頭において、不当表示該当性の基本的な考え方を整理します。その際、消費者庁「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法の考え方について」第4の1のQ-1や、課徴金ガイドライン 7 第2の(2)、緑本58頁~62頁の記述を基としており、適宜ご参照いただければと思います。
一般消費者に優良または有利と「誤認される」表示であると判断されるのは、以下の場合です。
- 優良・有利と示す表示内容と
- 実際の内容・取引条件との間に違いがある場合
上記「表示内容」は、(表示上の特定の文章、図表および写真等からではなく)表示全体から一般消費者が受ける認識・印象を基に判断されます。
「著しく」優良または有利であると誤認されることは、誇張・誇大の程度(表示内容と実際の違いの程度)が、社会一般に許容される程度を超えて一般消費者による商品の選択に影響を与える場合に認められます 8。ただ、商品・役務の内容や取引条件は、通常、商品の選択上重要な要素であり、誤認した状態で自主的かつ合理的な選択を行うことは困難です。したがって、内容や取引条件について「誤認される」表示である場合には、通常、「著しく」の要件が認められるでしょう。
これらを整理すると、以下のような場合、優良誤認表示または有利誤認表示に該当することになります。
- (a)表示内容(=表示全体から一般消費者が通常受ける印象・認識)と、(b)実際の商品・役務の内容や取引条件との間に相違がある かつ
- 当該相違が、社会一般に許容される程度を超えて一般消費者による商品・役務の選択に影響を与える
「表示内容」「一般消費者」の判断基準
近時の消費者庁の措置命令文では、(ⅰ)「あたかも〇〇かのように示す表示をしていた」にもかかわらず「実際には××であった」と認定し、(ⅱ)その表示が「著しく優良」または「著しく有利」と誤認される表示であると評価したうえで、優良誤認表示や有利誤認表示に該当すると判断する、ということが通例化しています。
この「あたかも〇〇のように示す表示」は、前記2-1でみたように、表示全体から一般消費者が受ける認識・印象を基に認定されます。そのため、特に優良誤認表示・有利誤認表示該当性を検討する際には、(a)表示内容(=表示全体から一般消費者が通常受ける印象・認識)の把握が重要です。指定告示に基づく不当表示該当性を検討する際も、表示内容が何かという点は問題になりますので、基本的に同様の思考をすることが重要です。
この把握の基準となる「一般消費者」は、当該商品・役務についてそれほど詳しい情報・知識を有していない通常レベルの消費者、一般レベルの常識を有している消費者を指し 9、個別に判断されます。そのため、一律の基準を定立することは困難ですが、実務対応時の予測可能性を高める観点からは、実際に措置命令を確認し、消費者庁の思考過程を検証することが有用です。直近の事例で参考となる措置命令は次のとおりです。
「果実ミックスジュース」の表示に関する消費者庁の措置命令(2022年9月6日)10
対象表示は紙パックの表示であり、表面に、「厳選マスクメロン」「100% MELON TASTE」「まるごと果実感」と記載されるほか、紙面下半分の大部分にカットしたメロンの写真が掲載されていました。また、側面にもメロンのイラストが複数個利用されていました。
消費者庁は、当該表示について、対象商品の原材料の大部分がメロンの果汁であるかのように示す表示であると認定し、実際には、原材料の98%程度はぶどう、りんごおよびバナナの果汁、メロン果汁は2%程度であったため、優良誤認表示と判断しました。
当該事案では、表面では「果汁100%」でなく「100% MELON TASTE」と記載され、一括表示欄には「原材料名」「果実(ぶどう〈アルゼンチン〉、リンゴ、バナナ、メロン)」と明示されており、誤認されないように思えるかもしれません。もっとも、メロンの写真や「100%」「TASTE」を見た一般消費者が、個々の記載を注意深く確認することは期待できないことから、上記のように認定されたと考えられます。
「打消し表示」に関する考え方
強調表示と打消し表示
自己の供給する商品・役務を一般消費者に訴求する際、断定的表現や目立つ表現などを使って、品質等の内容や価格等の取引条件を強調した表示を行うことがあり、一般的に「強調表示」と呼ばれています。たとえば「業界No.1!」「最大〇時間効果が持続!」といったものですが、「!」を付さなくても、一般消費者が特に強調されていると認識するものは強調表示に当たります。
これに対し、一般消費者がそのような強調表示から通常は予期できない事項であり、商品・役務を選択するにあたって重要な考慮要素となるものに関する表示は、「打消し表示」と呼ばれます 11。たとえば、「□□分野におけるNo.1」「△△条件下の試験結果」のほか、「結果には個人差があります」といったものが挙げられます。
打消し表示が「表示内容」となる(強調表示のみ示しているのではない)ための3要件
「打消し表示」について、特別な議論のように思われるかもしれませんが、基本的には、前記2-1の整理の延長線上にあり、特別なものではないと考えます。すなわち、景品表示法の表示内容は、一般消費者が受ける印象・認識を基礎として判断されます。一般消費者は、強調表示を見て印象・認識を受けることが多いため、誤認されないような強調表示とすることが原則です。ただ、どうしても打消し表示を使う場合、一般消費者が強調表示と一体的に「表示内容」として印象・認識を有するように適切に示す必要があり、その際、次の3要件を満たす必要があります。
(b)(表示内容)一般消費者が、当該打消し表示の内容を理解できること
(c)当該打消しの内容が強調表示と矛盾しないこと(上記(b)の要件の一種と考えられます)
上記3点をすべて満たさない場合、当該打消し表示は「表示内容」に含まれず、結局、強調表示のみを示しているのと同じと認定され、その結果、不当表示と判断される可能性があります。
打消し表示に関する実態調査報告書、措置命令事例
消費者庁は、2017年に「打消し表示に関する実態調査報告書」を公表して上記考え方を明確に示しています。その後、2018年5月に「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」、同年6月には「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」が公表され、これらを整理した「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」も公表されています。
2017年の報告書公表以降、消費者庁は、措置命令において、打消し表示について明示的に不適切であることの評価・判断を相当数行ってきました 12。実務上、打消し表示を用いざるを得ないことは相応にあるでしょうから、上記考え方や措置命令での認定には注意が必要です。直近の事例で参考となる措置命令は次のとおりです。
自動車等の輸出入販売事業者に対する措置命令 13(2021年12月10日)
当該事業者は、自動車のカタログ等において、自動再発進機能が「全車標準装備」と表示する一方で、オプションを同時装着した場合に当該機能が利用できる旨の注記を示していました。しかし、この注記は、自動再発進機能が「全車標準装備」とする強調表示と矛盾しますし(要件(c)を満たさない)、一般消費者としてもいずれが正しいか理解が困難と思われます(要件(b)を満たさない)。
このような考慮の下、当該注記(打消し表示)は表示内容とはならない(強調表示である「全車標準装備」のみ示されている)と判断されたと考えられます。
不実証広告規制とは
不実証広告規制の概要
消費者庁等は、特定の表示が優良誤認表示に当たるかを判断するために、必要がある場合には、その表示をした事業者に対し、15日以内に(法施行規則7条2項)その表示の裏付けとなる「合理的な根拠」を示す資料を提出するよう要求でき、以下いずれかの場合には、その表示は(措置命令との関係で)優良誤認表示とみなされ(法7条2項)、または(課徴金納付命令との関係で)推定されます(法8条3項)。
- 期限内に資料を提出しない場合
- 資料を提出したものの合理的な根拠資料とは認められない場合
これは、一般的に「不実証広告規制」と呼ばれており、本来消費者庁等が優良誤認表示であることを立証すべきところ、その立証を不要とする極めて強力な手続です。表示実務においては、この優良誤認表示の認定に関する特別な制度を常に意識しておく必要があります 14。
「当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」とは
(1)2つの要件とその検討順序
提出する資料が「合理的な根拠を示す資料」であるというためには、以下の2つの要件を満たす必要があります(「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針 − 不実証広告規制に関する指針 − 」(以下「7条2項運用指針」といいます)第2の1)。
(ⅰ) 客観的に実証された内容の資料(資料の客観性)
(ⅱ)表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応している資料(表示と資料の整合性)
広告表示を作成する際には、(ⅰ)客観的な資料といえるかを確認したうえで、(ⅱ)当該資料に沿って表示できる範囲を検討するという流れを経ます。これに対し、合理的な根拠を示す資料の存否が問題になる場合は、(ⅱ)まず、一般消費者の認識を基礎として表示内容が認定され、(ⅰ)当該表示内容に沿った資料の存否が問題になります。
法務担当者が表示作成や審査に関与する際は、この(ⅱ)→(ⅰ)の視点を意識しておくことが有用です。この(ⅱ)は、一般消費者がどのような印象・認識を有するか、という表示内容の問題であり、前記2-1・2-2の内容を踏まえた検討が必要です。
(2)「客観的に実証された内容」であるというための2つの要件
(ⅰ)客観的資料であるというためには、以下いずれかの要件を満たす必要があります(7条2項運用指針第3の2)。
(B)専門家、専門家団体、専門機関の見解や学術文献に該当する
このうち、(A)試験・調査の方法としては、次の(a)(b)いずれかである必要があります(7条2項運用指針第3(1)アおよびイ)。
(a)表示された商品・役務の効果・性能に関連する学術界・産業界において一般的に認められた方法か、関連分野の専門家多数が認める方法
(b)上記(a)が存在しない場合には、社会通念上および経験則上妥当と認められる方法
上記(b)に当たるかは、表示の内容、商品・サービスの特性、関連分野の専門家が妥当と判断するか否か等を総合的に勘案して判断されます。そのため、(a)(b)いずれとの関係でも、関連分野の専門家の意見は重要です。
客観的資料か否かに関しては、個別事例ごとの検討が必要ですが、考え方の整理に際しては、たとえば消費者庁「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」の「第1機能性表示食品の科学的根拠に関する事項」をご一読いただくと参考になることがあるでしょう。
この指針は機能性表示食品に関するものですが、当該食品以外を取り扱う場合も、客観的な資料とは何かを考える際の参考として使える点が含まれています。たとえば、「最終製品を用いた臨床試験(ヒト試験)」について、「主要アウトカム評価項目における介入群と対照群の群間比較で統計的な有意差(有意水準5%)が認められていない場合」は試験結果の評価に不備があると指摘されています(同指針第1の2(2)イ)。
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たとえば、消費者庁「イオンライフ株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(平成29年12月22日)における別添措置命令2(1)、消費者庁「株式会社ファクトリージャパングループに対する景品表示法に基づく措置命令について」(令和元年10月9日)における別添措置命令2(2)の認定が参考になります。 ↩︎
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供給要件/供給主体性に関して深く検討する際には、緑本45~48頁、白石忠志「景品表示法の構造と要点(第9回)不当表示総論(下)違反者の範囲」NBL1059号58頁以下をご参照ください。 ↩︎
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「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年6月30日公正取引委員会告示第3号)の2。 ↩︎
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「景品類等の指定の告示の運用基準について」(昭和52年4月1日事務局長通達第7号)1(1)。 ↩︎
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白石忠志「景品表示法の構造と要点(第7回)違反要件の概要、不当表示総論(上)」NBL1055号73頁にて既に指摘されています。 ↩︎
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独占禁止法においては、公正取引委員会が独占禁止法に違反する疑いのある行為を行っている事業者に対して、当該疑いの理由となった行為の概要等について当該事業者に通知をした場合に、当該事業者がその疑いの理由となった行為を排除するために必要な措置に関する計画を作成して公正取引委員会に申請し、公正取引委員会が当該計画について法律上の要件を満たすとして認定した場合には、排除措置命令および課徴金納付命令をしないこととされています。措置が実施されていないと認められる場合等には認定が取り消されます(独占禁止法48条の5第1項または48条の9第1項)。 ↩︎
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東京高裁平成14年6月7日判決(判タ1099号88頁)(平成13年(行ケ)第454号) ↩︎
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緑本62頁。大阪地裁令和3年4月22日判決(ライフサポートの措置命令取消訴訟判決〔確定〕)でも同様に判断されています。 東京地裁令和元年11月15日判決(判時2502号68頁)(平成30年(行ウ)第30号)では、原告の主張に対応して、「『健全な常識を有する消費者』と限定的に解すべき法令上の根拠は見当たら」ないと判断されました。 ↩︎
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消費者庁「キリンビバレッジ株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(令和4年9月6日) ↩︎
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消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」1頁注2 ↩︎
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消費者庁は、毎年、前年度における「景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組」を公表しており、特に平成29年度(2017年度)から令和2年度(2021年度)に関する文書では、「打消し表示に対する評価を行った事件」が明示されていました。ただ、理由は明らかではないですが、近時はこのような明示は行われなくなっています。 ↩︎
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不実証広告規制が強力であることから、景品表示法7条2項が憲法21条1項および22条1項に違反すると争われたことがありますが、最高裁(三小)令和4年3月8日判決(令和3年(行ツ)第33号)では、いずれにも違反しないと判断されています。 ↩︎

弁護士法人大江橋法律事務所