「記述情報の開示の好事例集 2022」の公表とサステナビリティ開示基準の今後の計画

コーポレート・M&A

目次

  1. 記述情報の開示の好事例集 2022
    1. 「環境(気候変動関連等)」の開示例
    2. 社会(人的資本、多様性等)の開示例
  2. サステナビリティ開示基準の今後の計画
    1. 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)開示基準の適用について
    2. サステナビリティ基準委員会(SSBJ)サステナビリティ開示基準に関する今後の計画

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.203」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 1月31日、金融庁は「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(改正開示府令)の公布・施行にあわせ、「記述情報の開示の好事例集2022」(好事例集)を公表しました。好事例集では、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報に関する開示のうち、「1. 環境(気候変動関連等)の開示例」および「2. 社会(人的資本、多様性等)の開示例」が掲載されています。

 また2月2日、サステナビリティ基準委員会(SSBJ:Sustainability Standards Board of Japan)現在開発中のサステナビリティ開示基準に関する今後の計画」(「今後の計画」)を公表しました。
 SSBJでは、サステナビリティ基準委員会(SSBJ:Sustainability Standards Board of Japan)が公表を予定している国際的なサステナビリティ情報開示基準の内容を踏まえ、日本版のサステナビリティ情報開示基準の策定を進めています。
 改正開示府令で新たに有価証券報告書に記載が求められることとなったサステナビリティ情報の開示については、現状各企業の取組み状況に応じて記載することが認められていますが、今後、策定されるSSBJの開示基準も踏まえ、記述情報の開示に関する原則の改訂が検討されており、有価証券報告書における開示に影響することが想定されます。「今後の計画」によると、2026年3月期に係る有価証券報告書からSSBJが公表する基準に基づくサステナビリティ開示が可能となる予定とされています

 本稿では前半で好事例集に掲載された開示例の一部をご紹介し、後半でISSBの開示基準案の状況やSSBJの今後の計画等、サステナビリティ開示基準の今後の動向についてご案内いたします。

記述情報の開示の好事例集 2022

「環境(気候変動関連等)」の開示例

  • 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 有価証券報告書(2022年3月期)25〜26頁
    ガバナンス体制について、各機関・組織の関係や「気候変動アクション推進委員会」の役割等を端的に記載
【事業等のリスク】
(重要なリスク)
(1)気候変動に関するリスク
[当社グループにおける取り組み・体制等]
ガバナンス(気候変動マネジメント体制)

FY2022 気候変動マネジメント体制

社会(人的資本、多様性等)の開示例

  • 豊田合成株式会社 有価証券報告書(2022年3月期)20頁
    人材戦略の重点項目を端的に記載するとともに、関連する指標の実績と目標を記載
【経営方針、経営環境および対処すべき課題等】
② 社会の分野(S)
ア)人材戦略
社会(人的資本、多様性等)の開示例

サステナビリティ開示基準の今後の計画

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)開示基準の適用について

 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、2021年11月IFRS財団により国際的なサステナビリティ開示基準の開発を目的として設置されました。
 ISSBは2022年3月に「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(S1基準案)と「気候関連開示」(S2基準案)等の公開草案を公表しております。

 また、ISSBは、これらのサステナビリティ開示基準(S1およびS2)を2023年前半に最終化することを目指して、公開草案後の議論を行っています。

サステナビリティ基準委員会(SSBJ)サステナビリティ開示基準に関する今後の計画

 サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、以下の役割を果たすことを目的に2022年7月に設立されました。

  • 国内の開示実務や投資家の期待や意見を集約し我が国からの国際的な意見発信の中心となること
  • ISSBにおけるサステナビリティ開示基準の策定動向を踏まえつつ、日本における具体的開示内容について実務面も踏まえた検討を行うこと

 SSBJでは、ISSBの公開草案をベースとして我が国におけるサステナビリティ開示基準を国際的に整合性のあるものとすべく、ISSBの開示基準が2023年6月末までに公表されることを前提に、以下の時期を目標に開発を進めています。

【SSBJが開発する基準の公表時期】

公開草案の目標公表時期 2023年度中(遅くとも2024年3月31日まで)
確定基準の目標公表時期 2024年度中(遅くとも2025年3月31日まで)

 有価証券報告書に記載が求められるサステナビリティ情報については、SSBJにおいて開示基準が公表された場合には、当該基準に則った開示が求められることが検討されており、上記の目標どおりに確定基準を公表した場合、2026年3月期に係る有価証券報告書からSSBJが公表する基準に基づくサステナビリティ開示が可能となる予定とされています。


【ご参考】我が国におけるサステナビリティ開示のロードマップ

(出所)2022年12月27日公表 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告概要より抜粋

(出所)2022年12月27日公表 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告概要より抜粋
問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務・コーポレートガバナンスコンサルティング室
03-3212-1211(代表)

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