株主総会運営の最適解を知る「Legal Innovation Seminar 多様化する株主総会」講演レポートPR

法務部

目次

  1. 株主総会DXにおける運営の形態の違いと電子提供制度について解説
  2. 電子提供制度の制定により総会担当者がすべきこと
  3. グリーの先進的な株主総会の裏側に迫る
  4. 通算200社以上の支援経験から見る、バーチャル株主総会の現況とよくある困りごと
  5. 自社に最適な株主総会の運営形態を見つけるポイントとは

昨年6月の産業競争力強化法の改正や、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、急速に注目が集まったバーチャル株主総会。自社にとって「最適な総会運営」を模索している企業も多いのではないでしょうか。

1月25日に開催されたオンラインカンファレンス「Legal Innovation Seminar〜多様化する株主総会〜」では、バーチャル株主総会を実施している企業や、そのシステムを提供する企業が、総会運営DXのリアルな実態を紐解きました。

株主総会DXにおける運営の形態の違いと電子提供制度について解説

グリー株式会社 コーポレート本部 法務総務部 シニアマネージャー 松村真弓氏と、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業弁護士 塚本英巨氏は、①バーチャル株主総会の運営方法と、②会社法改正により導入された株主総会資料の電子提供制度について対談しました。

同社法務総務部で、株主総会、組織再編、上場企業のガバナンスを中心とした商事法務を担当する松村氏は、これまで開催してきたハイブリッド参加型株主総会、ハイブリッド出席型株主総会、バーチャルオンリー株主総会などの事例を紹介し、リアルで実施する株主総会との違いやメリット・デメリットについて解説しました。

塚本氏は、上場会社における会社法・ガバナンス対応や株主総会、M&Aといったコーポレート案件を主に取り扱う弁護士。昨年9月に施行された電子提供制度など、株主総会を取り巻く制度の最新情報を挙げ、法制度面での総会準備における留意事項を説明しました。

左から、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業弁護士 塚本英巨氏、グリー株式会社 コーポレート本部 法務総務部 シニアマネージャー 松村真弓氏

左から、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業弁護士 塚本英巨氏、
グリー株式会社 コーポレート本部 法務総務部 シニアマネージャー 松村真弓氏

電子提供制度の制定により総会担当者がすべきこと

塚本弁護士は株主総会を取り巻く制度の変遷・直近のトピックスとして、株主総会DXのポイントを話しました。まず、バーチャル株主総会には「参加型」「出席型」「バーチャルオンリー型」の3種類があり、中でも採用している企業が多い「参加型」には、動画を配信するのみの場合のほか、リアルタイムでのコメント受付をする場合や事前質問を広く募る場合など、いくつかのパターンがあると説明しました。

次に、昨年9月1日に施行された株主総会資料の電子提供制度について解説しました。同制度は、定款の定めが別途必要なものの、株主総会参考書類や、議決権行使書面、事業報告、計算書類、連結計算書類を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載することにより、株主に書面での交付が不要となる制度です。講演では、最低限郵送する必要のある書類や株主の権利、実務上の悩みについても紹介しました。

電子提供制度の下での株主総会の主な招集手続を解説する塚本氏

電子提供制度の下での株主総会の主な招集手続を解説する塚本氏

グリーの先進的な株主総会の裏側に迫る

対談では、3種類のバーチャル株主総会すべての運営を経験した松村氏から、それぞれのメリット・デメリットやおすすめのポイント、法的な留意点が語られました。

特に「出席型」については、形式によっては運営側の工数が増大するものの、2018年以前のリアル総会と比較して北海道から九州まで関東以外の株主の出席が増えたこと、ネット経由での質問受付により、議案に関連したロジカルな質問が増えたことも印象的だったといいます。

また、電子提供制度導入に向けた導入前検証として、2022年グリー株主総会で実施した取組みについては、招集通知のDX拡大により印刷物の削減につながったことと、動画による任意情報提供の有用性の高さをメリットに挙げました。

最後に、バーチャル株主総会も電子提供制度もツールにすぎず、そのツールをどう使いこなすかが大切であり、自社の最適な株主総会の運営を実施するには、株主の声と向き合うことが重要であると述べました。

グリーの株主総会では、毎年改良を重ねて自社にとって最適な株主総会の形を模索している

グリーの株主総会では、毎年改良を重ねて自社にとって最適な株主総会の形を模索している

通算200社以上の支援経験から見る、バーチャル株主総会の現況とよくある困りごと

株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー 斉藤航氏は、バーチャル株主総会の現況についてのデータを発表しました。

これまで200社以上のバーチャル株主総会を支援している同社は、自社での総会運営の経験や各社での実施内容を踏まえて、ここ数年におけるバーチャル株主総会市場動向や、最近の運営に関するトレンド、よくある運営担当者の困りごとを紹介しました。

昨年6月にバーチャル株主総会を実施した企業は、3月決算の企業約2,500社のうち402社。特に、プライム市場での導入が先行して進んでおり、「バーチャル株主総会をやって当たり前」の風潮が進んでいるといいます。

また、業種別で見ると情報通信・サービス業での導入件数がもっとも多い結果に。一方で、実施割合を見ると、製薬や金融、電力・ガス業界が高くなっており、同業他社の導入に追従する動きが大きい傾向が見受けられました。

他にも、事前質問を採用している企業が増えていることや、株主がバーチャル株主総会の操作に慣れてきたこともあり、当日の問い合わせ窓口への入電が年々減少している傾向にあることが示されました。

つづいて、招集通知への記載事項や会場下見の時期、リハーサルなどの事前準備から、機材・設備、前日当日のトラブル対応まで、総会運営のよくある困りごとにも答える同社のきめ細かな支援内容を紹介しました。


株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー 斉藤航氏

株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー 斉藤航氏

自社に最適な株主総会の運営形態を見つけるポイントとは

さくらインターネット株式会社 コーポレート本部 法務部 部長 塚田麻美子氏と、コインチェック株式会社 Sharely事業部長 大島啓司氏は、ハイブリッド出席型株主総会のノウハウについて対談しました。

さくらインターネットは、クラウドコンピューティングサービスやIoTサービスを提供するITインフラ企業です。コインチェックは、暗号資産交換業に加え、バーチャル株主総会の支援サービス「Sharely」を展開しています。

さくらインターネットでは、2020年の新型コロナウイルス感染拡大の影響により「参加型」の株主総会を導入しました。しかし、長引くコロナ禍により株主が議決権行使できない状況が続くことを課題視し、「出席型」の検討を開始。さまざまな支援サービスに触れる中で、「Sharely」を選択したといいます。

塚田氏は、「出席型」の成功のポイントとして、入念なリハーサルが鍵になったと語りました。特に進行を円滑にするために気をつけたポイントとして、議場の台本とスライドの切り替え、導入システムの操作タイミングなどのシナリオ作成を一括で管理したことを挙げます。

つづいて、同社における支援サービス選定のポイントを紹介。さくらインターネットは株主構成上、議決権行使の正確な投票数がリアルタイムで把握できるところを重視してサービスの選定を行ったといいます。

最後に大島氏は、米国からはじまったバーチャル株主総会にコインチェックが参入して、デジタル化やDXを推進してきたことについて、「発行会社やステークホルダーの利便性向上や課題解決に繋げたい」と思いを語り、締めくくりました。

左から、コインチェック株式会社 Sharely事業部長 大島啓司氏、さくらインターネット株式会社 コーポレート本部 法務部 部長 塚田麻美子氏

左から、コインチェック株式会社 Sharely事業部長 大島啓司氏、さくらインターネット株式会社 コーポレート本部 法務部 部長 塚田麻美子氏

その他、株式会社オプティマによる「『想定問答』と『答弁者支援』のアナログ運用からシステム運用へ移行するために大切なこと」、株式会社Jストリームによる「失敗できないバーチャル株主総会を支えるJストリームの提供サービス」と題する講演が行われました。


昨年9月に施行された電子提供制度により、今後ますます普及が見込まれるバーチャル株主総会。

運営コストや株主とのコミュニケーションなどの課題があるものの、印刷物の削減や全社員が視聴可能となるメリットもあります。自社にとって最適な方法を探ってみてはいかがでしょうか。

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