全国株懇連合会「一体型アクセス通知」モデルの制定

コーポレート・M&A

目次

  1. 「一体型アクセス通知」モデルとは
    1. 本モデル制定の背景
    2. ①招集通知(アクセス通知)と②電子提供措置事項の法定記載事項
  2. 実務対応
    1. 「一体型アクセス通知」を作成しない場合と作成する場合の実務の比較
    2. 「一体型アクセス通知」を作成した場合のページ構成 (例)
  3. (ご参考)

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.199」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 10月21日、全国株懇連合会は、電子提供制度における招集通知(電子提供措置事項の一部を含んだ一体型アクセス通知)(以下「一体型アクセス通知」という)のモデルを制定しました。その具体的な内容については、以下のURLよりご参照ください。本稿では、電子提供制度下で活用が見込まれる「一体型アクセス通知」の意義と実務対応について概説いたします。(東京株式懇話会のウェブページURL

「一体型アクセス通知」モデルとは

本モデル制定の背景

 株主総会資料の電子提供制度の下で会社が作成すべき株主総会資料は、基本的には、①招集通知(アクセス通知)と②電子提供措置事項の2種類です。そして、議決権を有する全ての株主に対して①招集通知(アクセス通知)を送付し、②電子提供措置事項はウェブサイトに掲載します。また、書面交付請求がある場合は、②のデータをもとに電子提供措置事項を記載した書面(以下「交付書面」という)を作成し、招集通知に際して書面交付請求した株主に送付しなければなりません。
 しかし、①および②の法定記載事項は、一部重複しています。重複を問題にしない場合、ウェブサイトに掲載した電子提供措置事項をプリントアウトした交付書面を招集通知に添付する体裁(別冊)で差し支えありませんが、この場合、双方を受領した株主はその内容に重複感を感じる可能性があります。

書類の重複イメージ

 そこで、①および②の双方の書類の重複部分を整理したものとして「一体型アクセス通知」のモデルが制定されました。「一体型アクセス通知」は、招集通知(アクセス通知)の記載内容と電子提供措置事項のうち会社法298条1項の記載内容(狭義の招集通知部分)を網羅しています。
 なお、双方の書類を別々に作成した場合、会社においては作成の手間がかかるとともに、双方の記載内容に漏れが生じたり、共通する記載事項について、一方は修正したもののもう一方への修正を失念するリスクなどがあるといえます。この点、「一体型アクセス通知」を作成した場合、会社の負担軽減が図られるとともに、これら修正漏れのリスクを低減できると考えられます。
 もっとも、「一体型アクセス通知」を作成するかは会社の裁量です。これを採用せず、双方の書類を別々に作成することももちろん差し支えありません。全国株懇連合会は、本件の公表資料において、「一体型アクセス通知」のモデルに加え、一体型アクセス通知ではない招集通知(アクセス通知)のモデルも公表していますので、併せてご参照ください。

①招集通知(アクセス通知)と②電子提供措置事項の法定記載事項

 ①招集通知(アクセス通知)と②電子提供措置事項の法定記載事項は、下表のとおりです。一部重複するとともに、それぞれの書類にのみ記載が必要な事項が定められています。

①招集通知(アクセス通知)と②電子提供措置事項の法定記載事項

 「一体型アクセス通知」は、招集通知(アクセス通知)の記載内容と電子提供措置事項のうち会社法298条1項の記載内容(狭義の招集通知部分)を網羅したものです。このことから、「一体型」と呼ばれています。

※1:株主総会の日時及び場所、株主総会の目的事項、株主総会に出席しない株主が書面または電子的方法によって議決権を行使することができることとするときはその旨

※2:会社法施行規則63条に定める事項

※3:電子提供措置をとっているときはその旨、電子提供措置開始日までに電子提供措置事項の内容を記載した有価証券報告書をEDINETに提出することにより電子提供措置を行わない場合にはその旨、会社法施行規則95条の3に定める事項

実務対応

「一体型アクセス通知」を作成しない場合と作成する場合の実務の比較

<「一体型アクセス通知」を作成しない場合>

「一体型アクセス通知」を作成しない場合

 招集通知(アクセス通知)と電子提供措置事項について、それぞれ法定記載事項のみを記載したものとして、個別に作成するパターンです。この場合の留意点は上述のとおりです。

<「一体型アクセス通知」を作成する場合>

「一体型アクセス通知」を作成する場合

 この場合、書面交付請求を行った株主以外に送付する招集通知(アクセス通知)は、「一体型アクセス通知 (a) 」であり、書面交付請求を行った株主に送付する交付書面の冒頭部分「一体型アクセス通知 (b) 」と共通します。そして、書面交付請求を行った株主には、「一体型アクセス通知」に交付書面の他の部分(株主総会参考書類等)を添付して送付することになると考えられます。

「一体型アクセス通知」を作成した場合のページ構成 (例)

 「一体型アクセス通知」を作成した場合でも、株主の利便性等を考慮し、書面に任意の情報を付加することは考えられます。従来から狭義の招集通知に含めて、あるいは付加して提供されることが多かった「議決権行使方法のご案内」や「会場案内図」は、引き続き株主に提供するのが一般的と考えられます。下図は、これを踏まえ、シンプルなページ構成の一例としてお示しするものです。さらなる任意の情報の付加を行う場合は、一般的には「議決権行使方法のご案内」と「会場案内図」の間にページを追加して掲載することになると考えられます。

 なお、さらなる任意の情報の付加を一律に否定するものではありませんが、その検討に際しては、電子提供制度には、社会全体で取り組むべき紙資源の節約という重要な目的があり、書面による情報提供を希望する株主は書面交付請求を行うことができること、敷衍(ふえん)すれば書面での情報提供を必要としない株主の元にも書面が提供されてしまうということを踏まえることが重要と考えられます。例えば、書面による任意の情報提供は、あくまで電子提供制度導入初期の混乱を避けるための経過措置と位置づけること、そして、その旨を株主に案内することも有益と考えられます。今後情報提供のあり方についての検討を深めていくことが望まれます。

(ご参考)

 全国株懇連合会は、「一体型アクセス通知」モデルの制定と併せ、書面交付請求についての実務対応上の留意点等を示した「書面交付請求対応指針」を制定しました。本特集冒頭のURL(東京株式懇話会のウェブページ)より閲覧可能ですので、ご参照ください。

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部会社法務・コーポレートガバナンスコンサルティング室
03-3212-1211(代表)

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