『コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)』の改訂

コーポレート・M&A

目次

  1. 本改訂の背景・方向性
  2. 改訂内容の概要

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.196」の「特集」の内容を元に編集したものです。


『コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)』の改訂
 経済産業省は、コーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会(第3期)において進められてきた検討を踏まえ、7月19日に、「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)の改訂版を公表しました。特集では、本改訂の概要をご紹介します。

- CGS ガイドラインとは -
 企業がコーポレートガバナンスの原則を実践するに当たって考えるべき内容を、コーポレートガバナンス・コードと整合性を保ちつつ示すことでこれを補完するとともに、「稼ぐ力」を強化するために有意義と考えられる具体的な行動を取りまとめたもの(CGSガイドライン1.3より)。

〈改訂後のガイドラインの構成〉

本文
  • 取締役会の在り方
  • 社外取締役の活用の在り方
  • 経営陣の指名・報酬の在り方
  • 経営陣のリーダーシップ強化の在り方
別紙 1 社外取締役活用の視点
別紙 2 監査等委員会設置会社へ移行する際の視点
別紙 3 投資家株主から取締役を選任する際の視点
別冊 指名委員会・報酬委員会及び後継者計画活用に関する指針

本改訂の背景・方向性

  • 検討の背景

    ・日本企業の代表的企業(TOPIX500)の約4割で、PBRが1倍を下回っている。

    ・“アントレプレナーシップ(企業家精神)・アニマルスピリット” を発揮し、より良い経営戦略の立案・スピードを持ってリスクテイクできる環境の実現、企業価値の向上を強く意識した経営が求められる。


  • ガイドライン改訂の方向性

    ・中長期的な企業価値向上に向けた中心的役割を果たし、経営の一元的な責任を負うのは社長・CEOら経営陣であり、ガバナンスの仕組みとして取締役会を機能させることが重要である。

    ・社外取締役が増加傾向にある中では、社外取締役の意識を変え、その資質を向上させていくことが重要である。

    ・経営戦略の策定、ガバナンスの仕組みを作り上げる過程において、執行側と監督側の双方の機能強化を推進する意識が必要である。


  • 本ガイドラインのアプローチ

    ・本ガイドラインに掲載されている取組みの実施を一律に求めるものではなく、各社の自律的な工夫と株主等のステークホルダーへ自社の選択理由の積極的な説明が強く期待される。

(出所)経済産業省「エグゼクティブサマリー - CGSガイドラインの改訂について - 」

改訂内容の概要

(1)取締役会の役割・機能向上

  1. 「監督」の意義
    社外取締役が相当程度増えたこと等を踏まえ、改めて「監督」の意義について整理を行った。
    • 社外取締役が一定程度増え、取締役会による個々の具体的な業務執行決定の範囲が限定的となる場合において、取締役会に期待される「監督」とは、経営陣が策定し、取締役会が決定した経営の基本方針や戦略に照らして、指名・報酬の決定を通じた経営の是非の判断やパフォーマンスの評価を行うことが中核となる。
    • 「監督」には、適切なリスクテイクや社内の経営改革の後押し、リスクテイクをしないことのリスク(不作為のリスク)を提起することも含まれる。
    • 取締役会は資本市場からどう見られているかを意識し、自社の企業価値への評価を理解しなければならない。社外取締役が監督を行うに当たっては、株主等のステークホルダーの利益に資するかどうかの視点も持つことが重要である。
  2. モニタリング機能を重視したガバナンス体制
    ガバナンス体制やそれに応じた機関設計の選択についての考え方を改めて整理した。
    • 以下(A)・(B)に大別される取締役会等のモデルについて、企業が主体的に選択すべきではあるが、モニタリング機能に重点を置いた体制(A)への移行を検討することは有益。
  3. (A)取締役会を監督に特化させること
    を志向する会社
    (B)取締役会の意思決定機能を重視しつつ取締役会内外の監督機能の強化を志向する会社
    機関設計 典型的には指名委員会等設置会社、監査等委
    員会設置会社
    典型的には監査役設置会社
    権限移譲 個別の業務執行決定は執行側に大幅に権限移譲 個別の業務執行決定のうち重要性の低いものは執行側に権限移譲
    構成 社外者が中心 社内の業務執行者が中心(他方で、監督機能
    の確保のために一定数の社外取締役を選任)
    指名委員会
    報酬委員会
    審議の効率化のために、指名委員会、報酬委員会に対してタスクアウト(委員会の決定内容は必ずしも取締役会を拘束する必要はない) 監督機能の確保のために、社外者中心の指名委員会・報酬委員会を設置し、タスクアウト(委員会の決定内容は取締役会において尊重される必要がある)
    開催頻度 個別の業務執行の決定は最小限であるため、頻度は相対的に少ない(但し、経営戦略の議論などに充てるため、頻繁に開催することも考えられる) 個別の業務執行の決定を相当数行うため、迅速性を損なわないために、頻度は相対的に多いことが想定される
    (出所)CGSガイドライン 2.3

  4. 監査等委員会設置会社へ移行する際の検討事項
    監査等委員会設置会社に移行する流れが強まっていることを踏まえ、移行を実効的なものとする上で重要な検討事項を整理した。
    • 取締役会の役割・機能の見直しが重要であり、個別具体的な業務執行事項の決定を執行側に大幅委任し、取締役会を監督に特化させることが十分検討されるべきである。
    • 監査等委員会の意見陳述権と任意の指名委員会・報酬委員会の関係につき、監査等委員会が任意の指名委員会・報酬委員会の決定手続の適切性を中心に確認し、各委員会の判断を踏まえて監査等委員会としての意見を形成することが考えられる。
  5. 社長・CEOの解任・不再任をめぐる議論の契機となる基準等
    • 社長・CEOの解任・不再任の議論を実効性あるものとするため、取締役会または指名委員会において、社長・CEOの解任・不再任の要否について議論を始める契機となる基準を平時から設けておくことを検討することが有益である。

      ex) 経営目標と対応した定量基準等を定め、その未達成を解任・不再任の議論の契機とする。
      未達成で再任する場合は取締役会・指名委員会に改善プランを提出させる。

(2)社外取締役の資質・評価の在り方

  1. 社外取締役の資質
    • 社長・CEOの選解任に責任をもって関与し、必要に応じてリードすることができる人物が社外取締役に含まれていることが重要である。
  2. 指名委員会・報酬委員会の構成・委員長
    • 任意の指名委員会・報酬委員会について、構成員の過半数を社外取締役とし、委員長を社外取締役とすることを検討すべきである。
  3. 社外取締役の評価
    • 社外取締役の評価は、社外取締役である議長や指名委員長、筆頭独立社外取締役などが主導し、社外取締役による自己評価や相互評価等の取組みを行うことが考えられる。
  4. ボードサクセッション
    • 取締役会が監督機能を自律的かつ継続的に発揮できる状態を作り出す取組み(ボードサクセッション)について議論することが考えられる。

(3)経営陣のリーダーシップ強化のための環境整備

 社長・CEOがリーダーシップを発揮して経営改革を推進するための仕組み作りが有益である。

  1. トップマネジメントチームの組成と権限の委譲
    • 社長・CEOを中心としたトップマネジメントチームにて、各業務執行役員の責任・権限を明確にし、権限移譲を進めることが有効であり、機能毎の最高責任者(CXO)を設置することも有用である。
    • トップマネジメントチームにおいても、イノベーション創出のため、ダイバーシティの確保は重要であり、ダイバーシティの面も含めた積極的な開示が望ましい。
  2. 経営戦略等の策定・実行における工夫
    • 上場企業の企業価値は資本市場において評価されるという基本に意識を向け、内部留保の使途、現預金水準、研究開発や人的資本などの無形資産の投資・活用戦略、事業ポートフォリオの見直しと最適化の検討等も重要。
  3. 経営・執行の機能強化のための委員会の活用
    • 戦略やサステナビリティ等の特定のテーマを社長・CEOのコミットメントの下で全社的に検討・推進するための委員会を設けることも選択肢として考えられる。
    • こうした委員会は執行側の委員会として設置されることが多いが、そのような場合も、委員会が取締役会に直接報告する体制とすることは、委員会での検討結果を取締役会での議論に繋げる観点等から有益である。
  4. 経営陣の報酬
    • 経営指標(KPI)の実現のためにどのような報酬体系がよいのかというストーリー性をもって検討することが重要。
    • 非財務指標を用いる場合には、取締役会や報酬委員会において、経営戦略等を踏まえた議論を十分に行った上で、指標や定量目標を明確に定め、当該指標を選択する理由等について、透明性の高い開示を行うことが望ましい。
    • グローバル企業であれば、社長・CEOについて、業績連動報酬の比率をグローバルにベンチマークする企業の水準まで高めることや、長期インセンティブ報酬の比率の目安をグローバル水準である40~50%程度とすることも考えられる。

(出所)CGSガイドライン 4.2
問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部会社法務・コーポレートガバナンスコンサルティング室
03-3212-1211(代表)

この特集を見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する