ディスクロージャーワーキング・グループ報告

コーポレート・M&A

目次

  1. サステナビリティに関する企業の取組みの開示
  2. コーポレートガバナンスに関する開示
  3. 四半期開示の見直し(四半期決算短信への「一本化」)

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.195」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 6月13日、金融庁の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(「DWG」という)は、「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告-中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて−」(「DWG報告」という)を公表しました。

 DWGは、企業経営や投資家の投資判断におけるサステナビリティの重要性の急速な高まりや、企業のコーポレートガバナンスに関する議論の進展を踏まえ、企業情報の開示のあり方に関する検討をすべく、2021年9月に設置されました。
 そして、今般、その検討結果をとりまとめたDWG報告が公表されました。本内容をもとに今後法令改正が検討されることになりますが、DWG報告には、有価証券報告書の開示項目の新設・充実や四半期開示の見直しなどの提言が含まれており注目されます。内閣官房の「新しい資本主義実現会議」の資料によれば、有価証券報告書の開示項目の新設・充実については、早ければ2023年3月期から適用となる可能性があり、注視が必要です。

DWG報告の要点

DWG報告の概要を基に三菱UFJ信託銀行が作成

(出所)DWG報告の概要を基に三菱UFJ信託銀行が作成

 以下、DWG報告における提言内容のうち、特に発行会社に影響が大きいと思われる事項を、その背景とともにご紹介します。

サステナビリティに関する企業の取組みの開示

背 景 提言内容
サステナビリティ全般に関する開示
  • 日本政府として2050年のカーボンニュートラルを目指すことが宣言された
  • サステナビリティに関する取組みが企業経営の中心的な課題となるとともに、それらの取組みに対する投資家の関心が世界的に高まっている
  • 有価証券報告書において、サステナビリティ情報に関する独立した「記載欄」を創設すべきである
  • 当該「記載欄」においては、国際的なフレームワークと整合的な「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの構成要素に基づく開示を行うことが適切と考えられる
  • ただし、企業の業態や経営環境が異なることを踏まえるとともに、企業負担にも配慮することが重要であることから、以下とすべきである

• 企業において、自社の業態や経営環境、企業価値への影響等を踏まえ、サステナビリティ情報を認識し、その重要性を判断する枠組みが必要となる観点から、「ガバナンス」と「リスク管理」は全ての企業が開示する

• 「戦略」と「指標と目標」は、開示が望ましいものの、各企業が「ガバナンス」と「リスク管理」の枠組みを通じて重要性を判断して開示する

人的資本、多様性に関する開示
  • 人的資本や多様性については、長期的に企業価値に関連する情報として、機関投資家においても着目されている
  • 多くの国際的なサステナビリティ開示のフレームワークにおいて、人的資本や多様性に関する情報が開示項目となっている
投資家の投資判断に必要な情報を提供する観点から、以下の対応をすべきである
  • 「人材育成方針」(多様性の確保を含む)や「社内環境整備方針」について、有価証券報告書のサステナビリティ情報の「記載欄」の「戦略」の枠の開示項目とする
  • 上記の「方針」と整合的で測定可能な指標(インプット、アウトカム等)の設定、その目標及び進捗状況について、同「記載欄」の「指標と目標」の枠の開示項目とする
  • 女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差について、有価証券報告書の「従業員の状況」の中の開示項目とする

コーポレートガバナンスに関する開示

背 景 提言内容
取締役会、指名委員会・報酬委員会等の活動状況
  • 取締役会、指名委員会・報酬委員会の活動状況の開示については、コーポレート・ガバナンス報告書や任意開示書類において一定の進展がみられる
  • 米国、英国、ドイツ、フランスなどにおいて、これらの活動状況が法定書類で詳細に開示されている
  • 取締役会・委員会等の機能発揮の状況に対する投資家の関心の高まりがみられる
  • 取締役会、委員会等の活動状況の「記載欄」を有価証券報告書に設けるべきである
  • 当該「記載欄」においては、個々の上場企業により取締役会と執行部門との関係や委員会等の役割や権限に幅があることに鑑み、監査役会等の活動状況の開示と同様、まずは、「開催頻度」、「主な検討事項」、「個々の構成員の出席状況」を記載項目とすべきである
政策保有株式等に関する開示
  • 政策保有株式(保有目的が純投資以外の上場株式)についての開示については、投資家からみた好事例と実際の開示との乖離が大きいと指摘されている
  • 投資家と投資先企業との対話において、政策保有株式の保有の正当性について建設的に議論するための情報が提供されることが望ましい
  • 左記の状況を踏まえ、政策保有株式の発行会社と業務提携等を行っている場合の説明については、有価証券報告書の開示項目とすべきである
  • 政策保有株式の議決権行使の基準についても、積極的な開示を促すべきである
  • 一部の企業において、政策保有株式が「純投資目的」と整理され、政策保有株式としての開示が行われていないケースがあると指摘されている。今後、金融庁において、企業における「純投資目的」の保有株式について、純投資と政策保有の区分の考え方や両者の間の区分変更の動向、両区分における銘柄別の保有期間などの実態を調べ、適切な開示に向けた取組みを進めることが期待される

四半期開示の見直し(四半期決算短信への「一本化」)

背景 提言内容
  • 米国は法令上の四半期開示を継続している一方、欧州では法令上の四半期開示義務は廃止されており、各企業の判断により、任意で四半期開示を行う実務が定着している
  • 四半期開示については、経営の短期主義化につながる、経営の短期主義とは無関係である等、幅広い考え方が示されているが、これまでの実証研究をみる限り、四半期開示と短期主義との関係は必ずしも明確ではない
  • 四半期報告書と四半期決算短信の内容面での重複や開示タイミングの近接が指摘されており、エンフォースメントなどを工夫することにより、両者の「一本化」を通じたコスト削減や開示の効率化が可能であると考えられる
  • 以下を踏まえると、上場企業についての法令上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し、取引所の規則に基づく四半期決算短信に「一本化」することが適切と考えられる

• 開示のタイミングがより遅い四半期報告書に集約させることは、情報の有用性・適時性を低下させるおそれがあること

• 四半期決算短信に関しては、投資家に広く利用されていること。また、一部の企業においては、その発表と併せて充実した決算説明資料を公表するなどの動きが進んでおり、こうした積極的な開示姿勢の後押しも重要であること

• 「正確性の担保」という点からは、四半期報告書の形でなくても、代替的な手法(例:四半期決算短信を臨時報告書として開示することにより担保する方策等)により確保することも考えられるとの指摘があること

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部会社法務・コーポレートガバナンスコンサルティング室
03-3212-1211(代表)

この特集を見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する