東証、2022年3月期決算会社の定時株主総会動向を公表
コーポレート・M&A
※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.194」の「特集」の内容を元に編集したものです。
4月25日、東京証券取引所は、上場会社の定時株主総会の開催日程等の動向をあらかじめ把握し、株主・投資者の議決権行使の環境整備を図ることを目的として実施した調査結果として、「2022年3月期決算会社の定時株主総会の動向について」を公表しました。
調査内容は、①本年の開催日程等について、②招集通知の早期ウェブ開示・早期発送、③議決権の電子行使の状況、④英文招集通知の提供状況、⑤バーチャル総会の開催予定とあり、東証内国上場会社のうち2022 年 3 月期決算会社2,301 社(プライム、スタンダード及びグロース市場上場会社)を対象とし、うち1,771 社から回答を得ているものです。
電子提供制度の施行も間近となっている中、本調査結果から発行会社における総会プロセス電子化の進展状況をうかがうことができます。その傾向は、発行会社の市場区分や規模(時価総額、株主数)によっても異なるものと考えられます。そこで、本稿では上記①~⑤の調査結果概要をお知らせするとともに、当社にて、総会の電子化に関係する一部の項目について上場区分別や規模別に分析した結果についてもご紹介いたします。
調査結果概要
① 本年の開催日程等について
- 本年3月期決算会社の定時株主総会は、 6月29日(水)に最も集中する見込み
- 最集中日の集中率は、25.7%と、昨年(27.3%)を下回り、 1983年の集計開始以来最も低い水準を更新する見込み
- 株主総会が株主との重要な対話の場であるとの認識が浸透してきたことに加え、暦の影響で24日(金:20.6%)と28日(火:18.4%)に分散したことが影響
② 招集通知の早期ウェブ開示・早期発送
- 招集通知のTDnetにおける公表を総会開催日の3週間(中15営業日)以上前に行う会社は、76.8%と過去最高水準を更新する見込み
- 発送を総会開催日の3週間以上前に行う会社は、25.2%と過去最高水準を更新する見込みであるものの、ほぼ横ばいの水準
③議決権の電子行使の状況
- 機関投資家向けの議決権電子行使プラットフォームを利用するプライム市場上場会社は92.5% と、昨年(市場第一部上場会社)と比べて32.2pt増加見込み
- 個人投資家向けにインターネットによる議決行使を可能とする会社は、全上場会社のうち76.5% と、昨年と比べて10.7pt増加見込み
④ 英文招集通知の提供状況
- 招集通知本文及び株主総会参考書類の英訳を提供予定のプライム市場上場会社は、91.8% と、昨年(市場第一部上場会社)と比べて29.9pt増加見込み
- 事業報告及び計算書類を含む招集通知のすべての英訳を提供予定のプライム市場上場会社は、 24.1%と、昨年(市場第一部上場会社)と比べて6.3pt増加見込み
⑤ バーチャル総会の開催予定
- バーチャル総会の開催を予定している会社は、18.7%と、昨年と比べて4.1pt増加する見込み
- バーチャル総会を開催予定の会社の大多数がハイブリッド参加型での開催を予定
市場区分別、規模別等の分析
(1)招集通知等の発送予定日及びTDnetを通じた公表予定日
【表1】は、招集通知の発送予定日(以下「発送日」とします)と、TDnetを通じた公表予定日(以下「公表日」とします)の日数差について、市場区分別に表したものです。
【表1】招集通知の発送予定日とTDnetを通じた公表予定日の日数差
発送日と公表日の差を1日以内と回答した社数について、グロース市場上場会社は過半数、スタンダート市場上場会社もほぼ半数である一方、プライム市場上場会社は2割に満たない結果となっております。
また、プライム市場上場会社では、7日と回答した会社が最も多く(205社、21.3%)、また7日以上前を公表日とする会社が約4割となっており、WEBを活用した早期開示がより進んでいると考えられます。なお、回答結果のうち発送日と公表日の最大差は、「18日」でした。
(2)議決権の電子行使の状況
【表2】【表3】は、議決権の電子行使についてスタンダード市場及びグロース市場を対象とした時価総額別、株主数別の導入状況となります。
(※プライム市場は、96.5%と大半の会社が導入済と回答しているため本分析は実施しておりません)
【表2】電子行使導入状況(時価総額別)
【表3】電子行使導入状況(株主数別)
スタンダート市場においては、時価総額、株主数ともに概ね規模が大きいほど導入割合が高い傾向ですが、グロース市場については規模に因らない結果となっており、事業特性等に応じて柔軟に導入を進めている様子が見られます。
(3)バーチャル総会の開催予定
バーチャル総会の開催予定については、バーチャルオンリー型(以下「オンリー型」とします)、ハイブリッド出席型(以下「出席型」とします)、ハイブリッド参加型(以下「参加型」とします)それぞれについて市場区分別【表4】、時価総額別【表5】、株主数別【表6】に分析しました。
【表4】バーチャル総会開催予定(市場区分別)
【表5】バーチャル総会開催予定(時価総額別)
【表6】バーチャル総会開催予定(株主数別)
まず市場区分別では、スタンダード市場における開催予定は、他の市場と比較して顕著に低い結果となっております。株主総会の電子化に向けては、スタンダード市場上場会社におけるバーチャル総会の浸透が鍵になってくると考えられます。
次に時価総額別では、時価総額が高いほど開催予定の割合も高くなる傾向が明らかになりました。特に、時価総額5,000億円超の会社では、過半数の会社が参加型を中心に開催予定と回答しています。また、株主数別でも同様の傾向となっており、こちらでは、株主数5万人超の会社で過半数の会社が開催予定と回答しております。
参加型については相当数の会社が開催予定としており全体傾向から状況が把握できますが、オンリー型、出席型については、開催予定と回答した社数が僅かとなっています。【表7】はオンリー型、出席型の開催予定社数を市場区分別、規模別に分類したものです。プライム市場会社が多くを占めているほかに目立った傾向はまだみられません。
【表7】オンリー型、出席型の開催予定社数
他方、【表8】のようにオンリー型、出席型を開催予定と回答した24社を業種別に分類すると、「情報・通信業」に分類されている会社が半数近く(10社、41.7%)にのぼることから、オンリー型、出席型の開催については、現状では事業内容との親和性が強く影響しているものと考えられます。
【表8】オンリー型、出席型の業種
三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部会社法務・コーポレートガバナンスコンサルティング室
03-3212-1211(代表)