Web3.0スタートアップへの適切な投資手法とは エクイティ投資とトークン投資の比較

ファイナンス
山田 達郎弁護士 弁護士法人GVA法律事務所

目次

  1. Web3.0スタートアップに対する投資手法
  2. Web3.0とは
    1. Web1.0とは
    2. Web2.0とは
    3. Web3.0とは
  3. VC・CVCによる投資スキーム
  4. エクイティ投資
    1. LPSを用いたスキーム
    2. LPSスキームでは外国に存在するスタートアップへのエクイティ投資が難しい
  5. トークン投資
    1. LPSではスタートアップへのトークン投資が難しい
    2. 匿名組合・任意組合を用いたスキーム
    3. トークン投資の場合の暗号資産交換業該当性
  6. 終わりに

Web3.0スタートアップに対する投資手法

 昨今、Web3.0というワードをよく聞くようになりました。Web3.0とはいったいどういったものでしょうか?

 NFTプラットフォームを運営するOpenSeaが3億ドルを新たに調達し、設立4年で評価額が133億ドルとなりました。また、ブロックチェーンゲーム「Axie Infinity」を運営するSky Mavisは1.5億ドルの資金を調達しました。いずれも2022年に入ってからの出来事で、Web3.0スタートアップはますます注目を集めているといえます。

 現在のところスタートアップへの投資の手法としては、エクイティ投資が一般的です。具体的には、スタートアップがVC・CVCといった投資家に対し、エクイティ(株式)を発行し、その取得の対価としてVC・CVCが投資します。

 しかし、トークンと呼ばれる価値が表象されたデジタルデータを用いた資金調達・投資の手法も考えられるところです。既存の国内法の枠組みで、トークンによる資金調達・投資をすることは可能でしょうか?

 本稿では、Web3.0の概要を説明します。そして、Web3.0スタートアップに対する投資手法について、VC・CVCといった投資家がどのような手法で投資することができるか、現行の日本法の枠組みの中で検討します。

Web3.0とは

 現状、「Web3.0」の明確な定義は存在しませんが、一般的には下記のように整理されることが多いです。

Web1.0とは

 1990年代から2000年代半ばまでのWebの特徴やその時期を指して、Web1.0と呼びます。

 この時代は、インターネットが発達してきたものの、メディアによる情報を我々消費者が一方的に受領する立場でしかありませんでした。「情報の伝達が一方向・一方的」という特徴・制約があった時代です。

Web2.0とは

 その後、2000年代半ばから2010年代後半まで(あるいは本稿執筆時点も含むかもしれません)のWebの特徴やその時期を指して、Web2.0と呼びます。

 SNS等の発達・流行により、Web1.0の時代には情報の受領者たる立場だった我々消費者が、情報を発信し、あるいはインターネット上で他者と交流を持つことが可能となった時代とされています。一方で、Google社やFacebook社(現Meta社)等のメガテック企業による情報の独占や個人情報の取扱について、危機感が現れてきた時代ともいえます(このことは、本稿執筆時点でも同様でしょう)。

Web3.0とは

 Web2.0の時代の危機感や問題点へのアンチテーゼとして、ブロックチェーン技術あるいはそこに存在する思想をもとに、情報の民主化・非中央集権化という考え方が、近年様々なシステムや組織のあり方に現れてきました。具体的には、暗号資産であるETH、分散型金融であるDefi、分散型自律組織といわれるDao、といったアプリケーションやプロジェクト等が代表的なものといえます。

 Web3.0の捉え方は様々あり得るところですが、このような特徴を有していることは間違いないでしょう。

VC・CVCによる投資スキーム

 日本におけるVC・CVCによるスタートアップへの投資、いわゆるPEファンドによる投資は、

  1. 投資事業有限責任組合法にもとづく投資事業有限責任組合(以下「LPS」といいます。)を用いたスキーム
  2. 商法上の匿名組合を用いたスキーム
  3. 民法上のいわゆる任意組合を用いたスキーム

等があります。なかでも①LPSスキームが代表的といっていいかと思います。投資対象は対象企業の株式であり、いわゆるエクイティ投資が大半です。

 一方で、 Web3.0スタートアップは、日本の法規制や税制を嫌い、海外で事業をなすことが増えています。そういったスタートアップに対して、LPSスキームでエクイティ投資をすることは、日本の法制度上、実はなかなか難しい状況です。そのため、従来のエクイティ投資の他、これらのスタートアップがブロックチェーン技術を用いたトークン(価値が表彰されたデジタルデータ)を発行し、その取得の対価として資金を投資することも考えられます。このようなトークンを用いた投資スキームは、現在の日本法のもとではどのように設計すればよいでしょうか。

エクイティ投資

LPSを用いたスキーム

 LPSを用いたスキームでは、下図のように、無限責任組合員(GP)と、その他の有限責任組合員(LP)により、投資事業有限責任組合(LPS)が組成されます。

LPSを用いたスキーム

 この場合、無限責任組合員は組合契約にもとづき、LPSの持分(いわゆる集団投資スキーム持分。金融商品取引法2条2項5号)をLPに配分することになるため、原則として、第二種金融商品取引業の登録が必要となります(金融商品取引法2条8項7号ヘ・同法28条2項1号・同法29条)。また、株式を運用するという側面もあるため、原則として、自己運用業として投資運用業の登録が必要となります(金融商品取引法2条8項15号・同法28条4項3号・同法29条)。これらは金融商品取引法上の業規制であり、実際に登録を完了するのは相当にハードルが高いとされています。

 これらの登録を回避する方法も金融商品取引法上用意されており、例えば次のようなものがあります。

  1. 金融商品取引業者に自己募集・自己運用業を委託し、自らは一切行わない場合 1
  2. 適格機関投資家等特例業務の届出を出す場合(金融商品取引法63条1項・2項)
  3. 全員関与要件を満たす場合(金融商品取引法2条2項5号イ、同法施行令1条の3の2)

 それぞれ簡単に説明すると、①は金融商品取引業の登録を受けている他の事業者に対して、金融商品取引業に該当する自己募集業務および自己運用業務を委託し、自らはそれらを一切行わない等の一定の要件を満たすと、第二種金融商品取引業および投資運用業の登録が免除されるものです。

 ②は、LPに1名以上の適格機関投資家が存在すること、LPで適格機関投資家以外の者は49名以下の特例業務対象投資家であること等の一定の要件を満たす場合に、自らは第二種金融商品取引業および投資運用業の登録に代え、届出により自己募集・自己運用をなしうる方法です。

 ③は、LPSのスキームでは用いられることはないですが、意思決定方法に関する要件(金融商品取引法施行令1条の3の2第2号)、出資者の役割に関する要件(金融商品取引法施行令1条の3の2第2号)を満たすことによって、組合持分が集団投資スキーム持分に該当しなくなるという方法です。

LPSスキームでは外国に存在するスタートアップへのエクイティ投資が難しい

 しかし、前述したとおりWeb3.0スタートアップは、日本の法規制や税制を嫌い、海外で事業をなすことが増えており、LPSスキームでのエクイティ投資は難しいです。

 投資事業有限責任組合法(以下「LPS法」といいます)では、その行う事業が限定されています(LPS法3条1項)。外国企業へのエクイティ投資には、LPSへの出資額の50%までという上限が設定されています(LPS法3条1項11号、LPS法施行令3条)。

投資事業有限責任組合契約に関する法律

第三条 投資事業有限責任組合契約(以下「組合契約」という。)は、各当事者が出資を行い、共同で次に掲げる事業の全部又は一部を営むことを約することにより、その効力を生ずる。

一 株式会社の設立に際して発行する株式の取得及び保有並びに企業組合の設立に際しての持分の取得及び当該取得に係る持分の保有

二 株式会社の発行する株式若しくは新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)又は企業組合の持分の取得及び保有

(略)

十一 外国法人の発行する株式、新株予約権若しくは指定有価証券若しくは外国法人の持分又はこれらに類似するものの取得及び保有であって、政令で定めるところにより、前各号に掲げる事業の遂行を妨げない限度において行うもの

十二 組合契約の目的を達成するため、政令で定める方法により行う業務上の余裕金の運用

投資事業有限責任組合契約に関する法律施行令

第三条 法第三条第一項第十一号に掲げる事業については、同号の規定による取得の価額の合計額の総組合員の出資の総額に対する割合が百分の五十に満たない範囲内において、組合契約の定めるところにより、行わなければならない。

 2021年、LPS法の特例として、一定の要件を満たす場合にはこの上限が適用されないとする規定が、産業競争力強化法により設けられました 2

 しかし、要件のうちの1つであるいわゆるオープンイノベーション要件は下記の内容を満たすことが求められています。

 具体例として、投資先海外企業と国内企業との業務提携を実施することや、投資先海外企業と国内企業がM&Aを実施することを企図していることが挙げられているとおり、最終的に日本国内の産業の競争力強化に寄与することが必要とされており、このような要件を満たすのは一定の難易度があるように思います。

 LPSによる海外企業への投資については、やはり抜本的な法改正が待たれるところです。

投資先の国外の事業者と、我が国の事業者において、高い生産性の実現又は国内外における新たな需要の開拓が行われること等、新たな付加価値を創出することにつながり、ひいては我が国産業の競争力強化に寄与することが見込まれるものであること。

(経済産業省「産業競争力強化法における外部経営資源活用促進投資事業計画について」参照)

トークン投資

LPSではスタートアップへのトークン投資が難しい

 Web3.0スタートアップへの投資の方法として、エクイティ投資の他、Web3.0スタートアップがトークンを発行し、それに対して投資をすることも考えられます。株式や債券をトークン化した場合には電子記録移転有価証券表示権利等(金融商品取引法29条の2第1項8号・業府令6条の3。いわゆるセキュリティトークン)に該当し、また、トークンの性質によっては暗号資産(資金決済法2条5項)に該当する場合がありえます。

 上述のとおり、LPSでは行う事業が限定されています。そこでは電子記録移転有価証券表示権利等・暗号資産といったものは含まれておらず(LPS法3条1項参照)、現行法のもとでは、LPSが、Web3.0スタートアップが発行するトークンに対して投資を行うことは難しいところです。この点は、2022年3月30日に公表された、「NFTホワイトペーパー(案)~Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略~」(自民党デジタル社会推進本部 NFT政策検討PT(平将明 PT座長))(以下「NFTホワイトペーパー案」といいます)でも下記のとおり言及されています。

一方、日本では、例えばファンドを組成する際に一般的に用いられる投資ビークル・スキームの一つが、投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく投資事業有限責任組合(いわゆるLPS)であるが、LPSの対象事業は同法3条1項に列挙された事業に限られており、現行法上、暗号資産やトークンの取得及び保有は対象事業に明示的には含まれていない。そのため、同条同項に列挙された投資対象事業の対象となる資産(有価証券、金銭債権等)をトークン化したもの(例えば、列挙されている有価証券をトークン化したいわゆるセキュリティトークン)を取得・保有する事業に投資できるか否かが必ずしも明確ではないことに加えて、その他の暗号資産やトークンを取得・保有する事業に対する投資のビークルとしてLPSを用いることは基本的にはできないものと解される。

 LPSが投資対象事業として、Web3.0スタートアップの発行するトークンを取得・保有する事業を行うことができれば、LPSを通じたWeb3.0スタートアップへのリスクマネーの供給がよりスムースになることが期待できます。そのため、NFTホワイトペーパー案でも提言されていますが、LPSがWeb3.0スタートアップの発行するトークンを取得・保有する事業もLPSの投資対象事業に含むよう、LPS法の改正が強く待たれるところです。

匿名組合・任意組合を用いたスキーム

 一方で、匿名組合・任意組合については、その根拠法である商法・民法において、当該組合が行う事業の限定はありません(商法535条以下、民法667条以下)。
 そのため、現行のLPS法を前提とする場合、匿名組合・任意組合を用いたスキームにより、Web3.0スタートアップの発行するトークンを取得・保有する事業を行い、Web3.0スタートアップへの投資を行うことが考えられます。

匿名組合・任意組合を用いたスキーム

 匿名組合の場合は、匿名組合員の有限責任性が確保されます。一方で任意組合の場合には全組合員が無限責任を負います。そのため、一部の組合員の有限責任性を確保するため、匿名組合を用いたスキームを採用することが一般的です。

 LPSを用いたスキームと異なり、匿名組合を用いたスキームや任意組合を用いたスキームでは、出資対象事業に制限がありませんので、トークンを取得・保有することが可能です(ただし、当該トークンの設計次第では、Web3.0スタートアップ側の法規制の考慮・対応が必要となります)。匿名組合や任意組合を用いたスキームでもエクイティ投資を行うことは可能ですが、資金調達手法としてトークン発行という方法を希望するWeb3.0スタートアップが増えてくる可能性はあります。

 匿名組合を用いたスキームにしても、任意組合を用いたスキームにしても、組合が組合員に発行する組合持分は集団投資スキーム持分に該当するものと考えられるため、4-1で検討したとおり、原則として、第二種金融商品取引業および投資運用業の登録が必要となる点、これらの例外として、適格機関投資家等特例業務の届出、全員関与要件等の方法が検討されるべき点においては変わりありません。

トークン投資の場合の暗号資産交換業該当性

 さて、Web3.0スタートアップが発行するトークンが資金決済法上の「暗号資産」に該当する場合、上記5-2で検討した匿名組合の営業者は「暗号資産交換業」の登録が必要でしょうか。

 「暗号資産交換業」は資金決済法において次のように定義されています。

資金決済法

第二条
(略)
7 この法律において「暗号資産交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「暗号資産の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいい、「暗号資産の管理」とは、第四号に掲げる行為をいう。

一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換

二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理

三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。

四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。

(略)

 「暗号資産交換業」とは、暗号資産の売買等を「業として行うこと」をいうとされているところ、「業として行うこと」については、対公衆性のある行為で反復継続性をもって行うことをいい、投資目的で自らが行う場合であれば、対公衆性の要件を満たさない、との金融庁の見解がパブリックコメントにより示されています。

 匿名組合の場合、匿名組合に出資された金銭はすべて営業者に帰属し、投資の効果も営業者に帰属するものと考えられます。そのため、匿名組合を用いたスキームであれば、営業者自身による自己投資として、対公衆性の要件を満たさず、「業として行うこと」には該当しないと考えることが可能です。

 したがって、仮にトークンが暗号資産に該当する場合でも、匿名組合を用いたスキームによる投資は、暗号資産交換業に該当しないと整理することができます。

終わりに

 本稿では、Web3.0スタートアップに対する投資手法として従来どおりのエクイティ投資の他、トークンによる投資の手法を検討してきました。
 Web3.0スタートアップは、近年急速に発展してきたビジネスモデル・思想をもとに運営されており、日本において法整備が追い付いていないことは否定できません。
 LPS法をはじめとする法改正に期待しつつも、現行法のもとでいかにしてWeb3.0スタートアップや投資家のサポートができるか、今後も継続的な議論が必要であると考えています。

※本記事はGVA Professional Group Blog 法務情報を転載したものです。


  1. 平成19年パブリックコメントP58 No103-115 ↩︎

  2. 経済産業省「ファンドによる海外投資規制の特例」 ↩︎

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