コーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会(第3期)の開催

コーポレート・M&A

目次

  1. Board3.0に関する議論の日本への適用(CGS研究会第1、2回会議より)
  2. 経営戦略・経営計画の策定(CGS研究会第3回会議より)
    1. 経営戦略策定における委員会の活用
    2. トップマネジメントチームの組成(機能毎の最高責任者(CXO)の活用等)
  3. 中長期インセンティブ報酬の活用等(CGS研究会第3回会議より)
    1. 中長期インセンティブ報酬
    2. 社外取締役の報酬水準等

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.192」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 経済産業省では、2016年よりコーポレート・ガバナンス・システム研究会(「CGS研究会」という)を継続的に開催しており 1、その成果は、コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(「CGSガイドライン」という)2 として公表されています。そして、昨年11月よりCGS研究会の第3期が開催されています。
 第3期は、企業特性に応じたガバナンスの姿・水準の違いや、健全な起業家精神の発揮を促すための方策について検討した上で、執行側の機能強化やグローバルな競争の中で成長を目指す企業のガバナンス等について検討を行うとされ、本年6月末を目途に報告書を取りまとめ、CGSガイドラインを改訂することを目指すとされています。第3期の議論は、まさに企業特性に応じ、ガバナンスの形式から実質化をより進める検討といえ、発行会社にとって有益な観点が多く含まれているものと考えられます。本特集では、第3期で検討された内容の一部をご紹介します。なお、第3期の議論は継続しており、本特集は議論の最終結果を示すものではございません。

Board3.0に関する議論の日本への適用(CGS研究会第1、2回会議より)

 第1回会議で、米国においては、モニタリング・ボードの課題(取締役会が得られる情報の不足等)の克服のため、Board3.0(経営陣による戦略の策定・遂行を効果的に監督する仕組み)が提案されている旨と下表の整理等が紹介されました。第2回会議では、日本にBoard3.0を適用することについて議論する場合、これを単に経営経験者を取締役として選任することや伝統的な業務執行機関としての取締役会への回帰などを指すものとして捉えることは適切ではないが、日本でも取締役会の監督機能を強化していく際に、米国のBoard3.0の議論の各要素に着目することには一定の意義があるとされました。

年代 区分 内容
1950年代〜1960年代 Board1.0
  • アドバイザリー・ボード
  • 取締役はCEOが率いる経営チームに所属
  • 社外取締役は、顧問弁護士、取引先銀行などの関係者で構成
1970年代〜現在 Board2.0
  • モニタリング・ボード
  • CEO以外は経営陣から独立した社外取締役により構成。独立性の基準が厳格化
  • 指名・報酬・監査委員会の整備が進展
将 来 Board3.0
  • 経営陣による戦略の策定・遂行を効果的に監督することが目標
  • 投資のプロの取締役が経営陣による戦略の策定・遂行の監督を専門的に担当。併せて「戦略検証委員会」と「戦略分析室」を設置
  • Board3.0における取締役は以下の特徴を有する
    ①経営陣から得られる豊富な情報を活用、②ファンドや外部コンサルタント、社内部門の有する潤沢なリソースを活用、③長期の株式報酬により、高い意欲を持つ

(出所)第1回会議「資料4」48頁

経営戦略・経営計画の策定(CGS研究会第3回会議より)

経営戦略策定における委員会の活用

 経営戦略の立案プロセスは執行側と監督側の双方にまたがる部分であるが、必要な監督を行いつつ、スピードを損なわずに優れた戦略を構築できる枠組をいかに作るかが重要との考えから、「経営戦略策定における委員会の活用」について議論されました。委員会を活用する主な目的は、下図のとおり2パターンに整理され、それぞれの目的に応じた委員会の役割や構成等について議論がなされました。

戦略等の検討において委員会を活用する主な目的

(出所)第3回会議「資料3」9頁

トップマネジメントチームの組成(機能毎の最高責任者(CXO)の活用等)

 執行側のトップマネジメントにおいて、戦略や計画を効果的に立案・遂行できる体制をいかに機能させるかが重要との考えから、「トップマネジメントチームの組成(機能毎の最高責任者(CXO)の活用等)」について議論されました。機能毎に最高責任者(CXO)を設置するメリットは、以下とされました。

  1. CXOが事業部門に横串を通すことで、事業部門間のシナジー創出や、コーポレート部門主導での資源配分の最適化、施策遂行を行う
  2. CXOからCEOに直結する経路を設けることで、本社の重要課題がトップに上がりやすくする
    ※肩書きだけ導入している場合もあるが、本来的には機能集約を行い、レポートラインを明確化するといった実態面を整えることが重要

(参考データ)CXO存在比率(日英比較)

調査対象グループ CXO制度を導入する企業の割合 CFO
(ファイナンシャル)
CLCO
(リーガル&
コンプライアンス)
COO
(オペレーティング)
日本 TOPIX100全体 56.6% 45.5% 23.2% 35.4%
JPX400全体 38.1% 23.6% 10.4% 23.6%
東証1部 20.0% 9.7% 2.8% 13.1%
英国 FTSE100全体 90.4% 79.8% 67.0% 43.6%
FTSE350全体 75.5% 67.4% 38.2% 29.5%
全上場企業 61.7% 54.1% 15.8% 20.7%

(出所)第3回会議「資料3」19頁

中長期インセンティブ報酬の活用等(CGS研究会第3回会議より)

中長期インセンティブ報酬

 経営陣のリスクテイクを促すために、経営陣に対するインセンティブ報酬の活用が必要との考えから、インセンティブ報酬の導入実態についての分析結果が示されました。そこでは、中長期インセンティブ報酬は相当程度普及しているものの、退職慰労金の置き換えの形で導入したケースなど、あるべき中長期インセンティブ報酬の割合について十分な議論がなされないまま、若干割合に留まっている企業もあり、特に規模の小さい企業では、変動報酬の割合が比較的少ないとされました。
 そのうえで、報酬委員会や取締役会で中長期インセンティブ報酬の議論をするに当たっては、以下の3点の重要性について課題提起がなされました。

  1. 報酬水準・構成の最適な在り方や、経営戦略・経営計画を踏まえた報酬制度におけるKPI設定について、ストーリー性を持って議論し、報酬制度に織り込むこと
    • その際には、リスクを取って成長を実現する、事業の立て直しをするなど、その企業が抱える課題への対応を促すことのできるインセンティブ設計とすることが重要
    • また、財務指標に限らず、企業として重視している経営指標を織り込むことも考えられる
  2. 特にグローバルな競争の中で成長を目指す企業においては、海外も含めた優れた経営人材の登用という観点を重視する必要があること
  3. 社長・CEOに限らず、他の経営陣や管理職も含め、整合的な報酬制度となっていること

社外取締役の報酬水準等

 下図のとおり、社長の報酬総額を1とすると、社外取締役の報酬は0.13と低い水準であることが示され、機関設計を変更し社外取締役の役割が変わる場合でも、報酬水準を見直さないケースなどもあり、責任・時間的拘束に見合った報酬支給が望まれるとされました。

社長の報酬総額を1とした場合のほかの役位の報酬総額比率

(出所)第3回会議「資料3」29頁

 また、社外取締役に対し業績に連動する報酬を支給することや、株式報酬を過度に高い比率で付与することは弊害があり得るものの、業績条件が付かない自社株報酬の支給や株式自体を保有することは、社外取締役を企業価値向上に向けた当事者意識を持つとともに、株主目線を培うために望ましい取り組みであるとされました。

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部会社法務・コーポレートガバナンスコンサルティング室
03-3212-1211(代表)

  1. 経済産業省「CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)」 ↩︎

  2. CGSガイドラインは、コーポレートガバナンス・コードにより示された実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を企業が実践するに当たって考えるべき内容をコーポレートガバナンス・コードと整合性を保ちつつ示すことでこれを補完するとともに、「稼ぐ力」を強化するために有意義と考えられる具体的な行動を取りまとめたものである(出所:同ガイドライン)。 ↩︎

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