日本企業のアジアでの課題をワンストップで解決 M&Pアジア株式会社が提供する価値とは
法務部
M&Pアジア株式会社(以下「M&Pアジア」)は、三浦法律事務所とアジアへの思いを共有する井上 諒一弁護士、渡邉 雄太氏、樽田 貫人氏によって設立された、アジアに特化した総合コンサルティングファームです。
アジアにおけるビジネスの現場では、リーガル、税務・会計、ビジネス面のアドバイザーが異なることで、日本企業担当者の業務負担が大きくなり「アジア事業をトータルでサポートしてくれるアドバイザー」が求められていたと井上弁護士、渡邉氏、樽田氏は語ります。
井上弁護士が三浦法律事務所に参画してから1年半というスピードで実現したM&Pアジアの設立。その背景にはどのような経緯があったのでしょうか。
井上弁護士、渡邉氏、樽田氏、三浦法律事務所の渥美 雅之弁護士に伺いました。
井上 諒一弁護士 三浦法律事務所パートナー/ M&Pアジア株式会社CEO
三浦法律事務所のパートナー弁護士であり、東南アジア・南アジアプラクティスの責任者を務める。インドネシアに2年半の駐在経験を持つ。外国語が得意で、5か国の外国語を習得(英語、インドネシア語、ベトナム語、中国語、スペイン語)。著書に『インドネシアビジネス法実務体系』(中央経済社、2020年)がある。
渡邉 雄太 M&Pアジア株式会社CFO
国内大手海運会社である日本郵船株式会社にて総合商社等とのJV設立・運営を通じた海洋事業開発に従事。その後、本社財務部で1年半勤務後、イギリス、オランダに約3年間駐在。キャリアを通じ、世界各国の会計、税務、法務を担当。国際会計、国際税務に詳しい。
樽田 貫人 M&Pアジア株式会社COO
カンボジア、インドネシアで、複数の法人立ち上げ経験を有する。直近の業務としては、インドネシア法人の立ち上げ責任者として3年間ジャカルタに駐在。東証一部、インドネシア証券取引所上場の企業とのJV設立・運営にも携わる。インドネシア語が堪能。
渥美 雅之弁護士 三浦法律事務所パートナー
日・英・米(NY州)3か国の弁護士資格を有し、独禁法案件及びアジアを含む海外コンプライアンス案件を専門に取り扱う。2006~2008年公正取引委員会に勤務し、独禁法執行・政策立案に係る海外当局との協力・連携や、消費者庁設立に伴う景品表示法の改正等を担当。2009~2017年森・濱田松本法律事務所にて独占禁止法の最先端実務に携わる(2016〜2017年、米国連邦取引委員会や米国の大手法律事務所にて執務)。2017〜2018年東証一部上場企業のコンプライアンス調査部長を経て、2019年から現職。Legal 500においてRecommended LawyerやAsian Legal Businessにおいて40Under40に選ばれるなど、対外的にも高い評価を得ている。
M&Pアジア設立の背景
M&Pアジア設立の背景について教えてください。
井上弁護士:
まず、三浦法律事務所のアジア拠点をどう作るか、という議論がありました。他の法律事務所と同様、(外資規制上可能な国については)自前でオフィスを出したり現地の法律事務所と提携してデスクを設置する形態も考えていましたが、日本企業が必要としている法務、税務、会計、ビジネスまわりのサービスをワンストップで提供したくM&Pアジアというコンサルティングファームの設立に至りました。
なぜそのような考えに至ったのでしょうか。
井上弁護士:
三浦法律事務所の前に所属していた法律事務所では、2年半ほどジャカルタに駐在しており、多くのお客様から「日本企業がアジアで必要としているサービスのうちリーガルは一部でしかなく、会計・税務や実務回りもトータルでサポートしてほしい」という声を多くいただきました。これは、M&Pアジアを立ち上げる過程でクライアントや潜在的クライアントにニーズをヒアリングしたときにも多く出た意見です。
現地では、法律事務所、会計事務所、税務事務所、コンサルティングファームを使い分け、それぞれの意見をまとめる作業に課題を感じている方が多くいらっしゃいます。
渡邉様、樽田様はどのような問題意識を持たれていましたか。
渡邉氏:
私は大学卒業後、日本郵船に入社し、海洋事業開発の部署や東京本社の財務部に1年半ほどいた後、ロンドン、アムステルダムに駐在していました。
井上とは逆の立場、つまり法務、税務、会計に対応する企業の担当者という立場で、日本企業の海外における実務を見ていました。
井上から申し上げたように、案件を進める際には法務、税務、会計のアドバイザーに確認し、それぞれのアドバイスをまとめて本社に説明します。
アドバイザーの助言をパッチワークのようにつないでいくことになるのですが、スコープが違っていたり、コミュニケーションがうまくいかなかったりすることが多々ありました。
また、本社から質問を受けて1人のアドバイザーに確認すると、他のアドバイザーにも確認すべきことが出てきて、複数箇所への確認をしてやっと本社に回答ができる、ということはかなり多かったのです。
総合的なサービスを提供してくれる1つのアドバイザーに依頼して、ムラのないアウトプットが出せると本社の納得も得やすく、うまくいくのではないかという問題意識を持っていました。
樽田氏:
私の前職はスタートアップで、カンボジア、インドネシアでの法人立ち上げを行っていました。
2つの国で法人立ち上げをするなか、法令と実務の乖離を感じていました。
法令に沿う形で実務面のソリューションを出してもらえるパートナーの方が見つからず苦労した経験があり、M&Pアジアのソリューションで解決していきたいと考えています。
皆様が立ち上げのメンバーになった背景も伺えますでしょうか。
井上弁護士:
私がリーガル、渡邉が税務・会計、樽田がビジネス・実務面を担当しています。
渡邉とは高校からの同級生で15年の付き合いです。樽田とはインドネシアで出会い、意気投合して一緒にやろうと。
渡邉氏:
井上とは古くからの付き合いなので、友人として話をしていました。当時ロンドンにいた私の問題意識を井上に伝え、井上からは弁護士としての問題意識を聞いて、お互いに足りない部分を補うことができるのであればチャレンジしてみたいと感じたのです。
樽田氏:
前職では、インドネシアのホテルの1室で悶々としながら立ち上げ業務を行っていて、日本企業は海外でビジネスを行うにあたってお金を稼ぐところに集中できていないと感じていました。井上から話を聞いて、いいソリューションだと思いましたし、皆様の後押しができる点も魅力だと感じています。日本のためにもなると思いました。
井上弁護士:
樽田は本当に前のめりでして、「明日会社に辞めるって言えば最短でいつからやれるかな」という感じでした。
樽田氏:
最短で進みたかったんですよね(笑)。
まさに皆様が課題だと感じていた点を解決するサービス提供の形がM&Pアジアだったのですね。三浦法律事務所では、今回の取り組みに至るまでにどのような意思決定があったのでしょうか。
渥美弁護士:
当事務所のアジア戦略を組み立てているなかで、井上から問題意識を聞き、事務所としてバックアップすることを決めました。
新しい取り組みなので事務所内でもいろいろな意見がありました。リスクを懸念する意見もありましたが、三浦法律事務所は基本的に所属する弁護士にやりたいことがあれば、それを事務所全体で応援していこうというカルチャーなので、リーガル面での問題がないサービスであればOKという形でまとまりした。
井上から申し上げたとおり、従来の法律事務所ではカバーできない、現地のお客様のニーズに合致するサービスが提供できる点に魅力を感じたのです。
井上先生は、事務所へ提案される際にどのような準備をされていましたか。
井上弁護士:
進めていくのはなかなか大変で骨が折れました(笑)。
私が移籍したのは2020年の4月、M&Pアジアの設立が2021年の9月です。1年半の準備期間はありましたが、最初に提案したときは事務所のメンバーから「本当に実現できるのかな」という目を向けられていたように思います。
そこで、まずは実績を作ることが重要と考え、1年間はニュースレターを書いたりセミナーをやったりしながら、かつ少し先取りして、法律事務所として可能な範囲で、実務的なアドバイス、税務上のアドバイスを行いながらお客様の反応を確かめていきました。
そうして地道にお客様の声を集め、事務所のメンバーにもアジアでの需要を理解してもらうようにしました。
M&Pアジアが提供する価値
M&Pアジアが提供するサービスの内容について教えてください。
井上弁護士:
地域としては、インドネシア、ベトナムに拠点を設け、ASEAN全体に幅広く展開しています。
たとえば、大手建設会社のマレーシア案件の調査や、日系大手食品メーカーのタイの個人情報保護法の調査など、インドネシア、ベトナムの周辺国についてもソリューションを提供しています。
これから東南アジアを中心に拠点を増やしていき、より多くのクライアントのお手伝いができたらいいですね。
他の法律事務所にはない強みとして、どのような点があげられますか。
井上弁護士:
コンサルティング会社のM&Pアジアと法律事務所の三浦法律事務所が提携することで、法務・税務・会計をワンパッケージでサポートできることと、さらにリーガル面については、フルサービスの法律事務所である三浦法律事務所と提携して幅広い法分野に対応できることが最大の強みです。
たとえば、M&Aにおける対象会社のデューデリジェンス(DD)は特徴的です。
一般的には法律事務所がリーガル面のDDを行い、財務・税務DD、バリュエーションは別のアドバイザーが行います。お客様はそれぞれのアドバイザーから出てきた意見を集約して稟議申請をしないといけないので骨が折れるわけです。
我々の場合、三浦法律事務所が主体となってリーガル面のDDを行い、M&Pアジアは財務・税務DD、バリュエーション、財務モデリングも合わせて提供しています。
実際、日本の大手商社様から一括でご依頼をいただき、「まとめてやってもらえるので助かる」という評価をいただいています。
また、進出の場面では会社の設立、許認可の取得、税務のセットアップ、月次・年次の納税代行など、会社を運営するうえで必要なバックオフィス業務をワンストップでお引き受けしています。これもお客様から高い評価をいただいています。
かなり手ごたえを感じているようですね。
渡邉氏:
事業を始める前は不安もあったのですが、始まってみると、思っていたよりもはるかに多いニーズやお客様からのご要望があることがわかりました。
いろいろな問題を抱えている方が想像以上に多く、我々がお手伝いできる部分はかなりあると感じています。
樽田氏:
さまざまな日系企業様からお問い合わせをいただいています。1つの案件を始めると、芋づる式に問題がつながっていきますので、より高品質なサービスを、より広範囲にわたって提供していくことが課題です。
たとえば、当初は会社設立に関するサポートというご依頼であったとしても、ビジネスを進めるうえでのレギュレーションについてのご相談や、パートナー探しをどうしたらいいかというご相談などへと、サービス範囲が広がっていくイメージです。
ワンパッケージにすることで、費用面でもメリットが出てくるようでしたら伺えますか。
井上弁護士:
従来の法律事務所の場合、現地の専門家からアドバイスを受け、それを日本語に変換してクライアントに渡します。現地の費用+日本の法律事務所の費用がかかるので、どうしてもコストがかさんでしまいます。
我々は内部に現地の人間がいて、現地の事情もわかるので膨大なメモを取る必要がなく、リーズナブルな価格が出せる体制になっています。提携先の現地法律事務所とは信頼関係を築けているので、提携先から出てくる価格も良心的といえます。
渡邉氏:
たとえば、M&Aの財務、税務、法務のDDを複数ファームに頼むと、スコープが定まらずに、費用が膨れがちです。我々が受けた場合、お客様のスコープを最適化できるので、価格を下げられます。
樽田氏:
会社設立をする場合でも、現地の役所の手続など、日本企業にとって慣れない業務が発生し、それが目に見えないコストとなってきます。他の法律事務所ではなかなか対応してくれないことが多いようですが、我々はそのような周辺業務についてもフレキシブルにサポートできます。
そのほか、お客様から高い評価を得ている点についても伺えますか。
井上弁護士:
日本企業にとって大きな障害の1つである言語の問題について、強力にサポートできる点もお客様に喜んでいただけています。
たとえば、現地の方と日本のお客様が同じ席に着く会議では、インドネシア語と日本語が入り混じるカオスな状況になります。インドネシア人はインドネシア語で、日本人も日本語で、自分たちだけの話をし始めるからです。
そういう状況になっても、私は日本語もインドネシア語も話せるので、それぞれの言語でリードして会議をブレイクさせずにまとめることができます。これは喜んでいただけますね。
渥美弁護士:
井上が特殊なのかもしれませんが、現地語も駆使しながら細かいところまで自分たちだけでやりきるというのは、おそらく他の事務所ではなかなかされていないのではないでしょうか。かなり評価していただいていると思います。
井上弁護士:
インドネシア語については樽田も精通していますし、しかも樽田はジャカルタに常駐しています。日本のお客様の目の前で現地の方とお話をすると安心していただけますね。
樽田氏:
現地語でコミュニケーションできる優位性はもちろんのこと、現地の法令を直接読めるので、英訳した場合のニュアンスの違いなどが起こりにくくなることも強みです。
前職では、インドネシアの弁護士の方が口頭で説明されても根拠がどこにあるのかわからず、本社への説明に窮する場面もありました。そういった部分も自分たちでチェックして回答できる点は評価していただけていると思います。
三浦法律事務所との提携関係が生み出すシナジー
M&Pアジアでは、分野を限定せずにあらゆるご相談を受けているのですか。
井上弁護士:
良いご質問をありがとうございます。ここは三浦法律事務所グループとしてのM&Pアジアの強みが発揮できるところです。
M&Pアジアが提携している三浦法律事務所には、M&A、個人情報保護、独禁法、コンプライアンス、金融、訴訟をはじめとする各分野の専門家がそろっており、あらゆる角度からのご相談に対応できる体制が整っています。これは、アジア法務に特化したブティックファームでは見られないものだと思います。
たとえば、個人情報保護に関するご相談があった場合、機微情報の有無、国外移転の際の要件といった論点について、個人情報を専門とする弁護士に相談しながら、アジアでの実務について深掘りしていくことができます。
渥美先生は、三浦法律事務所とM&Pアジアが生み出すシナジーを感じていますか。
渥美弁護士:
非常に感じています。我々の既存クライアントがアジアでビジネスを行う際や、思わぬトラブルに巻き込まれたときに、井上のところで適切にハンドルしながらサポートできるのは、事務所としても大きな強みだと思います。
また、M&Pアジアでは、我々も含めて従来の法律事務所ではなかなか支援できていなかった会社設立や税務まわりなどのニーズに応えることができています。M&Pアジアでのご支援をきっかけに、リーガルの問題が派生してきたところで三浦法律事務所が支援することも多く、このようなシナジーは今後も増えていくだろうと感じています。
ASEAN全域での展開を目指して
どのような企業にM&Pアジアを活用してほしいと考えていますか。
井上弁護士:
アジアでビジネスを行う日本企業様に幅広く使っていただきたいのですが、特に今のアドバイザーに満足できていない方にはぜひご活用いただきたいです。
たとえば、今起用しているリーガルアドバイザーが、現地事務所とのメッセンジャーの役割しかしてくれない、という不満がある方に使っていただけると嬉しいです。
渡邉氏:
私自身の駐在経験を振り返ると、各国の法律事務所のジャパンデスク担当者は、2、3年で日本に帰国されることが多く、現地ビジネスのリアルなところにコミットする方はあまり多くない印象です。
我々は現地に深くコミットしていると自負していますので、ぜひお気軽に利用してみていただければと思います。
樽田氏:
最近、アーンスト・アンド・ヤング(EY)のジャカルタオフィスで日系企業担当部門のトップを務めていた濱田 幸子もM&Pアジアに加わり、ワンパッケージで質の高いサービスを提供できる体制をいっそう強化することができました。ご興味のある方はお問い合わせいただければと思います。
三浦法律事務所では、井上先生のように志を持ったメンバーの可能性をどう広げていきたいと考えていますか。
渥美弁護士:
志のある方にご参画いただいて、新しい取り組みを実行していくことはウェルカムです。
井上も思いを持って入ってきて、1年半で形にしました。おそらく他の事務所ではこのスピード感は見られないでしょう。
法律事務所は全体的に保守的な面がありますが、我々は地域・分野ともにフルカバレッジでやりたいという考えを持っていて、そのなかでアジアも重要な要素だと捉えています。井上の思いと事務所の考えが合致したわけです。
我々の足りないピースを補っていただける志のある方がいればぜひコンタクトしていただきたいと思います。
井上先生はこのようなコンサルティングファームの設立について、入所前から漠然と考えていたのですか。
井上弁護士:
漠然とではなく明確に考えていました。入所前に三浦、渥美と食事をしたのですが、ワンストップのコンサルティングのスキームについて議論するという明確な目的を持って会いに行きました(笑)。
渥美弁護士:
M&Pアジアの設立前から、日本の弁護士を現地へ派遣するモデルはなかなか続かないのではないかという問題意識を持っていました。最近はアジアにコミットしようという気概のある日本の弁護士が減っているからです。
当事務所なら、日本側からM&Pアジアを支援することも可能ですし、M&Pアジアに参加し、井上の背中を見て成長することもできます。アジアで一旗あげたい弁護士の方にはぜひ来ていただきたいですね。
志のある方にとっては最高の環境ですね。それでは、最後にM&Aアジアのビジョンである「ワンストップでアジア事業の課題を解決する」ための計画について教えてください。
井上弁護士:
ワンストップかつ現地で直接会って話ができる日本人のコンサルタントがいることが、皆様から喜んでいただけている点です。
インドネシア、ベトナムに進出されるお客様は、ASEAN全域でビジネスを手がけていることが多いので、拠点を増やし、現地で相談できる体制を整えたいですね。
もちろん、ただ相談を受けるだけではなく、拠点同士が連携し、高いクオリティのコンサルティングが提供できる体制を作っていきたいと考えています。
渡邉氏:
設立以来ずっとご相談が増え続けていて、我々だけではいつか限界がきてしまいますので、一緒にやっていただけるメンバーを増やし、拠点も増やしていければと思います。
法務、税務、会計、ビジネスのスペシャリティを持っていて、アジアという成長しているフィールドの中でチャレンジしたい方がいたらぜひご連絡いただきたいです。
樽田氏:
これは私の個人的な願望になってしまうのですが、いずれはバックオフィスだけでなく、稼ぎ頭のフロント側もサポートできる、本当のワンストップサービスを実現したいと思っています。
将来的には「アジアのコンサルといえばM&Pアジア一択」という存在になりたいですね。
(取材・編集・文:BUSINESS LAWYERS 編集部)