日本たばこ産業とSUPER STUDIOが語る、リーガルテック導入のプロセスと法務オペレーションの理想像PR
法務部
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リーガルテックの導入・活用を進めていくにあたっては、導入時の社内調整、導入後の社内浸透や運用構築などに大きなハードルがあります。ITツールの導入を決めた企業は、それらの課題をどのように乗り越え、活用に至ったのでしょうか。
11月25日に開催されたオンラインカンファレンス「Legal Innovation Conference 〜法務DXの壁を越えろ〜」では、AI契約審査プラットフォーム「LegalForce」を導入している日本たばこ産業株式会社(以下、JT)の日本マーケット 法務担当 太田皓士氏、株式会社SUPER STUDIO(以下、SUPER STUDIO)の経営企画group経営企画unit 法務・リスクマネジメントteam 中山洋子氏が、株式会社LegalForce 執行役員 最高法務責任者CLO 佐々木毅尚氏を聞き手に、トークセッション形式でその経験談を語りました。
LegalForceの検討から社内承認を得るまで
JTでは、LegalForceの導入以前、契約書レビューのやりとりをメールで行っていたことにより、「知見が属人化しやすい」という課題を抱えていました。契約審査をより効率化していきたいという狙いもあり、かねてから国内外でのリーガルテックの動向を追っていたところ、LegalForceの記事を見て、検討したといいます。
一方、SUPER STUDIOは、現在法務担当が2名体制のベンチャー企業です。もともとは月間平均50件程度の契約書レビュー業務を1人で担当しており、「リソース不足」が一番の課題でした。契約審査の品質の向上と効率化を求められるなかで、上長から「リーガルテックを使いこなせる人材になってほしい」との話があり、検討のきっかけになりました。
リーガルテック導入時に乗り越えなければならないハードルの1つに「予算の獲得」があります。両社は、それぞれ次のような工夫をすることで、周囲を説得していったといいます。
「トライアル(β版)導入の段階で、チームメンバーに対してアンケートを実施。LegalForceの指摘や提案を受けて修正した箇所が契約書内にどれだけあったか、LegalForceをどれだけ起動したかなどの定量的な面と、感想といった主観的な面について調査し、資料化した。正式導入後も定期的にアンケートを行った。また、現在もLegalForceがどれだけ業務に役立っているかを継続的に調査しており、製品に関する要望がある場合は、直接LegalForce社にフィードバックするなどしている」(太田氏)
「経営陣に法務畑の人がいるわけではなかったので、LegalForceの導入によって期待できる効果や、顧問弁護士との棲み分けなどに重点をおいて稟議のなかで説明した。リーガルテックは定型業務の効率化によって業務品質を向上できる点が一番の特徴である一方、顧問弁護士はそのアドバイスに価値があると考えている」(中山氏)
LegalForceにとにかく触れて、業務に活かせる方法を探ることが重要
ITツール導入時によくみられる課題として、実際に導入に至ったとしても、現場に浸透せず、活用に失敗してしまうケースが多く見られます。両社は、部門内での利用が定着するまでのあいだに、どのような工夫をしたのでしょうか。
JTでは、部内での継続的かつ頻繁なコミュニケーションを大切にしたといいます。太田氏は「導入当初は1週間から2週間に1回程度、ミーティングやチャットでのコミュニケーションで、LegalForceの機能や活用方法についてシェアするなど、LegalForceを利用するきっかけづくりを折に触れて行った」と説明します。
一方、もともと法務担当が1名体制だったSUPER STUDIOでは、いかに自分自身がLegalForceに慣れるかがポイントになったといいます。中山氏は、「どのような使い方があるかを熟知してから導入したわけではない。日々積極的に利用して、業務に活かせる部分を取り入れるように意識していた。1〜2か月程度経った頃に、気づいたら日常業務のなかにLegalForceが染み込んでいる状態になっていた」と、実際に利用していくなかでツールに慣れ、活用方法を習得していった様子を振り返りました。
重宝しているLegalForceの機能は「ひな形・書式集」「契約書比較」「条文検索」
では、実際に両社はどのような形でLegalForceの機能やサービスを契約業務のなかで利用しているのでしょうか。具体的な活用方法について見ていきます。
中山氏が「一番ありがたかった」と評価するのは、LegalForceに搭載されている弁護士作成の契約書のひな形・書式集です。その理由について、「ベンチャー企業かつ事業会社の場合、新たな契約に向き合う機会が多い。LegalForceには、たくさんのひな形があり、また日々アップデートされるため、それらを参考にすることで効率的かつ網羅的にリサーチを始めることができ、契約書審査・ドラフト作成における工数を削減できる。結果として、重点的に検討しなければならないところに時間を割けるようになった」と語ります。
さらに中山氏は、契約書比較機能の便利さについても「当社が商流のあいだに入るようなケースでは、両社の契約を差分比較し、リスクを検討することができる。また、ドラフト版と締結版の差を確認したい場面などでも効率的に差分比較が行えている」と触れました。
太田氏が「重宝している」とするのは、条文検索機能です。実際の使い方やその効果について「たとえば、相手方から契約書の案が送られてきて、条項を修正したり追加しようとする場合、参照できるものを利用したうえで、その契約書に応じた修正を加えていくほうが効率的であり、より良いものができる。LegalForceは実装されているひな形が充実しているほか、自動レビューを行った過去の案件についても対象に含まれるため、それらを一括して探せることも有用」と説明します。
また、太田氏によると、ナレッジシェアという面においても、条文検索機能は有効だといいます。
「LegalForceの条文検索は、チームメンバーがレビューをした契約条項も検索対象となるため、『あの人はここをこのように工夫しているから、自分でも取り入れてみよう』などと、品質や精度を向上させていくことができる」(太田氏)
ただし、条文は日々増えていくため、太田氏は「完全一致や除外検索などをうまく活用して的確な条文を探し出す工夫が必要」であるとも付け加えました。
リーガルテックの活用で目指す、法務オペレーションの理想像
最後の話題は、リーガルテックサービスを活用するなかで目指していきたい法務オペレーションの理想像について。「審査のフローはLegalForceで効率化できてきているが、審査の受付時に課題が残っている」とするのは、中山氏です。「現在は、契約の具体的な内容やリスクなどを現場の担当者が考えてプロジェクト管理ツール『Jira』へ入力している状況。この依頼作業に時間がかかっているので、フォーム形式で受け付けるなどして効率化し、できる限り現場に寄り添ったフローにしていきたい」と展望を語りました。
一方、太田氏は、「機械に任せられるところは機械に任せて、私たちは会社の価値観や姿勢に関わるような、人間が判断すべき領域に注力していきたい。その結果としてリスクマネジメントも改善していけると思う」と、付加価値の向上を目指していく考えを示しました。
こうした2社の導入事例を踏まえて、佐々木氏は、「リーガルテックは万能なツールではないが、導入する際にさまざまな工夫をすると、得られる効果は大きくなる。今回の2人のご意見やお話を参考にしていただければ」とコメントし、セッションを締めくくりました。
株式会社LegalForce
株式会社LegalForceは、2017年に大手法律事務所出身の弁護士2名によって創業されました。独自のAI技術と弁護士の法務知見を組み合わせ、企業法務の質の向上、効率化を実現するソフトウェアの開発・提供しています。京都大学との共同研究をはじめ、学術領域へも貢献しています。2019年4月に正式版サービスを提供開始したAI契約審査プラットフォーム「LegalForce」、2021年1月よりAI契約書管理システム「LegalForceキャビネ」の正式版を提供しています。