法務責任者やキャリアコンサルタントが語る、これからの法務組織と法務人材のキャリア・人材育成の在り方PR 「Legal Innovation Conference 〜法務組織とキャリア〜」講演レポート

法務部

目次

  1. これからは「ビジネスオリエンテッド」な法務人材が求められる
  2. 法務組織の多様性と統一性を両立するための取り組み方
  3. 若手法務パーソンがビジネスサイド/ CXOのキャリアを考えるためのポイント
  4. 法務・経営の専門性を備えた経営法務人材になるためのポイント
  5. 多様化が進む法務担当者のこれからのキャリア形成方法
  6. おわりに

コロナ禍によりビジネスを取り巻く環境の変化が加速し、各企業で法務の必要性・重要性への認識が高まるなか、法務組織に求められる機能は大きく変化しています。先行きが見えない時代に、法務パーソンは今後どのようなスキルを磨いていくべきでしょうか。また組織としては、そのスキルをどのように配置・活用すべきでしょうか。

7月28日にオンライン開催された「Legal Innovation Conference 〜法務組織とキャリア〜」では、各社の法務責任者や法務分野を専門とするキャリアコンサルタントが登壇し、「法務パーソンのスキル・キャリア」と「法務組織の人材育成・採用」をテーマとした講演が行われました。本稿ではその様子をダイジェストでお届けします。

これからは「ビジネスオリエンテッド」な法務人材が求められる

弁護士ドットコム株式会社 キャリア事業部 事業部長 西村英貴は、「管理部門専門エージェントから見たこれからの法務パーソンに求められるスキル・マインドセットとは」と題し、人材エージェントとして長年法務部門の採用や求職者の転職支援を行ってきた経験を踏まえ、これからの組織で求められる人物像について説明しました。

弁護士ドットコム株式会社 キャリア事業部 事業部長 西村 英貴

弁護士ドットコム株式会社 キャリア事業部 事業部長 西村 英貴

コロナ禍は、法務人材の採用市場にどのような影響を与えたのでしょうか。西村はコロナ禍以降の採用ニーズについて、「ネガティブな変化はなく、むしろ伸びてきている」と語ります。

一方で、消費者が求めるアウトプットのスピードは年々速くなってきており、ビジネスの速度は上がっています。西村は「法務としては、やるべき仕事が増えているにもかかわらず、各案件の納期が早まっていると感じる人も多いようだ。増大する業務を円滑に進めるためには、ゴールを意識して取り組まなければならない」と解説。先を見据えて効率よく仕事を進められることが、これからの法務人材に求められるスキルセットの1つであると指摘します。

さらにこうした現状を踏まえ、「これまで求められてきた法務のスキルセットとは異なり、ビジネスオリエンテッドな人材が求められるようになってきている。そのような人材は希少であり、各企業で取り合いの状態になっている」と西村は語ります。

つまり、採用候補者には、この先法務プロフェッショナルとしてキャリアを形成していくうえで、経営や事業への理解が求められるようになります。西村は「これまでの法務人材に求められた、いわゆる『守りの法務』だけをやっているようでは不十分。新たな事業価値を生み出すフェーズから法務として関わる必要がある」と説明しました。

法務組織の多様性と統一性を両立するための取り組み方

今後、法務組織に求められる機能の変化にあわせ、法務組織をどのように構築していくべきでしょうか。双日株式会社 執行役員 法務、広報担当本部長 守田達也氏は、「これからの法務組織を構築するための『採用と人材育成』」と題し、人材の採用と評価に焦点を当てて解説しました。

双日株式会社 執行役員 法務、広報担当本部長 守田 達也氏

双日株式会社 執行役員 法務、広報担当本部長 守田 達也氏

総合商社は近年、業態の裾野が広がっており、多岐にわたるビジネスを扱うなかでは、契約書の内容やリスクの考え方もそれぞれで異なります。さらに、グループ会社が増加することでコンプライアンスの重要性も高まっており、変化が激しい多様な状況に対応できる法務人材の採用・育成が急務となっています。

こうした背景から、双日では、2010年に司法修習生採用をスタート。また従来は、異動で法務部に配属された人材を教育する形でしたが、2011年から採用ポリシーを変更し、国内外の良質な中途人材の恒常的な採用をはじめたといいます。 「M&Aやコンプライアンス、ガバナンスなど業務領域の拡大に対応するためには、多様なバックグラウンドやキャリアを持った人材を採用する必要がある。専門性と多様性を重要視するようになった」(守田氏)

一方で、人材の多様化には、組織の統一性を保ちづらいという側面もあります。そこで双日では、法務組織としてのビジョン・バリューを策定。さらに、法務部員のケイパビリティ 1 を可視化できるように分野ごとのスキル・経験をチェックリスト的にまとめた「プラクティスベンチマーク」や、優れた実務担当・管理者となるための定義を会社の評価項目に沿ってまとめた「コア・コンピテンシー」を設定したといいます。

また、人材育成については「『分度器論』と『人間の成長曲線』を念頭に置いて実行している」と守田氏は語ります。「分度器論」とは、同じようなバックグラウンドや年齢の担当者でも、年数が経つにつれて小さな角度の差が徐々に大きく開いていくように、次第に能力に大きな開きが出てくる現象だといいます。
「この差は、好奇心や感度の違いによるところが大きいように思う。好奇心のある人間は、伸びる力があると考えている」(守田氏)

「人間の成長曲線」については、「会社が求めるのは直線的な成長だが、人間は伸びる時期と伸びが止まる時期があり、直線ではなく緩やかな波線を描いて成長していく。育成するうえでは、この2つの視点を持っていることが重要」と説明しました。

若手法務パーソンがビジネスサイド/ CXOのキャリアを考えるためのポイント

法務担当者の方のなかには、「法務の枠を超えて事業や経営側にコミットして活躍したい」と考える方もいるのではないでしょうか。株式会社Hubble 取締役CLO/ 弁護士 酒井智也氏、READYFOR株式会社 執行役員CLO/ 弁護士 草原敦夫氏、ファンズ株式会社 取締役/ 弁護士 髙尾知達氏は、スタートアップで法務責任者として活動する立場から「法務からベンチャーCXOへのキャリアについて~若手法務パーソンがこれからの新しいキャリアを描くには」と題し、CXOの役割や必要となる経験・スキルなどについてディスカッションしました。

(左から)READYFOR株式会社 執行役員CLO/ 弁護士 草原 敦夫氏、ファンズ株式会社 取締役/ 弁護士 髙尾 知達氏、株式会社Hubble 取締役CLO/ 弁護士 酒井 智也氏

(左から)READYFOR株式会社 執行役員CLO/ 弁護士 草原 敦夫氏、ファンズ株式会社 取締役/ 弁護士 髙尾 知達氏、
株式会社Hubble 取締役CLO/ 弁護士 酒井 智也氏

まず「リーガル領域で積み上げてきたキャリアは、ビジネスサイド/ CXOで活きるか、またその具体的場面」を問うテーマについて、髙尾氏は、「法務は横断的に事業を見るため、経営層に近い景色で物事を見ている。CXOになった場合、幅広い選択肢に対して限られたリソースを配分するうえで、そうした視点は活きる。また、たとえば金融のようにレギュレーションの厳しい業界では、それに精通していないと、成立するビジネスプランが作成できない。業界知識がプランニング能力の大前提になるため、法務での経験が役立つ」と語りました。

一方、酒井氏は、CXOと法務の考え方の違いについて言及。「創業間もない企業に経営陣として入ると、会社の数十年先のビジョンを描くことが重要になる。しかし、弁護士としては、過去の出来事や事実を鑑みて答えを出す思考でやってきた。個人的には、CXOと法務のキャリアの間にはギャップがあると感じている」と述べました。髙尾氏はこれを受けて、「弁護士は特定の問題に対して是か否かで考えがちだが、自分たちで事業を行う場合は、広い視点を持って『どうしたいのか』を考える必要があり、たしかに難しさがある」と共感を示します。

続いて、「CXOになりたいと考えたときに、どんな行動が必要とされるか?必要とされる力、具体的なアクションは何か?」というテーマでは、草原氏が「CXOに就くことを考える際に重要なのは、まずそもそもそのポストがあるかどうか。ポストがあるということは、スタートアップの経営層が法務を重要視していることの現れでもある」と説明。またCXOを目指すうえでのアクションとしては、「法務機能が求められる企業との出会いがあった際に、自分だったらどんな法務戦略が描けるか提案できる能力を身につけることが重要」と語りました。

酒井氏は、草原氏の意見に補足する形で「会社として、法務をどのように位置づけているかをウォッチすることは大事」と説明。「草原氏が所属するREADYFORにおける法務は、エンジンとして事業を推進する側面もあれば、守りの部隊としての側面もある。一方、Hubbleなどのリーガルテック企業は、法務と事業が直結しており、経営陣に弁護士資格を持つ人材がいることは比較的スタンダード。企業によって法務の位置づけは違うため、よく見極めたほうが良い」とコメントしました。

法務・経営の専門性を備えた経営法務人材になるためのポイント

パーソルホールディングス株式会社 取締役(監査等委員)林大介氏は、上場企業のCLOとして経営に参画してきた経験を踏まえ、「経営法務人材としてのキャリア形成と価値発揮」と題し、企業価値の向上に貢献できる法務人材になるためのポイントを紹介しました。

パーソルホールディングス株式会社 取締役(監査等委員)林 大介氏

パーソルホールディングス株式会社 取締役(監査等委員)林 大介氏

林氏のキャリアの転機の1つは、新卒で入社した総合商社での米国勤務経験だったといいます。「入社4年目に米国法人の法務部門へ異動になり、そこで初めてジェネラル・カウンセル(GC)という仕事を知った。CEOとともに経営判断へ参画している姿を目の当たりにして、法務のキャリアとしてのGC、CLO(Chief Legal Officer)の魅力を感じた」と振り返ります。

その後、林氏は複数社を経て、ベンチャー企業として人材サービスを手掛けていたインテリジェンス(現・パーソルキャリア)へ経営法務人材(GC)として転職します。林氏は当時の経験について「経営陣の一員として参加するということで、法的な問題に関して、法務としてのアドバイスを超えた、経営者としての意思決定が求められた」と語りました。

続いて林氏は、経営法務人材の役割について説明。経済産業省の「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 報告書」(2019年11月19日)においては、「法務の専門性と経営の専門性を兼ね備え、事業の創造に貢献する人材であることが示されている」ことを紹介しました。林氏自身も、法務・経営の専門性という両者を兼ね備えるべく、ビジネスの現場へ積極的に参加することを心がけてきたといいます。

「大型M&A案件などでは自ら契約交渉し、ストラクチャーの実行を主導的に行った。普段からできるだけ現場に近いところで法務として貢献していると、ビジネスの勘所がわかるようになる。契約交渉や新規事業の立ち上げに同席したり、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)のチームに参加したりすることで、視野や貢献できる分野が広がっていく」(林氏)

林氏は講演の最後に聴講者へのメッセージとして、「以前に比べて、法務の仕事は広がり、寄せられる期待は高まってきている。変化の激しいVUCA 2 の時代の法務人材には、『新しいことに挑戦すること』『自身の限界を広げること』『法務で培った説得力・交渉力・問題解決力を使って業務の幅を広げること』などが必要。失敗は学習の機会と捉え、新しい仕事や限界を超える仕事にチャレンジしてほしい」と語りました。

多様化が進む法務担当者のこれからのキャリア形成方法

株式会社LegalForce 執行役員 最高法務責任者(CLO)佐々木毅尚氏は、27年間、法務業務に従事し、現在はリーガルテックのスタートアップでCLOを務める視点から、「これからの法務人材戦略」と題して、多様化が進む法務担当者のキャリア形成方法について解説しました。

株式会社LegalForce 執行役員 最高法務責任者(CLO)佐々木 毅尚氏

株式会社LegalForce 執行役員 最高法務責任者(CLO)佐々木 毅尚氏

これまで5社の法務部門を経験し、転職時には常に「やりたい仕事とは何か」を考えつづけてきたという佐々木氏。「給料が良い、仕事がおもしろそう、という動機では良い結果を産まないだろう。自分のやりたい仕事とは何か、5年・10年先にどうなっていたいか、引退するときにどういう姿になっていたいかを考えてキャリア設計することで、良い法務人生が歩めるのではないか」とキャリアに悩む法務パーソンにアドバイスを送ります。

さらに近年では、法務パーソンの働き方として、管理部門に限らない新しい選択肢もあることを紹介。LegalForceでの事例を踏まえ、リーガルテック業界においては管理部門以外の分野でも弁護士・法務経験者の多様な活躍の場があることを説明しました。たとえば、LegalForceでは、開発部門や営業部門で弁護士資格を持つ担当者が活躍しているといいます。

「開発部門では、契約書の自動レビュー機能の指摘事項の検討など、自らの経験にもとづく顧客目線による提供コンテンツの作成・拡充を行ったり、ヒアリングを通じた改善提案を担当したりと、法務の知識や経験を活かして存在感を発揮している。営業部門では、法務の知識を活かして主体的に仕事が行える点や、数字を意識しながらビジネスサイドに寄り添った仕事が行える点が面白いだろう」(佐々木氏)

また、佐々木氏は「弁護士資格を持たない法務人材の働き方」についても相談を受けることが多いと説明。「法律知識以外で、いかに差別化を図るかがポイント。コンプライアンスやガバナンス、内部統制など、担当領域を広げて、実務経験を積む。あわせて、語学力や人脈を磨き、マネジメントのスキルを身につけていくのが良いのではないか」とアドバイスしました。

おわりに

本カンファレンスの登壇者の多くは、キャリアにおいて主体的な選択を繰り返し、法務人材としての活躍の場を自らの力で開拓してきた方々でした。各講演からは、「事業に関わるうえでのスタンス」や「仕事の幅を広げるための積極性」が重要であることがうかがえます。

法務組織も法務パーソンのキャリアも、急速に変化する環境に対応できるかどうかが試されている昨今。本カンファレンスの講演内容を踏まえて、法務組織の在り方や自分自身のこれからのキャリアについて、改めて見つめ直してみてはいかがでしょうか。


  1. 他者と比べて優位に立てる能力 ↩︎

  2. ※1 Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉。 ↩︎

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