インターネット上での著作物の利用における例外規定
知的財産権・エンタメ 当社の社員の中には業務の一環として会社のPCで他社のウェブサイトを閲覧する者がいますが、その者のPCにはブラウザのキャッシュとして閲覧したサイトの写真などのコンテンツが保存されてしまっています。これは著作権侵害にならないのでしょうか。
また、当社はネット上の不特定多数の者がネット上にアップした食べ物の写真などを収集・分析してマーケッティングのための内部資料として使っています。社内での利用は私的使用目的の複製として許されないとすると、このような行為も複製権侵害になってしまうのでしょうか。
ご質問のような利用については例外規定があり、著作権侵害にならないこととされています。他にもインターネットでの利用について著作権侵害にならないという例外規定はいくつかありますので、上手に活用されることをお勧めします。
解説
平成21年、24年著作権法改正
著作権法の権利は、紙やCDなどの物に記録されて流通する著作物にも、PCやネットを通じて流通する著作物にも、同様に適用されます。その結果、特にネット上での大量・迅速な著作物の流通には順応しきれていない面もありました。
そこで、「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)2007」において、デジタルコンテンツ流通促進のための法制度を整備するとされたことを受け、平成21年の著作権法改正において、ネット上での著作物利用の円滑化のための措置が導入されました。さらに、平成24年著作権法改正に際しても、情報提供を円滑かつ効率的に行うための措置が導入されました。
特に大幅に追加されたのが、著作権法の例外規定です。
平成21年、24年著作権法改正で導入された新たな例外規定
インターネット上での著作物の利用については以下のような例外規定が設けられました。
(1)平成21年著作権法改正に際して導入された例外規定
インターネット・オークション等の商品紹介用画像の掲載のための複製 (著作権法47条の2) |
インターネット・オークション等で美術品や写真を出品する際の商品紹介のための画像掲載について、著作物を複製・自動公衆送信することができる。ただし、著作権者の利益を不当に害しないための政令で定める措置を講じることが条件となります。 |
送信の障害の防止等のための複製 (著作権法47条の5) |
インターネットサービスプロバイダ等のサーバー管理を業とする者は、以下の場合には必要な複製を行うことができます。
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送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等 (著作権法47条の6) |
インターネット情報の検索サービス(検索エンジン)を提供している業者が、サービスを提供するために必要と認められる限度で、著作物の複製・翻案・自動公衆送信を行うことができます。ただし、以下の場合は除外されています。
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情報解析のための複製等 (著作権法47条の7) |
コンピュータを使った情報解析を行う場合に、必要と認められる限度で著作物への記録媒体の複製・翻案ができます。 |
電子計算機における著作物の利用に伴う複製 (著作権法47条の8) |
コンピュータ等において著作物を適法に利用する場合には、当該コンピュータ等による情報処理の過程で行われる著作物の複製を行うことができます。 |
(2)平成24年著作権法改正に際して導入された例外規定
インターネットサービスの準備に伴う記録媒体への記録・翻案 (著作権法47条の9) |
インターネットサービスで情報提供を行う際に、より円滑・効率的に情報提供を行うために、記録媒体(サーバーなど)にデータを保存、または翻案することができます。 |
設例は著作権法47条の8、著作権法47条の9に該当しますので、著作権侵害にはならないと考えてよいでしょう。
