スマートフォンの画面デザインは意匠登録によって保護を受けられるか
知的財産権・エンタメ当社は、スマートフォンの操作画面について、これまでにない新しいデザインを採用する予定です。操作画面は、スマートフォンの外観の形状にはあたりませんが、意匠登録による保護は受けられるでしょうか。
画面デザインとして、意匠登録出願を検討することが可能です。
解説
目次
画面デザインの保護の拡充
意匠法改正により登録が可能となった
意匠法では、「『意匠』とは、物品(物品の部分を含む。第8条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」と定義され、「物品性」(物品と離れて意匠は存在しないこと)が要件の一つとされています(意匠法2条1項)。
他方で、家電機器や情報機器のディスプレイに表示される操作画面等の画面デザインは、物品から離れて存在するようにも思われるために、かつては、それがなければ物品自体が成り立たないもの(液晶時計の時計表示部等)や機器の初動操作に必要不可欠なもの(携帯電話の初期画面等)のような、ごく限られた範囲しか意匠登録が認められていませんでした。
しかし、機器のデジタル化に伴い、画面デザインの保護の必要性が年々高まっていることから、平成18年の意匠法改正で意匠法2条2項が追加され、物品がその機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像も意匠登録が可能になりました。
前項において、物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合には、物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にするために行われるものに限る。)の用に供される画像であつて、当該物品又はこれと一体として用いられる物品に表示されるものが含まれるものとする。
リリース後にインストール、アップデートされた画像も保護される
また、平成23年の意匠審査基準の改訂により、意匠法2条1項による画面デザインの保護について、上述のごく限られた範囲(物品の成立や初期操作に必要不可欠な場合のみ)に限らず、「その物品の機能を果たすために必要な表示を行う画像」で「その物品にあらかじめ記録された画像」であれば、意匠として認められることになりました。
さらに、平成28年の意匠審査基準では、「その物品にあらかじめ記録された画像」という要件は「その物品に記録された画像」に緩和され、あらかじめ記録された画像でなくても(後日インストールされたものやアップデートであっても)、保護されることになりました。
画面デザインの意匠登録の例
画面デザインの意匠登録の例としては、以下のような携帯情報端末の「パスワード入力機能を発揮するために行われる操作に用いられる画像」があります。
画面デザインの意匠登録の要件
意匠審査基準
画面デザインが「意匠」と認められるためには、以下の要件を満たす必要があります(意匠審査基準74.1、74.4.1.1.1.1、74.4.1.1.1.2)。
(1)画像を含む意匠の意匠に係る物品が、意匠法の対象とする物品と認められるものであること
(2)以下の①②のいずれかに該当すること
①物品の表示部に表示される画像が、その物品の機能を果たすために必要な表示を行う画像であること(意匠法2条1項)
②物品の機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像であり、かつ、当該物品又はこれと一体として用いられる物品に表示される画像であること(意匠法2条2項)
(3)物品の表示部に表示される画像が、その物品に記録された画像であること (2)①(意匠法2条1項)では、操作画面に限らず、腕時計の時計表示機能画面や携帯電話の方位計測機能画面等、操作とは関係がない画像についても保護されます。
(2)②(意匠法2条2項)は、(2)①と異なり、「操作の用に供される」画像であることが必要ですが、当該物品に表示される場合(例:スマートフォンの操作画面が当該スマートフォンに表示される場合)に限らず、一体として用いられる別の物品に表示される場合(例:磁気ディスクレコーダーの録画予約機能が、別の物品であるテレビモニターに表示される場合)も保護されます。
物品に記録されていない画像は意匠登録が認められない
また、上述のとおり、平成28年の意匠審査基準の改訂によって、あらかじめ記録された画像に限らず、後日インストールされた画像やアップデートも含まれることになりましたが、物品に記録されていない画像(ウェブサイトやテレビ番組の画像のように、外部からの信号等による画像を表示したもの)は、(3)をみたさず、意匠登録は認められません。
意匠登録が認められるには一般的な登録要件も満たす必要がある
画面デザインの意匠登録が認められるためには、上記に加えて、意匠登録の一般的な登録要件も満たす必要があります(意匠審査基準74.4)。
(1)工業上利用することができる意匠であること
(2)新規性を有すること
(3)創作非容易性を有すること
(4)先願意匠の一部と同一又は類似の後願意匠ではないこと
物品の外観の形状だけでなく、画面デザインの意匠登録出願も行うことにより、商品のデザインをより広く保護することが可能になると思われます。

弁護士法人イノベンティア
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