アプリの画面デザインと著作権
知的財産権・エンタメ当社が発行している雑誌で、いわゆるスマートフォン向けアプリの位置情報ゲームについての特集記事を企画しています。その中で、各社が提供するアプリのプレー中の画面をキャプチャーした画像を掲載したいと考えていますが、問題はないでしょうか。
アプリの画面デザインも美術の著作物あるいは映画の著作物として著作権が成立しています。著作権法32条1項の「引用」の要件を満たすか、あるいはアプリを提供している会社から許可を得ない限り掲載することは難しいでしょう。
解説
アプリの画面にも著作権は成立
アプリのようなプログラムは、プログラムの著作物(著作権法10条1項9号)に該当しますが、そのプログラムを起動させたときにディスプレー等の画面上に表示される映像については、映画の著作物(著作権法10条1項7号)に該当します。
判例でも、ビデオゲーム「パックマン」(東京地裁昭和59年9月28日判決・判タ534号246頁)や、家庭用テレビゲーム機用のゲームソフト(最高裁平成14年4月25日判決・判時1785号3頁)について、起動させたときの画面が動きを感じさせる一連の連続的影像より成り立っていることや一定の視聴覚的効果を有していることに着目し、映画の著作物に該当するとされています。
また、画面上にキャラクターなどのイラストが登場する場合は基本的にそのイラストが美術の著作物となるでしょうし、画面全体のデザインやレイアウトも美術の著作物となると考えられます。
ビジネスソフトなどでは著作物性を否定する裁判例も
ビジネスソフトについては、プログラムを起動させたときの画面が著作物として著作権が成立するかについては、
- 所定の目的を達成するために、機能的で使いやすい作業手順は、相互に似通ったものとなり、その選択肢が限られること、ユーザーの利用を容易にするための各画面の構成要素も相互に類似するものとなり、その選択肢が限られること
- 各表示画面を構成する部品(たとえば、ボタン、プルダウンメニュー、ダイアログ等)も、既に一般に使用されて、ありふれたものとなっていることが多いこと
- 特に、既存のアプリケーションソフトウェア等を利用するような場合には、設計上の制約を受けざるを得ないこと
という事情をも勘案して判断する必要があるとし、ビジネスソフトウェアを起動したときの画面について、これらの諸事情に照らし創作性がないとして著作物性を否定した裁判例があります(東京地裁平成16年6月30日判決・判時1874号134頁)。
しかし、ゲームソフトやアプリなどについては、機能性のみを追及したものではないことからも、原則として著作物として認められると考えるべきでしょう。
携帯電話用の釣りゲームについて、ディー・エヌ・エーのゲーム「釣りゲータウン2」の画面がグリーのゲーム「釣り★スタ」の画面の著作権を侵害しているとして裁判になった事件があります。
この事件では、著作権侵害を認めた一審判決を覆した控訴審を最高裁が支持した結果、著作権侵害の成立は否定されました。ただ、この事件においても、グリーのゲーム「釣り★スタ」の画面や影像が著作物に該当し、そこに著作権が成立することは前提とされていました(知財高裁平成24年8月8日判決・判時2165号42頁)。
アプリの画面を利用するには
このように、アプリの画面には著作権が成立していますので、これをそのまま利用する場合には、「引用」(著作権法32条1項)などの例外規定の要件を満たすか、そうでなければ著作権者と考えられるアプリを提供している会社の許諾を得る必要があるでしょう。
