派遣労働者の受入れ側の留意点について

人事労務
岩城 方臣弁護士 弁護士法人中央総合法律事務所

 当社では、平成28年4月1日以降、A支店の総務課で派遣社員のBさんに勤務してもらい、繁忙期には、当社の社員と同じように残業をしてもらうこともあります。Bさんは能力が高いので、これから先も総務課で派遣社員として働いてほしいと考えていますし、また、A支店の営業課でも別の派遣社員の受入れを検討していますが、法規制との関係で留意点があれば教えて下さい。

 派遣先(受入会社)は、派遣労働者に対して、派遣元(派遣会社)で締結された36協定の範囲内でしか残業を命ずることができません。
 また、平成27年に労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、「労働者派遣法」といいます)が改正され、事業者単位と派遣労働者単位の双方で期間制限が設けられ、派遣の受入れが可能な期間は、原則として3年となりましたので、派遣社員の継続的な受入れが、これらの規制に抵触しないか検討する必要があります。事業者単位の期間制限を超えて派遣労働者の受入れを希望する場合には、過半数労働組合等の意見を聴く必要があり、これを怠ると、派遣労働者を直接雇用しなければならなくなる可能性があります。

解説

目次

  1. 労働者派遣とは
  2. 派遣労働者の労働時間管理
  3. 派遣期間の制限
    1. 派遣先事業所単位の期間制限(労働者派遣法40条の2)
    2. 派遣労働者個人単位の期間制限(労働者派遣法40条の3)
    3. いわゆる「クーリング期間」について
  4. 直接雇用の申込みみなし制度

労働者派遣とは

 労働者派遣とは、労働者と派遣労働契約を結んだ派遣元事業主が、派遣先事業主へ労働者を派遣し、派遣された労働者が派遣先から指揮命令を受けながら労務を提供する労働形態を指します。

労働者派遣

派遣労働者の労働時間管理

 派遣先は、派遣元と労働者派遣契約を締結して派遣労働者の就業条件等を定めたうえで、労働者派遣契約で定めた就業日・就業時間・時間外労働等の限度内で派遣労働者を就業させることができます。
 労働基準法の規定のうち、労働時間・休憩・休日に関する規定については、派遣先が使用者としての責任を負うこととされています(労働者派遣法44条2項)。もっとも、いわゆる36協定については、派遣元が締結して届出を行うものとされており、派遣先は、派遣元が締結して所轄労働基準監督署長に届け出た36協定が定める範囲内にかぎり、派遣労働者に対して、時間外労働や休日労働を命じることができます。
 したがって、派遣先としては、派遣元の36協定の内容を確認し、どのような場合に時間外労働や休日労働を命じることができるかを把握しておく必要があります。  

派遣期間の制限

 従前は、専門的な知識や技術が必要として政令で定められる業務以外については、派遣労働者が就業する場所ごとに、同一業務について、派遣元から最長3年間を超える期間継続して労働者派遣を受けてはならないと規制されていました。しかし、平成27年9月30日から施行された改正労働者派遣法により、このような業務・業種に着目した期間制限が見直され、派遣先の「事業所」単位と、派遣労働者の「個人」単位に着目した2つの期間制限に変更されました。
 改正後の期間制限は、すべての派遣業務に適用されますが、派遣元に無期雇用された派遣労働者が派遣される場合や、60歳以上の派遣労働者が派遣される場合には期間制限がかからないなどの例外があります

派遣先事業所単位の期間制限(労働者派遣法40条の2)

(1)期間制限の内容

 派遣先の同一の「事業所」において、派遣を受け入れることができる期間(派遣可能期間)は、原則、3年が限度となります。派遣可能期間は、派遣先の「事業所」ごとに、平成27年9月30日以後に派遣労働者を一人でも受け入れた日から計算され、それ以降、3年までの間に派遣労働者が交替しても、派遣可能期間の起算日は変わりません
 「事業所」は、工場・事務所・店舗等、場所的に他の事業所等から独立しているほか、経営の単位として人事・経理・指導監督・労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有することなどの観点から実態に即して判断されます(厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」)。ケースバイケースの判断となりますが、厚生労働省の取扱要領では、出張所や支所などのうち、規模が小さく、事務能力などからみて一つの事業所という程度の独立性がないものについては、直近上位の組織に包括して全体を一つの事業所として取り扱うとされています。

(2)期間制限を超えて派遣労働者を受け入れる場合の義務

 派遣先が、同一の事業所において3年を超えて派遣労働者を受け入れようとする場合は、派遣先事業所労働者の過半数で組織される労働組合(過半数労働組合がない場合は、労働者の過半数の代表者)の意見を聴かなければなりません。意見聴取を行わないまま派遣可能期間が経過した後も派遣労働者の受入れを継続した場合、後述する「直接雇用の申込みみなし制度」の対象となります(労働者派遣法40条の6)。
 また、意見聴取の結果、過半数労働組合などから異議があった場合には、派遣先は対応方針等を説明する義務があり、これを怠った場合は、厚生労働大臣から勧告を受けたり、企業名を公表されることがあります。

派遣労働者個人単位の期間制限(労働者派遣法40条の3)

 派遣先が、同一の派遣労働者を、「事業所」内の「同一の組織単位」で受け入れることができる期間は、原則として、3年が限度となります。このような期間制限の目的は、派遣労働者が特定の業務に固定的に就業させられることによりキャリアアップが阻害されることを防止する点にあります。
 上記3-1(2)の手続を行い、「事業所」単位での派遣可能期間を延長した場合でも、このような個人単位の期間制限を超えて、同一の派遣労働者を受け入れることはできません。
 「同一の組織単位」とは、いわゆる課やグループなど、業務としての類似性や関連性がある組織で、その組織の長が業務の配分や労務管理上の指揮命令監督権限を有するものと考えられています(厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」)。名称にとらわれることなく実態に即して判断されるため、かならずしも一概には言えませんが、たとえば、同一派遣労働者の就業先が同じ庶務課一係から庶務課二係に変わっただけで3年が経過した場合は、「同一の組織単位」内で3年を超えて派遣を行ったものとして、期間制限に違反していると判断される恐れがあります。

いわゆる「クーリング期間」について

 厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」では、事業所単位の期間制限と個人単位の制限の双方において、直前の派遣受入れと新たな派遣受入れとの間の期間が3か月を超えない場合には、継続して労働者派遣の提供を受けているものとみなす旨が定められています。これを反対解釈して、上記期間が3か月を超えて期間制限がリセットされた時点で、新たに労働者派遣の受入れがなされることがあり、このような期間は実務上「クーリング期間」と呼ばれています。
 もっとも、「労働者派遣事業関係業務取扱要領」は、派遣可能期間の延長手続を回避することを目的として、「クーリング期間」を明けて派遣の受入れを再開するような行為は、労働者派遣法の趣旨に反するものとして指導などの対象になると規定しており、注意が必要です。  

直接雇用の申込みみなし制度

 派遣先が、違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、派遣先が、派遣労働者に対して、派遣元での労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込み(直接雇用の申込み)をしたものとみなされることがあります(労働者派遣法40条の6)。上記3-1または3-2の期間制限に違反して労働者派遣を受け入れる場合も、このような直接雇用の申込みみなし制度の対象となります。
 「契約申込み」のみなしであるため、申込みを派遣労働者が承諾しなかった場合には、派遣先との間に労働契約は成立しません。
 しかし、派遣労働者が申込みを承諾した場合は、派遣元と派遣労働者との間で定められた賃金や雇用期間等の労働条件がそのまま適用されて、派遣先と派遣労働者との間で労働契約が成立することとなるため、派遣先への影響は非常に大きいものといえます。
 したがって、派遣労働者の受入れについては、場合によっては専門家の意見も聞きながら期間制限に違反していないかを慎重に判断し、法が求める手続を適切に実行することが重要となります。

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