変形労働時間制とはどのような制度か

人事労務
冨川 諒弁護士 弁護士法人中央総合法律事務所

 当社は、毎月下旬頃の仕事量が多く、1か月の中で労働時間に大きな偏りが生じています。このような場合に、変形労働時間制を利用すれば、労働時間を適切に配分することができると聞きました。変形労働時間制とはどのような制度でしょうか。

 変形労働時間制とは、単位となる期間内において所定労働時間を平均して週法定労働時間を超えなければ、期間内の一部の日または週において所定労働時間が1日または1週の法定労働時間を超えても、所定労働時間の限度で、法定労働時間を超えたとの取扱いをしないという制度です。たとえば、質問では、1か月単位の変形労働時間制を採用することが考えられます。ただし、変形労働時間制のもとでも、時間外手当を支払う必要がある場合があるので、注意が必要です。

解説

目次

  1. 変形労働時間制とは
  2. 変形労働時間制の種類および概要
    1. 1か月単位の変形労働時間制について
    2. 1年単位の変形労働時間制について
  3. 変形労働時間制と時間外労働
  4. 変形労働時間制の適用の制限
  5. おわりに

目次

  1. 変形労働時間制とは
  2. 変形労働時間制の種類および概要
    1. 1か月単位の変形労働時間制について
    2. 1年単位の変形労働時間制について
  3. 変形労働時間制と時間外労働
  4. 変形労働時間制の適用の制限
  5. おわりに

変形労働時間制とは

 変形労働時間制とは、労働時間が週40時間の原則(労働基準法32条1項)に合致しているかどうかを、一定の単位期間の中で判断する制度です。
 たとえば、単位期間を4週間とした場合、月末の週につき所定労働時間を44時間と設定しても、その他の週の労働時間を短くすることにより、当該月の週あたりの平均労働時間が40時間内であれば、所定労働時間が44時間の週に労働時間が40時間を超えていたとしても、その労働時間が所定労働時間である44時間以内である限り、週40時間の原則に反しないということになります。

変形労働時間制

変形労働時間制の種類および概要

 変形労働時間制には、その単位期間に応じて、以下の種類があります。このうち、1週間単位の変形労働時間制は、実際に利用されることが少ないので、本稿では、1か月単位の変形労働時間制および1年単位の変形労働時間制を中心に説明します。

  • 1か月単位(1か月以内)の定型変形労働時間制(労働基準法32条の2)
  • 1年単位(1年以内)の定型変形労働時間制(労働基準法32条の4)
  • 1週間単位(1週間以内)の非定型変形労働時間制(労働基準法32条の5)

1か月単位の変形労働時間制について

 1か月単位の変形労働時間制は、労使協定または「就業規則その他これに準ずるもの」(常時10人以上を使用する事業場では労使協定または就業規則)により定めることが必要です。労使協定で定めた場合には、有効期間の定めが必要であり、また、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。
 就業規則または労使協定では、単位期間(1か月以内の一定期間)を期間の起算日を明らかにした上で特定する必要があります。
 また、就業規則または労使協定において、単位期間内の各週・各日の所定労働時間を特定する必要があります。

 常時10人以上を使用する事業場においては、就業規則において変形期間内の毎労働日の労働時間も始業・終業時刻とともに特定しなければなりません。ただし、業務の実態上就業規則または労使協定による特定が困難な場合には、変形制の基本事項を就業規則または労使協定で定めた上、各人の各日の労働時間をたとえば1か月ごとに勤務割表によって特定していくことが認められます(昭和63年3月14日基発150号)。他方、変形労働時間制の基本的内容と勤務割の作成手続を定めるだけで、使用者が労働時間を任意に決定できるような制度を設計することは許されませんので、ご注意下さい。

1年単位の変形労働時間制について

 1年単位の変形労働時間制は、労使協定によって定めることが必要です。労使協定は、有効期間の定めが必要であり、また、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。
 まず、労使協定においては、変形制の対象となる労働者の範囲および1か月を超え1年を超えない対象期間を、その起算日を明らかにして定める必要があります。また、対象期間中の特に業務が繁忙な期間(特定期間)を定める必要もあります。
 さらに、対象期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えないように、対象期間中の労働日と各労働日の所定労働時間を定める必要があります。この特定にあたっては、労働日と各労働日の所定労働時間を労使協定で定める方法のほか、対象期間を1か月以上の期間ごとに区分して、労使協定では、最初の区分期間の労働日と各労働日の所定労働時間を定めるとともに、残りの区分期間については各期間の総労働日数と総所定労働時間数を定めておく方法でも可能です。この場合には、各区分期間が開始する30日前に、過半数組合または過半数代表者の同意を得て書面で定めなければなりません。

 このほか、対象期間の所定労働日数、連続労働日数、1週・1日の所定労働時間の長さ等につき、種々の規定が存在します(労働基準法32条の4、労働基準法施行規則12条の4第1項)。例としては、下記のような規定が存在します。

  • 所定労働日数(労働基準法施行規則12条の4第3項)
     対象期間が3か月以内であれば1年あたり313日、3か月を超えれば1年あたり280日

  • 連続労働日数(労働基準法施行規則12条の4第5項)
     原則6日、繁忙な特定期間は12日

  • 1週・1日の所定労働時間の長さ(労働基準法施行規則12条の4第4項)
     1日10時間、1週52時間

  • 所定労働時間が48~52時間の週の限度(労働基準法施行規則12条の4第4項)
     3か月を超える場合のみ制約あり(連続3週間以内、3か月に3週間以内)

 なお、常時10人以上を使用する事業場においては、就業規則において始業・終業時刻の記載が必要です。ただし、1か月以上の区分期間を設ける場合は、就業規則においては、始業・終業時刻の類型とその組合せ方、これらによる勤務割の作成・明示の仕方を定めておけば足りるとされています(平成11年1月29日基発45号)。

変形労働時間制と時間外労働

 変形時間労働制を採用した場合、単位期間内の労働時間が平均して週40時間を超えなければ、1日8時間や1週40時間を超える労働もただちに時間外労働となるものではありません。なお、深夜労働に対する割増賃金の支払は必要であり、休憩・休日に関する規制も適用されます。
 もっとも、時間外労働が生じる場合もあることに注意が必要です。1か月単位の変形労働時間制および1年単位の変形労働時間制における時間外労働については、以下のとおり考えることになります。

  1. 1週40時間・1日8時間を超えた所定労働時間が定められている週や日については、その所定労働時間を超える労働は時間外労働となります。

  2. 週40時間・1日8時間の範囲内で所定労働時間が定められている週や日については、週40時間・1日8時間を超える労働が時間外労働となります。

  3. 週40時間・1日8時間を超えない労働(①および②で時間外労働となる部分を除いたもの)についても、単位期間全体の沿う労働時間が同期間の法定労働時間の総枠を超える場合には、時間外労働となります。

変形労働時間制の適用の制限

 変形労働時間制の適用にあたっては、以下の制限が存在します。

  1. 妊産婦
     本人の請求があった場合、変形労働時間制によって労働させることはできません。

  2. 年少者
     本人の請求の有無にかかわらず、変形労働時間制で労働させることはできません。ただし、1か月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制については、1週48時間、1日8時間の範囲内であれば、労働させることができます。

  3. 育児を行う者等に対する配慮
     使用者は、変形労働時間制において、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練または教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をしなければなりません。

おわりに

 変形労働時間制は、繁忙期に合わせて労働時間を適切に配分することができる便利な制度といえます。しかしながら、使用者が一方的かつ自由に労働時間を配分することができるというものではなく、たとえば、1か月単位の変形労働時間制では、週40時間、1日8時間を超える日をあらかじめ特定する必要があるなど、一定のルールにおいてのみ認められたものです。変形労働時間制を採用するに当たっては、労働基準法等に違反することのないよう十分ご注意下さい。

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