営業秘密の民事的保護(2)‐損害賠償請求権

知的財産権・エンタメ

 当社には、当社製品の設計図や製造上の特殊なノウハウ、得意先名等が分かる顧客情報データといった大切な秘密情報がいくつかありますが、それらの秘密情報が、当社を退職した元部長Aを通じて競業他社C社に漏えいしました。C社は、入手した当社製品の設計図や製造上の特殊なノウハウを使用して新製品を製造し、当社の顧客情報データをもとに当社の得意先に販売していることが分かりました。C社による新製品の発売以降、当社製品の売上は明らかに減少しています。
 当社は、元部長AやC社に対し、損害の賠償を求めることができるのでしょうか。

 ご質問にある秘密情報が貴社の営業秘密に当たることを前提とすれば、貴社は、元部長AやC社に対して、不正競争防止法に基づく損害賠償請求が可能と考えられます。
 さらに、それらの秘密情報が貴社の営業秘密に当たるか否かを問わず、貴社は、元部長Aに対しては、貴社に対する秘密保持義務違反や競業避止義務違反の債務不履行、あるいは不法行為(民法709条)を理由とした損害賠償請求が可能であると考えられます。
 C社に対しては、不法行為(民法709条)を理由とした損害賠償請求が可能であると考えられます。

解説

目次

  1. 不正競争防止法に基づく損害賠償請求権
  2. 不競法に基づく損害賠償請求権の要件
    1. 損害賠償請求権の要件
    2. 因果関係
    3. 損害発生

不正競争防止法に基づく損害賠償請求権

 不正競争防止法(以下「不競法」といいます)4条は、「故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」と定めて、不正競争によって営業上の利益を侵害された者に、それによって生じた損害の賠償を請求する損害賠償請求権を認めています。
 元部長AやC社の行為が営業秘密侵害の不正競争行為に当たることについては、「営業秘密侵害の不正競争行為にはどのような種類があるか」の解説をご参照ください。

不競法に基づく損害賠償請求権の要件

損害賠償請求権の要件

 不競法4条にある、営業秘密の侵害を理由とした不競法に基づく損害賠償請求権の要件は、以下のとおりです。

( 1 ) 故意・過失により
( 2 ) 営業秘密侵害の不正競争行為が行われ
( 3 ) 他人の営業上の利益が侵害され
( 4 ) それによって(因果関係)
( 5 ) 損害が発生したこと

 このうち、( 2 )と( 3 )は差止請求権の要件と同様ですので、詳細についてはQ4「営業秘密の民事的保護(1)‐差止請求権」の解説をご参照ください。

 ( 3 )にあるように不正競争行為による営業上の利益の侵害がなされていることが前提となりますので、実務上、( 1 )の要件の有無は余り問題となりません。そこで、以下では、( 4 )因果関係と( 5 )損害発生の2要件について解説します。

因果関係

 まず、営業秘密侵害の不正競争行為と損害発生との間に因果関係が認められるためには、いわゆる「相当因果関係」が認められることが必要です。
 相当因果関係とは、損害発生の原因となった行為と損害発生との間に、その行為がなされなければ、そのような損害は発生しなかった(「あれなければ、これなし」と言える関係、条件関係または事実的因果関係)が存在することを前提に、現実に発生したすべての損害ではなく、社会通念上、その行為者に賠償させるのが相当と認められる範囲の損害を相当因果関係があるものとして賠償させるものです。

損害発生

 次に、損害発生ですが、損害には、財産的損害と非財産的損害(名声や顧客吸引力の喪失など)があり、財産的損害は、侵害行為への対応に要した調査費用や弁護士費用などの積極的損害と、侵害行為の結果生じた売上減少による売上の喪失などの消極的損害(逸失利益、得べかりし利益ともいいます)に分かれることになります。

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