社員紹介制度における法的な問題はどこにあるか

人事労務
岩元 昭博弁護士 丸の内総合法律事務所

 当社では社員紹介制度を導入しようとしていますが、コンプラインスの関係から同制度を廃止した企業もあると聞きました。労働基準法や職業安定法に抵触する可能性はあるのでしょうか。

 社員紹介制度がただちに労働基準法、職業安定法に抵触するということにはなりません。就業規則等に当該制度に関する報奨手当などを定めるなどルールを明確に定めて実施するとよいでしょう。報奨金の具体的な金額については、業界慣行や賃金規程の他の手当(精勤手当など)との均衡などを考慮して検討するとよいのではないかと思います。

解説

目次

  1. 社員紹介制度について
  2. 法的な論点
    1. 労働基準法上の検討ポイント
  3. 職業安定法上の検討ポイント
  4. 報奨金の金額について
  5. まとめ

社員紹介制度について

 社員紹介制度とは、従業員から友人や知人を社員候補者として紹介してもらい、その方が採用された場合に一定の金銭(報奨金)を支払うという制度です。
 リクルート活動にかかる費用を抑制する観点や、ミスマッチを防止する観点から従前より実施されてきた制度と言えます。ただ、必ずしも法的な問題点についてクリアにして実施されてきたものではないため、設例のような疑問が生じることもあると考えます。

社員紹介制度

法的な論点

 社員紹介制度を実施する場合の法的な論点として、労働基準法職業安定法との抵触については検討を要するものと考えます。

労働基準法上の検討ポイント

 まず、労働基準法6条には「何人も法律に基づいて許される場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」とあります。
 この「他人の就業に介入」するとはどのようなことでしょうか。判例では、「労働関係の当事者間に第三者が介在して、その労働関係の開始、存続等について媒介又は周旋をなす等その労働関係について、何らかの因果関係を有する関与をなす場合」をいうとしています(最高裁昭和31年3月29日決定)。

 その他の裁判例でも、求人側から対価を得ることについて「同条は単に労働者からの搾取を禁じたにとどまらず広く一般に中間搾取を禁じたものであって雇主からの利益取得をも禁止する趣旨なること同条の文理上疑をはさむ余地なく」としています(広島高裁昭和27年9月1日判決)。

 しかし、従業員に、友人や知人の中から社員候補者を紹介してもらい、その方が採用された場合に一定の金銭(報奨金)を支払うという「社員紹介制度」については、通常は従業員に反復継続して紹介をしてもらうことを想定しているものではないと考えられますので、「社員の紹介」が同条にいう「業として」行うものに当たるとは言えず、労働基準法6条により禁止されている行為とは言えないと考えます。
 ただ、「社員の紹介」について何らの制限もない場合、例えばSNSなどを通じて従業員が社員候補者を募り、会社に対して大量の社員候補者を紹介するようなことになると、反復継続性が認められ、「業として」という労働基準法6条の禁止行為に該当すると判断される可能性があるので、制度構築の際には注意をする必要があります。

職業安定法上の検討ポイント

 次に、職業安定法について検討します。
 職業安定法40条は「労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第36条第2項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。」と定めており、労働者の募集に従事する従業員に対して報酬を与えることは原則として禁止されています。
 この「労働者の募集」とは、「労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘すること」をいいます(職業安定法4条5項)。

 社員紹介制度において社員候補者を紹介する従業員は「会社の被用者(従業員)で当該労働者の募集に従事するもの」に該当すると判断される可能性は低くないと思います。
 ただ、職業安定法40条には「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」を除くとする規定があります。そうしますと、就業規則等における表彰制度や賃金規程として当該紹介制度に基づく一定の手当であると明確に規定し、賃金・給料として金銭が支払われる制度であると言える場合には職業安定法違反には当たらないと考えるのが相当であると思います。
 なお、この点については、労働基準監督署等からの公的な見解も出ておらず、この報奨金はたとえ手当として定めたとしても「賃金、給料その他これらに準ずるもの」に該当するものではないという考えもあり得ますので、実際の策定にあたっては、労働局、労働基準監督署等の見解を確認しながら、制度設計を行っていただきたいと思います。

報奨金の金額について

 社員紹介制度における報奨金の金額については相場的な金額はあまり聞きません。あまり高額な報奨金は適切ではないと言われることもありますが、明確な基準もありません。
 金額の検討にあたっては、業界慣行や賃金規程の他の手当(精勤手当など)との均衡などを考慮するとよいかと思います。

まとめ

 以上のとおり、社員紹介制度を導入する場合には就業規則等を改訂されることが適切と考えます。その際には、前述のとおり労働局や労働基準監督署等の見解を確認しながら、制度設計を行っていただきたいと思います。

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