期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

人事労務

 「有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることにより不合理に労働条件を異ならせてはならない」と聞いたのですが、「不合理」かどうかについては、どのような要素を元に判断されるのでしょうか。
 また、有期契約労働者と無期契約労働者とが異なる事業場で働いているような場合には、このような規制は働かないのでしょうか。
 仮に、「不合理」と判断される場合、どのような効果が発生するのでしょうか。

 「不合理」か否かについては、①職務の内容、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情、を考慮して判断されることとなります。また、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止については、異なる事業場で働いているような場合にも適用があります(規制の対象となります)。
 なお、「不合理」と判断された場合、有期契約労働者における当該労働条件については無効となり、基本的には無期契約労働者における労働条件と同じ労働条件が認められることになります。
 また、有期契約労働者から会社に対して、不法行為を理由とする損害賠償請求が認められる可能性があります。

解説

目次

  1. 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
  2. 不合理かどうかの判断
  3. 異なる事業場で勤務している労働者と比較して労働条件が異なる場合
  4. 不合理と判断された場合の効果

期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

 有期契約労働者とは、1年契約、6か月契約など雇用期間を定めて使用者と雇用契約を結んでいる労働者のことをいいます。パート、アルバイト、契約社員、臨時社員、嘱託など職場での呼び方が異なる場合でも、雇用期間を定めて使用者と雇用契約を結んでいる限り、有期契約労働者に該当します。
 有期契約労働者については、従来より、雇止めの不安があることにより合理的な労働条件の決定が行われにくい、処遇に対する不満が多い、といった指摘がなされていました。
 そこで、平成24年の労働契約法の改正に際して、以下の条項が設けられ、有期労働契約の労働条件を設定する際のルールが法律上明確化されました。

労働契約法20条
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 なお、労働条件は全ての労働者に対して明示することが事業主に義務付けられています。詳細は「パートタイム労働者に必要な労働条件の文書交付」を参照ください。

不合理かどうかの判断

 上記1で述べたように、「不合理」か否かについては、①職務の内容、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情、を考慮して判断されることとなります。
 考慮される内容の詳細は以下のとおりです。

①職務の内容 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度の実質的な相違等
②職務の内容及び配置の変更の範囲 今後の見込みも含めた人事異動の範囲や職務内容の変更の範囲等
③その他の事情 合理的な労使慣行等

 なお、定年後に有期労働契約で継続雇用された労働者の労働条件が、定年前の無期契約労働者よりも劣る(処遇が悪くなる)というケースがしばしば見受けられます。この場合、定年の前後で、業務の内容、業務に伴う責任、人事異動の範囲等が変わることが多いと考えられますので、そのような場合には、通常、「不合理」と判断される可能性は低いと考えられます。   

異なる事業場で勤務している労働者と比較して労働条件が異なる場合

 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止(労働契約法20条)については、「同一の使用者」に対して課される規制であり、労働契約の締結主体が同じ法人であるか否かがポイントとなります。
 したがって、有期契約労働者がA事業場で勤務している場合、A事業場で勤務している無期契約労働者の労働条件と相違がある場合は勿論、B事業場で勤務している無期契約労働者の労働条件と相違がある場合であっても、同じ法人と労働契約を締結している限り、当該規制は働くことになります。

異なる事業場で勤務している労働者と比較して労働条件が異なる場合

不合理と判断された場合の効果

 上記2に述べた要素を考慮した結果、有期契約労働者の労働条件が、無期契約労働者の労働条件と比べて「不合理」と判断された場合、有期契約労働者における当該労働条件については無効となります。

 例えば、無期契約労働者の場合には通勤手当が認められ、かつ社員食堂の利用も可能とされているのに対し、有期契約労働者の場合には、いずれも認められていないとしても、当該相違が「不合理」と判断されれば、有期契約労働者であっても通勤手当、社員食堂の利用とも認められることになります。

 また、当該相違が「不合理」と判断された場合、会社は、当該有期契約労働者の権利を故意または過失により侵害したものとして、不法行為責任(民法709条)を負う可能性があります。
 したがって、有期契約労働者から会社に対して、不法行為を理由とする損害賠償請求が認められる可能性がありますが、他方、有期契約労働者においては、具体的にどのような損害が発生したのかを主張・立証する必要があります。

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