パートタイム労働者と正社員の差別的取扱いの禁止

人事労務

 パートタイム労働者の待遇について、パートタイム労働者であることを理由として、「正社員に比べて差別的な取扱いをしてはならない」と聞いたのですが、それは、全てのパートタイム労働者に対して適用される話なのでしょうか。
 また、「差別的な取扱いをしてはならない」ということは、全ての待遇について正社員と全く同じにしなければならないという意味なのでしょうか。例えば、正社員の方がパートタイム労働者よりもパフォーマンスが良く、勤務成績が上の場合でも、給与に差を付けることは許されないのでしょうか。

 差別的取扱いが禁止されるのは、通常の労働者(正社員)と同視すべきパートタイム労働者についてであり、具体的には、①職務の内容が正社員と同一であり、かつ②人材活用の仕組み、運用等が正社員と同一である場合のみとなっています。
 ただし、この要件に当てはまるようなパートタイム労働者の場合であっても、正社員とパートタイム労働者とのパフォーマンスをそれぞれ正当に評価し、その結果待遇に差が生じることは認められます。したがって、正社員の方がパートタイム労働者よりもパフォーマンスが良く、勤務成績が上の場合、その給与に差が付いても(正社員の給与の方が良くなったとしても)問題はありません。
 なお、この要件に当てはまらないようなパートタイム労働者の場合であっても、正社員との間で不合理な待遇の差異を設けてよいというわけではありません。

解説

目次

  1. 通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者に対する差別的取扱いの禁止
    1. 差別的取扱いの禁止
    2. 職務の内容が正社員と同一とは
    3. 人材活用の仕組み、運用等が正社員と同一とは
  2. 勤務成績等に基づく差異
  3. パートタイム労働者に対する不合理な待遇

通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者に対する差別的取扱いの禁止

差別的取扱いの禁止

 パートタイム労働者とは、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者(パートタイム労働法2条)、つまり正社員よりも所定労働時間が短い労働者をいいます(パートタイム労働者の定義については、「パートタイマーとはどのような労働者をいうか」をあわせてご覧ください。

 このパートタイム労働者に関して、以下2つの要件を満たす場合、パートタイム労働者であることを理由として、賃金の決定教育訓練の実施福利厚生施設の利用その他の待遇について差別的取扱いをしてはならないと定められています(パートタイム労働法9条)。

  1. 職務の内容が正社員と同一
  2. 人材活用の仕組み、運用等が正社員と同一であると見込まれる場合

パートタイム労働者に対する差別的取扱いの禁止

パートタイム労働法9条
(通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止)
事業主は、職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(第11条第1項において「職務内容同一短時間労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。

職務の内容が正社員と同一とは

 職務の内容とは、業務の内容および当該業務に伴う責任の程度を意味するものですが、職務の内容が同一であるか否かについては、形式的な役職等を比較するのではなく、実質的にみてその内容が同一といえるかという観点から判断されます。

 例えば、正社員とパートタイム労働者が、同じ部署で同じ役職名であったとしても、正社員の方が部下の人数が多く、決裁権限の範囲も広いような場合で、かつ責任も大きい場合(トラブル時や緊急時の対応を求められる、より厳しいノルマが課せられている等)には、職務の内容が同一とはいえないと考えられます。

人材活用の仕組み、運用等が正社員と同一とは

 人材活用の仕組み、運用等については、人事異動(転勤等)の有無・範囲、事業所内での職務の変更の有無・範囲の同一性が問題となります。

勤務成績等に基づく差異

 仮に、通常の労働者(正社員)と同視すべきパートタイム労働者の場合でも、禁止されるのは、「パートタイム労働者であることを理由とする待遇の差別」です。
 したがって、正社員と同様に個人の勤務成績等を正当に評価し、その結果として待遇に差が付いたとしても(例えば、正社員の方がパートタイム労働者に比べて成績が良かったため、ボーナス等が多かったとしても)、それは、「パートタイム労働者であることを理由とする待遇の差別」ではないので、パートタイム労働法に違反することにはなりません。
 他方、通勤手当や家族手当等については、通常、正社員とパートタイム労働者とで区別される理由はないはずなので、仮にこれらについて差異が設けられているとすれば、「パートタイム労働者であることを理由とする待遇の差別」に該当する可能性が高い(パートタイム労働法に違反する可能性が高い)と考えられます。

パートタイム労働者に対する不合理な待遇

 また、上記2に述べた要件を満たさないような場合、パートタイム労働者の待遇について何ら制限がなくなるわけではありません。
 すなわち、パートタイム労働法は、パートタイム労働者と正社員の待遇に相違を設ける場合には、両者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないと定めており、両者の間で不合理な待遇の差異を設けることは禁止されています(パートタイム労働法8条)。

 したがって、上記2に述べた要件を満たさないような場合であっても、パートタイム労働者と正社員の待遇に差異を設ける場合には、合理的な理由があるのか、差異が合理的な範囲にとどまっているのか等につき、常に留意をする必要がありますし、仮に、パートタイム労働者や労働基準監督署から差異の説明を求められた場合には、適切に説明ができるようあらかじめ会社としての考え方を整理しておく必要があります。

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