偽造品業者に対する通告を行った後に注意すべきことは
知的財産権・エンタメ偽造品業者に対する通告を行った後は、どのような点に注意をする必要がありますか。
通告を受けた偽造品業者から、通告を行った権利者に対し、通告対象商品が偽造品であることを示す根拠・証拠(真贋確認ポイント)の開示を要求されることがあります。
しかし、このような要求に対しては、真贋確認ポイントを開示する法律上の義務がないこと、真贋ポイントは営業秘密に該当すること等を理由として、これを拒否することが権利者としての基本的な対応といえます。
また、通告後も偽造品販売を継続する偽造品業者に対しては、仮処分申立て、訴訟提起等の民事上の法的措置、インターネット上の偽造品販売については、ショッピングモールやオークションの運営者(インターネットプロバイダー)に対する偽造品の販売・出品ページの削除要求、さらには、商標権侵害罪の刑事立件を要請するための警察への相談も検討します。
解説
目次
自社の偽造品が販売されている場合の対応
偽造品の販売について商標権侵害や不正競争行為を理由とする差止請求や損害賠償請求が可能と判断した場合、権利者として最初に採るべき対応として、通常は、偽造品の販売業者に対する通告を行います。
偽造品業者に対する通告を行う場合の留意点は「偽造品を販売する業者に販売中止等の通告を行う場合の注意点」を参照ください。また、通告書の記載方法については「偽造品の販売業者に対する通告書の記載方法は」を参照ください。
以下では、通告を行った後に注意すべき点について解説します。
偽造品業者による、通告対象商品(偽造品)の真贋確認ポイントの開示要求に対する対応
権利者による商標権侵害・不正競争行為の主張・証明責任の内容
偽造品の販売業者に対し、商標権侵害や不正競争行為(周知・署名な商品等表示の冒用)を理由とする通告を行った際に、偽造品業者から、通告対象商品が偽造品であることを示す根拠、証拠の提出を要求されることがあります。具体的には、その偽造品の仕様について、真正商品の仕様と相違する箇所(真贋確認ポイント)を具体的に開示してほしいと要求される場合が多いです。
しかし、商標権侵害や先の不正競争行為を理由とする通告を行う場合には、権利者の登録商標または周知著名な商品等表示である真正品のロゴ・マークと同一または類似のロゴ・マークが通告対象商品に使用(表示)されていること、また、通告対象商品が登録商標の指定商品と同一または類似すること(商標権侵害の場合)または需要者が通告対象商品と真正品を混同する(またはそのおそれが生じる)こと(周知な商品等表示の冒用(不正競争行為)の場合)を証明すれば、権利者として法律上要求される当面の主張・証明責任は果たしたことになります。
商標権侵害・不正競争行為を争う偽造品業者による証明責任の内容
これに対し、偽造品業者が、自らが販売する通告対象商品が真正品であるとして商標権侵害や不正競争行為を争う場合には、通告対象商品の仕様が真正品の仕様と完全に一致すること、または偽造品業者が購入した商品が、商標権者、製造販売元またはそのライセンシーにより適法に製造され、市場に出荷された商品であることを自ら証明する必要があります。
後者の場合には、商標権者、製造販売元またはライセンシーから、輸入・販売業者を経て、自身が取得するに至るまでの全ての取引履歴を証明する書類(注文書、納品書等)を証拠として示す必要があります。
権利者による真贋確認ポイントの開示拒否の根拠
ただ、通告者である権利者が、通告前に、通告対象商品の真贋確認を適切に行い、通告対象商品が偽造品であることを確認していれば、通告を受けた偽造品業者が、通告対象商品を真正品であると証明することは困難といえます。
また、偽造品業者による真贋確認ポイントの開示要求に応じた場合、その真贋確認ポイントの情報が他の偽造品業者にも流れる可能性があり、さらに精巧な偽造品が製造され、市場に流通するリスクが高まることになります。
従って、権利者としては、偽造品業者から真贋ポイントの開示を求められた場合は、上記の通り、真贋確認ポイントを開示する法律上の義務はないこと、真贋ポイントは営業秘密に該当することを理由として、その開示を拒否することが権利者としての基本的な対応といえます。
通告後も偽造品販売を継続する偽造品業者への対応
このように偽造品販売に対し商標権侵害や不正競争行為を理由とする通告を行った後も、通告を受けた偽造品業者が偽造品の販売を継続する場合には、仮処分申立て、訴訟提起等の民事上の法的措置を検討することになります。
また、インターネット上のショッピングモールやオークション等で偽造品を販売・出品している偽造品業者の場合は、そのショッピングモールやオークションの運営者(インターネットプロバイダー)に対し、偽造品業者による偽造品の販売・出品ページの削除を要求することも検討する必要があります。
さらに、故意による商標権侵害罪の刑事立件を要請するために警察への相談も検討することになります。
