偽造品の販売業者に対する通告書の記載方法は

知的財産権・エンタメ

 商標権侵害や不正競争行為を理由とする、偽造品の販売業者に対する通告書には、どのような内容の記載を行う必要がありますか。

 偽造品の販売業者に対する通告書には、以下の事項を記載する必要があります。

① 模倣された真正品のロゴ・マークの記載
② 偽造品業者による偽造品の販売行為の記載
③ 通告対象商品を偽造品であると判断した方法・根拠
④ 偽造品の販売中止と偽造品の回収の要求
⑤ 損害賠償請求額の算定に必要な情報の提出要求
⑥ 偽造品の仕入先等の開示
⑦ 偽造品の在庫の取扱いに関する要求
⑧ その他の任意記載事項(誓約書、侵害疑義商品のサンプル提出等)

解説

目次

  1. 自社の偽造品が販売されている場合の対応
  2. 模倣された真正品のロゴ・マークの記載 
  3. 偽造品業者による偽造品の販売行為の記載
    1. 偽造品販売行為の特定の必要性
    2. 偽造品販売行為の特定方法
  4. 通告対象商品を偽造品であると判断した方法・根拠
  5. 偽造品の販売中止と偽造品の回収の要求
  6. 損害賠償請求額の算定に必要な情報の提出要求
  7. 偽造品の仕入先等の開示要求
  8. 偽造品の在庫の取扱いに関する要求
  9. その他通告書で要求する事項について

自社の偽造品が販売されている場合の対応

 偽造品の販売について商標権侵害や不正競争行為を理由とする差止請求や損害賠償請求が可能と判断した場合、権利者として最初に採るべき対応として、通常は、偽造品の販売業者に対する通告を行います。
 偽造品業者に対する通告を行う場合の留意点は「偽造品を販売する業者に販売中止等の通告を行う場合の注意点」を参照ください。
 以下では、実際に通告書を記載する場合の注意点について解説します。

模倣された真正品のロゴ・マークの記載 

 登録商標または周知著名な商品等表示として保護される真正品のロゴ・マークが、どのような外観のロゴ・マークであるのかを文章で具体的に説明し、登録商標がある場合には、その商標登録番号を記載します。

 周知著名な商品等表示の場合には、その商品等表示が、どの商品のロゴ・マークとして、どのような地域において、どのような範囲の需要者の間で周知・著名になっているのかを記載する必要があります。

偽造品業者による偽造品の販売行為の記載

偽造品販売行為の特定の必要性

 通告書では、商標権侵害や不正競争行為に該当すると主張する、相手方による偽造品の販売行為について、対象商品、販売の場所、時期等を具体的に特定する必要があります。
 偽造品の販売行為の特定を明確に行わなければ、通告を受けた相手方は、自身が販売するどの商品の販売を違法な行為として中止しなければならないかを正確に判断することができなくなります。

 その結果、相手方による適法な真正品の販売行為まで中止させてしまった場合には、後日、通告者が、相手方から、その通告が営業妨害行為(不法行為)にあたると反論され、損害賠償請求を受ける可能性もありますので注意が必要です(偽造品の販売行為を具体的に特定しない通告について、商標権侵害罪の立件に支障を来す可能性がある点については、「偽造品の販売と刑事上の法的措置」の箇所で説明します)。

偽造品販売行為の特定方法

 通告書を作成する際には、以下説明をする、偽造品の販売行為の特定に必要な具体的な情報や事実の記載漏れがないよう十分に注意する必要があります。

 まず、偽造品業者が販売している商品の中から、偽造品であるとして通告対象となる商品を特定する必要があります。具体的には、商品の名称、商品番号、仕様・規格等を記載して特定することになります。

 次に、通告対象となる偽造品が販売された場所、時期等を具体的に記載する必要があります。
 偽造品の販売場所については、実店舗で行われている場合には、その店舗の名称・住所を、インターネット上で販売されている場合には、ネット店舗の名称、URL等を記載し、インターネットオークションで出品されている場合には、出品者の名称、ID、出品ページのURL等を記載します。
 偽造品の販売時期については、偽造品の販売の証拠として取得・保管する、偽造品の購入の際の領収書、購入記録、インターネット上の販売ページのプリントアウト、データ等に記載されている日付と整合する日付又は期間を記載することをお勧めします。

 通告書において文章により真正品のロゴ・マークや通告対象商品(偽造品)を具体的に特定することが難しい場合には、内容証明郵便で送付する通告書とは別に、そのロゴ・マークや通告対象商品の画像・写真を偽造品業者に郵送する場合もあります。

通告対象商品を偽造品であると判断した方法・根拠

 具体的には、通告者が、通告対象商品を偽造品であると認定した真贋確認(鑑定)の方法(通告対象商品の商品現物の観察を通じての鑑定か、店頭展示の商品またはインターネットの商品画像の観察を通じての鑑定か)と根拠(真正品との仕様の相違、同種商品の真正品の不存在、等)を、通告書に記載します(なお、この記載は、特に偽造品業者の商標権侵害罪の故意の立証のために必要な記載であり、詳細は「偽造品の販売と刑事上の法的措置」をご参照ください)。

 なお、鑑定根拠の説明の際に、具体的な真贋ポイントの開示は可能な限り避けるべきである点については後述します。

偽造品の販売中止と偽造品の回収の要求

 偽造品業者に対する通告書では、通告者である権利者の主たる要求として、通告対象商品である偽造品の販売中止の要求と共に、偽造品の宣伝広告の中止や、インターネットでの販売の場合には、偽造品の商品画像の掲載を含む販売ページの削除等も要求します。
 また、偽造品業者がすでに販売した偽造品を、その販売先から回収することを要求する場合もあります。

損害賠償請求額の算定に必要な情報の提出要求

 商標法や不正競争防止法は、偽造品販売による権利者の損害の証明の困難さを軽減するために、①偽造品販売がなければ権利者が取得できたであろう想定販売利益、②偽造品業者が偽造品販売によって取得した販売利益、③偽造品により模倣された真正品のロゴ・マークの使用ライセンスのロイヤリティ相当額のいずれかを主張・証明すれば、その金額を、商標権侵害または不正競争行為による権利者の損害額と推定する規定を設けています(商標法38条、不正競争防止法5条)。
 偽造品販売については、②の偽造品業者が偽造品販売により取得した販売利益額を権利者の損害額と推定する損害賠償請求を行う場合が多いといえます。

 そのため、偽造品業者に対する通告書では、通告者である権利者による損害算定に必要な、偽造品業者による偽造品の購入(輸入)・販売に関する情報の開示を要求する必要があります。
 具体的には、偽造品の購入および販売の数量、単価・金額、時期と、現時点の在庫数量等を記載した書面と、その裏付けとなる取引書類(輸入申告書、発注書、納品書、請求書等)の写しの提出を要求します。

偽造品の仕入先等の開示要求

 市場における偽造品流通の蔓延を防ぐためには、その偽造品が、誰によって、どのように製造され、市場において販売されているか、その偽造品の製造元と流通ルートの解明が不可欠です。
 そのため、偽造品業者に対する通告書では、偽造品業者がその偽造品を購入(輸入)した仕入先または製造を委託した製造委託先の名称・氏名、住所、代表者(法人の場合)、連絡先等の情報の開示を要求する必要があります。

偽造品の在庫の取扱いに関する要求

 偽造品業者が権利者の通告後に偽造品の販売を中止した時点で、偽造品業者の手元に偽造品の在庫が残っている場合があります。また、通告後に、権利者の要求により偽造品業者が販売先から回収した偽造品も、偽造品業者の新たな在庫となります。
 このような偽造品の在庫が、偽造品業者により仕入先に返品されれば、その仕入先により、さらに他の販売業者や消費者に偽造品が販売されるおそれがあります。

 また、偽造品を仕入先に返品する行為自体が、偽造品の「引渡」行為として、新たな商標権侵害や不正競争行為に該当することも考えられます。したがって、通告書では、偽造品業者に対し、このような偽造品の在庫を仕入先に返品しないよう要求する必要があります。
 その上で、偽造品業者が所持する偽造品については、所有権放棄の上で通告者である権利者に引き渡させるか、または適正な廃棄業者に廃棄させ、その廃棄業者が発行する廃棄証明書の写しと廃棄の際の写真を権利者に提出させるか、いずれかの方法を通告書において偽造品業者に要求します。

その他通告書で要求する事項について

 上記の各事項のほか、偽造品業者による再犯が懸念される場合には、今後二度と権利者の真正品の偽造品を製造、輸入、購入または販売しない旨の誓約書の提出を要求したり、通告対象商品以外にも通告者である権利者の登録商標や周知著名な商品等表示と同一または類似のロゴ・マークを表示した偽造品と疑われる商品を製造、販売等している場合には、その侵害疑義商品についての情報開示や真贋確認のためのサンプルの無償提供等を要求する場合もあります。

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