団体商標とは?登録要件、効力、登録方法等をわかりやすく解説 - 商標の登録が認められる場合、認められない場合(4)

知的財産権・エンタメ
溝上 武尊弁護士 弁護士法人イノベンティア

 ある事業協同組合の構成員の間で使用している統一ブランドについて、商標登録を受けることはできますか。

 団体商標制度の利用によって商標登録を受けることができる場合があります。制度を利用するためには、①出願人が一般社団法人、事業協同組合等であること、②出願商標が団体構成員に使用させる商標であることという要件を満たす必要があります(商標法7条1項)。

解説

目次

  1. 団体商標制度とは
  2. 団体商標の登録要件
    1. 概要
    2. 出願人が一般社団法人、事業協同組合等であること
    3. 出願商標が団体構成員に使用させる商標であること
  3. 団体商標に係る商標権の特徴
    1. 商標権の効力
    2. 団体構成員の権利
    3. 使用権の設定
    4. 商標権の移転
  4. 団体商標の登録方法

団体商標制度とは

 団体商標とは、一般社団法人や事業協同組合がその構成員に使用させる商標をいいます(商標法7条1項)。団体商標制度は、団体を中心としたブランド作りに資する制度として、平成8年改正商標法によって導入されました。

 商標登録を受けるためには、本来、出願人自身の業務において使用する商標でなければなりません(同法3条1項柱書)。しかし、団体商標制度を利用すれば、団体構成員が使用する商標について、団体自身が商標登録を受けることができます(同法7条2項)。

 たとえば、大阪を代表する生鮮食品の市場である「黒門市場」については、黒門市場商店街振興組合の名義で「黒門」や「黒門市場」に関する団体商標が登録されています。
 そのほかにも、以下のようなものが団体商標の一例として挙げられます。

団体商標の登録例

権利者 登録番号・登録商標
黒門市場商店街振興組合 第5203087号
黒門市場商店街振興組合
一般社団法人全国食品リサイクル連合会 第6312130号
一般社団法人全国食品リサイクル連合会
ワイ―ファイ アライアンス 第5296846号
ワイ―ファイ アライアンス
全国麦茶工業協同組合 第5435853号
全国麦茶工業協同組合
一般社団法人電気通信事業者協会 第4551871号
一般社団法人電気通信事業者協会

 なお、団体商標制度の一種として、地域団体商標制度があります。地域団体商標に関しては、別稿「地域団体商標とは? 団体商標・地理的表示との違い、登録要件・方法等を解説 - 商標の登録が認められる場合、認められない場合(5)」をご参照ください。

団体商標の登録要件

概要

 団体商標の登録要件は以下のとおりです。

  1. 出願人が一般社団法人、事業協同組合等であること
  2. 出願商標が団体構成員に使用させる商標であること

 なお、上記要件を満たして団体商標と認められた場合であっても、商標登録を受けるためには、通常の商標登録要件(商標法3条、4条)も満たす必要があります。

出願人が一般社団法人、事業協同組合等であること

 出願人は、以下のいずれかに該当する団体である必要があります(商標法7条1項)。

  • 一般社団法人その他の法人格を有する社団で、会社ではないもの
  • 事業協同組合その他の特別の法律により設立された法人格を有する組合
  • これらに相当する外国の法人

 「その他の法人格を有する社団」としては、商工会議所法に基づく商工会議所、商工会法に基づく商工会、特定非営利活動促進法に基づく特定非営利活動法人(NPO法人)等があります。また、「事業協同組合」とは、中小企業等協同組合法に規定する事業協同組合を意味し、「その他の特別の法律により設立された法人格を有する組合」としては、農業協同組合法により設立された農業協同組合等があります。

 前述の黒門市場商店街振興組合も商店街振興組合法により設立された組合で、同法により法人格を付与されています。

団体商標の主体となり得る日本の法人(太線枠内)の概略図

団体商標の主体となり得る日本の法人(太線枠内)の概略図

出所:特許庁「団体商標の取扱いについて」5頁

出願商標が団体構成員に使用させる商標であること

 出願商標は、団体構成員に使用させる商標である必要があります(商標法7条1項)。団体構成員に加えて団体自身が使用する場合も含まれます。

団体商標に係る商標権の特徴

商標権の効力

 団体商標に係る商標権の効力は、通常の商標権と基本的に変わるところはなく、商標権者には専用権禁止権が認められます(商標法25条、37条1号)。詳しくは別稿「商標権の効力(専用権と禁止権)」をご参照ください。

団体構成員の権利

 団体商標について、団体構成員は、当該団体の定款等に従い、指定商品・役務について登録商標を使用する権利を有します(商標法31条の2第1項本文)。
 団体構成員であれば自動的に使用権が発生しますが、当該定款等で特定の品質基準等が定められていれば、団体構成員の使用権もそれに合致する商品・役務の範囲に制限されます。当該品質基準等に合致しない使用は、団体構成員の行為といえども、商標権侵害となります。

 このような団体構成員の権利は、相続等の一般承継を含めて移転が認められません(同法31条の2第2項)。

使用権の設定

 団体商標に係る商標権については、通常の商標権と同じく、専用使用権通常使用権を設定・許諾することができます。団体商標に係る商標権に専用使用権が設定されているときは、専用使用権の対象範囲については、団体構成員の使用権が制限されます(商標法31条の2第1項ただし書)。

商標権の移転

 団体商標に係る商標権は移転することができますが、移転先が一般社団法人や事業協同組合でない場合には通常の商標権に変更されたものとみなされます(商標法24条の3)。

団体商標の登録方法

 団体商標の商標登録にあたっては「団体商標登録願」という書類を作成しますが、その記載内容は通常の「商標登録願」と同様です。ただし、団体商標の場合には、出願人が前記2-2の法人であることを証明する書面(登記事項証明書等)を併せて提出する必要があります(商標法7条3項)。

 その後の手続の流れも通常の出願手続と同様です。商標登録出願について査定・審決が確定するまでは、団体商標の商標登録出願を通常の商標登録出願や地域団体商標の商標登録出願に変更し(商標法11条1項)、あるいは、通常の商標登録出願や地域団体商標の商標登録出願を団体商標の商標登録出願に変更することができます(同条2項・3項)。

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