第三者意見募集制度(日本版アミカスブリーフ制度)の意義と活用の可能性

知的財産権・エンタメ
山口 裕司弁護士 大野総合法律事務所

 日本版アミカスブリーフ制度とも呼ばれる「第三者意見募集制度」とはどのような制度でしょうか。

 第三者意見募集制度は、特許権等の侵害訴訟において、東京地裁・大阪地裁・知財高裁が、当事者の申立てにより、必要があると認めるときに、他の当事者の意見を聴いて、広く一般に対し、当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項について、意見の提出を求めることができるとする制度で、令和3年特許法改正によって導入されました。

解説

目次

  1. 米国におけるアミカスブリーフ
  2. 三星電子対Apple Japan事件での知財高裁における意見募集
  3. 第三者意見募集制度の概要
    1. 制度導入の趣旨
    2. 特許法上の規定と想定されている制度の内容
    3. 私的鑑定意見書やアミカスブリーフとの対比
  4. 第三者意見募集制度の活用
    1. 当事者から見た制度の活用
    2. 第三者として意見を提出することによる制度の活用
    3. 第三者による意見提出における弁護士の役割
  5. まとめ

米国におけるアミカスブリーフ

 第三者意見募集制度の導入にあたって参考とされたアミカス・キュリエ・ブリーフ(amicus curiae brief)、略してアミカスブリーフは、当事者・参加人以外の第三者により、裁判所による判断の助けとなるように提出される意見書のことをいいます。アミカス・キュリエは、ラテン語で、「法廷の友(friend of the court)」と訳されます。

 米国では、Green v. Biddle事件(1823年)で最初にアミカスブリーフが提出されたとされ、現在は、連邦や州の裁判所規則において、それぞれアミカスブリーフに関する規定(例:連邦最高裁規則37条)が設けられています。

 アミカスブリーフの提出に法分野の限定はなく、外交に関連する論点で、米国連邦最高裁に日本政府がアミカスブリーフを提出したこともあります(F. Hoffmann-La Roche Ltd. v. Empagran S.A.事件(2004年)、Mera v. City of Glendale事件(2017年))。知的財産事件では、特許無効の立証基準が争点となったMicrosoft v. i4i事件(2011年)1 で49通、ソフトウェアの著作権や公正使用(fair use)が争点となったGoogle LLC v. Oracle America Inc.事件(2021年)で61通のアミカスブリーフが、米国連邦最高裁の本案審理段階で提出され、判決にも引用されており、裁判官がアミカスブリーフをかなり参考にしていることがうかがえます。

三星電子対Apple Japan事件での知財高裁における意見募集

 知財高裁は、特別部(大合議部)に係属していた三星電子対Apple Japan事件(平成25年(ネ)第10043号事件)において、平成26年1月23日から同年3月24日まで、「標準化機関において定められた標準規格に必須となる特許についていわゆる(F)RAND宣言((Fair,) Reasonable and Non-Discriminatoryな条件で実施許諾を行うとの宣言)がされた場合の当該特許による差止請求権及び損害賠償請求権の行使に何らかの制限があるか。」という点について、一般からの情報または意見の提供を求めました 2

 書面の提出は、原本および写し2部の合計3部(和文によらない場合は和文への翻訳を3部添付)を、控訴人または被控訴人のいずれかの訴訟代理人に郵送する形で行われ、書面の提出を受けた訴訟代理人は、写しのうち1部を相手方に送付し、他の1部を裁判所に書証として提出しました。

 知財高裁が両当事者と協議し、合意したうえで行った意見募集は、アミカスブリーフに類似する仕組みを実務上の工夫によって実現する画期的な試みとして大きな注目を集め、58通の意見書が提出されました 3。その後の活用も期待されていましたが、意見募集の方法がルール化されていないこともあって 4、ほかの件で意見募集が試みられることはありませんでした。

第三者意見募集制度の概要

制度導入の趣旨

 令和3年特許法改正に先立って、産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会において、第三者意見募集制度の導入についての検討が行われ、令和3年2月に公表された「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方」と題する報告書(以下「特許制度小委報告書」といいます。)において、立法に向けた方針が示されました。特許制度小委報告書は、第三者意見募集制度の導入に関し、AI・IoT技術の時代においては、特許権侵害訴訟は、これまで以上に高度化・複雑化することが想定され、裁判官が必要に応じてより幅広い意見を参考にして判断を行えるようにするための環境を整備することがますます重要となっていると説明していました。

特許法上の規定と想定されている制度の内容

 第三者意見募集制度は、特許法105条の2の11において規定されました。

(第三者の意見)
第105条の2の11 民事訴訟法第6条第1項各号に定める裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟の第一審において、当事者の申立てにより、必要があると認めるときは、他の当事者の意見を聴いて、広く一般に対し、当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項について、相当の期間を定めて、意見を記載した書面の提出を求めることができる。

2 民事訴訟法第6条第1項各号に定める裁判所が第一審としてした特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟についての終局判決に対する控訴が提起された東京高等裁判所は、当該控訴に係る訴訟において、当事者の申立てにより、必要があると認めるときは、他の当事者の意見を聴いて、広く一般に対し、当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項について、相当の期間を定めて、意見を記載した書面の提出を求めることができる。

3 当事者は、裁判所書記官に対し、前二項の規定により提出された書面の閲覧若しくは謄写又はその正本、謄本若しくは抄本の交付を請求することができる。

4 民事訴訟法第91条第5項の規定は、第1項及び第2項の規定により提出された書面の閲覧及び謄写について準用する。

 第三者意見募集制度が適用されるのは、特許権または専用実施権の侵害訴訟(特許法105条の2の11第1項・第2項)と、実用新案権または専用実施権の侵害訴訟(実用新案法30条で準用)に限られています。審決取消訴訟を対象に含めることや他の知的財産法分野に導入することは見送られましたが、将来必要があれば適用範囲を広げていくことも考えられます。

 第三者意見募集制度が利用できるのは、特許権および実用新案権に係る侵害訴訟の専属管轄を有する東京地裁および大阪地裁ならびにその控訴審の知財高裁です。三星電子対Apple Japan事件では、知財高裁特別部(大合議部)において意見募集がなされましたが、第三者意見募集制度の利用は、大合議事件に限定されません(特許法105条の2の11第2項)。また、証拠は本来、第一審ですべて提出することが望ましいとして、東京地裁および大阪地裁でも第三者意見募集制度の利用が可能となりました(特許法105条の2の11第1項)。

 意見募集の対象は、「当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項」と規定されているように(特許法105条の2の11第1項・第2項)、法律問題や経験則(一般的経験則)などに限られず、事業実態など、裁判所が事案に応じて必要と認めた事項に及びます

第三者意見募集制度の流れ

第三者意見募集制度の流れ

 第三者意見募集制度は、「当事者の申立てにより、」裁判所が「必要があると認めるとき」に、「他の当事者の意見を聴いて、」実施され(特許法105条の2の11第1項・第2項)、第三者が裁判所に提出した意見書を、当事者が閲覧・謄写して(特許法105条の2の11第3項)、改めて書証として裁判所に提出することが想定されています。これは、裁判所が当事者を介さずに第三者の意見を裁判所の判断の基礎とすると、弁論主義についての問題が生じ得ると考えられたためです。

 三星電子対Apple Japan事件では両当事者の合意により、両当事者の代理人に提出された意見書をすべて書証として裁判所に提出する取扱いが採られました。しかし、第三者意見募集制度は、裁判所に提出された意見書を当事者が閲覧・謄写する手間がかかる点と、当事者が閲覧・謄写した意見書の中から書証として裁判所に提出するか否かを選別可能である点で、三星電子対Apple Japan事件の取扱いと異なります。特許制度小委報告書によれば、電子データによる意見書の提出、複製等については、関係省庁で行われている議論の行方も注視しながら、検討を行うとのことであり、民事裁判手続のIT化が実現する際に、当事者の閲覧・謄写の負担が解消することが期待されます。

 第三者意見募集制度の導入を検討するにあたっては、当事者による第三者への意見提出の働きかけを禁止する等の制限を行うことも検討されましたが、第三者意見募集制度を当事者による証拠収集手続として位置付けたことから、働きかけを禁止する等の制限は設けられていません。

私的鑑定意見書やアミカスブリーフとの対比

 従前から、当事者が、研究者等の専門家に作成を依頼した意見書(私的鑑定意見書)を書証として提出することは行われてきました。私的鑑定意見書は、当事者から打診を受け、当事者と協議して作成されるもので、その作成につき当事者から報酬の支払いを受けることが通常であり、公正中立性と党派性の緊張関係が生じるとも指摘されています 5

 第三者意見募集制度においても、当事者から第三者に意見提出の働きかけをすることは排除されていませんが、当事者からの働きかけと無関係に意見募集に応募してくる第三者も想定されるため、より多様な意見を裁判所に寄せることが可能になると考えられます。

 米国のアミカスブリーフでは、当事者一方を支持する意見書の他、どちらの当事者も支持しない(in support of neither party)意見書も提出されています。しかし、第三者意見募集制度では、当事者が閲覧・謄写した意見書の中から書証として裁判所に提出するか否かを選別可能であるため、当事者のどちらからも裁判所に提出されず、証拠資料とならない第三者の意見書が生じ得ることになります。反対に、当事者が書証として提出する第三者の意見書を選別することによって、裁判所が第三者の意見書に目を通す負担が多少軽減されるとも考えられます。

第三者意見募集制度の活用

当事者から見た制度の活用

 第三者意見募集制度は、「当事者の申立てにより、」裁判所が「必要があると認める」かどうかを検討して、実施を決定することになります。特許制度小委報告書は、第三者意見募集制度に適すると考えられる典型的な対象を「判決が当事者の属する業界のみならず、他の業界の企業等にも大きく影響を及ぼし得る特許権侵害事案」と説明していることから考えますと、第三者意見募集制度の実施を申し立てようとする当事者は、事件が及ぼし得る影響が大きく、広く一般から意見を募集する必要性があることを裁判所に対する申立てで述べることになるでしょう。

 第三者意見募集制度は、第三者からどのような意見が提出されるか予測がつかず、また、第三者の意見書を閲覧・謄写して、選別のうえ、書証として提出する負担も生じるので、他の当事者としては、裁判所からの意見の聴取に対して、実施に否定的な意見を述べることも考えられます。裁判所は、そのような他の当事者の意見も踏まえて、第三者意見募集制度を実施するかどうかを決定することになります。

 当事者としては、第三者意見募集制度の利用の得失や第三者からの提出が予測される意見書の内容に基づいて、第三者意見募集制度を利用すべきかどうかを考える必要があります。また、当事者が第三者意見募集制度の実施を申し立てる際に、第三者の意見を求める論点を適切に設定することも重要になると思います。

第三者として意見を提出することによる制度の活用

 第三者意見募集制度において、意見書を提出できる主体に限定はありません。研究者等の専門家を含む個人、個々の会社、業界団体、行政機関等は、それぞれの立場から対象事件の裁判所による判断に資するような意見書を提出することにより、第三者意見募集制度を利用することができます。

 第三者は、事件における両当事者の主張を理解することが、裁判の帰趨に影響を及ぼす効果的な意見書の作成につながるので、とりわけ第一審の場合、訴訟記録の閲覧が必要になることもあるでしょう。民事裁判手続のIT化が実現して、第三者が訴訟記録にアクセスしやすくなることは、第三者意見募集制度が活用されるための前提条件になるともいえるでしょう。

 業界団体においては、行政機関の行うパブリック・コメント(意見公募手続)に応じるのと同様の段取りで、意見書を提出することになると思います。業界団体内の機関決定には一定の時間を要しますので、パブリック・コメントにおいて、その募集前から意見書の作成準備をしているのと同様に、訴訟動向に注意を払い、第三者意見募集制度の実施がありそうだという情報収集をして、事前準備ができると理想的でしょう。

 米国では、行政機関がアミカスブリーフを提出することも多く、訴訟に与える影響力も大きいと理解されています。日本においても、第三者意見募集制度が立法される前から、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(昭和22年法律第194号)4条の「法務大臣は、国の利害又は公共の福祉に重大な関係のある訴訟において、裁判所の許可を得て、裁判所に対し、自ら意見を述べ、又はその指定する所部の職員に意見を述べさせることができる。」という規定に基づいて、法務大臣等が意見を述べることは可能でした。第三者意見募集制度において、行政機関が意見書を提出することも、状況によってはあり得ると思われます。

第三者による意見提出における弁護士の役割

 米国では、たとえば、連邦最高裁規則37条1項が、「アミカス・キュリエ・ブリーフは、第5条に規定するように当裁判所で認められた弁護士によってのみ提出することができる。」と規定しており、登録弁護士(Counsel of Record)が代理してアミカスブリーフを提出しています。

 第三者意見募集制度においても、さまざまな法律問題が絡みますし、当該事件のみならず、他の関連事件への影響なども考慮する必要がありますので、法律や訴訟の専門家である弁護士に相談し、弁護士の代理により、意見書を提出することも検討に値すると思います。

 なお、令和3年の弁理士法改正により、弁理士法4条2項4号に、弁理士の行い得る事務として、第三者意見募集制度における「意見を記載した書面を提出しようとする者からの当該意見の内容(特許法及び実用新案法の適用に関するものに限る。)に関する相談」が追加されましたが、相談できる内容が限定されており、代理することは含まれていないことに留意が必要です。

まとめ

 第三者意見募集制度は、三星電子対Apple Japan事件での知財高裁における意見募集の試みを立法化するものとして、我が国の民事裁判システム上も大きな意義を有するものです。

 現時点では、特許権および実用新案権に係る侵害訴訟に適用対象が限定されていますが、今後の活用事例の蓄積により、適用範囲の拡大に向けた議論が進んでいくことが望ましいですし、民事裁判手続のIT化の実現に伴って、より利用しやすい制度になる可能性も秘めています

 第三者意見募集制度は、裁判所における判断が、広く一般の意見を踏まえたものとなり、当事者のみならず、第三者にとっても、納得のいくものとなることに資する制度です。裁判所、弁護士をはじめとする関係者の協力により、第三者意見募集制度を活用し、社会に定着させていくことが期待されます。


  1. 山口裕司「特許無効の立証基準についての米国最高裁判決とこれに与えた法廷の友意見書の影響」知財ぷりずむ117号75頁(2012年) ↩︎

  2. 大野総合法律事務所「大合議事件についての意見募集のお知らせ」、伊藤見富法律事務所「大合議事件についての意見募集のお知らせ」 ↩︎

  3. 山口裕司「米国での法廷の友意見書の活用状況と知財高裁大合議事件における意見募集の意義」特許ニュース13674号1頁(2014年3月11日)、小田真治「知的財産高等裁判所の大合議事件における意見募集(「日本版アミカスキュリエ」)について」判タ1401号116頁(2014年) ↩︎

  4. 「裁判所と日弁連知的財産センターとの意見交換会 平成26年度」Law & Technology別冊1号4頁(2015年) ↩︎

  5. 伊藤眞「法律意見書雑考—公立中立性のombre et lumière(光と影)」『伊藤眞古稀後著作集 民事司法の地平に向かって』34頁(商事法務、2021) ↩︎

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