会社法の施行と有限会社

コーポレート・M&A

 平成18年5月に会社法が施行されたことで、有限会社を設立できなくなったということですが、これまであった有限会社にはどのような影響があったのですか。

 会社法の施行に伴い、有限会社法が廃止されました(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」といいます)1条3号)。
 それまでの有限会社は、株式会社として存続しますが(整備法2条1項)、「特例有限会社」と呼ばれています(整備法3条2項)。整備法により、有限会社固有の概念は株式会社における同様の概念に置き換えられたりしていますし、会社法により有限会社に不利益となった部分についても手当てされていたりします。

解説

目次

  1. 旧商法・旧有限会社法下における株式会社・有限会社の違い
  2. 会社法の施行と整備法による手当て
    1. 最低資本金制度の撤廃
    2. 特例有限会社の機関
    3. 決算公告
  3. まとめ

旧商法・旧有限会社法下における株式会社・有限会社の違い

 会社法が施行される前、つまり、旧商法・旧有限会社法下において、株式会社を選択するのではなく、有限会社の形態を選択した理由としては、両者には主に下表のような違いがあり、有限会社にメリットを感じたからだと思います。

株式会社 有限会社
資本金の最低金額 1000万円(168条の4) 300万円(9条)
機関 取締役の人数 3人以上(255条) 1人以上(25条)
取締役の任期 2年以下(256条1項) なし
取締役会 必要 設置不可
監査役 必要(170条1項、183条1項) 任意(33条1項)
監査役の任期 4年(273条) なし
監査役会 大会社においては必要 (特例法18条の2) 設置不可
決算公告義務 あり(283条4項) なし

※株式会社の根拠条文=旧商法
特例法=「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」の略 /有限会社の根拠条文=旧有限会社法


 上表からもわかるとおり、有限会社の場合、資金的にも人的にも設立の負担が少ないことから、多数の会社(平成16年12月末時点で、会社の約6割)が有限会社でした1

 会社法施行に伴い、有限会社は特例有限会社と呼ばれ、株式会社として取り扱われることになりましたが、整備法により、会社法施行後も上表のメリットを享受できています。

 以下、具体的に説明します。

会社法の施行と整備法による手当て

最低資本金制度の撤廃

 会社法においては、最低資本金制度が撤廃されています。

 そもそも最低資本金制度は債権者保護のための制度でしたが、資本金をいくらにするかという問題よりも、実際の会社の財産状況がどうなのかという問題のほうが重要であるとの指摘が従前からあったためです。そのため、会社法では、資本金は1円でもよくなりました。

 この点、特例有限会社にあっては、最低資本金制度の撤廃に関して特に影響がありません(もともと300万円以上の資本金があるため)。

 なお、有限会社の定款には「資本の総額」が記載されていましたが(絶対的記載事項)(旧有限会社法6条1項3号)、特例有限会社の定款においては記載がないものとみなされます(整備法5条1項)。そして、この「資本の総額」が「資本金の額」となります(整備法42条1項参照)。

特例有限会社の機関

特例有限会社における機関設計

 会社法において、株式会社の取締役は1人でも足りることになり、取締役会や監査役、監査役会は、基本的には任意設置機関となりました(会社法326条)。

 株式会社の機関設計については、「株式会社における機関をどのように設計するか」もあわせてご覧ください。

 この点、特例有限会社においては、監査役を設置できるものの、それ以外の機関(取締役会や監査役会など)を設置することは認められていません(整備法17条1項)。そのため、旧有限会社法下における機関設計と変わりなく、機関設計の自由度はありません。

 なお、特例有限会社における監査役の監査の範囲は、会計に関するものに限定されます(つまり、業務監査権限はない)(整備法24条)。そのため、特例有限会社は、監査役を置いたとしても、会社法上の「監査役設置会社」には該当しないことになります(「監査役設置会社」の定義を定める会社法2条9号は、「監査役設置会社」から、監査役の監査の範囲が会計監査に限定されている会社を除外しています)。

取締役・監査役の任期

 会社法上、原則として、取締役の任期は2年(会社法332条)、監査役の任期は4年です(会社法336条1項)。 ただし、非公開会社は、定款によって、任期をそれぞれ10年まで伸長することができます(会社法332条2項、336条2項)。

 この点、特例有限会社においては、取締役の任期を定める会社法332条、監査役の任期を定める会社法336条がそれぞれ適用されません(整備法18条)。 そのため、従前どおり、特例有限会社の取締役、監査役の任期に制限はありません。

決算公告

 会社法において、会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表および損益計算書)を公告しなければなりません(会社法440条1項)。公告方法が官報または日刊新聞紙に掲載する方法であれば、貸借対照表の要旨の公告で足ります(会社法440条2項)。

 この点、特例有限会社においては、従前どおり、この決算公告をする必要がありません(整備法28条)。

まとめ

会社法施行前

株式会社 有限会社
資本金の最低金額 1000万円(168条の4) 300万円(9条)
機関 取締役の人数 3人以上(255条) 1人以上(25条)
取締役の任期 2年以下(256条1項) なし
取締役会 必要 設置不可
監査役 必要(170条1項、183条1項) 任意(33条1項)
監査役の任期 4年(273条) なし
監査役会 大会社においては必要 (特例法18条の2) 設置不可
決算公告義務 あり(283条4項) なし
  • 株式会社の根拠条文=旧商法・特例法(「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」の略)
  • 有限会社の根拠条文=旧有限会社法

会社法施行後

株式会社 有限会社
資本金の最低金額 なし なし
機関 取締役の人数 1人以上(326条1項) 1人以上(会社法326条1項)
取締役の任期 2年以下(332条)
非公開会社は10年まで伸長可(322条2項)
なし(整備法18条)
取締役会 基本的には任意(326条2項) 設置不可(整備法17条1項)
監査役 基本的には任意(326条2項) 任意(整備法17条1項)
監査役の任期 4年(336条1項)
非公開会社は10年まで伸長可(336条2項)
なし(整備法18条)
監査役会 基本的には任意(326条2項) 設置不可(整備法17条1項)
決算公告義務 あり(440条) なし(整備法28条)
  • 株式会社の根拠条文=会社法

 以上のとおり、特例有限会社は、会社法上の株式会社として取り扱われるものの、旧有限会社法における有限会社と同様のメリットを享受できる会社形態です。特例有限会社は、①商号の変更(定款変更)、②特例有限会社の解散登記と株式会社の設立登記により、通常の株式会社に移行できますが、会社規模や業務内容が変わらないのであれば、株式会社に移行する必要は特にないといえるでしょう。

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