株式会社の機関とは?会社法に基づいて弁護士が解説

コーポレート・M&A 更新

 これから株式会社を設立しようと考えており、どのような機関設計にしようかと検討しているところなのですが、取締役と監査役の違いもわからないですし、本を見ると他にもいろいろな機関があるようでよくわかりません。そもそも株式会社にはどのような役割を持つ機関があるのでしょうか。

 会社法では、株式会社の機関として、株主総会、取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計監査人、会計参与、委員会・執行役が定められています。機関設計に当たっては、これらの役割を十分に理解することが必要です。

解説

目次

  1. 機関とは何か
  2. 株主総会
  3. 取締役
  4. 取締役会
  5. 監査役
  6. 監査役会
  7. 会計参与
  8. 会計監査人
  9. 指名委員会等設置会社の委員会
  10. 執行役
  11. 監査等委員会

機関とは何か

 株式会社の機関とは、会社の意思決定または行為をする者として、会社法で定められている自然人または会議体のことをいいます。
 会社法上、株式会社の機関として、株主総会、取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計監査人、会計参与、各委員会、執行役、監査等委員会があります。会社法では、ある程度裁量をもって自由に機関設計をすることが認められており、これらすべての機関を設置する必要はありません。

 一番シンプルなものとしては、取締役1人で他の機関を設置しないというパターンもありますし、他方で、取締役会を置いた上で、指名委員会等を設置し、会計監査人を選任するというフル重装備のかたちもあります。

 もっとも、会社の機関は完全に自由に設計できるわけではなく、会社の規模や形態により、選択できる機関設計の一定の幅が決められています。自分の会社でどういった機関設計が可能なのか、詳細についてよく確認した上で、機関を設計することが必要です。詳しくは、「株式会社における機関をどのように設計するか」をご覧ください。

 以下、これらの機関の役割を説明します。

株主総会

 株主総会は、株式会社の最高の意思決定機関です。株式会社においては必ず設置する必要があり、定款変更や取締役・監査役の選解任等、株式会社の組織・運営・管理等の重要事項を決定します(会社法295条1項)。

 株主総会には、毎事業年度の終了後に一定の時期を定めて年に1回必ず開催される「定時株主総会」と、必要に応じて随時開催される「臨時株主総会」があります。

取締役

 株式会社は、その営利目的を達成するために、事業戦略を策定し、従業員を雇用・管理し、材料を調達し、製品を製造し、また販売するなどの事業活動を行います。このような事業活動に関する意思決定を「業務(執行)の決定」、その決定を実行して事業活動を実際に遂行することを「業務の執行」といいます。
 取締役の役割は、基本的に、この「業務(執行)の決定」および「業務の執行」を行うことです(会社法348条1項)。

 ただし、取締役の具体的な権限は、その機関構成によって異なります。
 取締役会非設置会社の場合、定款による制約を設けない限り、各取締役が会社の業務を執行することができます。つまり、この場合、取締役は、業務の決定およびその執行を行うことができる、ということになります。
 なお、代表取締役を定めた場合には、その代表取締役が会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為を有する権限を有します(会社法349条4項)。

 他方、取締役会設置会社の場合には、取締役会が業務執行の決定を行うため(会社法362条2項1号)、各取締役は、業務の執行、また、次に説明する取締役会の一員としての役割を担うことになります。

取締役会

 取締役会は、3人以上の取締役によって構成され(会社法331条5項)、代表取締役の選定等、重要な業務について意思決定を行うとともに、業務執行者の業務執行を監督する機関です(会社法362条2項)。

 日常業務の執行の決定をすべて取締役会が行うことは現実的ではないため、重要な財産の処分等、一定の重要事項を除き、代表取締役その他の特定の取締役に、業務執行の決定を委任することができます(会社法362条4項)。

 取締役会が業務執行を適切に監督できるよう、代表取締役その他の業務執行取締役は、3か月に1回以上、職務執行状況を取締役会に報告しなければなりません(会社法363条2項)。このように、取締会設置会社は、会社法上、3か月に1回以上、取締役会を開催することが義務付けられています。

監査役

 監査役は、取締役等の職務の執行を監査する機関です(会社法381条1項)。なお、「監査」とは、職務執行が適正に行われているかを調査し、必要な場合にはこれを是正することをいいます。

 監査役は独任制の機関といわれており、監査役が複数人いても、各自が単独でその職務権限を行使することができます。違法・適法に関する判断は、監査役の多数決で決着をつけるべき問題ではなく、また、監査役の多数派が経営陣と馴れ合い、その監視機能が十分に果たせなくなることを防ぐためです。

 取締役会設置会社の場合、原則として、監査役の設置が義務付けられています(会社法327条2項)。これは、業務執行の決定を取締役会が行い、他方、株主総会の権限が制約されているため、株主に代わる取締役の監視役が必要となるからです。

監査役会

 監査役会は、3人以上の監査役(そのうち半数以上は社外監査役)で構成され(会社法335条3項)、監査報告の作成や常勤監査役の選定・解職、監査の方針等の決定を行う機関です(会社法390条2項)。

 監査役会があっても監査役の独任制は維持されているので、監査役会は、各監査役の役割分担を容易にし、また、情報共有によって、組織的・効率的な監査を可能にする点に主眼があります。

会計参与

 会計参与は、取締役と共同して、貸借対照表や損益計算書等の計算書類等を作成する機関です(会社法374条1項)。なお、会計参与は、公認会計士・監査法人または税理士・税理士法人でなければなりません(会社法333条1項)。

 会計参与は、会計帳簿やこれに関する資料をいつでも閲覧・謄写することができます。また、いつでも取締役らに対して、会計に関する報告を求める権限を有しています(会社法374条2項)。

 なお、会計参与については、その資格者が所属する日本公認会計士協会と日本税理士会により、「会計参与の行動指針」が策定されています 1

会計監査人

 会計監査人は、計算書類等を監査し、会計監査報告を作成する機関です(会社法396条1項)。なお、会計監査人は公認会計士または監査法人でなければなりません(会社法337条1項)。

 会計監査人は、その職務を遂行するために、会計帳簿やこれに関する資料をいつでも閲覧・謄写することができ、また、取締役らに対し、会計に関する報告を求めることができます(会社法396条2項)。

指名委員会等設置会社の委員会

 指名委員会等設置会社の委員会としては、株主総会に提出する取締役等の選解任に関する議案の内容を決定する指名委員会、執行役等の職務執行の監査・監査報告の作成等を行う監査委員会、執行役等の個人別の報酬等の内容を決定する報酬委員会があります(会社法404条1項~3項)。なお、各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければなりません(会社法400条3項)。

 指名委員会等設置会社の取締役会は、業務執行の決定を執行役に大幅に委任することができます(会社法416条3項、418条1号参照)。取締役が数多くいる大きな会社においては、取締役会で迅速に業務執行を決定できないこともありますが、指名委員会等設置会社においては、それを執行役に委任することで、機動的に行うことが可能となります。
 そして、指名委員会等設置会社の取締役会は、執行役の監視監督という役割を適切に果たすことがとても重要となります。

執行役

 執行役は、指名委員会等設置会社において会社の業務執行を行う機関です(会社法418条)。

 一般の会社においては「執行役員」という役職もありますが、「執行役」は会社法に定められた機関である一方、「執行役員」は会社が任意に設ける役職であり、通常、前者は委任契約、後者は雇用契約であることなどが異なります。

監査等委員会

 監査等委員会は、取締役の職務執行の監査・監査報告の作成、株主総会に提出する会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定等を行う機関です(会社法399条の2第3項)。なお、監査等委員は取締役でなければなりません(会社法399条の2第2項)。

 監査等委員会設置会社の業務執行の決定は、基本的に取締役会が行いますが、取締役会の過半数が社外取締役である場合や定款で定めた場合には、取締役に大幅に委任することができ、これによって、迅速かつ機動的な業務遂行が可能となります。


  1. 日本税理士会連合会「会計参与制度」 ↩︎

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