株式会社の設立に当たり検討すべき事項
コーポレート・M&A株式会社を設立するに当たって留意すべきことがあったら教えてください。
会社法上の問題が生じるのは、会社名や事業の目的といった定款に記載する事項が多いので、定款認証を受ける前に、公証人や法務局に事前に相談するのが望ましいです。
解説
目次
スタートアップや週末起業が身近になった今、「自分も会社を作ってみたい」と考えている方は多いのではないでしょうか。
実際に会社設立の手続に入る前に、必ず検討しておくべきことがあります。ここでは、その要検討事項についてチェックしてみましょう。
会社名について
会社を設立するにあたっては、名称を決める必要があります。せっかく自分で作る会社なのでいろいろと思い入れのある名前をつけたい気持ちがあると思いますが、社名をつけるにはいくつか留意する点があります。
会社の種類の明示
設立しようとする会社が株式会社の場合、その商号中に「株式会社」という文字を用いなくてはなりません(会社法6条2項)。「株式会社◯◯」といういわゆる前株でも、「◯◯株式会社」という後株でも、「株式会社」という文字が入っていれば、どちらでも問題ありません。
営業主体を誤認させる名称の禁止
会社法の規定
他の有名な会社の名前に似せた名前を使って、勘違いを起こさせて自社製品を売ろうとすることは、法律上禁止されています。具体的には、法律は、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称・商号を使用してはならないと規定しています(会社法8条1項)。
ここでいう「不正の目的」とは、他人の商号を使用し、自己の営業がその他人の営業であるかのように一般の人をして誤認させる意図のことをいいます。
これに違反した場合、その名称・商号の使用の停止や損害賠償等を請求される可能性があり(会社法8条2項)、また、100万円以下の過料に処せられます(会社法978条3号)。
不正競争防止法の規定
また、会社法のみならず、不正競争防止法2条1項1号においても、「他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号・・・その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用・・・して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」が「不正競争」として禁止されており、差止めや損害賠償の請求の対象となっています(不正競争防止法3条、4条)。
加えて、個人に対する5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金またはその併科、会社に対する3億円以下の罰金の対象にもなっていますので(不正競争防止法21条2項1号、22条1項)、注意する必要があります。
事業の目的について
目的の具体性
事業の目的は定款記載事項かつ登記事項
株式会社は営利を目的とする法人である以上、何らかの事業を行うことを目的とする必要があります。そして、株式会社の根本的なルールを定める定款に事業の目的を規定します(会社法27条1号)。
株式会社の権利能力(権利義務の主体となることのできる能力)が、定款記載の目的に制限されるため(民法34条)、定款記載の目的以外の行為は法律上無効となるのです。そのため、外部の第三者にも会社の目的がわかるように、登記事項となっています(会社法911条3項1号)。
目的はどこまで具体的に定めるべきか
これまで、会社の目的は、会社の事業が何であるかを具体的に確知できる程度に明確に定めなければならないと考えられてきましたが、平成18年に会社法が施行され、「会社の設立の登記等において、会社の目的の具体性については、審査を要しない」ものとされました(平成18年3月31日付け法務省民商第782号法務局長・地方法務局長あて法務省民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」 第7部第2(129頁))。
したがって、この観点からは、定款の目的は抽象的・包括的なものでもよいと考えられます。もっとも、設立時点である程度行うことが想定されているものについては、広く網羅的に記載しておいたほうが無難です。
明確性
事業の目的の記載は明確でなければなりません。
「明確」とは、定款に記載された目的の意義が明瞭であって、何人にも理解できることであり、①目的を示す語句の意義が一般的に明らかであるか、②目的全体の意味が明らかであるかどうかを社会通念に従って判断されるとされています。
上記 2-1 と矛盾するように見えますが、意味不明な目的を書いても効果はないというぐらいに考えておいていただければ大丈夫です。
完全子会社の事業との関連
ある会社が完全子会社を持つ場合、その会社(完全親会社)は、自らの事業だけでなく、完全子会社の事業についても、その定款の目的にこれを記載すべきであると考えられています。
これは、そもそも、上記のとおり、会社の権利能力定款記載の目的に制限されるため、親会社自身は定款記載の事業のみを行っていたとしても、完全子会社に、これを超える事業を行わせるならば、親会社が定款記載の事業以外の事業を行っていることと同視できるからです。
もっとも、設立時点から子会社があるような場合はレアケースでしょうから、子会社が設立される場合や他の会社を買収する際に気をつければよいでしょう。

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