会社の役員になるための資格
コーポレート・M&A私はまだ20歳になっていないのですが、起業したいと考えています。私でも会社の代表者になれるのでしょうか。
未成年者でも会社の代表取締役になることができます。もっとも、満15歳以上であることが必要です。
解説
目次
株式会社の代表者や役員には、基本的に誰もがなることができるのですが、会社法は、一定の者については代表者や役員となることを禁止しており、各機関の欠格事由や要件を定めています。
ここで、「欠格事由」と「要件」の違いですが、
「この事由に該当する場合はその役員になれない」というのが「欠格事由」
「この事由に該当していなければその役員になれない」というのが「要件」
だと考えてください。
用語 | 意味 |
---|---|
欠格事由 | この事由に該当する場合はその役員になれないというもの |
要件 | この事由に該当していなければその役員になれないというもの |
また、会社法上、「役員」とは、取締役、会計参与および監査役をいい(会社法329条1項)、「役員等」とは、取締役、会計参与、監査役、執行役または会計監査人をいいますが(会社法423条1項)、本稿では特にこだわることなく、一般的な呼称として、「役員」という用語を使っています。
取締役・監査役・執行役の欠格事由(会社法331条1項・335条1項・402条4項)
取締役・監査役・執行役の欠格事由としては以下の者が定められています。
法人
成年被後見人、被保佐人、外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
会社法、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、又は金融商品取引法、民事再生法、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律、会社更生法、破産法に規定されている一定の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
上記3以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者は除かれます)
未成年者は取締役になれるのか
上記1のとおり、会社法331条1項は、未成年者であることを欠格事由としていません。そのため、未成年者であっても、取締役や監査役になることができます。
親権者の同意が必要
もっとも、役員になるということは、会社との間で委任関係を結ぶということなので(会社法330条)、法定代理人(親権者)の同意が必要となります(民法5条1項本文)。両親が婚姻中は原則として両親の同意が必要となるので(民法818条3項本文)、例えば、父親が役員就任を後押ししていても、心配性の母親が反対しているという場合には、母親を説得しなければなりません。
役員就任登記の際に、未成年者の就任承諾書と併せて、法定代理人の同意書が添付書面になります1 。
満15歳以上でないと就任できない場合
また、役員登記などの際に印鑑証明書の添付が必要となる場合がありますが、その前提として、印鑑登録をしていなければなりません。印鑑登録については各自治体の条例で定められているのですが、多くの地方自治体の印鑑条例で、15歳未満の者は印鑑登録できないとされています2 。そのため、15歳以上でなければ、登記の際に印鑑証明書の添付や提出が必要となる役員には就任できません。
具体的には、①取締役会非設置会社の取締役や、②取締役会設置会社の代表取締役には、15歳未満の未成年者は就任できないということになります。
法定代理人の同意を得て役員に就任すれば、その後の行為に同意は不要
役員就任についての法定代理人の同意は、未成年者に対する営業許可(民法6条1項)に該当すると考えられるので、以後、役員としての行為については成年者と同一の能力があることになります 3。
そのため、未成年者による役員としての行為について、いちいち法定代理人の同意(民法5条1項)を得る必要はありませんし、制限行為能力者として取消しの対象になる(民法5条2項)わけでもありません。
破産者は取締役になれるのか
破産者の場合
破産者も、取締役や監査役になれます。 そのため、一度、事業に失敗して会社が倒産し、併せて個人としても自己破産したという方も、再度、別の会社を設立して、その会社の代表取締役になるということも可能です。
株主総会の選任が必要
もっとも、取締役の地位にある者が破産手続開始の決定を受けると、取締役を自動的に退任することになります。というのも、会社と取締役の関係は委任関係であるところ(会社法330条)、取締役が破産手続開始の決定を受けると当然に委任が終了するからです(民法653条2号)。破産した後も取締役として行為したいのであれば、再度、株主総会決議で選任されなければなりません。
その他の役員等について
その他の役員等の要件・欠格事由については、以下のとおりまとめました。
平成26年6月20日成立の改正会社法において、社外取締役、社外監査役の要件が加重され、これまでよりも一層の社外性が要求されるようになりました。具体的には、支配株主でないことや、支配株主等の配偶者といった人的関係にないこと、兄弟会社の業務執行取締役等でないことといった要件が加わりました。
社外取締役の要件(会社法2条15号)
取締役
当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役、執行役、支配人その他の使用人(「業務執行取締役等」)でなく、かつ、その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと
その就任の前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与、監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと
当該株式会社の支配株主、親会社等の取締役・執行役・支配人その他の使用人でないこと
当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと
当該株式会社の取締役、執行役、支配人その他の重要な使用人又は支配株主の配偶者又は二親等内の親族でないこと
法的な要件ではありませんが、社外取締役の資質等については、日本弁護士連合会の「社外取締役ガイドライン」(平成27年3月19日) を参照してください。
社外監査役の要件(会社法2条16号)
- 監査役
- その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員。下記 3 において同じ。)、執行役、支配人その他の使用人であったことがないこと
- その就任の前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、当該監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人であったことがないこと
- 当該株式会社の支配株主、親会社等の取締役・監査役・執行役・支配人その他の使用人でないこと
- 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと
- 当該株式会社の取締役、支配人その他の重要な使用人又は支配株主の配偶者又は二親等内の親族でないこと
会計参与の欠格事由(会社法333条1項、3項)
- 公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人のいずれでもない者
- 株式会社又はその子会社の取締役、監査役、執行役、支配人その他の使用人
- 業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者
- 懲戒処分により税理士業務を行うことができない者
会計監査人の欠格事由(会社法337条1項、3項)
- 公認会計士、監査法人のいずれでもない者
- 公認会計士法の規定により、計算書類について監査することができない者
- 株式会社の子会社、その取締役、会計参与、監査役、執行役から、公認会計士若しくは監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者又はその配偶者
- 監査法人でその社員の半数以上が上記 3 に掲げる者であるもの

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