医薬品等の広告や販促活動における表現上の留意点

知的財産権・エンタメ
川端 康弘弁護士 株式会社電通

 医薬品等に関する販促用のインターネットサイトを受託制作しているのですが、どういった表現が虚偽や誇大広告と判断されますか。また違反した表現を用いた場合、どのような罰則の対象となるかを教えてください。

 いわゆる虚偽広告や誇大広告(以下「誇大広告等」)は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」)66条1項によって禁止されています。

 誇大広告等に該当するかを判断するための指針として、厚生労働省医薬・生活衛生局長「医薬品等適正広告基準の改正について」(平成29年9月29日)(以下「医薬品等適正広告基準」)および厚生労働省医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課長「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日)(以下「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」)があります

 誇大広告等と判断された場合、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはその両方が科せられます(薬機法85条4号)。また、薬機法の改正法案が国会に提出され、衆議院にて閉会中審査がなされているところであり、本稿掲載時点ではまだ成立していないものの、同法案が成立した場合、今後誇大広告等は課徴金の対象にもなります

解説

目次

  1. 概要
  2. 誇大広告等に該当するかの判断指針
  3. 誇大広告等に該当するかを判断するうえでのポイント
  4. 罰則

概要

 誇大広告等とは、事実に反する表現や誇張した表現によって消費者に誤った認識をさせるおそれのある広告をいいます
 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品(以下「医薬品等」)は、人の生命や健康に直接影響を及ぼすものです。そのため、誇大広告等によって一般消費者が医薬品等に対して誤った認識をもつことのないように広告の適正化を図り、かつ、医薬品等による保健衛生上の危害を防止する観点から、医薬品等の名称、製造方法、効能効果、性能および安全性に関する虚偽や誇大広告は禁止されています(薬機法66条1項)。

誇大広告等に該当するかの判断指針

 誇大広告等に該当するかを判断するための指針として、「医薬品等適正広告基準」および「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」があります
 医薬品等適正広告基準のうち、第4(基準)の1から3までが、薬機法66条1項の解釈について示しています。概要は以下のとおりです。

名称関係
  • 薬機法14条または23条の2の5、もしくは23条の25の規定にもとづく承認ならびに薬機法23条の2の23の規定にもとづく認証(以下「承認等」)を受けた名称または一般的名称以外の名称使用は原則として禁止されています。

  • 承認等を要しない医薬品等については、日本薬局方に定められた名称、薬機法14条の9もしくは23条の2の12の規定にもとづく届出を行った一般的名称または届け出た販売名以外の名称使用は原則として禁止されています。
製造方法関係
  • 医薬品等の製造方法について実際の製造方法と異なる表現またはその優劣性について事実に反する認識を得させるおそれのある表現は禁止されています。
効能効果、性能および安全性関係

  • 承認等を要する医薬品等の効能効果または性能(以下「効能効果等」)についての表現は、承認等を受けた効能効果等の範囲をこえてはいけません。

  • 承認等を要しない医薬品等(化粧品 1 を除く)の効能効果等の表現は、医学、薬学上認められている範囲をこえてはいけません。

  • 医薬品等の成分およびその分量または本質等ならびに医療機器の原材料、形状、構造および原理について、承認書等への記載の有無にかかわらず、虚偽の表現、不正確な表現等を用い効能効果等または安全性について事実に反する認識を得させるおそれのある広告をしてはいけません。

  • 医薬品等の用法用量について、承認等を要する医薬品等にあっては承認等を受けた範囲を、承認等を要しない医薬品等にあっては医学、薬学上認められている範囲をこえた表現、不正確な表現等を用いて効能効果等または安全性について事実に反する認識を得させるおそれのある広告をしてはいけません。

  • 医薬品等の効能効果等または安全性については、具体的効能効果等または安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはいけません。

  • 医薬品等の効能効果等または安全性について、最大級の表現またはこれに類する表現をしてはいけません。

  • 医薬品等の速効性、持続性等についての表現は、医学、薬学上認められている範囲をこえてはいけません。

  • 医薬品等の効能効果等について本来の効能効果等とは認められない効能効果等を表現することにより、その効能効果等を誤認させるおそれのある広告を行ってはいけません。

誇大広告等に該当するかを判断するうえでのポイント

 「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」では、上記2に記載した「医薬品等適正広告基準」の内容がより具体的に解説されているため、誇大広告等かを判断する際の具体的な指針となります。

 注意しなければいけないのは、広告が消費者に与える効果は、その表現、内容だけでなく、利用される媒体の性質、広告表現全体の構成や説明の文脈、さらには世相によっても異なることです。そのため、誇大広告等に該当するかどうかの判断にあたっては、「医薬品等適正広告基準」および「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」の文面のみを捉えて形式的に判断するべきではなく、各種の要素を総合的に考慮して具体的に判断する必要があります。たとえば、広告のターゲット層が医薬関係者か一般人か、また広告の対象物が医薬品、医療機器、化粧品のいずれなのかといった要素も勘案することが重要です。

 また、自治体によっては過去の事例をもとにして、不適切な広告例について解説をしている場合もありますので 2、そういった解説も判断する際の指針として参考になると思われます。

罰則

 誇大広告等と判断された場合には、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはその両方が科せられることになります(薬機法85条4号)。

 また、平成31年3月に、課徴金制度の導入を含む薬機法改正法案 3 が国会に提出されましたが、本稿掲載時点では、衆議院にて閉会中審査がなされているところであり、まだ成立はしていません 4改正法案では、誇大広告等(薬機法66条1項違反)は課徴金対象となる違反行為とされており、課徴金額は、誇大広告等の対象製品の売上(最大3年分)の4.5%です 5。ただし、事業者が調査開始前に自主的に違反を申告した場合には、課徴金額が半分に減額されます。

 加えて、今回の改正法案では、誇大広告等に対する措置命令の制度も導入されています。同制度においては、誇大広告等は中止命令の対象になるほか、再発防止措置の実施およびこれらの実施に関連する公示も命令の対象となります


  1. 承認等を要しない化粧品の効能効果についての表現は、厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について(平成23年7月21日)」に定める範囲をこえてはいけません。 ↩︎

  2. たとえば、東京都福祉保健局は「不適表示・広告例又は解説(医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器)」と題するウェブサイトに不適切な広告例を掲載しています。 ↩︎

  3. 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」(平成31年3月19日提出) ↩︎

  4. 課徴金制度および措置命令制度の施行日は公布後2年以内とされています。 ↩︎

  5. 売上に4.5%を乗じて計算された課徴金額が225万円未満であるとき、すなわち、対象製品の売上が5000万円未満の場合は課徴金の対象から除外されています。 ↩︎

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