下請法が適用される製造委託とは
競争法・独占禁止法当社は、精密機器を製造しているメーカーで資本金は30億円です。精密機器を輸送する際の梱包材の製造を資材メーカー(資本金1億円)に委託する予定ですが、この場合に、下請法が適用されるでしょうか。
貴社がその梱包材を製品と一体として購入者または発注元に引き渡す場合には、製造委託(類型1または類型2)に該当します。他方、その梱包材が製品を輸送するために自社で使用する物品である場合には、原則として下請法は適用されませんが、通常自社で製造している梱包材の製造を例外的に委託する場合には、製造委託(類型4)に該当します。貴社の資本金が3億円を超過しており、資材メーカーの資本金は3億円以下ですので、貴社と資材メーカーとの間の委託取引が製造委託に該当する場合、資本金基準を満たすことになり、下請法が適用されます。
解説
下請法が適用される取引の場合、親事業者には書面の交付義務、支払期日を定める義務、書類の作成・保存義務、遅延利息の支払義務が課されます。
詳しくは、「親事業者が負う下請法上の義務とは」を参照ください。
製造委託に該当する取引
他の事業者への委託取引に下請法が適用されるか否かは、取引の内容および取引当事者の資本金によって定まりますが、設問の場合、まず、取引が製造委託に該当するか否かが問題となります。
「製造委託」とは、事業者が他の事業者に物品(その半製品、部品、附属品、原材料およびこれらの製造に用いられる金型を含みます)の規格等を指定して製造(加工を含みます)を委託することをいい、次の4類型に分けられます(下請法2条1項)。
事業者の業務内容 | 他の事業者への委託内容 | |
---|---|---|
1 | 物品の販売 | その物品の製造 |
2 | 製造請負 | その物品の製造 |
3 | 物品の修理 | その物品の修理に必要な部品等の製造 |
4 | 自家使用物品の製造 | その物品の製造 |
設例の場合、質問者が梱包材を製品と一体として購入者または発注元に引き渡す場合には、その梱包材は、購入者または発注者に引き渡される物品の附属品(目的物たる物品にそのまま取り付けられたり目的物たる物品に附属されたりすることによって、その効用を増加させる製造物)となります。
したがって、設問の事例で、(i)精密機器を販売している場合には、販売する物品の製造を委託したということで製造委託の類型 1 に該当し、(ii)精密機器の製造を請け負っている場合には、請け負った物品の製造を委託したということで製造委託の類型 2 に該当します。
自家使用物品の製造
他方、貴社の発注する梱包物が、購入者や発注元に引き渡されず、貴社の社内で使用する製品輸送用のものである場合には、自家使用物品となります。
自家使用物品の製造の委託は、通常下請法が適用される製造委託には該当しませんが、事業者が自家使用物品の製造を業として行っている場合には、製造委託の類型 4 に該当します。
設問の事例では、梱包材が通常は自社で製造されており、その製造を例外的に資材メーカーに委託する場合であれば、製造委託の類型 4 に該当しますが、梱包材が通常は自社で製造されていないのであれば、製造委託には該当せず、下請法は適用されません。
製造委託の資本金基準
製造委託に下請法が適用される場合の資本金基準は、3億円が基準となっており、以下の取引に下請法が適用されます(下請法2条7項1号、2号、8項1号、2号)。
- 資本金3億円超の法人事業者と資本金3億円以下の法人事業者(または個人事業者)との間の取引
- 資本金1,000万円超3億円以下の法人事業者と資本金1,000万円以下の法人事業者(または個人事業者)との間の取引
設例の場合、委託を行う会社の資本金は30億円で3億円超であり、委託先の資材メーカーの資本金は1億円で3億円以下ですので、①資本金3億円超の法人事業者と資本金3億円以下の法人事業者(または個人事業者)との間の取引に該当し、下請法が適用されます。

弁護士法人大江橋法律事務所
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