下請法が適用される修理委託とは

競争法・独占禁止法
山本 翔弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所

 当社は自動車のディーラーで、ユーザーから自動車の修理の依頼があった場合、子会社に修理を委託する場合と、子会社ではない修理会社に修理を委託する場合とがあります。子会社に修理を委託する場合と子会社ではない修理会社に修理を委託する場合とで、下請法上の取扱いに違いはありますか。なお、当社の資本金は3億円です。

 貴社の資本金はちょうど3億円ということですから、修理会社に委託する場合には、資本金1,000万円以下の法人または個人と取引する際には、下請法を意識する必要があります。もっとも、貴社の子会社である下請業者に修理を委託する場合には、基本的に下請法のことを意識しなくて構いません。

解説

目次

  1. 下請法の適用対象
  2. 修理委託の資本金基準
  3. 修理委託の取引内容
  4. 子会社への委託
  5. まとめ

下請法が適用される修理委託の事案

下請法の適用対象

 下請法は特定の取引にしか適用がなく、具体的には、①取引当事者の資本金および②取引の内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託または役務提供委託)の2つの側面から下請法の適用対象となる取引を定めています。
 すなわち、①資本金と②取引の内容に関する双方の基準を満たす場合に限り、下請法が適用されることになります

 下請法が適用される取引の場合、親事業者には書面の交付義務、支払期日を定める義務、書類の作成・保存義務、遅延利息の支払義務が課されます。
 詳しくは、「親事業者が負う下請法上の義務とは」を参照ください。

修理委託の資本金基準

 まず、資本金の基準について説明しますと、①資本金の基準は、②取引の内容に応じて、いわゆる3億円基準5,000万円基準の2つの基準があります(下請法2条7項、8項)。
 そして、今回のご相談の修理委託については、3億円基準が適用されることとされています(下請法2条7項1号、2号、8項1号、2号)。

 親事業者と下請事業者の資本金の区分を図に表すと以下のとおりです。

親事業者 下請事業者
資本金3億円超の法人事業者 資本金3億円以下の法人事業者または個人事業者
資本金1,000万円超3億円以下の法人事業者 資本金3億円以下の法人事業者または個人事業者

 上記のとおり、修理委託の場合、資本金が3億円を超える法人については、資本金3億円以下の法人または個人との取引に下請法が適用される可能性があります。また、資本金が1,000万円超3億円以下の法人については、資本金1,000万円以下の法人または個人との取引に下請法が適用される可能性があります。

 このように、下請法の適用があるか否かは資本金により決まるため、 自社の資本金を把握しておくことが重要 です。
 設例の場合は、資本金がちょうど3億円なので、修理委託については、資本金1,000万円以下の法人または個人と取引する際に、下請法を意識する必要があります。

修理委託の取引内容

 では次に、どのような取引が、下請法の適用対象となる修理委託に該当するのでしょうか。

 下請法の適用対象となる「修理委託」とは、事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部または一部を他の事業者に委託すること、および事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいいます(下請法2条2項)。

 そして、これは次の2つの類型に分けられます。

類型 事業者の業務内容 他の事業者への委託内容
1 修理請負 その物品の修理
2 自家使用物品の修理 その物品の修理

 設例の場合、委託者は自動車ディーラーであって、ユーザーから自動車の修理を請け負っており、その修理を他の会社へ委託しているので、この類型1の修理委託に該当し、資本金1,000万円以下の法人または個人と取引する場合には下請法の適用があることになります。

子会社への委託

 では、親事業者が子会社(親会社が議決権の50%超を所有している)である下請業者に対して修理を委託した場合はどうでしょうか。

 下請法では親子会社間の取引に下請法の適用が除外されているわけではありませんが、公正取引委員会は、親会社が総株主の議決権の50%超を所有する子会社との取引や、同一の親会社がいずれも総株主の議決権の50%超を所有している子会社間(いわゆる兄弟会社間)の取引など、実質的に同一会社内での取引とみられる場合には、運用上問題にしないという方針を明らかにしています(下請取引適正化推進講習会テキストQ3)。

 したがって、設例の場合において、仮に子会社に対して修理委託を行う場合には、基本的に下請法のことを意識しなくても構わないことになります。

参考:中小企業庁「下請代金支払遅延等防止法

まとめ

 ユーザーから請け負った自動車の修理を他の会社へ委託する場合、委託先が資本金1,000万円以下の法人の場合または個人の場合は、この取引には下請法の適用があることになります。そのため、委託者は、3条書面の交付義務等、下請法において親事業者に課されている義務を遵守する必要あります。

 これに対して、委託先が委託者の子会社や兄弟会社で、この取引が実質的に同一会社内の取引とみられる場合には、仮に子会社の資本金が1,000万円以下であっても、下請法の適用を意識する必要はないといえます。

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