取適法が適用される修理委託とは?具体例とともに解説
競争法・独占禁止法 更新当社は自動車のディーラーです。ユーザーからの自動車の修理の依頼について、子会社に修理を委託する場合と、子会社ではない修理会社に修理を委託する場合がありますが、取適法(改正下請法)上の取扱いに違いはありますか。なお、当社の資本金は3億円、常時使用する従業員の数は500人です。
他の事業者への委託取引に取適法(改正下請法)が適用されるか否かは、取引の内容および取引当事者の資本金または従業員数によって定まります。
資本金が1,000万円超3億円以下の会社から修理会社に委託する場合、資本金1,000万円以下の法人または個人と取引する際には、取適法が適用されます。また、常時使用する従業員の数が300人超の会社から常時使用する従業員の数が300人以下の法人または個人に修理委託する場合も取適法が適用されます。
もっとも、自社の子会社である中小受託事業者に修理を委託する場合には、基本的に取適法のことを意識しなくて構いません。
解説
目次
取適法(改正下請法)の適用対象
取適法(改正下請法)は、①取引当事者の資本金または従業員の数、および②取引の内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託または特定運送委託)の2つの側面から、取適法の適用対象となる取引を定めています。すなわち、①資本金または従業員の数、②取引の内容に関する基準を満たす場合に限り、取適法が適用されることになります。
修理委託の資本金基準と従業員基準
委託する取引の内容が取適法上の修理委託に該当し、かつ、資本金と常時使用する従業員数が以下いずれかに該当する場合に、取適法が適用されます。

資本金基準
まず、資本金の基準について説明します。
資本金の基準は、取引の内容に応じて、いわゆる3億円基準と5,000万円基準の2つの基準があります(取適法2条8項・9項)。設問の事例の修理委託については、3億円基準が適用されることとされています(取適法2条8項1号・2号、9項1号・2号)。
上図のとおり、修理委託の場合、資本金が3億円を超える法人については、資本金3億円以下の法人または個人との取引に取適法が適用される可能性があります。また、資本金が1,000万円超3億円以下の法人については、資本金1,000万円以下の法人または個人との取引に取適法が適用される可能性があります。
このように、取適法の適用があるか否かは資本金により決まるため、自社の資本金を把握しておくことが重要です。
設例の場合は、資本金がちょうど3億円であるため、修理委託については、資本金1,000万円以下の法人または個人と取引する際に、取適法を意識する必要があります。
従業員基準
次に、従業員の基準について説明します。
従業員の基準は、取引の内容に応じて、いわゆる300人基準と100人基準の2つの基準があります(取適法2条8項・9項)。設問の事例の修理委託については、300人基準が適用されることとされています(取適法2条8項5号、9項5号)。
上図のとおり、修理委託の場合、常時使用する従業員の数が300人超の法人については、常時使用する従業員の数が300人以下の法人または個人との取引に取適法が適用される可能性があります。なお、従業員基準は、資本金基準を満たさない場合に適用されます。
設例の場合は、常時使用する従業員の数が500人であるため、修理委託については、常時使用する従業員の数が300人以下または個人と取引する際に取適法を意識する必要があります。
修理委託に該当する取引内容
では次に、どのような取引が、取適法の適用対象となる修理委託に該当するのでしょうか。
取適法の適用対象となる「修理委託」とは、事業者が請け負う物品の修理を他の事業者に委託すること、および事業者が自家使用する物品の修理を業として行う場合に、その修理を他の事業者に委託することをいいます(取適法2条2項)。
修理委託は次の2つの類型に分けられます。
| 事業者の業務内容 | 他の事業者への委託内容 | |
|---|---|---|
| 類型1 | 修理請負 | その物品の修理 |
| 類型2 | 自家使用物品の修理 | その物品の修理 |
修理請負
類型1は、物品の修理を業として請け負っている事業者が、その修理の全部または一部を他の事業者に委託する取引です。
つまり、修理事業を営む委託事業者が、顧客から依頼された修理業務を中小受託事業者に再委託する場合は、取適法の適用対象となる修理委託に該当することになります。
この類型に当てはまる取引の例は以下のとおりです。
- 自動車ディーラーが、ユーザーから請け負う自動車の修理作業を修理業者に委託すること
- ビルメンテナンス業者が、請け負うエレベーターや自動ドアの部品交換等の修理作業を、修理業者に委託すること
設例の場合、委託者は自動車ディーラーであって、ユーザーから自動車の修理を請け負っており、その修理を他の会社へ委託しているので、この類型1の修理委託に該当し、資本金1,000万円以下の法人または個人と取引する場合や、資本金1,000万円超の法人と取引する場合でも、常時使用する従業員の数が300人以下の法人と取引する場合には取適法の適用があることになります。
自家使用物品の修理
類型2は、事業者が、使用する物品の修理を業として行う場合に、その修理の一部を他の事業者に委託する取引です。
つまり、他の事業者から修理を請け負うのではなく、自社で使用する物品の修理を他の事業者に委託することであり、この場合は、業として修理を行っている場合に限って、その修理の一部を中小受託事業者に委託する場合には、取適法が適用される修理委託に該当することになります。
「業として」とは、委託事業者が、社会通念上、事業の遂行とみることができる程度に反復継続的に修理を行っている場合を意味し、たとえば、社内に部門を設けて、自社工場で使用している機械類の修理を行っている場合などがこれに該当します。
この類型に当てはまる取引の例は以下のとおりです。
- 自社工場の設備等を自社で修理している工作機器メーカーが、その設備の修理作業の一部を修理業者に委託すること
- 自社工場で使用する工具を自社で修理している工具メーカーが、その工具の修理作業の一部を修理業者に委託すること
子会社への委託は取適法の適用対象か
では、委託事業者が子会社(親会社が議決権の50%超を所有している)である中小受託事業者に対して修理を委託した場合はどうでしょうか。
親子会社間の取引に取適法の適用が除外されているわけではありませんが、公正取引委員会は、親会社が総株主の議決権の50%超を所有する子会社との取引や、同一の親会社がいずれも総株主の議決権の50%超を所有している子会社間(いわゆる兄弟会社間)の取引など、実質的に同一会社内での取引とみられる場合には、運用上問題にしないという方針を明らかにしています(中小受託取引適正化法テキスト1Q3(25頁))。
したがって、設例の場合において、仮に子会社に対して修理委託を行う場合には、基本的に取適法のことを意識しなくても構わないことになります。
修理委託に該当する場合の取適法の規制内容
取適法が適用される取引の場合、委託事業者には発注内容等の明示義務、支払期日を定める義務、書類等の作成・保存義務、遅延利息の支払義務が課されるほか、11の禁止行為が定められています。
詳しくは、以下の関連記事を参照ください。
まとめ
資本金1,000万円超3億円以下の会社がユーザーから請け負った自動車の修理を他の会社へ委託する場合、委託先が資本金1,000万円以下の法人の場合または個人の場合には、この取引には取適法の適用があることになります。また、資本金1,000万円超3億円以下の会社が資本金1,000万円超の会社に修理委託をする場合でも、委託事業者の常時使用する従業員の数が300人超であり、委託先の常時使用する従業員の数が300人以下であれば、その取引にも取適法の適用があることになります。そのため、これらの場合、委託事業者は、取適法において委託事業者に課されている義務を遵守する必要があります。
これに対して、委託先が委託者の子会社や兄弟会社で、この取引が実質的に同一会社内の取引とみられる場合には、仮に子会社の資本金が1,000万円以下であったり、常時使用する従業員の数が300人以下であっても、取適法の適用を意識する必要はないといえます。
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公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト(令和7年11月)」 ↩︎
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