航空会社倒産時にマイレージはどのように取り扱われるか

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ラートティーラクン・ナットアプソン 弁護士法人大江橋法律事務所

 コロナ禍で、国内外の航空会社の業績が悪化していますが、仮に、日本の航空会社が経営破綻した場合、私が貯めたマイレージはどのように取り扱われるのでしょうか。

 倒産手続に入ると、マイレージも他の債権と同様に大部分が失われるのが原則と考えられますが、過去の日本の航空会社の事業再生事例を踏まえると、マイレージが例外的に保護されることも十分に想定されます。マイレージが保護されることとなった場合には、倒産手続の前後を問わずマイレージを引き続き利用できると考えられます。

解説

目次

  1. はじめに
  2. 弁済禁止の原則とその例外
  3. 日本航空の事例
  4. まとめ

はじめに

 海外では、タイ国際航空(「タイ国際航空の会社更生とチケットの払い戻しの可否」、「タイ国際航空の会社更生とマイレージプログラムへの影響」参照)、Virgin Australia、Avianca、Virgin Atlantic、Latam Airlineなど、コロナ禍による旅客需要の消失により業績が悪化し、倒産手続に入る航空会社が相次いでおり、日本国内の航空会社の業績も大きな影響を受けています。あくまで仮定の話ですが、仮に、日本の航空会社が法的倒産手続(民事再生・会社更生)に入った場合、マイレージがどのように取り扱われるのか、過去事例も踏まえつつ、検討したいと思います。

弁済禁止の原則とその例外

 民事再生・会社更生手続が開始すると、原則として、倒産会社は、倒産手続開始前の原因に基づく財産上の請求権(再生債権・更生債権)の弁済ができなくなる(民事再生法85条1項、会社更生法47条1項)結果、これらの債権の支払は棚上げとなり、再生計画に基づいて権利変更(減免)されることになります。ここでいう、倒産手続開始前の原因に基づく財産上の請求権は、金銭的な請求権だけでなく、マイレージのような非金銭債権も含みます。

 そのため、航空会社が倒産手続を開始する前に溜まったマイレージ(非金銭債権)についても利用停止となり、再生計画に基づいて減免されるのが原則と考えられます

 しかしながら、民事再生法85条5項後段および会社更生法47条5項後段は、少額の再生債権を早期に弁済しなければ、事業の継続に著しい支障を来すおそれのあるときは、裁判所の許可を得てその弁済を行うことができるとしており、弁済禁止の原則の例外としての「少額債権の弁済」を規定しています。事業再生の実務では、この条項を活用して、再生手続中の会社の事業価値の毀損を防ぐために必要がある場合には、再生債権・更生債権のうち商取引債権について、裁判所の弁済許可を得て支払われることがあります。

 民事再生法85条5項後段および会社更生法47条5項後段は、その文言から、典型的には金銭債権の弁済を想定しているものと考えられますが、マイレージのような非金銭債権についても弁済許可を認める余地はあるように思われ、後述の日本航空の事例のように実際に弁済許可の対象とした事例があります

 また、「少額債権」かどうかについての検討も必要になりますが、少額かどうかは会社の規模、事業の内容、負債総額、資金繰りの状況等を勘案して相対的に判断されることになります。この点、航空会社の場合には、事業規模は大きく、金融機関からの借入などで負債総額も多額となることが想定されますので、個々のマイレージ会員のマイレージに関する債権は相対的に少額となりやすいものと思われます。

 法的事業再生手続に入った航空会社は、倒産手続下でもマイレージプログラムを継続して提供することで、マイレージ会員に継続的な自社サービスの利用を促し、ロイヤリティの高い顧客の創出・維持を図ることができます。このように、マイレージは、事業の継続に著しい支障を来すことを防止するため、言い換えれば、航空会社の事業価値の毀損を防止するため、弁済許可の制度を用いるなどして保護する必要性が認められやすいように思われます。

日本航空の事例

 日本航空の事例では、会社更生法47条5項後段に基づき、日本航空がマイレージ会員に対し、マイレージプログラムを継続して提供することが許可されました 1。日本航空の事例は、当該事案における個別事情を踏まえての事例判断であり、これを一般化することはできませんが、近時の海外航空会社の事業再生事例でもマイレージを再生計画に基づく権利変更の対象としたという事例は聞かれませんので(「タイ国際航空の会社更生とマイレージプログラムへの影響」参照)、過去事例に照らしても、マイレージは倒産手続下でも保護されやすい債権といえると思われます。

まとめ

 コロナ禍において、米国の大手航空会社などでは、マイレージ事業を担保に資金を調達する動きがみられます。本稿で取り上げた倒産手続下におけるマイレージの取扱いは、こうしたマイレージ事業の担保としての実効性に影響する可能性がありますが、現在の日本の法制度を前提にすると、倒産手続下においてマイレージは保護されうるものの、常に保護されることが保証されているとまではいえない、という帰結になると考えられます。


  1. 日本航空ウェブサイト「更生手続開始決定と弁済許可のご説明」(2010年1月19日、2020年10月12日最終閲覧) ↩︎

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