2021年ベトナム投資法改正のポイント

国際取引・海外進出
原 智輝 弁護士 明倫国際法律事務所

 ベトナムでは、2021年1月1日より改正投資法が施行されると聞きました。この度の改正は今後のベトナムにおける投資活動にどのような影響を与えるのでしょうか。

 今回のベトナム投資法の改正で注目されるのは、クリエイティブスタートアップ企業やハイテク技術関連企業に対する投資優遇政策です。また、いわゆる外資規制に関するリストの公表が予定されており、今後のベトナムにおける投資活動の円滑化が見込まれます。他方で、投資禁止分野の見直しなどには注意が必要です。

解説

目次

  1. クリエイティブスタートアップ等への投資優遇措置
  2. 外資規制のリスト公表
  3. 投資禁止分野の見直し
  4. その他改正

クリエイティブスタートアップ等への投資優遇措置

 ベトナムでは、投資法の改正により、新たに「クリエイティブスタートアップ」という用語が定義されました。詳細な条件等については、今後政令等で補充されることが見込まれます。この用語に関連して中小企業支援法(No.04/2017/QH14)があり、同法中の定義では、概ね知的財産関連事業を手掛ける新興企業を指しています。

 このクリエイティブスタートアップ企業についての投資では、まず、IRC(Investment Registration Certificate/投資登録証明書)の取得は不要となります。このIRC取得が不要となることで、該当する投資活動については、ERC(Enterprise Registration Certificate/企業登録証明書)の取得をただちに進めることとなります。その結果、現地法人設立の方法によるベトナム進出を目指す企業にとっては、進出スケジュールの短縮化につながる改正であると言えるでしょう。

知的財産関連を中心とする政府方針

テクノロジー企業のM&A取引、イノベーションスタートアップへの出資をより円滑に行うことができるような投資関連規定の整備を2020年投資法に反映した
知的財産権法、知財の保護などに関する法令の整備
グローバル企業が、ベトナムでのR&D施設を設置することを奨励する
デジタル経済の発展傾向に応じた財務・金銭、電子決済、課税管理、国境を超えるサービスなどに関する法令、政策の整備
テクノロジー企業の発展に関する国家戦略の作成
ベトナムにおいて設計、イノベーション事業、製造を行うデジタルテクノロジー企業、ハイテクノロジー企業の発展を優先する
国内外の大学、企業、組織は、ベトナムにおいてクリエイティブなイノベーションセンターを設置することを激励する
PPP方式に基づきテクノロジーに関する優秀な教育・訓練センターを設置する
外資資本が有するベンチャーキャピタルに関する法令の整備
技術移転、クリエイティブなスタートアップ、クリエイティブなイノベーション、テクノロジーの研究・運用などのノウハウを有する外国人材の誘致

 また、このクリエイティブスタートアップやハイテク関連事業においては、政府投資局側の判断により、投資優遇制度を受けることができます。主な投資優遇は、土地賃料(ベトナムでは土地の所有は認められず、国から賃貸する形式となっている)、法人税、ハイテク機材の輸出入における通関関連などの面での優遇が見込まれます。また、この優遇政策は、政府側の説明によれば、これまでの優遇政策に比してより優遇性の高い制度となっている点も注目のポイントです。

外資規制のリスト公表

 外国投資家がベトナム国への投資を検討する場合、従前は、ベトナムWTOコミットメントや日越投資協定、投資法等において進出が認められているか否か、進出形態として資本率制限が設けられているか否かを確認したうえ、ベトナム国内法における個別事業許可に対する諸条件を確認する必要があったことから、進出計画を立てるうえで外資規制の整備が要請されてきました。今回の改正は、このような要望に応えるべく、外資規制分野を明確化するためのリストが公表されることが法定されており、今後の進出規制調査に大きく貢献すると見込まれます。

投資禁止分野の見直し

 投資禁止分野の見直しについては、債権回収事業が新たに投資禁止分野に加わったことが注目されます。経緯としては、2007年に債権回収に関する政令が制定され、多数の国内企業が債権回収業者として成立したものの、その債権回収事業の違法な回収実態が社会問題化されたことから、投資禁止と改正されました。なお、このような背景から、ベトナム現地法人における債権回収事業も禁止となることが予定されており、今後ベトナム国内での事業選定等においては注意を要します。

その他改正

 ベトナム投資において、投資先企業が外国資本企業として外資規制を受けるか否かの基準が、企業法改正に伴い、若干修正されています。改正後においては、定款資本の50%を超える資本が注入されている企業については、外資規制の適用対象となる点に注意が必要です。

 また、大規模プロジェクトにおけるIRC取得前の事前手続にあたる投資方針決定の決定権限区分が見直され、投資方針決定事項の変更についても軽微な変更による場合には、手続が簡素化されることとなります。

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