タイ国際航空の会社更生とマイレージプログラムへの影響

国際取引・海外進出
ラートティーラクン・ナットアプソン 弁護士法人大江橋法律事務所

 私は、タイ国際航空のマイレージプログラムの会員であり、これまでたくさんのマイレージを貯めてきました。今般、タイ国際航空が会社更生手続に入りましたが、私はタイ国際航空のマイレージプログラムを今後も利用できるのでしょうか。

 将来的なプログラムの変更はありえますが、現時点では会社更生の影響を受けておりませんので、今後もマイレージプログラムを利用できると考えられます。
 この点、タイ破産法では、裁判所により会社更生の申立を受理され、自動停止の効力が生した時点で、債務者は、債務者の事業の正常な運営を継続するために必要な行為である場合を除き、債務の弁済を禁止されます(「タイ国際航空の会社更生とチケットの払い戻しの可否」参照)。
 しかしながら、マイレージプログラムの継続は、タイ国際航空の事業の正常な運営を継続するために必要な行為と考えられるため、タイ国際航空は、自動停止の例外として、マイレージプログラムの利用継続を認めているものと考えられます。

解説

目次

  1. はじめに
  2. 自動停止の原則とその例外
  3. 会社更生手続中のマイレージプログラムの会員の地位
  4. まとめ

はじめに

 過去に会社更生を行った航空会社の多くは、マイレージプログラムの会員はロイヤルティの高い顧客であることから、航空事業の正常に継続していくにあたり重要であると考え、引き続きマイレージプログラムを提供することを選択してきました。こうした航空会社の事業再生事例としては、United Airlines、Delta Airlines、American Airlines、日本航空などがあげられ、また、最近のコロナ禍での事例としても、Virgin Australia、Avianca、Virgin Atlanticなどがあげられます。
 日本の航空会社の事例の詳細については、「航空会社倒産時にマイレージはどのように取り扱われるか」をご参照ください。

自動停止の原則とその例外

 タイ破産法では、会社更生手続中の会社は、自動停止(「タイ国際航空の会社更生とチケットの払い戻しの可否」参照)により、原則として、会社更生の申立て前に発生したすべての債務の弁済を禁止されます。ただし、この例外として、債務者の事業の正常な運営を継続するために必要な債務の弁済については、例外が認められます(タイ破産法90/12条9項)。

 航空会社の場合、マイレージ会員はロイヤルティの高い顧客であり航空会社の事業価値の源泉といえることを考慮すると、その正常な事業継続のためにはマイレージプログラムを従前どおりマイレージ会員に提供していく必要があると考えるのは合理的といえます。このような考え方に基づき、タイ国際航空も、引き続きマイレージプログラムに基づくサービスをマイレージ会員に提供しているものと考えられます。

会社更生手続中のマイレージプログラムの会員の地位

 マイレージプログラムに基づく権利は、航空会社に対する契約上の請求権ですが、事業の正常な運営を継続するために必要なものであることから、自動停止の例外として、債務の弁済がなされることが予定されています。そのため、マイレージプログラムの会員は、更生手続において債権届出ができる債権者に該当しないと考えられ、また、更生手続により失権することもないと思われます(タイ破産法90/3条、90/26条、90/75条)。

 なお、タイ国際航空はマイレージプログラムを引き続き提供すると発表しているものの 、ビジネスの状況を考慮していくつかの制限や変更がなされる可能性があるため、タイ国際航空のマイレージプログラムに関する今後の発表には留意する必要があります。

まとめ

 過去の大手航空会社の事業再生事例と同様に(「航空会社倒産時にマイレージはどのように取り扱われるか」参照)、事業運営上の重要性から、タイ国際航空も引き続きマイレージプログラムを提供していくことが期待されますが、ビジネスの状況によってプログラムの変更等があり得る点等には留意が必要です。

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