2021年ベトナム企業法改正のポイント

国際取引・海外進出
原 智輝 弁護士 明倫国際法律事務所

 ベトナムでは、2021年1月1日より企業法が改正されると聞きましたが、改正に対応するために自社として対応が必要な事項はありますか。

 身近なところでは、法定代表者に関係する自社の権限分掌の見直し、各種取引における相手方の契約締結権限の確認方法の見直しや、改正に応じた自社のストラクチャーを再確認する必要があります。

解説

目次

  1. はじめに
  2. 総則部分の改正について
  3. 有限責任会社の改正について
  4. 株式会社の改正について

はじめに

 ベトナムでは、2021年より企業法、投資法、PPP法の改正3法が施行されます。今回の改正の目的は大きく2つあり、第一に外国投資をより誘致する法整備、第二は各法における行政手続の簡素化とガバナンス制度の整備になります。進出段階では特に投資法とPPP法を、進出後であれば企業法を留意することになります。改正企業法は、総則において法定代表者や社印制度の改正が重要であり、有限責任会社では社員総会議事録や役員のポジションの整理、株式会社では株主総会運営と少数株主や優先株式の保護が注目されています。

第4次産業革命世代において、ベトナムが目指す目標

2025年をめど 2030年をめど
  • GII(グローバル・イノベーション・インデックス)がASEANのTOP3に入ること
  • 国内総生産(GDP)に対するデジタル経済の比率が20%を占めること
  • 労働生産性の年平均成長率が7%以上
  • 100%の村にブロードバンドインターネットサービスを提供すること
  • 北部・中部・南部の重点経済地域において少なくとも3つのスマートシティを建設すること
  • GIIが世界TOP40に入ること
  • GDPに対するデジタル経済の比率が30%を占めること
  • 5G(第5世代移動通信システム)によるサービスを全国に普及させること
  • 労働生産性の年平均成長率が7.5%以上
  • すべての政府機関がデジタルトランスフォーメーションを完了させること

総則部分の改正について

 総則部分の改正につき企業が特に注目すべきは、法定代表者権限についての改正です。これは、複数の法定代表者が選任されている場合において、定款で具体的な各法定代表者の権限を定めていなかった場合、仮に内部的には権限分掌が行われていたとしても、対外的には会社を代表する全権限があるものとして扱われ、それによって企業に損害が生じた場合は、各法定代表者が連帯して責任を負うというものです。

 法定代表者については、改正前より1名の法定代表者の常駐が求められていました。コロナ禍などの時代的な影響もあり、かかる要件に対応するため、企業によっては、現地と日本にそれぞれ1名ずつの法定代表者を設置しています。このような場合において、定款の見直しを同時に行い、具体的な各法定代表者の権限を定めなければ、日本側の法定代表者にも思わぬ責任が生じることがあります。また、契約書上においても内部制限がある可能性があるため、代表権限に関する表明保証条項などが今後普及してくると見込まれます

 次に社印制度ですが、改正前は法人の社印を政府当局に通知する必要があり、通知した社印は計画投資局のポータルサービス上にて無料で確認することができました。この社印の通知制度が改正法の規定から除かれ、通知の手続が省略された一方、当該通知制度は日本の印鑑証明のような役割を果たしていたため、契約書をはじめとする各種社印を照合することが困難になりました。また、従前の社印は物理的な印鑑とされていましたが、改正後は電子印による方法も可能となり、ベトナムにおいても電子契約等のデジタル化が普及していくものと見込まれます

有限責任会社の改正について

 有限責任会社においては、監査役会設置が任意となりました。また、監査役の任期は5年(再任可)であり、加えて、監査役会を設置する場合の監査役の過半数は、ベトナムでの常駐が必要であるなどの改正が行われたため、監査役会設置の有限責任会社は対応が必要です。

 有限責任会社の法定代表者は、社員総会会長または社長(総社長含む)の役職を兼務するとの改正がされました。社員総会会長は社員総会手続における代表者であり、社長は法人事業の最高決定権者です。この兼任義務は、法定代表者のうち少なくとも1人であり、2人以上法定代表者のいる法人においては、いずれか1名は社員総会会長または社長である必要があります。2名以上の法定代表者を検討する有限責任会社においては、本改正も含めた見直しが必要です。

株式会社の改正について

 株式会社におけるガバナンス関係の改正については、まず株主総会招集通知の招集期間が改正前の10日から21日へと延長された点に注意が必要です。各株式会社では株主総会スケジュールの確認が必要となります。また、いわゆる「お手盛り」の防止のため、取締役会や監査役会の予算、報酬、賞与などが株主総会決議事項となりました。併せて、取締役会等の内部規則、独立会計監査会社予算の承認等も株主総会決議事項とされています。

 特に注目すべきは少数株主の保護であり、グローバルプラクティスを目指した改正として、改正後は保有期間を撤廃し、5%以上の議決権を保有する株主であれば少数株主権を行使することができるようになりました。併せて、優先株式を保有する株主の地位を不利益に変更する場合も、当該優先株主および同種株式を保有する株主の75%以上の賛成が必要になるよう改正されています。また、外国からの投資資金を誘致するため、議決権のない預託証券を発行することができる制度をこれから整備する見込みです。

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