組合契約に関する債権法改正の概要

取引・契約・債権回収

 2020年4月1日から施行されている改正民法では、組合契約はどのように改正されていますか。

 組合契約については、従来は規定がなく解釈で補われてきた部分について、従来の解釈に合わせる形で規定が整備されることになりました。具体的には、以下に関する規定が整備されました。

  1. 同時履行の抗弁、危険負担、債務不履行解除の規定の不適用
  2. 組合員の1人についての意思表示の無効等
  3. 業務の決定および執行の方法
  4. 組合の代理
  5. 組合の債権者の権利行使
  6. 組合員の持分の処分、組合員の債権者の権利行使
  7. 組合員の加入・脱退
  8. 組合の解散

解説

目次

  1. 同時履行の抗弁、危険負担、債務不履行解除の規定の不適用
  2. 組合員の1人についての意思表示の無効等
  3. 業務の決定および執行の方法
  4. 組合の代理
  5. 組合の債権者の権利行使
  6. 組合員の持分の処分、組合員の債権者の権利行使
  7. 組合員の加入・脱退
  8. 組合の解散
  9. おわりに

※本記事の凡例は以下のとおりです。
改正民法:民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)に基づく改正後の民法
旧民法:民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)に基づく改正前の民法

同時履行の抗弁、危険負担、債務不履行解除の規定の不適用

 従来、他の組合員が出資の履行をしないことを理由に自己の出資の履行を拒むことはできないと解されていましたが、この点について旧民法では規定されていませんでした。そこで、改正民法667条の2第1項では、組合契約においては、同時履行の抗弁(改正民法533条)や危険負担の規定(改正民法536条)を適用しないことを明文化しました。
 また、組合契約では、組合員の脱退・除名、組合の解散に関する規定が置かれていることから、債務不履行解除の規定の適用はないとする判例(大審院昭和14年6月20日判決・民集18巻666頁)があり、この点も改正民法667条の2第2項で明文化されました。

組合員の1人についての意思表示の無効等

 改正民法667条の3では、組合契約に関して、一部の組合員の意思表示に無効または取消しの原因があっても、他の組合員間の組合契約の効力は妨げられないことが明文化されました。
 意思表示に無効または取消しの原因があった組合員のみが組合契約から離脱し、組合は他の組合員を構成員として存続しますので、組合と取引をした第三者が不測の損害を被ることは防がれます。

業務の決定および執行の方法

 改正民法670条1項では、組合の意思決定は組合員の過半数で決定し、各組合員が業務執行権を有するという一般的な理解が明文化されました。
 同条2項では、組合契約の定めにより、組合員以外の第三者に対しても組合の業務の決定および執行を委任することができることが明文化されました。また、組合の業務の決定および執行の委任を受けた業務執行者を置いた場合は、業務執行者が組合の業務を決定・執行することとされ、業務執行者が複数に及ぶときは、業務執行者の過半数をもって組合の業務を決定し、各業務執行者が業務執行権を有することが明文化されました(同条3項)。
 同条4項では、業務執行者に業務の執行を委任した場合であっても、総組合員の同意によって、組合の業務を決定・執行することができることが明文化されました。
 加えて、組合の常務については、原則として、各組合員または各業務執行者が単独で決定・執行することができると明文化されました(同条5項)。ただし、その完了前に他の組合員または業務執行者が異議を述べた場合は、単独で決定・執行することができないとされています(同項ただし書)。なお、「常務」とは、「組合の事業を営むにあたって、日々行うべきこと」と解されており 1、ごく日常的になされる雑多な業務が想定されています。

組合の代理

 改正民法670条の2は組合の代理について明文化したものです。組合は法人格を持たないため法律行為の主体となることができず、組合が第三者と法律行為を行うには代理の形式を用いる必要がありますが、旧民法には組合代理についての規定は設けられていませんでした。改正民法では、業務執行権と代理権とを区別する観点から、業務執行権に関する規定とは別に、組合代理に関する規定が新設されました。
 各組合員は、組合員の過半数の同意を得た場合、組合員を代理して組合の業務執行ができます(改正民法670条の2第1項)。
 業務執行者があるときは、業務執行者のみが組合員を代理します。業務執行者が数人あるときは、業務執行者の過半数の同意を得た業務執行者が組合員を代理することになります(同条2項)。
 ただし、組合の常務については、各組合員または各業務執行者が単独で組合員を代理することができ(同条3項)、そのいずれかの者が組合の代理として契約を締結することになります。
 以上を整理し直すと、以下のとおりとなります。まず、取引内容が常務であれば、各組合員または各業務執行者が単独で組合員を代理することができますので(改正民法670条の2第3項)、そのいずれかの者が組合の代理として契約を締結することになります。常務以外の業務執行については、業務執行者があるときは、業務執行者のみが組合員を代理して行うことになりますので(改正民法670条の2第2項)、業務執行者(数人あるときは、業務執行者の過半数の同意を得た業務執行者)が組合の代理として契約を締結することになります。組合に業務執行者がないときは、組合員の過半数の同意を得た組合員が組合の代理として契約を締結することになります(改正民法670条の2第1項)。組合代理も代理である以上、代理に関する民法総則等の規定が適用されます。たとえば、組合契約で業務執行者の対外的権限を制限しても、善意無過失の第三者には対抗できません。

組合の債権者の権利行使

 組合の債務については、1個の債務として総組合員に帰属し、組合財産がその引当てとなると解されており、この点が改正民法675条1項で明文化されました。
 また、同条2項では、組合の債権者は各組合員に対して損失分担の割合または等しい割合で権利行使することができるという旧民法675条の内容を維持しつつ、債権者が債権の発生時点で損失分担の割合を知っていたときは、その割合で権利行使すべきことが明文化されました(同項ただし書)。

組合員の持分の処分、組合員の債権者の権利行使

 組合財産に属する債権については、個々の組合員において自己の持分に応じて分割して行使することはできず、総組合員が共同してのみ行使することができるとするのが判例(大審院昭和13年2月12日判決・民集17巻132頁)の立場であり、この点が改正民法676条で明文化されました。
 また、改正民法677条では、組合員の債権者は、組合財産に属する財産に対して権利行使をすることができない旨が明文化されました。

組合員の加入・脱退

 改正民法677条の2第1項では、従前からの一般的な解釈に従って、組合成立後であっても、組合員全員の同意または組合契約の規定により新組合員の加入ができる旨が明文化されました。また、同条2項では、新たに加入した組合員は、その加入前に生じた組合債務について自己の固有財産を引当てとする責任を負わないとする一般的な解釈が明文化されました。
 他方、脱退した組合員については、脱退前に生じた組合の債務について、従前の責任の範囲内(損失分担の割合または等しい割合)で弁済する責任を負うことが明記されました(改正民法680条の2第1項前段)。そのうえで、脱退した組合員は、債権者が全部の弁済を受けない場合は、組合に担保を供させ、または組合に対して自己に免責を得させることを請求することができるほか(同項後段)、組合の債務を弁済した場合は、組合に対して求償権を有する旨が明記されました(同条2項)。

組合の解散

 旧民法682条においては、組合の目的である事業の成功またはその成功の不能が解散事由とされていました。これに加えて、組合契約で定められた存続期間が満了した場合(2号)、組合契約で定められた解散事由が生じた場合(3号)、組合員全員が解散に同意した場合(4号)にも解散するという一般的な理解が明文化されました(改正民法682条)。

おわりに

 組合契約に関する改正項目は以上のとおりです。基本的には従来の理解が明文化されたものですが、これにより紛争が予防されることが期待されます。


  1. 我妻榮、有泉亨、清水誠、田山輝明著「我妻・有泉コンメンタール民法[第6版]」(日本評論社、2019)1353頁。 ↩︎

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