委任に関する民法改正のポイント

取引・契約・債権回収
外山 信之介弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所

 改正民法における委任に関する改正内容のポイントを教えてください。

 改正民法における委任に関する改正内容は、大きく分けると以下の3点です。

  1. 復受任者に関する規定の新設(改正民法644条の2)
  2. 報酬に関する規定の改正(2で詳述)
  3. 委任者による解除に関する規定の改正(改正民法651条)

解説

目次

  1. 復受任者に関する規定の新設
  2. 報酬に関する規定の改正
  3. 委任者による解除に関する規定の改正

※本記事の凡例は以下のとおりです。

  • 改正民法:民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)に基づく改正後の民法
  • 旧民法:民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)に基づく改正前の民法

復受任者に関する規定の新設

 委任契約において委任を受けた受任者は、自らと共同するなどして委任業務にあたる者として復受任者を選任できる場合があります。この点について旧民法では明文の定めがなく、復代理について定めた民法104条が類推適用されるものと解釈されていました。
 もっとも、代理に関する規定は法律行為の効果が本人に及ぶか否かという総則的な観点を中心に定められているところ、復代理は委任者との間の契約関係も問題になるため、代理とは別個の規定を設けることが適切と考えられたことから、今回の改正において、復代理に関する規定が明文化されました。
 具体的には、改正民法644条の2第1項において、従前の解釈どおり、受任者は、委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があれば、復受任者を選任することができる旨が定められました。
 また、同条2項においても、従前の解釈どおり、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利義務を有する旨が定められました。なお、「その権限の範囲内において」との限定は、受任者と復受任者の権限の範囲は必ずしも一致するとは限らないことから付された文言です。
 以上から、本規定については従前の解釈どおりの内容が明文化されたものであり、実務への影響は限定的と考えられます。

報酬に関する規定の改正

 改正民法では委任契約の報酬に関する規定が改正されましたが、改正に伴い、委任契約を次の2種類に分類しました。

  1. 成果完成型委任(委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払う委任契約)
  2. 履行割合型委任(委任事務の履行そのものに対して報酬を支払う委任契約)

 以下では、それぞれの委任に関する報酬の規定を解説します。

  1. 成果完成型委任

     成果完成型委任は、委任の報酬が、委任内容の事務処理の成果に対して支払われる場合の委任を意味します。この概念は、今回の改正においてはじめて明文の形で確立されたものです。

     成果完成型委任は、仕事の完成義務を負わないという点では請負と異なるものの、成果が生じて初めて報酬が支払われるという点で請負と共通します。そこで、成果完成型委任の報酬については、改正民法648条の2第1項において、成果が引渡しを要するときは、成果の引渡しと同時に報酬が支払われるという旨が定められ、請負に関する改正民法633条と同内容の規定が新設されました。なお、成果が引渡しを要しない場合は、改正民法648条2項本文のとおり、委任事務の履行後に報酬請求権が生じますが、この点は改正前と同様の内容の規定です。

     また、成果完成型委任については、改正民法648条の2第2項で改正民法634条の規定が準用され、成果が可分なものである場合で、委任者の責めに帰することができない事由により委任事務の履行ができなくなったときや、中途で委任が終了したときに、委任者の受ける利益の割合に応じた報酬を得られることになります。なお、委任者の責めに帰すべき事由によって委任事務の履行ができなくなった場合は、改正民法536条2項により、報酬全額について請求することが可能であると解釈されています。

     もっとも、これらの規定は任意規定であるため、現行の契約書等において従前の委任契約と同内容の定めが置かれているものの、実態としては成果の引渡しが伴うようなときは、報酬支払に関する契約書等の条項について、上記の改正民法の定めに沿うような規定に修正することが必要です。
     また、主にシステム開発契約等の契約解釈に際して、請負契約か委任契約のいずれであるかが問題になります。この点、両契約は仕事の完成義務を負うか否かという点で大きな違いがありますが、請負契約と成果完成型委任契約は特に類似するため、契約書において、発注者・受注者の権利義務関係について、より一層明確に規定することが望ましいものといえます。

  2. 履行割合型委任

     履行割合型委任は、成果の有無にかかわらず、委任事務の履行そのものの対価として報酬が支払われる場合の委任を意味します。旧民法における委任の規定は、この類型の委任を念頭に置いていたため、履行割合型委任の報酬に関する基本的な規定は旧民法から変更がありません。具体的には、合意がない限りは報酬が生じず(民法648条1項)、報酬支払の合意を行った場合は、委任事務の履行後、または、期間によって報酬を定めた場合には期間経過後に報酬を得られる(同条2項)ものと定められています。
     もっとも、旧民法では定めがなかった規定として、同条3項において、委任者の責めに帰することができない事由により委任事務の履行ができなくなった場合や、委任が中途で終了した場合は、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できる旨が定められました。なお、①成果完成型委任の場合と同様に、委任者の責めに帰すべき事由によって委任事務の履行ができなくなった場合は、改正民法536条2項により、報酬全額について請求することが可能であると解釈されています。

委任者による解除に関する規定の改正

 民法651条1項は、委任は各当事者がいつでも解除できる旨を定めていますが、旧民法下の判例においては、「受任者の利益をも目的とする委任」について、原則として委任者による一方的な解除は制限される解釈がなされていました 1。一方で、例外として、受任者に著しく不誠実な行為がある場合や、委任者が解除権を放棄したものとは認められない事情がある場合には、委任者による解除が認められるものの、受任者が受ける不利益を損害賠償しなければならないものと解されていました 2
 これらの解釈は、主に受任者の利益保護を重視していたものと考えられます。このような解釈を明文化する趣旨で、改正民法においては、こうした解除を認めたうえで、相手方に損害賠償を請求できる旨の規定を設けました(改正民法651条2項2号)。

 なお、改正民法651条2項は、相手方に不利な時期に委任を解除したとき(1号)と、委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除したとき(2号)に、相手方に対する損害賠償義務を定めていますが、前者は解除時期が不当であることによる損害が対象となるのに対し、後者は受任者の得るべき利益が損害の対象となり、両号の想定している損害の範囲は異なると考えられる点に注意が必要です。


  1. 大審院昭和7年3月25日判決・大民集11巻464頁 ↩︎

  2. 最高裁昭和56年1月19日判決・民集35巻1号1頁 ↩︎

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