カルテルの被害者から提起されるクラスアクションの概要とリスク

競争法・独占禁止法

 米国では、カルテルに参加した企業が被害者からクラスアクションにより損害賠償を請求されることが多いと聞きましたが、クラスアクションとはどのようなものですか。その概要を教えてください。

 クラスアクションとは、1人または数名の者が、共通の利害関係を有する一定範囲の人々(クラス)を代表して、クラス全員のために訴訟を遂行する訴訟形態のことをいいます。米国では、カルテルが摘発された場合、少数の被害者が、特定の期間にカルテルの対象製品が組み込まれた最終製品を米国内で購入した膨大な数の人を代表して、クラスアクションを提起することが多くあります。クラスアクションの終結に至るまでの費用が高額になることも多いため、米国に関わるカルテルが発覚した場合には、後に起こるクラスアクションも想定して対処することが必要です。

解説

目次

  1. はじめに
  2. クラスアクションとは
  3. 損害賠償請求にクラスアクションが用いられる事情
  4. クラスアクションの要件
    1. はじめに
    2. 連邦民事訴訟規則23条(a)項の4要件
    3. 連邦民事訴訟規則23条(b)(3)項
    4. 小括
  5. クラスアクションの承認・オプトアウト・和解
    1. クラスアクションとしての承認(class certification)
    2. オプトアウト
    3. クラスアクションにおける和解
  6. おわりに

はじめに

 米国では、カルテルに参加した企業が被害者からクラスアクションにより損害賠償を請求されることがよくあります。このクラスアクションは和解で終結することが多いですが、訴訟費用や和解金などのコストが数百億円に上ることもあるなど、終結に至るまでの費用が高額になることも多く、事業経営に大きな影響を与えることがあります。以下では、米国のクラスアクションの概要とリスクについて解説します。
 なお、米国には連邦法と各州の州法があり、その適用関係は複雑ですが、本稿では、特に断らない限り、連邦法の観点から叙述しています。

クラスアクションとは

 クラスアクションとは、1人または数名の者が、共通の利害関係を有する一定範囲の人々(この集団を「クラス」といいます)を代表して、クラス全員のために訴訟を遂行する訴訟形態のことをいいます。
 クラスアクションには以下の2つの大きな特徴があります。

  1. クラス代表者は、他のクラス構成員から特段の授権や委任を受けずに訴訟を追行することができる。
  2. クラスアクションにおける判決や和解などの効果が、有利不利にかかわらずすべてのクラスの構成員に及ぶ(オプトアウトした人を除く)。

 1つ目の特徴は、言い換えれば、訴訟提起の段階で、クラスの対象となるすべての人が弁護士宛に委任状を提出したり、弁護士費用や諸費用等を支払ったりする必要がないということです。これにより、容易に大規模な訴訟とすることができます。

 また、2つ目の特徴により、訴訟の帰趨が非常に大きなインパクトを持つことになります。クラスアクションによる損害賠償請求において、原告勝訴の場合、被告は、訴訟を遂行していたクラス代表者の損害だけでなく、クラスの構成員全体の損害についても、賠償義務を負います。このようにして、損害賠償額がきわめて高額になることがあるのです。

損害賠償請求にクラスアクションが用いられる事情

 カルテルの対象製品を購入した人は、カルテルによってつり上げられた価格での購入を余儀なくされたが、本来であれば(カルテルがなければ)もっと安く対象製品を購入できたはずであったとして、その損害について、カルテルに参加した企業に対して請求することができます。
 カルテルに参加した企業から対象製品を直接購入した者(直接購入者)にとどまらず、直接購入者が対象製品を組み込んで販売した最終製品を購入した者(間接購入者)も、損害賠償請求を行うことがあります(米国では、連邦法の下では間接購入者は損害賠償を請求できないとする最高裁判決(Illinois Brick Co. v. Illinois)がありますが、他方で、間接購入者による請求を認める州法を制定している州がいくつもあります)。

 たとえば、自動車部品メーカーらがある自動車部品を自動車メーカーに販売するにあたって当該部品の販売価格についてカルテルを行った場合には、対象部品を直接購入した自動車メーカーが損害賠償請求を行うだけでなく、対象部品が組み込まれた自動車を自動車メーカーから購入した自動車ディーラーや、自動車ディーラーから最終的に自動車を購入した人たちも、損害賠償請求を行うことがあります。これらの自動車ディーラーや自動車を購入した人たちの数は膨大となることがあります。

 ここで、A社らの部品のカルテルによって、500万人の最終消費者がそれぞれ1万円の被害を受けた事案を想定してみたいと思います。このように多数の人が被害を受けたとしても、各人の損害が少額であった場合、それぞれが単独で訴訟を提起したのでは、費用倒れとなる可能性が高いと考えられます。

 これに対し、クラスアクションの場合には、被害を受けた500万人全員に判決や和解の効果を及ぼす大規模訴訟とすることができます。つまり、1つの訴訟で、A社が500万人に対してそれぞれ1万円を支払う義務を負うことを内容とする判決や和解という結果に至る可能性があり、A社の支払総額は500億円となる可能性もあるのです。これほど大きな金額であれば、原告側も弁護士費用や諸費用をまかなうことも十分可能と考えられます。
 このため、米国では、カルテルが摘発された場合、少数の被害者(成功報酬制により被害者から事件を受任する弁護士)が、特定の期間にカルテルの対象製品が組み込まれた最終製品を米国内で購入した膨大な数の人を代表して、クラスアクションを提起することが多くあるのです。

クラスアクションの要件

はじめに

 米国のクラスアクションについて定めているのは、連邦民事訴訟規則23条です。
 この連邦民事訴訟規則23条は、(a)項でクラスアクション共通の要件を定め、(b)(1)項から(b)(3)項で3種類のクラスアクションを定めています。つまり、クラスアクションとして成立するためには、(a)項の要件を満たしたうえで、(b)項のいずれかのクラスアクションに該当することが必要です。カルテルによる被害者から提起されるクラスアクションは、通常、連邦民事訴訟規則23条(b)(3)項で定める類型のクラスアクションですので、以下ではこれに絞って解説します。

連邦民事訴訟規則23条(a)項の4要件

 連邦民事訴訟規則23条(a)項の要件は、以下の4つです。

連邦民事訴訟規則23条(a)項の4要件

連邦民事訴訟規則23条(b)(3)項

 連邦民事訴訟規則23条(b)(3)項の類型のクラスアクションとは、クラスの構成員に共通する法律問題または事実問題が、個々の構成員に関わる問題よりも支配的であり(支配性:predominance)、かつ、公正かつ効率的に判決を下すために、クラスアクションの手法が他の手段よりも優れている(優越性:superiority)と認められる場合です。

小括

 以上より、カルテルによる被害者から提起されるクラスアクションの場合には、連邦民事訴訟規則23条(a)項の4要件、すなわち、①構成員の多数性、②共通性、③典型性、④適切性の要件に加えて、同条(b)(3)項の⑤支配性および⑥優越性の要件が満たされることが必要です。

カルテルによる被害者から提起されるクラスアクションの要件

カルテルによる被害者から提起されるクラスアクションの要件

クラスアクションの承認・オプトアウト・和解

クラスアクションとしての承認(class certification)

 クラスアクションとして民事訴訟が提起された場合、連邦地方裁判所は、訴訟提起後、実務上可能な早い段階で、上記の要件について審理し、クラスアクションとして承認するか否かを判断します(連邦民事訴訟規則23条(c))。
 被告として訴えられる場合、個別の訴訟では、認められるおそれのある損害賠償額がそれほど大きくない事件であっても、クラスアクションとして承認されると、リスクは非常に大きいものとなります。原告からすれば、クラスアクションとして承認されれば、請求認容額が大きくなる可能性があり、和解の話合いの場でも強い立場で交渉に臨むことができるようになります。

 逆に、クラスアクションとして承認されない場合には、クラス代表者を含むクラスの対象と主張されていた人たちは、個別の訴訟によって救済を求めるほかなくなり、費用的な観点から訴訟の遂行をあきらめる可能性もあります。また、個別の訴訟における判決や和解の効果も、他の人を直接拘束することはありませんので、被告として大きなリスクと捉える必要はなくなるかもしれません。
 このように、クラスアクションとして承認されるかどうかは、原告にとっても被告にとっても非常に重要です。

原告 被告
クラスアクションとして承認される 請求認容額が大きくなる可能性があり、和解の話合いの場でも強い立場で交渉に臨むことができる 損害賠償のリスクが大きくなる
クラスアクションとして承認されない 個別の訴訟によって救済を求めるほかなくなる リスクが小さくなる

オプトアウト

 クラスアクションにおいては、クラスの構成員に含まれていると、自らは訴訟に関与していなくとも、有利不利を問わず、判決や和解の効果が及ぶことになりますが、クラス代表者には任せておけず、独自に訴訟を遂行したいという意向を有する場合も考えられます。
 連邦民事訴訟規則23条(b)(3)項の類型のクラスアクションの場合、クラス構成員は、クラスから離脱(オプトアウト)することができ、離脱(オプトアウト)すると、その人にはクラスアクションの判決や和解の効果は及びません。当該離脱(オプトアウト)をした人は、別途単独で訴訟を提起し、遂行することができます。

クラスアクションにおける和解

 通常の民事訴訟と同様、クラスアクションにおいても和解によって解決することはできますし、実際には多くのケースが和解によって解決されています。ひとたびクラスアクションを提起されると、被告会社としては、米国民事訴訟における陪審制度に対する不安感ともあいまって、万が一のリスクの顕在化をおそれて、(また、長期化する訴訟のコスト拡大を避けるため)訴訟で徹底的に争って判決に至るよりは、訴訟の途中で、原告側に一定の金銭を支払って和解するという判断に至る場合も多いです。実際、クラスアクションにおいて日本企業が数百億円にも上る和解金を支払っている例も存在します。

 クラスアクションにおける和解には、クラス代表者以外の人たち、すなわち、訴訟手続に関与していないクラス構成員も拘束されるため、これらの者の利益保護の要請から、裁判所の承認が必要とされています(連邦民事訴訟規則23条(e)柱書)。裁判所は、ヒアリングを行い、和解案が公正、合理的かつ適切であると認めた場合にのみ、和解案を承認することができるとされています(連邦民事訴訟規則23条(e)(2))。

おわりに

 米国において、カルテルによる被害者からのクラスアクションは現実に幅広く利用されています。クラスアクションの終結に至るまでの費用が高額になることも多いため、米国に関わるカルテルが発覚した場合には、後に起こるクラスアクションも想定して対処することが必要です。

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