ウェブサイトやSNSを用いた景品提供施策を実施するうえでの留意点

競争法・独占禁止法
星 知矩弁護士 株式会社電通

 当社は飲料メーカーです。このたび広告施策の一環として、インターネットのウェブサイトやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使って景品を提供する企画の実施を予定しており、具体的には、下記の方法を考えています。それぞれの企画について、景品提供に関する規制について教えてください。

  1. 当社商品(150円)を購入した際のレシートの写真をアップロードしたうえで当社のウェブサイトから応募した方に、抽選で5,000円相当のグッズをプレゼントする。
  2. 当社のツイッター公式アカウントをフォローしたうえで特定のツイートをリツイートした方に、抽選でハワイ旅行券をプレゼントする。
  3. 商品を飲んだ感想を、商品名のハッシュタグを付けてSNSに投稿した方に、抽選で当社がスポンサーとなっているテレビ番組にエキストラ出演する権利をプレゼントする。

 設例 1.は、商品を購入した際のレシートをアップロードする必要があることから、取引付随性が認められ、提供されるグッズは景品類に該当します懸賞の方法によって提供できる景品類の最高額は取引価額の20倍ですので、設例 1.の企画は景品表示法に違反します
 設例 2.について、SNS上の公式アカウントをフォローしたり特定のツイートをリツイートしたりする行為は、当該飲料メーカーの商品を購入しなくとも行うことができますし、商品の購入によって応募や当選することが可能又は容易になるものでもないことから、取引付随性は認められず、景品表示法の規制を受けません
 設例 3.では、商品を購入することにより応募や当選が可能または容易になることから取引付随性は認められますが、テレビ番組にエキストラ出演する権利は、通常、「経済上の利益」には含まれないため景品類には該当せず、景品表示法の規制を受けません

解説

目次

  1. 景品規制の概要
    1. 景品類の要件
    2. 景品類の規制
  2. 設例について
    1. 設例1.について
    2. 設例2.について
    3. 設例3.について

景品規制の概要

景品類の要件

 景品表示法は、「景品類」の定義を「顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(中略)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益」と定めています(景品表示法2条3項)。

 上記より景品表示法で規制される「景品類」の提供に該当する要件は、以下のとおり整理することができます。

  1. 顧客を誘引するための手段として
  2. 事業者が(景品提供主体)
  3. 自己の供給する商品または役務の取引
  4. 取引に付随して(取引付随性)
  5. 相手方に提供する
  6. 経済上の利益
  7. ただし、値引・アフターサービス・附属物は除く(不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件〔昭和37年6月30日公正取引委員会告示第3号〕1項)

景品類の規制

 景品類に該当する場合には、その提供の方法によって最高額や総額の限度額が定められています。懸賞による場合の景品類の最高額は、当該懸賞にかかる取引価額の20倍の金額(ただし、取引価額が5,000円以上の場合は10万円)、総額は当該懸賞にかかる売上予定総額の2%以内です(「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」〔昭和52年3月1日公正取引委員会告示第3号〕2項、3項)。

 また、懸賞によらない方法(総付)で提供する場合の景品類の最高額は取引価額の20%(ただし、取引価額が1,000円未満の場合は200円)です(「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」〔昭和52年3月1日公正取引委員会告示第5号〕1項)。その他の規制については、下記のフローチャートをご参照ください。

景品類の規制に関するフローチャート

※1 「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年6月30日公正取引委員会告示第3号)
※2 「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年3月1日公正取引委員会告示第5号)
※3 「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年3月1日公正取引委員会告示第3号)

設例について

設例1.について

 インターネット上で行われる懸賞企画については、公正取引委員会が平成13年4月に公表した「インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて」において、商取引サイトを見なければ懸賞サイトを見ることができないようなホームページの構造であったとしても、懸賞に応募しようとする者が商品やサービスを購入することにただちにつながるものではないことから、取引付随性は原則として認められないとの考え方が示されています。ただし、商品やサービスを購入しなければ懸賞企画に応募できない場合や、商品またはサービスを購入することにより、ウェブサイト上の懸賞企画に応募することが可能になったり、容易になる場合には、取引付随性が認められるとされています

 設例 1.はインターネット上のウェブサイトで行われる懸賞企画ですが、応募をするためには、商品を購入した際のレシートの写真をアップロードする必要があります。商品を購入しなければ本懸賞企画に応募できないため、取引付随性が認められます。また、1-1.で示した「景品類」の他の要件も充足しますので、景品表示法の規制の範囲内で景品類を提供する必要があります

 懸賞の方法で景品類を提供する場合には、取引価額の20倍が最高額となりますから、設例 1.の懸賞企画では3,000円(150円の20倍)を超える景品類を提供することはできません。設例 1では5,000円相当のグッズを提供するため、景品表示法に違反します。

設例2.について

 設例 2.は、SNSで行われる懸賞企画ですが、設例 1.と同様、取引付随性が認められるかが問題となります。取引付随性は、取引を条件とする場合だけでなく、経済上の利益の提供が顧客の購入の意思決定に直接結びつく可能性のある形で行われるものについても認められると解されています 1。具体的には、商品の容器包装に経済上の利益を提供する企画の内容を告知している場合や、商品または役務を購入することにより、経済上の利益の提供を受けることが可能または容易になる場合、自己の店舗への入店者に対して経済上の利益を提供する場合などです。

 SNS上の公式アカウントをフォローしたり、特定のツイートをリツイートしたりする行為は、当該飲料メーカーの商品を購入しなくとも行うことができます。また、商品の購入によって応募や当選することが可能または容易になるものでもありませんから、その他に取引付随性が認められる事情がない限り、設例 2.の懸賞企画により提供されるハワイ旅行券は景品類には該当せず、景品表示法の規制を受けるものではありません

設例3.について

 設例 3.は設例 2.と同様、SNSで行われる懸賞企画です。もっとも、設例 2.とは異なり、商品を飲んだ感想をSNSに投稿することが懸賞企画への応募の条件となっています。商品を購入することにより、商品を飲んだ感想を投稿して応募することが可能または容易になると考えられますから、取引付随性は認められます

 また、設例 3.では、テレビ番組にエキストラ出演する権利が「経済上の利益」に該当するかが問題となります。市販されていない物品等であっても、提供を受ける者の側からみて、通常、経済的対価を支払って取得すると認められるものは、「経済上の利益」に含まれます(「景品類等の指定の告示の運用基準について」(昭和52年4月1日事務局長通達第7号)5(1))。テレビ番組にエキストラ出演することは、取引の相手方である消費者が役務の提供を受けるものではなく、消費者が役務を提供するという側面がありますから、通常、経済的対価を支払って取得するものとはいえません。そのため、当該テレビ番組のエキストラ出演権が市販されているなどの特段の事情がない限り、「経済上の利益」には該当せず、景品表示法の規制は受けません


  1. 大元慎二編著『景品表示法(第5版)』175頁(商事法務、2017) ↩︎

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